【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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本誌

おつらい


#37 もしも空が落ちてきたら 3/3

「さあさあ、次はあなた方も心配性にしてさしあげますよ。ルパンレッドさん、エックスさん!」

 

 距離があることをいいことに、"心配性"ビームを放ちに放ちまくるジュゴーン・マナッティ。レッドとエックスは持ち前の身軽さで素早く回避行動を続けていくが、接近はかなわない。建物の柱に身を隠しつつ、レッドが舌打ちをこぼした。

 

「チッ、めんどくせーな」

「まァ、たしかに」

 

 だが面倒なだけで、大した敵ではない。心配性ビームにしても、当たらなければどうということはないのだ。

 

「この距離じゃチェンジャーのタマは届かない。マジックかマグナムの使用をオススメするよ」

「はっ、ご進言ドーモ」

 

 エックスの言葉に沿い、レッドはVSチェンジャーにマジックダイヤルファイターを装填、撃ち出した。右手にマジックアローが装着される。

 前者を選択したのかと思われたが、彼はそんな枠に収まる男ではない──左手にも、ルパンマグナムを構えたのだ。

 

「は……二刀流?いや銃と弓だけど」

「そーいう、ことっ!!」

 

 魔法の矢と伝説の銃の弾丸を、同時に放つ。それらはまるで競走するかのように追いつき追い越されながら、霧に隠れているつもりの標的に喰らいつく。慌てて攻撃を中止、かわそうとしたジュゴーンだったが凄まじい弾速を前に間に合うはずもない。

 

「グワァッ!?」

 

 四肢をばたつかせながら吹っ飛ばされるジュゴーン。それを良いことに、ルパンレッドは一気に突撃を開始した。当然、両の手による射撃は緩めない。矢が、弾丸が、壁に叩きつけられたジュゴーンに降り注ぐ。

 

「た、建物っ!建物こわれるっ」

「てめェが地獄で賠償しろやァ!!」

 

 それに、崩壊するほど撃ち込むまでもない。既にルパンレッドの手は、ジュゴーンの金庫に伸びていて。

 

『1・0──5!』

「ルパンコレクション、いただいたァ!!」

「し、しまったァ!?」

 

 しまるもしまらないもない。レッドは力いっぱいジュゴーンを蹴り飛ばした。

 

「ふん、アザラシ野郎が」

「いや絶対アザラシではないと思うけど」突っ込みつつ、「あァ、やっぱ"La fumée sur l’eau(水の中の煙)"か」

 

 青い錨のようなコレクションを見下ろし、エックスがつぶやく。レッドからしてみれば、コレクションの名前も見た目もどうでもいいことだったが。重要なのは、それがルパンコレクションであるということと、これで容赦なくギャングラーを倒せるという事実のみ。

 

「さァ、ぶっ殺すぞ」

「ははっ、Oui(りょーかい)

 

 ルパンマグナムのダイヤルを回すレッド。Xロッドソードを構えるエックス。──これで、決まりだ。

 

『ルパンフィーバー!Un, deux, trois……──イタダキ、ド・ド・ド……ストライク!!』

「スペリオル、エックスっ!」

『イタダキ、エックスストライク!』

 

 巨大なエネルギー弾と、斬撃波が同時に放たれる。ジュゴーンはせめて両手のカッターで相殺しようとするが、そんな浅慮が通用するはずもなく。

 

「じゅ、じゅ、ジュゴーーーーーン!!??」

 

 結局、彼は耐えきることもできず──ひしゃげ焦げた金庫を遺して、粉々に砕け散ったのだった。

 

 その影響は、お茶子たちにもすぐあらわれた。

 

「はっ!不安だった気持ちがなくなった……!」

「……清々しい気分だ」

 

 こんなにも晴れやかな気分になったのは、いつ以来だろう。不安の根が解消されたわけではない、だからこれは刹那の感情かもしれない。

 それでも今は、この想いを噛み締めていたかった。

 

 

 *

 

 

 

「──私の可愛いお宝さん、ジュゴーンを元気にしてあげて……」

 

 いつもながら間髪入れずに現れたゴーシュ・ル・メドゥの手により、死したジュゴーン・マナッティは巨大化復活を遂げる──

 

