【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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ヤドガーは改心すればビームタクシーとして流行しそう

しかし29巻の表紙よ…拙作風に行くなら、手を伸ばす幼デクに背を向けて深みへ進んでいく快盗コスのかっちゃん、って感じですかね


#35 ストレイドッグ 3/3

 

「邪魔や邪魔や、邪魔やど人間どもォ!今度こそここが、オレの縄張りやど〜!」

 

 昨日と同じようなことをがなりたて、単騎で進軍するヤドガー・ゴーホム。パトレンジャーの到着まで奮戦していた地区のヒーローたちは、皆いずこかへ吹き飛ばされてしまっている。飛ばされた先がまさかそれぞれの自宅だなどとは知るよしもない人々は、恐懼し逃げまどうしかない。

 

「いい加減にしろよ、ギャングラー!」

「!」

 

 ついに、彼らが現れた。

 

「パトレン1号ッ!!」

「パトレン、2号!!」

「パトレン3号!」

「パトレン、エックス」

 

──警察戦隊、パトレンジャー。

 

「国際警察の権限においてッ、実力を行使する!!」

 

 勇ましく口上を述べ、攻撃を開始するパトレンジャー。銃撃、そしてパトメガボーやXロッドによる近接攻撃が入れ替わり立ち代わり仕掛けられ、ヤドガーを苦心させる。純粋な戦闘力においては平凡と言うほかないことを、彼は自覚していた。

 それでも、

 

「貴様らなら、何べん出てきても同じやど!」

 

 真正面めがけて強制帰宅ビームを放つ。容易く避けられることは想定していた。そこから空間を繋げ、あらぬ方向から光線を撃ち出すことこそ本懐なのだから。

 

「さあ、おうちに帰るやど〜!」

 

 ブラックホールとブラックホールを通り抜け、光線がパトレン2号の背後から迫る──!

 

「させるかぁっ!!」

 

 そこに、持ち運び式テントを背負ったパトレン1号が割り込んだ。虹色の光線が刹那、彼を包み込む。仲間たちは固唾を呑んだ。果たして、目論みどおりにいくか──

 

「──、……っし、飛ばねえ!」

 

 わずか背中を引っ張られるような感触があったのみで、パトレン1号はその場にとどまることができた。作戦、成功だ。

 

「ど、どうなってるやど!?昨日は効いたのに……まさかっ!?」

「おうよ、今はこのテントが俺の家だ!」

 

 切り札を封じられ、動揺するヤドガー。他の三人相手なら通用するのは言うまでもないのだが、彼の頭からそのようなことは吹き飛んでいた。

 

「み、認めたくないやど〜ッ!!」

 

 強制帰宅ビームが効かないなら倒すまでだと、我を忘れて鋏による攻撃を仕掛けるヤドガー。元の性能もさることながら背負ったテントのせいで動きが鈍っている状況、空間を跳躍して四方八方から繰り出される攻撃をかわすのは至難の業だ。だが、もとよりかわす必要もなかった。

 

「──う、オォオオオオッ!!」

 

 雄叫びとともに、強化服の下の地肌を硬化させていく鋭児郎。プロヒーローとしては唯一絶対の武器である彼の個性が、鋏を事もなく跳ね返していく。

 

「こっちもダメやどォ!?」

「へっ……烈怒頼雄斗舐めんな、よっ!!」

「!?」

 

 攻撃が大ぶりになりつつあったことを見抜かれ、突き出した鋏を掴まれる。慌てて引き抜こうとするもパトレン1号の怪力を前にはそれも為せない。──既に、趨勢は決しつつあった。

 

 

「うわっ、もうだいぶ終わっとる……」

 

 いつの間にか、快盗たちも姿を現していた。ルパンイエローの言葉は日本語として怪しかったが、意味は通る。

 

「やはり、我々が出ていくのは危険か」

「………」

 

 独りで戦場に割り込んでいく決心は既についているレッド。──と、戦闘中のパトレンエックスと不意に目が合った。

 

「遅ぇよ来るの。……俺ひとりでやるから、そこで見てな」

「!」

 

