【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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#39 斑く戦場 3/3

()()()()()、二対一の死闘は続いていた。

 

「赫灼熱拳ッ、ジェットバーン!!」

 

 劫火を纏った拳を放つルパンブルー。"個性"によるもの──当然ながら、エンデヴァーと名乗っていた頃に編み出した技。

 

「ッ!」

 

 蒼炎で対抗する0号だが、その火力は比べものにならない。押し負ける……というところで、彼は咄嗟に炎のぶつかり合いから離脱した。

 

「はははっ、やるなァ。流石はエンデヴァー」

「…………」

 

 それでもなお、余裕綽々の態度を崩さない。

 そんな彼に対し、意を決して炎司は訊いた。

 

「……貴様、俺の正体は知っているようだが。どこでそのことを知った?」

「あー?……ははっ」

 

 嘲笑。そして、

 

「……おまえのことはわかっちゃうんだよ、俺はさ」

「……何?」

 

 いったいどういう意味か。──いや、今そんなことはいい。その感情のベクトルが、快盗ではなく自分にのみ向けられているというなら。

 

「なら、レッドとイエローのことは知らないんだな」

「はっ……何言うかと思えば。キョーミもないね、馬鹿馬鹿しい」

「なっなんで!?いや私らの正体知らんのやったらそれでええけど……あなた警察でしょ!?知りたいと思わんの?」

「警察?……あァ、一応そういうことになってンな」

 

 ふたりの間に緊張が走った。この青年、本当に何者なのか。国際警察に所属していたとしても、その心根は──

 

「俺はさ、エンデヴァー……おまえが苦しみぬいてくれれば、それで良いんだよ」

「何……!?」

 

 それ以上は、言葉でなく銃弾に委ねられた。漆黒のVSチェンジャー、その銃口がふたりを捉える。

 

「……ッ、」

 

 イエローを背に庇いつつ、身構えるブルー。永遠とも思われるほどの長い沈黙の果てに、引き金が引かれようとして──

 

「ッ!」

 

 刹那、0号の手首に熱と衝撃が走った。当然、照準は大きくぶれ、弾丸はあらぬ方向へ飛んでいく。

 

「……ゲームオーバーだ、荼毘」

「……死柄木か」

 

 死柄木弔──ルパンエックス。彼の持つXチェンジャーの弾丸が命中したのだと、察するのに時間はかからなかった。

 

「チッ、良いとこ乱入しやがって。……まァいい、今回は余力も残しときたいしな」

 

 人数差などものともしない荼毘である、その言葉は強がりでもなんでもない、紛うことなき本音だった。

 

「じゃあな、快盗」

「ッ、待て!貴様は……!」

 

 踵を返しかけた荼毘は、他でもない炎司の制止に立ち止まった。

 

「……そんなに知りたいかよ、俺が誰なのか」

「…………」

 

 当然だ。ヒーロー時代、様々な理由から自分に対して一方的な敵愾心をもつヴィランはそれなりにいたが、この青年はそれとも性質を異にしているように思われた。

 炎司の分析を嘲笑うかのように──彼は、言葉を紡いだ。

 

「"三度目の正直"……おまえにはお似合いの言葉だと思わないか?」

「何……?」

「あァ、おまえの場合は四度か。……まァでも、俺は優しいから。次、生き延びられたら──教えてやるよ」

 

 意味深な言葉と蒼炎を残して、荼毘は再び姿を消した──

 

「はぁ〜……と、とりあえず助かったぁ。──死柄木さんのおかげやね!」

 

 歩み寄ってくるエックスに向かって、ビッと親指を立ててみせるイエロー。彼女の言動はそのまま荒れ果てた戦場跡の華になると、男たちは感じていた。

 

「いや……まァ、遅くなって悪かった」

 

 対するエックス──弔は、珍しく謝罪の言葉を述べた。それだけでも、驚愕に値することなのだが。

 

「気にするな。……俺のほうこそ、貴様を疑ってすまなかった」

「うわっ、ブルーまで……。なんか、槍でも降ってくるんちゃう?」

「茶化すな……。──それより今は、レッドのもとに急ぐぞ」

 

 そう、戦いそのものはまだ終わっていない。孤軍奮闘する仲間のもとに、一刻も早く駆けつけなければ。

 その意志を確認するまでもなく共有し、三人は走り出した。

 

 

 *

 

 

 

「名付けて、スーパールパンレッドだァ!!」

 

