爆
殺
神
ダ イ ナ マ イ ト
激突する、ルパンレンジャーとケルベーロ・ガンガン。しかし四対一の構図は早々に崩れた。
ケルベーロの手勢、総勢十体ほどのポーダマンが襲いかかってきたのだ。
「チッ、出やがった」
「任せろ、連中は我々で片付ける」
「あーそうかよ、じゃあ使えや」
言うが早いか、ブルーにマジックダイヤルファイターを投げ渡すレッド。続いてエックスも、
「イエロー、これを」
「わっ!?──え、これって……」
イエローが受け取ったのは、トリガーマシンスプラッシュだった。勝己から弔の手に渡り、主に警察が使用していたのだが──
「VSビークルは、みんなで仲良く共有しないとなァ?」
「なんか釈然としないけど……わかった!」
ここは強力な武装で、一気に決着をつける!
『マジック!0・2・9!』
『スプラーッシュ!快盗ブースト!』
弓矢と、消火器。まったく系統の異なる武器だが、ポーダマンに対しては十二分に威力を発揮した。消火器から放出された煙霧が視界を奪い、魔法の弓矢が身動きのとれなくなった者たちを一気に貫く。
生き延びたポーダマンには、ルパンエックスが襲いかかっていた。彼のもつ堅牢な装甲は、ポーダマンの迎撃など通用しない。
──そうして仲間たちが邪魔な雑魚兵士を抑えていることで、ルパンレッドはケルベーロとの戦闘に集中していた。
「ヘッ、オラオラァ!!」
「ッ!」
至近距離から放たれる銃撃を持ち前のスピードでかわしつつ、レッドもまた射撃で応戦する。実弾と光弾が、わずか数ミリのところですれ違う。硝煙の匂い漂う激戦。
「おらぁッ!!」
「グオ!?」
上半身は射撃を続けながら、レッドは下半身で新たな攻撃に出た。一瞬しゃがみ込み、虚を突いたところで敵の腹に跳ね蹴りを叩き込んだのだ。
相手がよろけた隙にあえて距離をとり、銃口を頭部に向ける。射殺には至らずとも、ヘッドショットはギャングラーにも十分有効なはずだ。
しかし、
「ッ、そうはいくかァ!!」
態勢を立て直したケルベーロは、すかさず自らのコレクションの力を発動させた。一瞬にして分厚い岩壁が出現し、光弾を受け止めてしまう。
さらにそこから身を乗り出し、報復射撃を敢行するケルベーロ。彼固有の能力によって威力を増した実弾は、ついにルパンレッドのマントを灼いた。
「……ッ!」
「どうだ、銃に愛されたオレの実力はァ!?」
乱射、乱射、乱射。直撃を喰らわぬようフィールドを逃げ回りつつ、ルパンレッドは持ち前の負けん気の強さで毒づいた。
「けっ、コソコソ隠れといてなに言ってやがる。野良犬」
「のっ、野良犬ゥ!?地獄の番犬っつったろーが!!」
抗議の声を完全に黙殺し、ルパンレッドは「それに」と続けた。
「俺も結構好かれてンだよ、コイツにな」
「!」
ルパンマグナム──伝説の銃を左手で構え、銃口を突きつける。見惚れていたケルベーロは抜け目なく岩壁に身を隠すが、レッドには絶対の自信があった。あれしきのもの、ルパンマグナムならという自信が。
「──ぶち破れやァ!!」
そして彼は──引き金を引いた。
放たれた光弾は、VSチェンジャーのそれとは桁違いの速度と煌きで、ケルベーロと彼を守る岩壁に向かっていく。果たして、
「!?、グワアアアアッ!!」
──ケルベーロは、吹き飛ばされていた。
岩壁にはぽっかりと穴が開いている。そのむこうには、ルパンマグナムを構えるレッドの姿。
その背中を目撃する者が、当事者たち以外にも存在した。──ケルベーロを追跡してきた、パトレンジャーの面々である。
「快盗たち……なぜここに!?」
「ってかあの銃……新しいルパンコレクションか?」
「………」
新たな力を得、揚々と使いこなしている後ろ姿。傍には仲間たちもいる。
にもかかわらず拭いがたい孤独を感じ取ってしまうのは、自分だけだろうか。鋭児郎は思った。
