というか、自分の考えたコンボがかなりTwitterで反応して貰えたから書きたかっただけである。
深夜2時。とある民家の自室にて。
カードゲーム、デュエル・マスターズのデッキを開発して、PCを介してブログに書き込んでいた所、とある写真がメールBOXに送信される。
相手の名前は不明。件名は【触れ合い体験】。内容は【秘密の守れる強い人は私に連絡を下さい】とのこと。
「アダルト系の迷惑メールか?ハイハイウレシイナー、っと」
送信された写真もチェックすると、銀髪に鈍い金の瞳をした20歳くらいの真顔の色白な女性の顔が写っていた。メイクしたように見えない割に、日本人らしいアジア系の顔だ。染めているようにも見えない。
――へぇ、最近のメイクって凄いな。加工だとしてもここまでナチュラルに出来るのか・・・・・・。
「綺麗な人の写真使ってんだなぁ・・・・・・ん、ふぁぁ・・・・・・」
そう関心していると徐々に眠気が襲って来た。もう夜更けだ。そろそろ寝た方が良いだろう。
PCを消して、部屋の電気を消す。明るかった部屋は一瞬にして暗くなり、俺は自分のベッドで横になる。
「今日から夏休みだし、カドショで遊ぶか」
窓から月光が差し、机の上のデッキにスポットライトが当たったように見えた。明日はそのデッキでも使うか。
こうして、俺の夏休みが始まった。ただそれは、俺の愛する平穏との別れでもあった。
GOODBYE平穏無事な俺の夏休み、HELLO波乱万丈な俺の夏休み。それがわかるのは、もう少し先の話。
朝になり、ベッドから出てカードショップへと自転車で向かう。夏休みだから遅くにベッドから出た訳だが、家を出るスピードはさながら短距離走の選手の如く。
今日はデュエマのショップ大会がある。調整がてら少し早めに家を出た俺は、GPという大規模なデュエマの大会で配られた特性バックに入れたデッキのことを考えていた。
――コンボが決まるかどうかだなぁ・・・・・・そこが心配だ。
そんな心配をしていると、あっと言う間に店に着いてしまった。
某おもちゃ駅のレジ前でエントリーシートを貰い、名前を書いてデッキシートと参加費を渡す。これで受け付けは終了。後はのんびりと参加しそうな人のデッキでも見て回るか・・・・・・。そう思っていると、一人のプレイヤーに目が行った。
目が死んでいて、どこか暗い雰囲気を醸し出している。周囲の人が明るい表情なのに対して、その人が真顔なのが、俺には少し変に見えた。
――何か、人形みたいだな・・・・・・あんまり関わりたくないかも。
不気味に思えた俺はすぐにその人から目を離し、様々なデッキの存在を確認し、その人と使っているデッキを把握する。
――赤白ミッツァイル、黒緑バラギアラ、ネクラマゲにモルネク、それから零緑GRジョーカーズに青魔導具か・・・・・・青魔導具と零緑GRジョーカーズがキツいなぁ・・・・・・。
どっちも途中で潰れて下さい。そう願いながら動きを見ていると、ふと、一人の女性が遠目から対戦テーブルを眺めていることに気付いた。
見た目は少しオシャレな大人な女性、と言った所だろうか。年は20行ってるか行ってないか位に見える。大会には男の子も居るし、姉弟で遊びに来たとかだろうか。
俺が気付いた時には、何人かのプレイヤーもチラチラとその人を何度か見ていた。大方、綺麗で若い女性が気になって仕方ないのだろう。そのままプレイで集中出来ずに負けてくれても良いのだが。
「はい、お待たせしました――」
大会開始の時刻となった。俺はその女性から目を離し、店員の注意事項や説明を聞きながら、プレイマットとデッキをバックから取り出す。
「2番テーブル、■■さん」
「あ、はーい」