「ジュ、ゴーン!二度と後れは取りませんよぉ〜!」

「けっ、消化試合が」

「油断禁物だぜ?──じゃあレッドくん、これヨロシク」

「チッ」

 

 舌打ちしつつも、レッドは文句を言いはしなかった。黙ってエックストレインのうちふたつを受け取り、順にVSチェンジャーに装填する。

 

『サンダー!──疾・風・迅・雷!』

『ファイヤー!──ファ・ファ・ファ・ファイヤー!』

 

 巨大化していくエックストレイン"サンダー"と"ファイヤー"。そのときにはもう、ルパンエックスは"シルバー"と"ゴールド"を疾走させていた。

 

「エックス合体」

『快盗、エックスガッタイム!』

 

 四両が連結……ではなく。文字通りX字型に交わり人型へと変わっていくさまを眺めつつ、ルパンレッドはマグナムを構えた。

 

『ダイヤライズ!』

「ふ──ッ!」

 

 撃ち出される、ルパンマグナムそのもの。巨大化したマグナムもやはり、巨人の姿へと変わる。

 

──並び立つエックスエンペラー"スラッシュ"、そしてルパンマグナム。

 

「さァてと……一気にいこうぜ、ルパンマグナム?」

 

 パイロットをもたないながら、人語を解するルパンマグナム。彼はエックスのオーダー通り、持ち前のスピードと瞬発力で接近戦を挑んでいく。速さには劣るエックスエンペラーが、そのあとに続く。拳、そして刃に攻められながら、巨大ジュゴーンはWカリバーで懸命に応戦している。

 

「負け、ませんよっ!」

「……意外と粘るな、こいつ」

 

 こんな頭でっかちの──物理的にも比喩的な意味でも──ギャングラーに、いつまでもかかずらっているわけにはいかない。逸る弔は、一気に勝負に出た。

 

「エックスエンペラー……スラッシュストライクっ!」

 

 ルパンマグナムの背後から飛び出すようにして、必殺の斬撃を繰り出すエックスエンペラー。いちおうは不意打ち、なのだが。

 

「そうはいきません!ふっ、ハッ!」

 

 ジュゴーンは意外やすばしこい身のこなしで、スラッシュストライクをことごとくかわしきってしまったのだ。

 

「何っ?」

「ジュッ、ゴーーーン!!」

 

 動揺した相手に、すかさず両の手の刃で反攻を仕掛ける。身構えるエックスエンペラーを、咄嗟にルパンマグナムが庇った。

 

「ルパンマグナム……!──Merci、助かったぜ」

 

 相手はロボットだが、グッドストライカーというルパンコレクションの友人ももつ弔である。庇保への恩赦は忘れない。

 

 それは置いておくとして、ジュゴーン・マナッティ──思っていたより粘る相手だ。別に独りで戦うことに拘りはない、そろそろ援軍が欲しいところだが。

 と、その願いが通じたのか否か。

 

『完成!ルパンカイザーマジック!』

「!」

 

 ビルとビルの谷間から姿を現す、麗しき機人。名は、その骨格をなすグッドストライカーが先ほど述べた通りである。

 

「やっと来たか、遅ぇよ」

「はっ!てめェこそ、マグナム付きで手こずってんじゃねーよ」

 

 ふたりのやり合いは危うく一触即発に繋がるところである──まあ、当然仲間たちが止めるのだが。

 

「やっている場合か。……レッド、貴様の考えにまかせる。俺とイエローはそれに従う」

「ええ私も!?……まあええけどねっ」

「……フン、たりめーだ」毒づきつつ、「"マジック"──見せてやる」

 

 言葉少ななルパンレッドの考えを、グッドストライカーがきっちり汲み取ってくれた。

 

『Oui、いくぜ〜!』

 

 左腕を構えるルパンカイザー"マジック"。鉄球が展開し──薄紫色の手が、露になる。

 その手がパチンと指を鳴らし、

 

「……!?」

 

 刹那、ジュゴーンは驚愕のあまり言葉を失っていた。

 

 見渡す限りの荒野へと変わった風景。──その彼方から、五体の巨人がこちらに接近してくる。

 