 快盗スーツの上から、さらに白銀の鎧とマントを纏ったルパンレッド。その気高く美しい姿に対して、"スーパー"とはあまりに安直な響きをもっていて。

 ただ、対峙するザミーゴ・デルマにとって、名称などどうでも良かった。──ビクトリーストライカーの隠された能力。果たして、どれほどのものか。

 

「イカしてるじゃん……──ははははっ!!」

 

 早速とばかりに、氷銃の引き金を引く。かわすか、完全に防ぎきるかしない限り、レッドに勝ち目はない──

 

 だが、レッドにはすべてが"視"えていた。ザミーゴの動きが……それも現在ではなく、寸分先の未来の姿で。

 ゆえに、氷の弾丸はわずかな所作ひとつで命中をとることができないのだった。

 

「何……?」

 

 胡乱な思いを抱いたザミーゴは、なおも氷弾を放ち続ける。対するスーパールパンレッドは、それらをことごとく回避してしまう。辺りを氷柱が覆い、冷気が場を支配していく。

 

(野郎の動きが読める……未来予知か?)

 

 自らの個性を封じて久しい勝己にとって、そのブーストは複雑ながら貴重なものだった。意識を集中し、脳内に流れ込んでくる情報を受け取る。

 

「ハハッ……それならさァ!」

 

 ザミーゴが唐突に横へ跳び、空中で身を躍らせながら氷弾を放ってくる。

 しかし意表を突くことを志向したであろう動作も、レッドには文字通りお見通しだった。あらぬ方向から迫る氷の弾丸を、VSチェンジャーの光弾で相殺する。その度に氷の柱が空間に広がり、一瞬にして砕け散っていく。

 

「はっ……──おらァ!!」

「ッ!」

 

 そこから一気に距離を詰め、格闘戦を挑む。ビクトリーストライカーの力は予知能力を与えるばかりではない、身体能力をも大きく向上させる。それゆえ黄金の金庫をふたつ持つザミーゴを相手取ってもなお、互角に立ち回ることができた。

 

「どうしたよ……氷ヤロォ!!?」

「グッ!?」

 

 鬼気迫る勢いで放たれる拳、拳、拳。明確な殺意の塊が身体を打ち、ザミーゴは反撃もままならないまま大きく後方へ吹っ飛ばされた。

 

「ッ、チィ……!」

 

 彼が人間との戦闘において舌打ちを漏らしたのは、史上初めてのことだった。苦しまぎれに手近な木箱を投げつけるが、その行動も予測されていた。左手のVSチェンジャーで木箱を粉砕しに右手のルパンマグナムでザミーゴを乱れ撃つ。

 

「グアァァッ!?」

 

 ついにザミーゴがうめき声をあげた。炸裂する弾丸に耐えきれず、がくりと膝をつく。そのまま俯せに倒れかかり……地面に片手をついて、かろうじてそれを堪えた。

 

 

──ようやくたどり着いた快盗たちもまた、その光景を目の当たりにしていた。

 

「ウソ、レッドがザミーゴに勝っとる……!?」

「あの鎧は、もしや……」

「あァ、──ビクトリーストライカーの力だ」

 

 「ってかさァ」と、弔が続ける。

 

あのギャングラー(ザミーゴ)のこと、知ってたのかよ?」

「あっ!えっと、実は……その……」

「……その話はあとだ。今は、レッドに加勢を──」

 

 残念ながら、炎司の言葉はせっかちな勝己にとって遅すぎたらしい。

 

「おいてめェら、見てねえで手伝えや!!」

「!」

 

 今やろうと思っていたのに!宿題をするよう言いつけられた子供のような思いを──主にイエローが──抱きながらも、彼らはレッドのもとに駆け寄った。

 両肩のダイヤルを、ブルーとイエローが躊躇なく回す。リミッターが解除され、鎧を通してルパンマグナムに流れ込む。あふれ出したエネルギーはまるで劫火のようなオーラとなり、彼らを包み込んだ。

 

「ッ!」

 

 咄嗟に立ち上がり、逃走を図るザミーゴ。しかしその動きは読めている。ゆえにレッドが必殺の弾丸を放ったのは、彼の進行方向──

 

「──全部返せやッ、ザミーゴォ!!」

 

 すべてを搾り出すような叫び。しかしザミーゴは伊達にステイタス・ダブルゴールドなのではなかった。前方めがけて、氷銃を構える。銃口が捉える先にいたのは、

 