店員に呼ばれ、返事をしながら人混みの中を進み、指定された席に座る。対戦相手は・・・・・・げ、あの暗い人か・・・・・・。
「宜しくお願いします」
「―――」
返事が無い。最早放心状態のようにも見えて来た。
取り敢えず、先行後攻を決め、お互いのデッキをカット&シャッフルすることは出来たものの相手はそれ以外ピクリとも動かず喋らない。ただ一点をジーッと見続けている。
――怖っ
「それでは、デュエマースタート!」
店員の掛け声で、一斉に周囲でデュエマが始まる。
ドロー。マナをチャージ。召喚。様々なワードが飛び交っているのが伝わって来る。
対してこっちはかなり静かだ。必要最低限のことを話し、後は黙々とプレイするだけの相手。
正直、少し物足りない。
「チャージ、エンド」(マナ1)
先行の相手がマナに置いたのは《ΔΔΣシグマティス》。緑オーラか黒緑t青のドラガンザーク、そのどちらかだろうと判断する。
「ドローします。マナをチャージして、ターンエンド」(マナ1)
最初にまずトリーヴァカラーの《サイゾウミスト》をマナに置く。このデッキは以外と自然が少ない為、ここで多色である《サイゾウミスト》が手札にあったのは良いスタートと言える。
「ドロー、チャージ、《ダーク・ライフ》で1マナチャージして1枚墓地に。エンド」(マナ3)
「・・・・・・ドローします」
マナに置かれた《デジルムカデ》と《ダーク・ライフ》に、墓地に置かれた《kβバライフ》。
――これは・・・・・・黒緑t青のドラガンザークでほぼ確定だな。まぁ、自然オーラはまだそこまで流行っている訳でもないから、薄々こっちだとは思っていたが。
だが、このデッキはハンデスにも弱くなければ、中速から低速なデッキには強く出られるという強味がある。問題があるとすれば、相手が何枚墓地に《ケルベロック》を貯められるか。
「マナをチャージして、ターンエンド」(マナ2)
「ドロー、チャージ、2でステップル召喚、効果でチャージ。3で《エダマ・フーマ》を出してGR召喚。《丁ー四式》に付けてエンド」(マナ5)
――《ステップル》か、上手いな。序盤のブーストとして働きながら、破壊されればマナに置かれたオーラを墓地に送れる。これで相手は、今マナに置かれた《ケルベロック》を墓地に送る手段を得ることに成功した訳だ。
思わず相手の構築に感心してしまう。《ステップル》はクリーチャーである為、《ドラガンザーク》の軽減に合わないと思っていたが、案外そうでも無いらしい。これは一つ良いことを知った気がする。
――おっと、感心してる場合じゃなかったな。
「ドローします。マナをチャージして、3マナで《神秘の宝箱》を唱えます。効果でデッキの中確認します」
自分の手札とデッキの中身から、重要なパーツが盾落ちしていないことを確認する。安心した。まぁ、一番心配なカードは手札に来ていた為、そこまで盾落ちしていると思っていた訳ではない。
――この一枚をマナに置いて、下準備は全て終了する。
「《サイクリカ》をマナに置いてターンエンド」(マナ4)
「ドロー、《デジルムカデ》を出してGR召喚。《ダラク》を出して付ける。《ダラク》で1枚見て墓地に。エンド」
《ダラク》は登場時にデッキトップから1枚を見て墓地に落とすかの選択が出来る闇のGRクリーチャー。これで相手の墓地にはオーラが2枚。マナは5。次のターン辺りに墓地肥やしが出来れば、相手は《ドラガンザーク》をその次の自分のターン辺りで出して来るだろう。
「ドローします。マナをチャージして、4マナで《クリスタル・メモリー》を唱えます。効果でデッキからカードを1枚手札に加え、ターンエンド」(マナ5)