「あ、あれはァ……!?」

『ルパンカイザー、オールスターズさぁ〜!』

 

 様々な形態のルパンカイザーが、横一直線に並んでいる。その肉体を構成するダイヤルファイターの効果で、目に痛いほど色鮮やかな光景となっている。

 

「おいセイウチ野郎、ここでてめェにクイズだ。正解できたら賞品くれてやる」

「賞品!?」

 

 喰いついてきた。双方いったん武力行使を停止──クイズを開始する。

 

「こん中に、今まで一度もなったことのねー姿がある。──どれでしょ〜か?」

「ムッ、これはなかなかマニアックなクイズ……!」

 

 まあ、その点については一同、同じ気持ちである。

 普通のギャングラーなら見当もつかないような設問だが、言うまでもなくジュゴーンは勉強家である。これまでどのような戦いが行われ、どのようにして同輩たちが敗れていったか──すべて頭に入れている。

 

「そうですねえ、左からルパンカイザー、ルパンカイザーマジック、ルパンカイザーサイクロンナイト、ルパンカイザートルーパー……」

 

 順々に見ていくジュゴーン。暇なので弔もエックスエンペラーの中で一緒に考えてみたのだが、彼は来日以前の戦いについて詳しくないので正解はわからない。強いて言うなら、"トルーパー"と呼ばれたトリガーマシンバイカーとシザー&ブレードを両腕とした形態だろうか?バイカーは知る限りパトレンジャーが持ち続けているはずだから。

 

「ああっ、わかりました!」

 

 ジュゴーンが自信に満ちた声をあげたのは、程なくのことだった。

 

「いちばん右、今まで見たことのない形態ですねぇ!」

「ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー!」

 

 一瞬の沈黙のあと、

 

「はっ、──セ〜カイ♪」

「やった!」

「は?引っ掛けかよ……」

 

 珍しく本気で悔しがる弔。──いちばん右は、ルパンカイザーマジックの左腕をシザー&ブレードに換装した形態だ。実際に使用されていれば弔が知らないはずもないのだが、先入観からすっかり騙されてしまった。

 

「それで、賞品とは!?」

 

 わくわくしているジュゴーン。──無論、賞品は用意している。

 

「おー。──こいつを、くれてやらァ!!」

 

 ひとつに収束するルパンカイザー。マジックの鉄球の一撃が、ジュゴーンを思いきり打った。

 

「ぐほぉッ!?」

『じゃ、改めて!──完成、ルパンカイザー"マジカルナイト"〜!』

 

 魔法騎士の名を冠したルパンカイザーが、不意打ちにうめくジュゴーンに襲いかかる。鉄球が、鋏がその身を打ち、突く。クイズの賞品としてはあまりに残虐非道だが、出題者はそういう、敵に対する情け心など微塵もない少年である。

 

「お、らァッ!!」

 

 ついに大ぶりな一撃が放たれ、ジュゴーンは悲鳴とともに吹っ飛ばされた。いつの間にやら、風景ももとの市街地に戻っている。

 

「うっわぁ、残虐プレー」

「ハッハァ!ほんとに残虐なンはこっからなんだよ、──グッディ!!」

『いくぜいくぜいくぜ〜!』

 

 マジカルナイトが光の鞭を放ち、グロッキー状態のジュゴーンを締め上げる。それは鎖となって、彼を完全に拘束してしまった。

 

「えっえっ、な、な、何をなさるおつもりで!?」

「……切断マジ〜ック」

「!!??」

 

『グッドストライカー・マボロシだぜカッティング!!』

 

 一気呵成に距離を詰め──シザーを、一閃!

