明けて次の日、一度ちゃんと話をしようとくすんだ金の少女…アピスの姿を探すもどうも見当たらない。
村長であるボクデンも
「おぉーぅい、アピスやーい」
と探し回ってる様子で何処に行ったのか、まさかまた山の方に?などと考えていると
「村長ーっ!!大変だべ村長!」
と飛び込んできたのは一人の男、先の尖った帽子という事は村の住民なのだろう
「おぉトンガ、そんなに慌ててどうしたのじゃ、まずは息を整えい。
あぁ、それからアピスをみなかったかのう?」
トンガと呼ばれた男は余程急いで来たのだろう、荒い息を一度落ち着けると
「大変だべ村長!アピスさ…アピスさ海軍に連れて行かれちまったべさ!!」
その言葉にボクデンは
「なんと!アピスは海軍さんに何かしたのか?」
「わがんね、珍しく海軍の軍艦さやって来たもんだからみんなで見てたべさ。
そしたらアピスさ飛び出してって海兵に何か聞いたらそのまま軍艦なかに引っ張られていったべさ!」
その言葉と共にクリークは慌てて島に唯一ある港に向かうもそこに件の軍艦の姿は無くクリークは入江に隠した自分たちの船、ベアトリーチェ号に向かうと船尾に設えた水槽を開放する。
「さて、ずっとこっちに来てから暇だったろうが今日は広い海で泳げるぞ」
「フゴォォォオッ!!」
そうして元気よく鳴き声を上げて出て来たのは闘魚…かつてグリーンビットで捕らえクリークの個人的なペットとなった"マガツノ"である。
待機するマガツノに手早く鞍や手綱を取り付けると
「カフウ!上空から見てこの島から離れる海軍艦を探してくれ!!」
「くるるっ!!」
そう叫びながらマガツノと共に海へ飛び込むと一度港に向かうのだった。
港には丁度走って来たのであろう村長のボクデンがいたので
「村長!お嬢さんは俺が見て来ますので村長はここにいて下さい!ひょっとしたらなんかの誤解があっただけでひょっこり戻ってくるかもしれませんし!」
その言葉にボクデンが片手を上げて答えるのと、偵察に赴かせたカフウが肩に降り立つのを同時だった。
「くるるっ!くっ!」
「成る程、南西か」
カフウがくちばしで指し示す方向を方位磁石で確認してマガツノの手綱を引き真っ直ぐに向かう。
暫くすれば見えて来たのは一隻の海軍艦、成る程あれがか…と思いつつこのままでは存在がバレるので手綱を引くと海中に潜り込む。
そのまま接近し海面から顔だけ出して船を一周ぐるりと見て回れば
「…良かった、この船であってたか」
そこには最も採用数が多いスタンダードモデルの海軍の軍艦。
そしてその船尾楼の窓に不安そうな表情のアピスの姿が確認できた。
確か一般的な軍艦だとあの場所は客室だったな…そう考えつつ、カフウにとりあえずアピスを発見したとの村長への手紙を持たせて自身はマガツノと共に軍艦にバレないようにぴったりくっついて泳ぐ。
そして十数時間が経過したところでようやくクリークは動き出した。
まずは海面から船の側舷をバレないようによじ登りあっという間にアピスの姿が見えた船尾楼の窓へ。
素早く窓の外から中を確認し寝台に眠るアピス以外の姿が無い事を確認して腰のポーチから複数の道具を取り出すとガラスを刳り貫き、そして器具を突っ込んでしばらくするとカチャリ、という音がして鍵が外れた。
そしていざ窓を開けてなかに侵入しようとした所で自身の身体じゃどう足掻いても通れない事に気づいた。
窓の大きさは精々直径30センチ程度のもの、普通の人間なら何とか頑張れば通り抜けられるかもしれないがとてもじゃ無いが普通の人間を大きく逸脱した自身の身体が通り抜ける事は出来ないだろう。
とは言え眠るアピスも手が届く範囲からは遠くどうしたもんか、と悩みしばらく考えると上空に待機していたカフウにハンドサインで合図を出す。
そして海面のマガツノにもハンドサインで指示を出してしばらくすると大きな衝撃音と共に大きく船が揺れる。
続いて甲板の方からは連続した銃声、マガツノが上手く舵を叩き折りカフウが上手く人を惹きつけたみたいだな。
先程の衝突によってベッドから跳ね飛ばされたアピスは
「あたたたた…まったく何なのよもう!!もうちょっと安全に運転しなさいよ!!」
思いっきり床にお尻を打ち付けたらしくそこを抑えて文句を言っている。
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」
そんな姿に声がかかりアピスが声の方を見ればそこには開いた窓があるも声の主を居らず
「…誰かいるの?」
恐る恐る窓に近づきつつそう尋ねる。
「安心してくれ、村長から依頼を受けて来た。
君がここにいるのは自身の意思でか、若しくは無理に捕らえられたのか教えて欲しい、場合によってはこちらはお嬢ちゃんを救出する手段がある」
窓から姿を見せたのは大きな手、その手が落ち着けとでも言うようにジェスチャーをとり質問をして来た。
そしてその質問にアピスは少し考えると
「…ちょっと質問しただけだったんだけどなぁ、海軍は今は信用できないかも。
お爺ちゃんの知り合いってのは本当?お爺ちゃんの得意料理は?」
完全に警戒をといたわけでは無いのだろう、そんな質問に
「豚まんだ、ただアレは時間がかかるんだよな…しかもその間の昔話の長い事長い事…」
クリークは昨日のそれこそ肉まんが出来上がるまでの間、昔話をしてくれるというのに軽く頷いた結果の出来事を思い出しながらそう語るのだった。
「本当みたいね、所でどうやって逃げる計画?」
「現在仲間が騒ぎを起こしている、嬢ちゃんはこの窓から海に飛び込んでくれ、おれもすぐに後を追う。
そして仲間に拾ってもらって後は軍艦島に帰るだけだ」
と計画と呼ぶほどでも無いがその行動を話せば
「げっ…わたし泳げないんだけど…」
嫌そうな顔で言うアピスに
「なんだ、カナヅチか…仕方ないおれが小脇に抱えて行こう」
「…できるだけ海には近づきたく無いんだけどなぁ」
その言葉にクリークはふと疑問を覚えるもカフウにいつまでもおとりをさせるわけにはいかないのでアピスを急かし窓から出てもらうのだった。
久々のマガツノの出番。
潜水可能な水上バイク、どんなものでも噛み砕ける牙にちょっとやそっとじゃ貫けない頑丈な鱗。
そしてどんなものでも貫く頑強さを持つ二本の角。
戦闘スタイルは基本的にその身体にものを言わせた海中加速からの突進である。
原作突入後の描写について、現在原作が始まった事により麦わら一味の描写が多くなっていますがそれについてのアンケートを行います
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麦わらメイン(原作のに近く変化がわかる)
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クリークメイン(傍観者、クリーク主人公)
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二つの視点(麦わら視点とクリーク視点)