手を出すな、そう言ったフォクシーにクリークは満足げに
「ふむ…知っていたようで何より」
と言えば
「ふぇふぇふぇふぇ、随分と古いしきたりを持ち出して来たもんだな。
そんな掟とっくの昔に忘れ去られているぜ?まぁおれじゃなきゃわかんねぇだろうがな」
薄く笑いながら自慢げに腕を組むフォクシー。
「デービーバックファイトなんて古いゲームを今も信奉してるアンタならわかると思ってたさ」
そんな二人にポルチェやハンバーグは意味がよくわからなかったのだろう
「おやびーん、さっきアイツが言った"ぱーれい"って何なのぉ?」
「いきなりそんな事言われてしかも手出し無用って言われてもわかんないよ」
そんな質問に周囲は頷きフォクシーは
「ふっ、テメェらが知らないのも無理はねぇ…その昔、今とは違い海賊には掟ってのがあったのさ。
そのうちの一つが"パーレイ"、古い言葉で交渉を意味する。
これの宣言以降交渉中の攻撃は決して許されず、仮に決裂してもお互いの船長が船に戻り、体制を整えてからでなければ戦闘の再開は行われない 。
これを破れば海賊としての誇りなく自身は欲望のままに力を振るう外道であると言ってるようなもんさ。
…まぁとっくの昔に使われなくなって久しいがな、知ってる奴もほとんどいないだろう」
と得意げに説明すれば周囲は成る程と納得し、流石自分達の船長だと囃し立てた。
「…で、そんな古い掟まで持ち出しておれに何の用だ赤いカモメの海兵さんよ。
見たところアンタ将官クラスだな?おれを捕まえにでも来たか?」
そう言って油断なくこちらを見据えるフォクシーにクリークは
「紹介が遅れたな、海軍本部中将のクリークだ。
今回は少しばかり話し合いの場を設けたくてな、もちろん了承はしてくれるよな」
「本部中将…しかもクリークと言やぁ赤カモメのトップじゃねぇか!!」
ニヤリと笑えばフォクシーは相手の正体に愕然とするも今はパーレイを宣言された後だと思い出し冷静になる。
「…銀狐のフォクシー、貴様に対して今から軽い面談を行う。
結果如何によってはお前は七武海に任命される可能性もあるからちゃんと考えろよ?」
だがその冷静さとクリークの口から放たれた言葉に一気に吹き飛んだ。
「なぁっ!?七武海だと!何でおれなんかが、おれより強いのはいくらでもいるだろう!!」
「落ち着け、あくまでも七武海候補だ…昨今の情勢については勿論知っているよな?」
「…そう言えばニュースクーで見たな、七武海の一角であるサー・クロコダイルの陥落、その後釜を探してるというわけか。
ふぇふぇふぇ、それならわかるが何故おれなのかが解せんな」
「デービーバックファイトを用いた人取り合戦…海賊達にとっては絶対のこのゲームでお前達が潰してきた海賊は数多い…公認海賊も違法海賊も一緒くたにターゲットにしてるのがアレだが…その行動にある程度の抑止力があると政府は考えたようだ。
アンタも自分の異名くらい把握してるんだろう?なぁ"海賊潰し"よぉ」
海賊潰し…原作と比べてこの世界では海軍が強化された…されてしまった。
それにより海賊とも呼ばれる勢力は違法海賊と認可を受けた公認海賊に別れ、そして主に海軍の捕縛対象である違法海賊は数こそ原作と比べて少なくなったもののその分強化された海兵達と争ううちに実力の底上げがなされていた。
当然そんな輩を相手にして無敗のフォクシー海賊団が弱いわけが無く、巷ではデービーバックファイトにより人員を、最後にはシンボルすら奪い瓦解させる事からその異名で広く知れ渡っていたのだ。
「ふぇふぇふぇ、その名で呼んでくれるな。
おれ達ゃあくまでゲームを楽しんでやってんだからな、そんなイカつい名前じゃ相手が逃げちまう。
大方懸賞金額が低いから御しやすいと踏んだか?ふぇふぇふぇバカめ、狐ってのはなぁ…可愛いだけの生き物じゃぁねぇんだぜ?」
ニヤリと笑ってそう言うフォクシーにクリークは真顔になると
「狐が可愛い面も獰猛な面もあるのは理解する…だがお前は可愛く無いがな?」
と思わず言ってしまい流石にフォクシーもこれには無理があると思ったのか
「ぐ…まぁいい、で何が聞きたい?別に勧誘では無いのだろう?」
崩れそうになる膝を伸ばしてそう聞くのだった。
一方甲板で話し合う二人を尻目に艦橋では
「…ちっ、よりによってあの鈍熊が出て来るとはな」
先程フォクシーと話していたオールバックの男
「む、あの男は!!今こそわがカマイタチで…」
フォクシーマスクの上にサングラスをかけた細身の男
「おいおい…辞めとけよ傭兵野郎、パーレイを知らねぇのか?
それにおれ達を巻き込むんじゃねぇ、やるなら一人でやってそんで死んでこい、ついでにあの豚も道連れにしてくれりゃ文句無しだ」
そしてフォクシーマスクに加えて顎に鋼鉄のギプスを嵌めて右手を布でぐるぐる巻きにしたがっしりとした体格の男。
「何がパーレイだ馬鹿馬鹿しい…生憎おれは傭兵だからな海賊の掟なんざ知った事か!!
それにあの男はこのおれを侮辱し挙句の果てには拘束、あやうく監獄に入れられるとこだったのだぞ!その恨み今晴らさずしていつ晴らすのだ!!」
細身でサングラスの男はそう熱弁するが
「…黙れ傭兵、テメェにかかずらってる暇なんざねぇんだよ。
これ以上ガタガタ抜かすんならまずはおれの爪をお前に向けてもいいんだぞ?」
凄みを効かせたオールバックの男の声に怯むもややあって
「っ…ふん!いいだろう、今のとこはまだ従ってやる。だが精々背中には気をつけることだ、月夜ばかりと思うなよ?」
と一度手刀を構えるとその場から去っていった。
「…船長も大変だな、心から同情するぜ?」
「…黙れ元海兵、おれ達のような寄せ集めに船長なんて存在しねぇよ。
それより赤カモメを見て騒ぎそうなデブはどうした?」
「あぁ、あのデブならまたノロくなっているぞ。まぁ食うしか能の無いあの男には似合いだがな。
それよりいつまでここにいるつもりだ?テメェは探してる男がいるんだろ?」
「まぁ今はまだ大人しくしておくさ、何せここはグランドライン…情報も何もかも足りねぇ上に折角安全な住処をわざわざ用意してくれたんだ。
情報が揃うまでは精々従っておくさ、それに銀狐のあの能力はタダでさえ厄介な上にあのデブの所為で更に面倒になったからな…
さあ銀狐、テメェはこの海賊達の世界で名を上げるか?七武海になれば今のまま仲良しこよしの海賊団では居られないぞ?」
そう言いながらオールバックの男は薄く笑いつつ眼下で話し合うフォクシーとクリークを見つめるのだった。
ー黒猫は銀狐と鈍熊を眼下に薄く嗤うー
原作突入後の描写について、現在原作が始まった事により麦わら一味の描写が多くなっていますがそれについてのアンケートを行います
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麦わらメイン(原作のに近く変化がわかる)
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クリークメイン(傍観者、クリーク主人公)
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二つの視点(麦わら視点とクリーク視点)