 

「ギャアアアアアッ!!?」

 

 見事に両断されるジュゴーンのボディ。上半身と下半身が分かれたジュゴーンは、最期に己の率直な所感を口にした。

 

「ぜ、全然マボロシじゃありませんよねぇ〜〜!!?」

 

 確かに──皆の同意に送られて、ジュゴーン・マナッティは哀れ奇術の犠牲者と成り果てたのだった。

 

「永遠に、アデュー」

『気分はサイコー!』

「……正解しなくてよかったァ」

 

 機人の姿から分離し、ばらばらに帰っていくグッドストライカーとダイヤルファイター、そしてエックストレイン。ただ三機のダイヤルファイターは、仲良く並んで消えていくのだった。

 

 

 *

 

 

 

 戦い、終わって。

 

「どこ行くん、爆豪くん?」

「いいから、ついてこいや」

 

 配慮も何もなくずんずん歩き続ける勝己。そのあとを追う炎司とお茶子は、思わず顔を見合わせた。毎日のように朝早く出かけていって何をしているのか、教えてやると言っていたが──

 

 やがて昨日、勝己を見失ったあたりの橋に差し掛かる。そのまま橋を渡りきる──かと思いきや、河川敷へと下りていく。彼の視線の先には、もう何十年も使用されていないであろう朽ちた小屋に向けられていて。

 

「ほら、これ」

「え、──!?」

 

──果たしてそこには、ダンボールに入った白毛の仔犬の姿があった。和犬らしいつぶらな黒目が、無邪気にこちらを見上げている。

 

「かかかっ……かわええ〜!!」

 

 目の色を変えて仔犬を抱き上げるお茶子。やはり彼女も女の子であった。

 それはともかく、

 

「貴様……まさかこの仔犬の世話をしていたのか?」

「……悪ィかよ」

「全然悪くないよぉ意外やけど!あっ、ひゃひゃひゃ舐めんといてくすぐったいよぉ」

 

 お茶子の言葉はどこまでも普通の少女らしいものだったが、炎司はやはり冷静だった。

 

「しかし、ここで餌をやっていても一時しのぎにしかならんだろう。外へ出ていって車に撥ねられたり、カラスにつつかれるのがおちだ」

「チッ……わーっとるわ、そんくらい」

 

「どっかのバカなガキが、それをやっちまったからな」

「えっ……?」

 

 

──土砂降りの日だった。

 

 小学校に上がったばかりの頃の下校途中、少年は、雨の中で震えている仔犬と出会った。

 

 尻尾をちぎれんばかりに振ってくりくりとした瞳で見上げてくる小さな身体が、ひどく愛おしく感じた。抱き上げて「うち来るか?」と訊いた瞬間、はっとした。少年の家は、父の体質上動物を飼えないのだ。

 

 仔犬を地面に置いて、彼は走り出した。しかし懐いてしまった仔犬は、無我夢中で勝己のあとを追ってくる。

 

 そして、道路へ飛び出した。

 

 

──車に轢かれて、仔犬は死んだ。

 

 

「……そいつがいっときの気分で懐かせたせいで、その仔犬は死んじまった。そいつの目の前でな」

「それは……辛かっただろうな、その子供も」

 

 炎司は初めて、他人事として語る目の前の少年に慰めの気持ちをもった。同年代の少年の平均よりは鍛えられているけれど、己とは比べるべくもない小さな身体。それをこの胸にかき抱きたいという欲求が首をもたげる。我が子にすら、一度も抱いたことのない想いを。

 実際にそれを行動に移すことは、許されない。だから炎司はせめて、その頭頂に手を伸ばした。彼の性情のごとく尖った淡い金髪を、不器用な手つきでわしわしと撫でる。

 

「おっ、や……めろやっ」

「……今は、こうさせてくれ」

「……ッ、」

 

 炎司の声色から何かを察したのだろう。勝己はそれ以上抵抗せず、黙って大きな手を受け入れた。彼の隣で、仔犬を抱いたお茶子が涙ぐみながら微笑んでいるのが見えた。

 

 

「──あのコンビニのおばちゃん、この子可愛がってくれるといいね」

 

 仔犬を抱いたまま道を歩きつつ、お茶子がつぶやく。彼女がジュゴーンのせいで"鬼嫁"と誤解したコンビニのおばちゃん。勝己が立ち話をしていたのは、仔犬のことだったのだ。

 

「ま、大丈夫だろ。もうケージも玩具も買い揃えたってンだから」

「おぉ〜。よかったでちゅね〜シロちゃん」

「勝手に名前決めんなや」

「仮名よ、仮名!」

「………」

 

 取り留めもない会話を続けながら歩いていると、

 

