【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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Prologue.

 夜の街に、けたたましいサイレンの音が響き渡る。

 

『琥珀ヶ丘町内、ポイントB-7にギャングラー出現。繰り返す、ポイントB-7にギャングラー出現──』

 

 

「入電あり……ギャングラーの攻撃によりビル3棟が倒壊!!」

「ッ、ダメだ現地の連中との連絡がつかない!」

「とにかく出動だ急げ!!」

 

 常軌を逸した狂騒の中で、個性に富んだ衣装を纏った男女が駆け抜けていく。彼らの向かう先はただひとつ、赤に染まる夜空の下──この平和の国にあってはならないはずの、戦場である。

 

 

 *

 

 

 

 ことの始まりは中国、軽慶市。『発光する赤児が産まれた』というニュースだった。

 以降各地で「超常」は発見され、いつしか「超常」は「日常」に、「架空(ゆめ)」は「現実」となった。

 世界総人口の約八割が何らかの「特異体質」である現在、"個性"を悪用する(ヴィラン)により混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が、脚光を浴びていた。そう、「ヒーロー」と呼ばれる職業である。

 

 

 ──"彼ら"がこの世界に存在しない()()()世界線であれば、このあらすじのままに物語を始めることができたのかもしれない。

 

 

 異世界より現れし異形の犯罪者集団、ギャングラー。

 常人より遥かに頑強な肉体と"個性"、そして残忍な性質を生まれながらにもつ彼らは、あらゆる世界の裏社会を牛耳ってきた。

 

 そして現在、我らが地球にも魔の手を伸ばしているのである──

 

 

「ぐぁああああッ!!」

 

 炎に包まれた街路の中心に、青年の痛々しい悲鳴が響く。

 声の主は吹き飛ばされ、コンクリートの地面に叩きつけられる。惜しげもなく晒された筋肉質な上半身は、あちこち擦りきれて血が滲んでいた。

 

「ぐ、うぅぅ……ッ」

「ッ、烈怒、頼雄斗……!」

 

 青年を呼ぶ僚友もまた、地面に俯せに倒れ伏している。

 鍛えた己の肉体と個性でヴィランと戦い、社会の安寧を守る──彼らこそ、そんな使命を帯びたヒーローたちだ。

 

 そんな彼らが束になってもなお、こうして一敗地に塗れる恐るべき悪魔──それこそが、ギャングラー。

 

「フハハハハ、この程度か! ヒーローが聞いて呆れるなァ!!」

「……ッ」

 

 その身に傷ひとつない怪物が、高らかに嘲う。その両腕から放たれる無数の爆弾が、四方八方を更なる火の海へと変えていく。

 

 ──自分たちの力では、こいつらに対して何もできない。何も……守れない。

 

「さァ、次はテメェらの番だ」

「……!」

 

 ギャングラーの標的が、いよいよ自分たちへと向けられる。拳を握りしめ、悔恨に身を震わせながら……青年は己の魂が死神に囚われゆくのを自覚していた。

 

「あばよ、ヒーロー」

 

 

 そのとき、

 

 

 突如として飛来したカードが、ギャングラーの背中に突き刺さった。

 

「痛でぇッ!?」慌ててそれを引き抜き、「だ、誰だァ!?」

 

 

「予告する」

 

 宵闇の中、まだ年若い少年の声が高らかに響き渡る。

 

「テメェのお宝──いただき殺すッ!!」

「!!」

 

 満月を背に、ビルの屋上を舞台とする3つのシルエット。

 

「テメェらまさか!?」

 

 ギャングラーが叫んだ瞬間、爆ぜる炎が彼らの姿を照らし出す。青、黄──そして、赤。

 

「快盗戦隊──」

 

「「「──ルパンレンジャー!」」」

 

 

 青年──烈怒頼雄斗こと切島鋭児郎が意識を失う寸前に知覚した、最後の光景だった。

 

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