 突き放すようなひと言だったが、事実第三勢力の割り込みが可能な状況ではなくなりつつあった。動きを封じられたヤドガーに2号・3号が容赦なく弾丸を叩き込み、追い込んでいる。そして、

 

「死柄木、今だ!」

「……ははっ、Merci」

 

 "友人"の配慮を受け、エックスが動いた。

 

「快盗、Xチェンジ」

 

 Xチェンジャーを回転させて白銀の快盗へと姿を変え、ヤドガーに飛びかかる。その身を押さえつけたところで、金庫にバックルを当て──

 

『7・1──8!』

「ルパンコレクション、回収」

「ああ〜ッ!!?」

 

 じたばたもがくがもう遅い。空間を繋げるルパンコレクション──"Atteindre pour toucher(あなたに手が届く)"──は、解錠と同時に奪い去られてしまった。

 さらに惨いことに……ヤドガーには、態勢を立て直す時間すら与えられなかった。

 

『バイカー!パトライズ!』

「バイカー……撃退砲ッ!!」

 

 エックスが飛びのくと同時に、ホイールの形を成したエネルギー弾が発射され──ヤドガーを、穿いた。

 

「やどぉおおおおおおおッ!!?」

 

 断末魔の悲鳴……そして、爆発。ヤドガーの身体は粉々に四散し、その場にはひしゃげた金庫だけが残されたのだった。

 

「ッ、ふぅ……」

 

──倒せた。安堵から力が抜け、座り込む。硬化で耐えたとはいえ、ヤドガーの連続攻撃はなかなか響いた。尤も、それは心地よい疲労でもあったのだが。

 

 

 しかし、通常サイズで倒したとて"次"があって。

 

「私の可愛いお宝さん……ヤドガーを元気にしてあげて」

 

 例によってゴーシュ・ル・メドゥが現れ、止める間もなくヤドガーを巨大化させてしまう。街を劈くような雄叫びが、辺り一面に響き渡った。

 

「ッ、行くぜ……!」

「待つんだ切島くん、ほんとうに大丈夫か!?」

「大丈夫、だって……これくらい」

 

 実際、猛毒に冒された状態でマシンを操ったこともあるのだ。──ただ、その頃とは状況も違っていて。

 

「ハァ……あんまりムチャすんなよな」

「!、死柄木……」

「俺が片付けてくるから、まァそこで見てな」

 

 見てなと言いつつ、鋭児郎を除くふたりには協力を仰ぐ必要があった。エックストレイン"サンダー"と"ファイヤー"をVSチェンジャーから射出してもらうという形で。

 そしてエックス自身は、本体である"シルバー"と"ゴールド"の連結した車両を発進させる。計四両──揃えば、それが巨人を生み出す資格たりえる。

 

「快盗、エックスガッタイム」

 

 前者が両腕を形成し、ひと回り大きい後者が頭部から足までの直線を成す。白銀を基調としたその姿、

 

「完成──エックスエンペラー"スラッシュ"」

 

 

 皇帝の名を背負った機人は、今にも暴れ出そうとしている巨大ヤドガーの眼前に降り立った。

 

「さァ、来いよ」

 

 右腕で手招きするようなしぐさを見せると、案の定ヤドガーは憤激した。

 

「おのれ〜〜ッ、貴様もおうちに帰してやるやど!!」

 

 そう叫んで、強制帰宅ビームを放つ。ロボットにも効き目があるかは喰らってみなければわからないが……ルパンコレクションの力と組み合わせなければ、極めて単調な攻撃である。エックスエンペラースラッシュのスピードなら、回避などわけもなかった。

 

「ふっ」

 

 乱発される光線を巧みに避けつつ、少しずつ接近していく。ヤドガーがその事実に気づいたときにはもう、鋒の届く距離まで迫られていた。

 

「はっ!」

「やどっ!?」

 

 刃にその身を切り裂かれ、悶えるヤドガー。しかし頑丈なギャングラーである、小手調べ程度の攻撃を一発二発命中させたでだけでは致命傷は与えられない。

 

「そんな攻撃ィ!!」

 

 叫びは、単なる強がりではなかった。繰り出される斬撃のダメージを、身に纏った殻を利用することで軽減しはじめたのだ。

 