いずれにせよ一進一退を続けていた彼らの戦闘は、レッドがルパンマグナムを持ち出したことで一気に形勢が傾いた。
岩壁を創り出して逃げ回るケルベーロだが、創ったそばからマグナムの一撃でそれらを粉砕されてしまう。直撃こそまだ受けていないが……反撃など望むべくもなく、着実に追い詰められていく。自覚したとてどうにもならないが。
──そして、遂に。
「ギャインッ!!?」
直撃……ではなかった。掠っただけだったが、にもかかわらず衝撃でケルベーロは吹っ飛ばされたのだ。ごろごろと地面を転がる巨体。その隙を逃さず、負けじと大柄な影が間近に迫った。
『1・0──1!』
「あ、ちょっ……やめ、やーめーろーよー!!?」
「……その声で喚くな!」
苦みばしった声音でそう言い放ち、ルパンコレクションを奪い取るルパンブルー。ポーダマンはとうに全滅させられ、再び四対一の構図に戻っていた。
「はっ、あとは俺ひとりで十分だけどなァ!」
ブルーの離脱と同時に、すかさずルパンマグナムをVSチェンジャーに装填するレッド。単体でも強力なマグナムだが、合体させることでさらなる力を引き出すことができる。VSビークルと同じだ。
『ルパンフィーバー!Un, deux, trois……』
──イタダキ、ド・ド・ド……ストライク!!
射撃手がよろめくほどの反動とともに放たれた砲弾は、周囲の草木までもを灼きながら標的に迫った。ケルベーロにもはや、逃げる場所などない。
「か……カワイコちゃーーーーーん!!??」
その猛威により胴体に風穴を開けられ、ケルベーロはなすすべなく爆破四散した。快盗たちは言わずもがな、参戦しようと身構えていた鋭児郎たちパトレンジャーにも爆風が及ぶ。
「うお……っ!?」
「なんて、威力だ……!」
恐ろしい力──程度の差はあれ、ルパンコレクションとはそういうものだ。
それらを集めた先に何があるというのだろう。彼らがその答に辿り着く日は、
*
「噂には聞いてたけど凄い威力ね……あんまりタゲられたくないかも」
ギャングラーの死にあわせていつもなら堂々と現れるゴーシュ・ル・メドゥ。しかしルパンマグナムの威力を前に、流石の彼女も尻込みしている様子だった。気づかれぬよう茂みに潜みつつ、ルパンコレクションの力を発動させる。
「私の可愛いお宝さん、ケルベーロを元気にしてあげて……こっそりね」
主がそんなでも、エネルギーは問題なく注ぎ込まれる。ひしゃげた金庫が巨大化し、肉体を再構成──
「ワオォォーーーーン!!」
ケルベーロ・ガンガンは、巨大化復活を遂げた。
「せっかく見つけた最っ高のカワイコちゃん……あきらめて堪るかよォ!!」
「チッ、しつけーイヌだな」
ホンモノの犬ならパンの切れ端くらいやってもいいが、相手はギャングラーである。くれてやれるのは、刃と弾丸のみ。
「行くぞ、グッディ」
『Oui!今度こそオイラも活躍するぜ〜!』
「ブルー、イエロー。いつものヨロシク」
「オーケー!」
「まったく、いつもながら世話の焼ける」
グッドストライカー、エックストレインファイヤーとサンダー。そのあとにエックストレイン本体と三機のダイヤルファイターを巨大化させる。
そして、
『快盗ガッタイム!勝利を奪い取ろうぜ〜!』
「快盗、エックス合体」
──完成、
『ルパンカイザー!』
「エックスエンペラー、スラッシュ」
二の巨人が、地獄の番犬と対峙する。
「ヘッ、オラオラオラァ!!」
早速とばかりに銃撃を浴びせにかかる巨大ケルベーロ。刃を振るってそれらを防ぎつつ、まず白銀の巨人が接近を試みた。
「チッ!邪ァ魔だ!!」
ただ、ケルベーロの眼中にあるのはルパンカイザー……そのコックピット内にあるモノだけだった。その場から跳躍してあっさりエックスエンペラーをあしらうと、ルパンカイザーに肉薄する。
「ッ!」
咄嗟に左腕のガトリングを構えるルパンカイザー。ケルベーロが銃口を突きつけるのとほぼ同時。
