昭和戦隊見てると15秒くらいやりあって即必殺技→チュドーンなパターンありますよね
ギャングラー、ナメーロ・バッチョを追い詰め、いよいよ彼のもつルパンコレクションを手に入れようとしていた快盗戦隊ルパンレンジャー。
しかしその裏で密かに姿を現したゴーシュ・ル・メドゥの手により、死んだはずのガラット・ナーゴが巨大な姿となって復活を遂げた──
「……ん?んんん?んんんんんん?」
呆気にとられる小人たちを尻目に、頭上にクエスチョンマークを乱舞させる──巨大ガラット。一番何事か理解していないのは、彼自身のようだった。
当然だろう。彼の記憶といえば、パトレンU号のイチゲキストライクを浴び、炎に包まれるところで終わっているのだ。
そんな中、最も早く状況を把握したのは、元々ガラットと面識のあるナメーロであった。これは乾坤一擲の一手として使えると、彼は理解したのだ。
「おぉぉぉぉーい、ガラットぉ~!!」
「ん!?その声は……誰かと思えばナメーロじゃねえか!しかも快盗たちまで……ってか、なんでお前らンな小さくなってんだ?」
「お前がでかくなってるんだ!」
「マジで!?」
周囲のビル群も自分より小さくなっているのを認めて、ガラットは「マジだ!」とポンと手を打った。
「そんなことよりガラット、早く
「!」
そのことばにはっとする快盗たち。早くルパンコレクションを奪わなければとナメーロに突撃しようとするが……遅かった。
「快盗ども……!俺のルパンコレクションを返せぇえええィ!!」
ナメーロの援護というより、ガラット自身がルパンレンジャーに対して口にしたような恨みをもっていた。その烈しい感情を露にするように……四本の腕を一斉に、眼下めがけて叩きつける。
「ッ!」
咄嗟に跳躍する快盗たち。拳に押し潰されることは避けられたが、弾みで発生した突風により瓦礫ともども吹き飛ばされることとなった。
一方で、思わぬ援軍の出現に弛みきっていたナメーロはというと、
「おまっ……俺をぶっ飛ばしてどうすんだぁぁぁぁ~~!!?」
まったく回避行動をとらなかったせいで、至近距離に拳の風圧を受けてしまう。結果、天高く消し去られる羽目になったのだった──
「なんだ、アレ……!?」
アトリエ・バッチョを脱出してきたパトレンジャーもまた、巨大化するガラットを目前にしていた。
「昨日ウチらが倒したギャングラー……だよな……?」
「何故、あんな巨大に……ぐぅ……ッ」
うめく2号。ふくらはぎを負傷したために、彼は1号の肩を借りてどうにかここまで歩いてきた。
「飯田さん……大丈夫っすか?」
「ああ……。それより……ッ、奴をなんとかしなければ……!」
「……まあ、確かにね」
「──使ってみるか、"トリガーマシン"」
『位置について……用意!』VSチェンジャーの電子音声が唸りをあげる。『走れ!走れ!走れ!──出、
VSチェンジャーの引き金を正面めがけて引く──と、射出された三機のトリガーマシンがたちまち巨大化していく。
「よし……ッ。すまないがふたりとも、支えてもらえないだろうか?」
「別にいいけど……休んでるって選択肢はないわけ?」
「ないわけではないが……できることはさせてくれ」
「……これ以上は無茶しねーでくださいよっ!」
2号の両脇を支え、呼吸を合わせて跳躍──それぞれのマシンのコックピットに乗り込む。
『轟・音・爆・走!』
『百・発・百・中!』
『乱・擊・乱・打!』
走り出す、トリガーマシン。ビルとビルの隙間を通り抜け、ガラットへと躍りかかっていく──
「!、なんだァ、テメェらは!?」
『国際警察だッ!!』
『昨日はどーも、まさか忘れてないだろうね?』
彼らの声を聞いて、ガラットはさらに憤激した。己の命を奪ったパトレンジャーは快盗以上に許しがたい存在なのだ。