「やられたらやり返すやどっ!!」

 

 さらに、鋏による反撃。左腕で受け止めるが、コックピットにはそれなりの振動が伝わってくる。

 

「ッ、……知恵がついてきたか。──それなら、」

 

 早々に接近戦をやめて後退──同時に、エックスエンペラー"ガンナー"へと転換(コンバート)する。

 

「なぬ!?」

「喰らっとけ」

 

 白銀から黄金主体へと変わった敵機に驚くヤドガー。しかし放たれた砲弾への対応は早かった。

 

「もう敗けないやど!やどどどどど〜っ!!」

 

 なんとヤドガー、身体を高速回転させて銃弾を殻に命中させ、四方八方に弾き飛ばしたのだ。街のあちこちで爆発が起き、ビルに風穴が開く。

 

「おまえ……俺に始末書書かせる気かよ」

 

 色々な意味で面倒なやつ──弔は歯噛みしたが、今さらパトレンジャーに助力を乞うなどということはプライドが許さない。無論、最終的に勝利を得るのは自分だという確信あってのことだが。

 

──と、思わぬ方向からヤドガーめがけて砲弾が飛んできた。

 

「やどぉッ!?」

 

 不意打ちには対応しきれなかったのか、もんどりうって倒れるヤドガー。直後、エックスエンペラーの隣にトリコロールの巨人──ルパンカイザーが降り立った。

 

『助太刀するゼ、トムラ〜!』

「──だとよ、良かったな?」

 

 露骨に見下した調子のルパンレッド。実際、彼らにも任せておけと見得を切ってしまっている。まあ、それはルパンコレクションの回収までの話だと自分に言い訳をして彼らの協力を受けることにした。──ただし、彼らの知らないことを知っているという優位性は保ったうえで。

 

「せっかくだ、ルパンレンジャー。ルパンマグナムのもうひとつの力、使ってみろよ」

「マグナムの?」

「Oui.──面白いことになると思うぜ?」

 

 弔の言動はいちいち胡散臭いが、今まで必ず益をもたらしている。彼らの間にも既に、その程度の信頼関係はあった。

 

「試してみてはどうだ、レッド?」

「チッ……しょうがねえな」

 

 ルパンマグナムを構え、そのダイヤルをぐるりと一回転させる。響く、『ダイヤライズ!』の声。

 

「──いけ、ルパンマグナム」

 

 そして──引き金を引いた。撃ち出されたのは弾丸ではなく、マグナムそのもの。

 刹那、驚くべきことが起こった。その銃身が他のVSビークル同様に巨大化し、さらに、変形を遂げたのだ。

 

「うわっ、ルパンマグナムがロボットになった!?」

 

 ルパンカイザーやエックスエンペラーよりはひと回り小柄な、真紅の巨人。彼はその五体を蒼天のもとに晒すや、人間のスプリンターも真っ青なフォームで走り始めた。

 

「やどっ!?……ロボが走るなやど〜〜!!」

 

 頷けなくもないことを叫びながら、強制帰宅ビームを放つヤドガー。しかし、エックスエンペラースラッシュすら遥かに凌ぐスピードのマグナム相手に命中をとれるはずもない。容易く避けきると同時に一気呵成に距離を詰め、

 

「──あだだだだだだだッ!!?」

 

 殴る、蹴る、殴る!その小柄な体躯ゆえ、彼はまるでマシンガンのように打撃を叩き込むことができる。殻による防御など間に合うはずもなく、ヤドガーは後方へ後方へ押しやられていく。

 マシンガンといえば、一見徒手空拳のように見えるルパンマグナムは武器を持っていた。──そもそもが銃なのだ、持っていないはずがない。

 

 銃弾が、ヤドガーの全身を食い破った。

 

 

「マジかよ……なんて火力」

「快盗……あれほどの力を」

 

 地上で見守るほかないパトレンジャーの面々も、ルパンマグナムの秘めたる力には舌を巻かざるをえなかった。同時に、快盗が自分たち以上に力をつけていくことへの危機感も。

 

(快盗……)

 