非ツインパクトである《クリスタル・メモリー》により、1枚のカードを手札に加える。オーラには今のところピーピングハンデスは無かった筈。ランダムハンデスであれば、そこまで注意する必要は無い。
そもそも、もしハンデスされたとしても、そこまでの驚異にはならない。
「ドロー、《ダイパ殺デー》を出してGR召喚。《ザーク卍ウィンガー》に付けて――」
「・・・・・・手札から1枚を墓地へ」
「《エダマ》の付いた《丁ー四式》を破壊し、2枚を墓地に。エンド」
落ちたのは《ギャン》と《ケルベロック》。マズくなってきた。せめて後1ターンあれば間に合うのだが。
――賭けだな。相手がケルベロックを何枚か墓地に肥やしてから《ドラガンザーク》で攻めて来るか。それとも攻撃して来るか。
「ドローします。マナをチャージして6マナで《チェンジザ》を召喚。効果で2ドローして《フェアリー・シャワー》を捨て、唱えます。1枚手札に加え、1枚をマナに。ターンエンド」(マナ7)
今思ったが、《フェアリー・シャワー》は《ドンドン水撒くナウ》に変えて良いかもしれない。《神秘の宝箱》などで奇数進行を意識するとなるとそっちの方が有用からも知れない。後で改造しよう。
――まぁ、それは良いとして、これで相手は《チェンジザ》を意識してしまう。《ドラガンザーク》によるプレイヤーへの連続攻撃よりも、《チェンジザ》の除去を優先する筈。次のターンに繋いででも、確実に逆転の目を潰そうと・・・・・・きっとそうしてくる。
「ドロー、5で《ドラガンザーク》を《ザーク卍ウィンガー》の付ける。墓地から《エダマ・フーマ》と《ギャン》を付け、2枚を墓地に」
《ギャン》の効果で墓地が減らない。それどころか増えている。安心したといえば《ケルベロック》がもう1枚落ちなかったことだろう。もししていたら、プレイヤーへ攻撃してくる可能性は少し上がっていた。
「《ザーク卍ウィンガー》で《チェンジザ》に攻撃。墓地から《ケルベロック》と《ダイパ殺デー》を付け、アンタップ」
「手札から《ジャスミン》を捨てる」
そのまま《チェンジザ》への攻撃が通り、《チェンジザ》が破壊される。
問題はここで攻撃してくるかどうか。
「《ステップル》を破壊。《ケルベロック》を墓地に。エンド」(マナ4)
――計画通り
「ドロー、マナをチャージして8マナで《ドンジャングル》を召喚。効果でマナゾーンから《サイクリカ》をバトルゾーンに」(マナ7)
コンボスタートだ。
「《サイクリカ》の効果で墓地の《フォース・アゲイン》を唱え、《ドンジャングル》を破壊しもう一度バトルゾーンに。そして《フォース・アゲイン》を手札に戻し、《ドンジャングル》の効果でマナゾーンから《チェンジザ》をバトルゾーンに」(マナ6)
殿堂カードである《フォース・アゲイン》により、《ドンジャングル》の効果を使いまくるのがこのコンボの狙いであり、必殺への道でもある。
ただ、今回はその必殺に必要な1枚が盾落ちしている為、そこまで必殺ではない。それでも十分強い訳だが。
「《チェンジザ》の効果で2ドローし、手札に加えた《フォース・アゲイン》を捨て、唱えます。ドンジャングルを破壊し、バトルゾーンに。《ドンジャングル》の効果でマナゾーンから《クイーン・アマテラス》をバトルゾーンに。《クイーン・アマテラス》の効果でデッキから《失われし禁術》を手札に加え、唱えます
」(マナ5)
コンボも大詰めだ。例え相手が《デジルムカデ》を出していようと関係ない。
「《失われし禁術》の効果で墓地の《フォース・アゲイン》を唱え、《ドンジャングル》を破壊し、バトルゾーンに。《フォース・アゲイン》をデッキ下に置きます。そして《ドンジャングル》の効果でマナーゾーンから《クイーン・アマテラス》をバトルゾーンに」(マナ4)