警察マシンと巨大ギャングラーの衝突がはじまる。──となれば当然、地上にいる等身大の快盗たちは埒外の存在となって。
「……どうする?」
「奴はもうコレクションを持っていない。割り込んでも旨味はないな」
己の意見を述べつつ、ブルーは隣に立つ赤の少年を見遣った。ただ快盗としての仕事を果たすだけなら撤退が当然だが、ギャングラーを倒すことに拘る彼がどう動くか。
「チッ、」
舌打ちするところまでは予想どおりだったが……炎司の予想に反して、彼は戦場に背を向けた。
「……ふむ」
「帰るなら帰るって言ってほしいんやけどなぁ……まあいいけど」
──いずれにせよ、快盗たちは揃ってこの場を去ることを選んだのだった。
そして、平和を守ることこそが目的であるパトレンジャーは、持ちうる力をすべて使って死闘を演じていた。
「うぉおおおおおッ!!」
パイロットの雄叫びとともに、突撃していくトリガーマシン1号。当然ガラットの腕が迎撃のために伸びようとするが、彼はひとりではない。
「させるかっ!」
トリガーマシン2号が傍らから迫る。その車体全部が大きく展開し、キャノン砲が姿を現す。ガラットの腕の付け根めがけて砲撃を開始するまでに時間は数秒とかからない。
「グワァッ!?」
よろけるガラット。そこにすかさずトリガーマシン3号が接近し、
「喰らいなッ!!」
2号同様に車体前部が変形し、巨大な警棒が飛び出す。 目にも止まらぬ速さでのピストン乱打に、激しい火花が散る。
遂にたまらず、ガラットは大きく吹き飛ばされた。宙に浮いた巨体が大きな空き地めがけて墜落。大量の粉塵が舞い上がる。
「よし……っ!」
快盗たちのように自由に飛び回ることはできないものの、流石はルパンコレクション。巨大ギャングラー相手にも互角で戦えるだけの性能はあるらしかった。
ただし、決定的な問題がひとつだけあって。
『だが、奴を倒せるだけの決定打がないぞ……』
そこがトリガーマシンの限界だった。巨大化したギャングラーを一撃で粉砕できるような武装があるわけではない。尤もギャングラー相手でなければ、街ひとつ制圧するくらい容易いのだが。
「だったらッ、とにかく攻めて攻めまくるしかないっスよ!!」
『わかりやすいね……そういうの、嫌いじゃないけど!』
なんであれ、彼らに停滞という選択肢はなかった。前進を再開するトリガーマシン。
一方のガラットは、息も絶え絶えになりながらようやく立ち上がったところだった。
「クソぉッ!こんなオモチャもどきなんぞに……!」
吐き捨てるガラットだが、劣勢を覆す展望はない。巨大化したといえど、ルパンコレクションがないだけ戦闘力は大きく低下している。いまの彼は、既に看破されている四本腕のほかに戦うすべをもたないのだ。
──己が甦らせた男の醜態を、ゴーシュ・ル・メドゥはため息混じりに観察していた。
「せっかくチャンスをあげたっていうのに……
ナメーロを生還させるという、ボス──ドグラニオの望みはかなえたのだ。このまま放っておいてもよかったが、どうせならもう少し己の知的好奇心を満たしたかった。
「仕方ないわね……」
毒づきつつ、再びルパンコレクションを入れ替える。金庫にしまい直した、双眼鏡型のコレクション──その能力を使えば、生物非生物と問わず見たものを分析することができる。
トリガーマシンのウィークポイントを探るつもりで目を光らせた──彼女の頭部に目にあたる意匠はないが──ゴーシュだったが、程なくして意外なものを彼女は見た。
トリガーマシン2号──そのコックピットに座る緑の戦士は、脚からひどく出血している。
「あらあら……。そんな爆弾を抱えて戦場に出てくるなんてどういう頭をしてるのかしら。脳味噌をじっくりと見せてもらいたいわ」
そこまでして自分たちギャングラーに立ち向かう理由を、ゴーシュは読めなかった。ちなみに「脳味噌を見てみたい」とは、なんの比喩でもない。彼女はギャングラーの中で科学者を生業としている──繰り返された残虐な実験は数知れない。