 先日も感じたこの胸のざわめきは、いったいなんなのだろう。──鋭児郎だけは、ただその奇妙な感情に翻弄されていた。

 

 

「さァて……殺す」

 

 ルパンレッドの物騒な言葉は、この戦闘がいよいよ終局に向かわんとしていることを示していた。

 

 ヤドガーをグロッキー状態にまで追い込んだルパンマグナムが転進──空中でぐるりと一回転し、銃の姿に戻る。

 

「グッディ!」

『Oui!いくゼいくゼいくゼ〜!』

 

『グッドストライカー・ぶっぱなしちまえマグナム〜!!』

 

 銃口に溜め込まれたエネルギーが、ルパンカイザーの手により一気呵成に放出される。それは膨大な熱量でもって、ヤドガーを四方八方から包み込んでいく。

 

「熱ぢぢぢぢぢぢぢぢ──オレはもうおうちへ帰れないやどぉおおおおおおおッ!!??」

 

 それが、ヤドガー・ゴーホムの断末魔となった。

 

「永遠に、アデュー」

『気分はサイコ〜!』

 

 立ち上る劫火は、勝利の証。並び立つ三大巨人の姿は、勇者たりえるものだった。

 

 

 *

 

 

 

 戦い終われば、つかの間の日常が帰ってくる。

 快盗たちの営むジュレもまた、通常営業に戻っていた。

 

「炎司さん、そっち拭いといて〜」

「……うむ」

 

 店長とウェイトレスが後片付けに勤しんでいるのをよそに、爆豪勝己は"招かれざる客"が置いていったメモをじっと睨めつけていた。

 

「……けっ」

 

 ややあって、それをぐしゃりと握りつぶす。そうしてゴミ箱に放り込んで、忘れてしまおうと思っていた──それなのに、

 

「あ、いらっしゃいませー!」

「!」

 

 仲間たちとともに再訪したこの男は、それすら許してはくれなかった。

 

「あ……バクゴー。仲直り、できたみたいだな」

「………」

 

「ゴ心配オカケシテ申シワケアリマセンデシタ──お巡りサン?」

「え……」

 

 慇懃な……しかしなんの感情もこもらない口調でそう突き放すと、勝己は奥へ引っ込んでいってしまった。

 取り残される鋭児郎──ただ、彼には声をかけてくれる仲間の存在があって。

 

「ははっ、嫌われチャッタなァ。切島くん?」

「……まあ、暫く距離置いてみるのも良いんじゃない?押してダメなら……ってね」

 

 たしかに、その通りかもしれない。勝己の頑なな心を解きほぐしうるには、自分のようなまっすぐな熱意はかえって害悪──そうとさえ、思えてしまう。

 それでも、

 

「いや……めげずに見守るよ。お節介にならないくらいにな」

 

 友人として、彼の力になりたい。エゴだとわかってはいても、それが鋭児郎を突き動かす想いなのだった。

 

 

 à suivre……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(Épilogue)

 

 

 塚内直正は薄暗い会議室にいた。彼を取り囲むように設置された複数の端末からは、人間のシルエットらしきものが浮かび上がっている。

 

 その中心で、彼は言葉を失っていた。

 

「……本気、ですか?」

 

 ようやく、それだけを絞り出す。

 

『無論だよ、塚内くん』

「しかし……」

『きみたちの功績を否定しているわけじゃない。ただ、このままで良いとも思っていないんだ』

 

『一刻も早く、世界に平和と安寧を取り戻したい……そうだろう?』

「………」

 

 "彼"の言葉に、塚内は頷かざるをえない。それに何より、隔絶した役職の差が、この場の力関係を一方的なものとしていた。

 

『なるべく迷惑はかけないようにする。……ただ、協力はお願いするよ』

「……了解、しました」

 

 敬礼をかわし──再び、暗闇が降りる。

 

「……一体、どういうつもりなんだ」

 

 疑問に答える者は、誰もいなかった。

 

 





「ハイジャックされた!?」
「ギャングラーと交渉はしない!」
「借りるしかない、快盗の力を」

次回「天上事変」


「俺だってっ、きみを信頼したいんだ!!」


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