一瞬の沈黙のあと、
「「──死ねぇッ!!」」
ルパンレッドとケルベーロの声が重なり、砲弾が交錯した。
「ぐっ!?」
「ガァ!?」
どちらも等しく衝撃に襲われる。生身であるだけ、ダメージはケルベーロのほうが大きいか。
ただ、彼の執念は尋常でないものだった。弾丸を浴びながらも距離を詰め続け、遂にルパンカイザーの顔面に手をかける。
「出て、こいやァ……!」
「うわっ、アカンよこれ!?」
『ヤ〜ン、エッチ!』
「馬鹿を言っている場合か!」
左腕の丸ノコで引き剥がそうとするが、もう一方の手で押さえつけられてしまう。万事休す……ルパンカイザー、単独では。
「チッ……おい死柄木!!」
『ハイハイ、言われなくてもやりますよ』
銃には銃だとばかりに、スラッシュからガンナーへとモードチェンジするエックスエンペラー。パイロットが卑怯もらっきょうもないという思想の死柄木弔であるので、容赦なくケルベーロのがら空きの背中を撃った。
「ギャインッ!?な、何しやがるゥ!!?」
「何って、攻撃?」
このまま銃撃を続けられては参ってしまうと、ケルベーロは不本意ながら離脱するしかなかった。ただしそれは、言うまでもなくルパンカイザーにフリーハンドを与えてしまうことを意味していて。
『マジック!Get Set……Ready Go!』
すかさずルパンブルーがマジックダイヤルファイターを射出する。銃撃対決も良いが、搦手で相手の弱点を突くことができれば一気に勝負を決められる。──何よりこのギャングラーの声は、あまり聞いていたくはなかった。
「換装だ、グッドストライカー」
『Oui!色々、変わりまっす!』
胴体、頭部と左腕が分離し、マジックダイヤルファイターが合体する。
『完成!ルパンカイザーマジ〜ック!』
白菫色の美しいボディが、陽光を浴びてつるりと輝く。
「そんな、上品な姿になったところでぇ!!」
野蛮な地獄の番犬らしからぬ所感とともに、再攻撃を仕掛けようとするケルベーロ。しかし、
「オラァッ!!」
負けじと野蛮な掛け声から放たれたハンマーに顔面を殴られ、堪らず後退させられてしまうのだった。
「痛だあ゛あ゛ッ!!?ぜ、全然上品じゃねえ!?」
「たりめーだ、こちとら快盗だクソが」
「えー……」
一緒にされたくないと内心思ったイエローだったが、快盗だからこそ暴力以外の戦法も駆使しうる。もとよりマジックを選んだのは、そのためだ。
鉄球がぱかりと開き、中から純白の手が現れる。さらに──骨……骨?
「プレゼントだ」
「とってこーい!」
如何にも犬が咥えていそうな骨を、空中めがけて投げつける。当然、ケルベーロは鼻を鳴らしてそれを一瞥するだけ……かと思われたのだが。
「そんなモンに釣られワオォォン!?」
肩の犬頭が勝手に反応し、望まぬままに取りにかかってしまう。
「おおおおっ落ち着け、落ち着け、落ち着けぇ!?」制止も虚しく、「ぎゃおおおお!!?」
肩の犬が骨をキャッチした途端、爆発が起きる。その衝撃でケルベーロは哀れ、地上に墜落させられてしまった。
「し、しまった……身体が勝手にィ……!」
「けっ、骨のねー地獄の番犬サマだなァ?」揶揄しつつ、「さァて……地獄に送り返してやらあ」
シートから立ち上がり、VSチェンジャーを構えるレッド。その引き金とルパンカイザーの必殺技が、グッドストライカー本体によってリンクする。基本的には、そういう仕組みなのだが──
次の瞬間レッドの姿はコックピットからかき消え、蒼天のもとへと放り出されていた。
「!?、ンだこれ……?」
放り出されたと言っても、そこはマジックの文字通り掌の上。いったい何が起きたのか──それは、グッドストライカーが説明してくれた。
『アルセーヌのお気に入り、みんな見たいってサ!』
「……チッ、しゃあねえな」