ただひとまずは、ガラットのほうが優先だった。
「──ガラット!」
「!」
突然の呼び声に、腰の引けぎみだったガラットは慌てて視線を下ろした。ビルの屋上に立つ異形の女の姿を認め、「げぇっ」と蛙のつぶれたような声を発する。
「ご、ゴーシュ……!てめぇなんでここに……」
「ご挨拶ね、私が甦らせてあげたっていうのに」
「何ィ!?」
「それより、二度も敗けたくないでしょう。緑を集中攻撃しなさい、そうすれば……ふふっ」
一方的に伝えて、ゴーシュは踵を返した。ガラットが訊き返すより早く、その姿が忽然と消失する。
「チッ、あの女に借りつくっちまうとはよぉ……。──こうなりゃヤケだ、やってやるぜぇぇッ!!」
再び四本腕を広げる。彼とゴーシュの間のやりとりを知らないパトレンジャーの面々は、怯まず攻撃を仕掛けようとしていたのだが、
「オラァッ!!」
「!?」
ゴーシュの助言どおり、彼は四本すべてをトリガーマシン2号へと差し向けた。自分ひとりが集中攻撃を受けるとは予想していなかった天哉は、咄嗟に操縦桿を引いて回避行動をとる。
しかしあまりに突然のことで、彼は目の前の攻撃をかわすこと以外に注意を払うことができなかった。
「!?、ぐッ、あ、あぁぁぁ……!?」
どうにかやり過ごしてきたふくらはぎの傷が激痛を発し、天哉はたまらずうめいた。無線から、仲間たちの声が響く。
『飯田ッ!!』
『大丈夫っスか!?』
「ッ、く……う……っ」
「大丈夫だ」と答えたかったが、ことばにならない。それどころか変身を保てなくなり、その姿は一瞬にして元の飯田天哉に戻ってしまう。
動きを止めるトリガーマシン2号。目論見が成就したことに気をよくしたガラットは、さらに激しい攻撃を加えようとする。
「……ッ!」
シートからずり落ちそうになるなかで、天哉は思わず顔を背けた。操縦桿を握るだけの余力はもう、残されていない──
──そのときだった。
「飯田さんッ、──させるかぁあああッ!!」
割り込んでくる、トリガーマシン1号。三機の中でも最も頑丈なその車体が、2号を庇いに割って入った。
ただ頑丈とはいっても、決して無敵というわけではない。
『うわぁああああッ!?』
「烈怒頼雄斗っ!」
吹っ飛ばされる真っ赤な車体。四本腕による殴打をもろに浴びれば、こうなるのは当然の帰結であった。
「ハハハハハッ、こんな簡単に形勢逆転できるなんてなァ!!」
このまま警察戦隊を全滅させてやる──勢いに乗ったガラットだったが、慢心ゆえに肝心のまだ無事な"三機目"を視界から外してしまっていた。
「いい加減に──」
「──しろぉっ!!」
雄々しい叫びとは不釣り合いな桃色の車体。その存在にガラットが気づいたときにはもう、巨大な警棒が目前に迫っていて。
「なんグハァッ!!?」
幾度ものピストンがガラットのボディを打つ。その衝撃に耐えきれなかった身体はたちまち浮き上がり、ビル群を超えて吹っ飛ばされていく。
そして、
「ああああ……、あ、青いぃぃぃ~!!?」
紺碧の地表……否、海原。ガラットはその巨体すべてで、そこに飛び込んだ。たちまち膨大な水飛沫があがり、港湾部に降りそそぐ。
それきりガラットが水面から顔を出すことはなかった。取り逃がしてしまった形にはなったが、それはパトレンジャーにとっても僥倖といえる結果で。
『飯田さんッ、大丈夫っスか!?』
『応答しろ、飯田!──飯田っ!!』
鋭児郎と響香──ふたりの切羽詰まった声がこだまする、トリガーマシン2号のコックピット。その内部にあって、天哉は床に倒れ込むようにして気を失っていた。脚から流れる血は、とどまることを知らない。
『──贋者が』
朦朧とした意識のなかに浮かんできたのは、悪夢のような過去の追憶だった。