「あれェ、ジュレのお三方じゃん」

「!」

 

 前方からやって来たのは他でもない、パトレンジャーの面々だった。声をかけてきたのは、つい先ほどまでともに戦っていた死柄木弔だったが。

 

「……これは皆さんお揃いで。どちらに?」

 

 炎司の問いに、弔は悪戯っぽい笑みを浮かべて応じた。

 

「俺の活躍でギャングラーを倒したんでね。お祝いに、ジュレのディナーを奢ってもらおうかと」

「こっちが現着する前に片付けてンだもんなぁ……」

「行き過ぎたスタンドプレーは困るぞ、死柄木くん!」

 

 ふんすと鼻息荒く、天哉。わざとらしく肩をすぼめた弔は逃げるふりをして、そのままお茶子の抱く仔犬のもとへ駆け寄った。

 

「ワ〜オ、admirable!飼うの!?」

「いやウチでは飼えへんよ……。爆豪くんの見つけてきた飼い主さんのとこに連れてくの」

「なんだ残念」落胆しつつ、「しっかし爆豪くん、良いトコあんじゃん。惚れ直しちゃった」

「きっめェこと言うな」

 

 げ、と舌を出しつつ。すぐに表情を戻した勝己は、そのまま赤髪の青年のもとへ歩み寄っていった。

 

「おい」

「へっ、あ、ハイ!?」

 

 まさか相手からお声掛けがあるとは思わなかったのだろう、鋭児郎の返答は素っ頓狂なもので。

 

「スマホ、出せ」

「へ?」

「早く」

「お……おう」

 

 指示通りにスマートフォンを渡す──と、勝己はストアアプリからソーシャルゲームをダウンロードした。鋭児郎にとって、それは見覚えのあるもので。

 

「これ、この前おめェがやってた……?」

「キョーミあったんだろ。それとも、余計なお世話デシタ?」

「そっ、そんなことねえよ!……サンキューな、バクゴー」

 

 勝己がまた、歩み寄ってくれた。どのような心変わりがあったのかは知る由もない、ただ、その事実だけが鋭児郎にとって重要なことで。

 

「はは……じゃ、俺らもついていきますか。どうせ最終目的地は一緒だし」

 

 弔の言葉で、パトレンジャーの面々は勝己たちとともに歩き出した。白い仔犬は大勢の若者たちに慈しまれ、ちぎれんばかりに尻尾を振っている。この出会いは一期一会かもしれないけれど、彼のこれからが賑々しく幸福なものになるであろうことを、予感させる道程となったのだった。

 

 

 à suivre……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(Épilogue)

 

 

 

 国際警察長官の秘書を務める仮面の青年は、ただ今外出先から帰庁したところだった。すれ違う職員らの奇異の視線をものともせず、一直線にある場所へ向かう。

 

 

「──おかえり。"彼ら"は、どうだった?」

 

 待ち受けていた主人の問いに──青年は、仮面の奥で喉を鳴らして嗤う。そこに宿る感情は悪意、侮蔑、憎悪……あらゆる負の感情を、嘲笑というひとつの行為に詰め込んだかのようで。

 

「……そうか。楽しめそうで何よりだよ」

「例のモノは?」

「使うかい?」

「当然だ」

 

 八木は口角を吊り上げ、そのまま書棚に向かった。数冊の書籍を無造作に見える手つきで抜き取ると、棚がズズズと音をたてて上へせり上がっていく。

 

 果たしてそこには、アタッシェケースが仕舞い込まれていた。ケースを取り出し、自身のスマートフォンにパスワードを打ち込む八木。一見するとなんの関連もない動作。しかし実際には連動していて──ケースが、開いた。

 

 そこに入っていたのは、漆黒の銃にパトカーの模型──そして唯一、真紅に染まった車とも戦闘機ともつかないオブジェクト。それらすべて……既存のパトレンジャーの装備に、よく似ていた。

 

「ありがとうございます、長官」

 

 

 芝居じみた口調で謝意を述べる部下に、八木は苦笑した。

 

 




「ここからは、オレのステージだ」

次回「沈黙の黒」

「さあ、オレと踊ろうぜ……!」
「てめェは、いったい何なんだ……!?」
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