毒づきつつも満更でないレッドは、再びルパンマグナムをVSチェンジャーに合体させた。"Un, deux, trois"……三回ダイヤルを回し、銃口を突きつける。
いかに伝説の銃といえど、敵とのサイズ差が開きすぎやしないか──そんな懸念は、一瞬にして消し飛んだ。充填されはじめたエネルギーは、銃はおろか射撃手の身体より遥かに巨大な弾丸を生成しはじめたのだ。
「え、ちょっ……あんなん撃って大丈夫!?」
「ははっ、ヘーキだろ。なんたって伝説の銃だし」
「……なんのフォローにもなっていないが」
心配する仲間たちをよそに──ルパンレッドは、躊躇なく引き金を引いた。
「死ねぇぇッ!!」
『イカサマ・ド・ストライク!!』
凄まじい熱が、一挙に放出される。ルパンレッドの身体がずりずりと後退するが、銃が抑えているのか、その質量に比べれば些細なものだった。
「な……な……カワイコちゃんすげえエエえぇぎゃああああああ!!??」
「これぞ負け犬の遠吠え!」──自虐めいた辞世の句とともに、ケルベーロは跡形もなく消滅したのだった。
「は……永遠に、アデュー」
くるりと銃を回し、餞を下す。苛烈ながら、冷徹。まさしく快盗らしい振る舞いだった。
*
戦い終わった、夜。ルパン家の代理人が、いつものようにコレクションの受け取りに訪れていた。
「"
「疑ってンのかよ?」
握りしめたルパンマグナムを庇うしぐさを見せる勝己。お気に入りの玩具を死守せんとする幼子のようだと、黒霧は喉の奥で笑った。
「まさか、それはもうきみのものです。今後の戦いにお役立てください。……それにしても、」
「あ?」
「……いえ、なんでもありません。では、私はこれで」
いつも通り、ワープゲートを通して去っていく。その背中をなんとはなしに見送っていた勝己は、直後、ルパンマグナムめがけて伸びてきた手をはたき落とした。
「痛だッ!?何するん!」
「そりゃこっちの台詞だ丸顔。なに勝手に触ろうとしてンだ」
「いいじゃんちょっとくらい、減るモンじゃないし!」
「減るんだよカス。現に俺のバイクはおもっくそ磨り減ったわ」
「ううっ……言い返せへん、言い返せへんけどぉ!」
ふたりが痴話喧嘩を始めたのを尻目に、同行していた死柄木弔は踵を返した。玄関へ歩を進めようとするのを、炎司が呼び止める。
「帰るのか?」
「まァね、明日も仕事だし」
「そうか。………、」
「貴様も、最後の罠には敗けたんだな」
「……ははっ。俺も人間だからさ、こう見えて」
そう告げて、弔もまたジュレを辞した。
「──で、何してんのおまえ。わざわざワープしたくせに」
ジュレから出て程なく、待ち構えるように立ち尽くす影を認めて、彼はため息をついた。
「死柄木弔。今回の件、内心気にされているのではと思いまして」
「気にする?俺が?」
「ええ。ルパンマグナムは……いえ、アルセーヌ様はあなたではなく、爆豪勝己を選びましたから」
はは、と、弔は空疎な笑みを零した。わざわざ喧嘩を売りに来たのでないことくらいは、それなりに長い付き合いなのでわかる。
「……まァ、悔しいよそりゃ。本音を言えばね」
「………」
「でもそれより何より……同情するね。可哀想だよ、爆豪くんは」
「可哀想、ですか」
「だってそうだろ?快盗なんて、最初から後戻りできない人間のやることだ。俺らみたいに、さ」
「……そうかも、しれませんね」
それでも、茨の道を選び取ったのは他ならぬ勝己自身だ。あちこちから垂らされる蜘蛛の糸を、縋るどころか自ら引きちぎって、彼は地獄へと歩を進めていく。
「……デク……」
何もない部屋で、ルパンマグナムを腕に抱いて泥のように眠る少年。その頬を伝うひとすじの泪を見る者は、誰もいない。
à suivre……
「強制帰宅ビームやど!」
「ここをキャンプ地とする!」
次回「ストレイドッグ」
「俺を、心配すんじゃねえ……!」