――よしっ。後はこれで・・・・・・
「《クイーン・アマテラス》の効果でデッキから《ファイナル・ストップ》を手札に加え、唱えます。効果で1ドロー」
これで相手は次の相手のターンの終わりまで呪文を唱えられない。まぁ、そう呪文を入れているようには見えないが。
――まぁ、《悪魔の契約》なんかは強力なシナジーを持っているし、入っている可能性も無い訳では無いか。
一連の動きが終わった所で、俺は手札から1枚のカードを相手に見せる。それは、そのカードの持っている条件を満たしたという合図。
「このターン、《フォース・アゲイン》を3回、《失われし禁術》を1回、《ファイナル・ストップ》を1回。計5回呪文を唱えている為、手札から《スコーラー》を『Gー0』で召喚。効果で追加ターンを得ます。ターンエンド」
――そして
「EXターン入ります。ドローします。マナをチャージして2マナで《ジャスミン》を召喚し、効果で破壊してマナをチャージ。3マナで《神秘の宝箱》を唱え、デッキから《チェンジザ》をマナに」(マナ7)
これで消費したマナも回復した。後は攻めるのみ。
「《ドンジャングル》でプレイヤーへ攻撃」
「受けます」(盾3)
「《チェンジザ》でプレイヤーを攻撃、効果で2ドローし、《失われし禁術》を捨て、唱えます。効果で墓地の《~土を割る逆瀧~》を唱え、デッキ下に」
これで相手は次の俺のターンまで攻撃、ブロックは各ターン一度しか出来なくなる。
「《ザーク卍ウィンガー》でブロック」
「《スコーラー》でプレイヤーを攻撃」
「受けます」(盾1)
《チェンジザ》が破壊されたことなど些事に過ぎない。まだ此方にはアタッカーが3体居る。
「《サイクリカ》でプレイヤーを攻撃」
「受けます」(盾0)
――ノートリだったのか。運に見放されていたか・・・・・・。
「《クイーン・アマテラス》でプレイヤーを攻撃」
「通ります」
盾5での勝利。宣言していた訳ではないが、完全決闘のようになってしまった。あちらは宣言した段階から削られなければ良いというもので、一度も削られなければ良いという縛りでは無いが。
「ありがとうございました。良いデュエルでした」
「・・・・・・」
握手を求めるも華麗に無視。相手は自分のデッキとプレイマットをバックにしまい込むと徐に立ち上がり、シートに敗北の証である×を書き込み、対戦者名の欄に俺の名前書いて席を離れる。俺はチラッとシートに書かれた相手の名前を確認し、自分のシートに書き加える。
――それにしても・・・・・・
「握手くらい、別にしてくれたって良いだろ・・・・・・」
アダルトサイトの迷惑メールから始まっている話とは()
まずは主人公のデッキのコンボを紹介。
《ドンジャングル》×1
《フォース・アゲイン》×1
《失われし禁術》×1
《クイーン・アマテラス》×1
《サイクリカ》×1
《チェンジザ》×1
《スコーラー》×1
で完成。
マナに《チェンジザ》、《サイクリカ》、《クイーン・アマテラス》があり、デッキに《失われし禁術》が1枚と、デッキ、手札、墓地に《フォース・アゲイン》が1枚あれば可能。《クイーン・アマテラス》が手札に加えて唱える効果である為、《キクチ》や《カレイコ》に引っかからないという強味があったりする。ただし《ヒビキ》やランデスは天敵。
最低でもこのコンボで《ドンジャングル》、《チェンジザ》、《サイクリカ》、《クイーン・アマテラス》、《スコーラー》が並ぶ為、W・ブレイカーが5体並ぶことになる。今回の話では出なかったが、《ミラダンテXII》も絡めれば1打点増えつつ相手に召喚制限を掛けられる。《ファイナル・ストップ》もあればほぼ勝ち。