「ええっ、オレぇ!?」

 

 すっかり傍観者に成り下がっていたイセロブ・スターフライド。彼は氷弾を浴びて氷漬けにされたうえ、ザミーゴの目の前にまで転送されてしまった。

 あとのことは──言うまでもないだろう。

 

 

「ッ、やるじゃん……」

「──!」

 

 紅蓮の中から、息も絶え絶えのザミーゴが姿を現す。──イセロブを盾にして、己の身を守ったのだ。

 

「ルパンレッド……オレをここまで追い込むとはね。でも、動きを読むにも限界があるみたいだな」

「ッ、てめェ……」

「きょうは完敗だ。でも次はこうはいかないぜ……な〜んてな。アディオース」

 

 踵を返すザミーゴ。当然、逃してなるものかと銃弾を叩き込む快盗たちだが、すべては氷の壁によって阻まれ……虚しくも、届かない。

 

 そして、ザミーゴは姿を消したのだった。

 

「ッ、クソが……!」

「…………」

 

 佇むほかない快盗たち。──戦いは終わってしまった。あと、あと一歩というところで!その苦衷は、弔にとって想像するに余りあるものだった。彼はまだ、何も知らされていないのだから。

 

 そして"彼女"もまた、いつものように姿を現して。

 

「私の可愛いお宝さん、イセロブを元気にしてあげて……」

 

 イセロブが、巨大化復活を遂げる──

 

「ウガァアアアアアッ!!ザミーゴも快盗どもも許さねえ──ッ!!」

「ッ!」

 

 とばっちりにも程がある……が、いずれにせよ放っておくわけにはいかない。

 こちらも巨大機甲で対抗しようとしたルパンレンジャーだったが……そのとき、エックスの懐にいたグッドストライカーが、唐突に声をあげた。

 

『ああーーッ!ま、まただぁ!?』

「!、どうした、グッドストライカー?」

『また……あいつの、"ジャック"の匂いだ!し、しかも近づいてくるぅ!?』

「何?」

 

 彼の言葉の意味は、程なくわかった。──彼によく似た赤い翼が再び戦場に飛来し、イセロブに攻撃を仕掛けたのだ。

 

『出たぁああああーーッ!ジャック〜〜!!』

「なっ、なんなんアレ!?ジャックって……」

「……ジャックポットストライカー」弔が正式名称を口にする。「グッドストライカーの……兄弟だ」

「……兄弟?」

 

 あくまでマシンとして考えるなら、同型機と言うべきだろうか。

 

「あれは行方がわからなくなってたんだ。それを、あいつが……」

 

──荼毘が、使っている?

 

 

 同じ頃、現場へ向かっていたパトレンジャーの前に、"彼"が立ちはだかっていた。

 

「よう、パトレンジャー」

「!、あんたは……」

 

 目の前に立つ、漆黒のパトレンジャー。彼が長官の側近であることを知ってはいても、鋭児郎たちは身構えざるをえない。彼が何を考えていて、どのように動くか……まったく想像が及ばないのだから。

 

「……なんの、用だ?」

 

 警戒を露にした声音で問う。と、0号は手を差し出すような手振りをしてみせた。

 

「トリガーマシンバイカーとクレーン&ドリル、巨大化させて俺に貸せ」

「な……!?」

 

 思いもよらぬ命令に、皆、一瞬言葉を失う。

 

「……なんの権限があって、ウチらに命令してるわけ?」

 

 3号──響香が、怒りを抑えて問いただす。しかし相手の立場を鑑みれば、それはあまりに無為な抵抗で。

 

「俺は長官からすべてを任されてここにいる。──お前ら、長官の指示に背くのか?」

「……ッ、」

「良いからよこせよ、時間がない」

 

 実際、既にギャングラーは巨大化している。それと戦う、グッドストライカーの兄弟機。──理屈のうえで、拒否する理由はなくて。

 

『──切島くん。今は、彼の言う通りに』

 

 塚内管理官の指示もあり、隊員たちは折れざるをえなかった。1号がバイカーを2号に、クレーン&ドリルを3号に渡す。そしてふたりが、それらを巨大化させた。

 

「はっ……ありがとよ。ま、悪いようにはしねぇから」

「…………」

 

 返答はない。仮面の下で彼らがいかなる表情を浮かべているのか……想像はついても慮るつもりは毛頭ない。荼毘とは、そういう男だった。

 ただ、

 

「土産代わりに見せてやるよ。──"サイレンストライカー"の、真の力を」

 

 漆黒のVSチェンジャーに、昨日入手したサイレンストライカーを装填──トリガーを引く。

 

『位置について……用意!──出、動ーン!』

 

『勇・猛・果・敢!』──台詞通りの勇ましい電子音声とともに、戦車を模した形状のビークルが巨大化していく。

 "それ"は0号をコックピットに戴き、他のトリガーマシン二機とともに戦場に姿を現した。

 

「ア゛ァ!?今度はなんだー!?」

 

 ジャックポットストライカーの縦横無尽な攻撃に翻弄されていた巨大イセロブは、敵増援の出現に苛立ちの声をあげた。この時点で、彼は既に処刑台への階段を上りはじめているのだとも知らずに。

 

「よう、エビ野郎。……俺がボイルしてやるよ」

「な、何をぅ!?オレはエビじゃねえって言って──」

 

 抗議の言葉は、最後まで形にならなかった。先陣を切るサイレンストライカーが、内蔵した火砲を一斉掃射したのだ。

 

「ウガガガガガッ!!?」のたうちまわるイセロブ。「こ、これじゃボイルじゃなくてベイクじゃーーん!?」

「……あァ、悪いな。焼くしか能が無ェんだわ」

 

 いずれにせよ、もう時間はない。──0号のスーツは身体に大きな負担がかかる。長く変身してはいられない。

 ゆえに、一気に決着をつけるつもりだった。

 

「ジャックポットストライカー、──合体だ」

 

 彼がそうつぶやくのと、いきりたつイセロブがエビフライミサイルを放つのが同時。次の瞬間、ジャックポットストライカーもサイレンストライカーも他のビークルも、すべてが爆炎に呑まれて──

 

「……!」

 

 快盗も、警察も、ギャングラーも……見守る者はすべて、息を呑んでいた。

 サイレンストライカーを組み込んだのだろう頭部と胴体に、二機のトリガーマシンで構成された両腕。

 

──そして胸から下は、目が痛くなるほどの鮮烈な赤に染まっていた。

 

「完成、──サイレンパトレックス」

 

 "レックス"──やはり王の名を冠した鋼鉄の巨人は、その堅牢な肉体でもって前進を開始した。武威を振りかざしたその姿はすべてギャングラーを相手にも本能的な恐怖を与えるものらしい。イセロブは慌てた様子でエビフライミサイルを放ってくる。

 

 しかしそれは、無駄な抵抗というほかなかった。回避どころか直撃を受けてもなお、その爆炎に王の姿は欠片も傷つかない。まったく揺らがぬ堂々たる足取りで、目標に迫っていく。

 

「く……来るな、来るなあっ!?」

 

 思わず叫ぶイセロブ。それに対する、王の返答は。

 

「大丈夫、時間もないからな。──()()()()、楽に殺してやるよ」

 

 言うが早いか、サイレンパトレックスの右腕がす、と持ち上がる。身構えようとした刹那……イセロブの身体は、クレーンに捉えられていた。

 

「え、──ぎゃあああああっ!!?」

 

 そのまま、天上めがけて投げ飛ばされる。重力に逆らいながら空中でもがくその姿を、レックスはじろりと睨みつけた。

 

「──終わりだ、」

 

 

 刹那……何が起きたのか、明確に視認できた者はいなかった。

 ただ、イセロブの身体を黄金の剣のようなモノが貫いたことだけはかろうじて理解できた。それも、あまりに一瞬の出来事だったのだけれど。

 

「────、」

 

 何が起きたのかわからず、断末魔すらもあげられないまま……イセロブは壮絶な爆死を遂げた。焼け焦げた破片が降り注ぎ、大地に還っていく──異界の住人に果たしてその表現が当てはまるかは、議論の余地があるとして。

 

 その中心に佇むサイレンパトレックスは、戦の余韻も残さぬまま元のビークルへと分離した。バイカーとクレーン&ドリルのみを残し、いずこかへ飛び去っていく──荼毘を名乗る、青年を乗せて。

 

「…………」

 

 快盗も警察も、その間に立つエックスも、謎ばかりを残して去る青年を、見送ることしかできないのだった。

 

 

 *

 

 

 

 ジュレに戻った快盗たちは、弔にすべてを話した。ザミーゴ・デルマのこと──その存在が、切り札であることも。

 

「……なるほどなァ、それで俺に黙ってたわけだ」

「うぅ……ごめんね、死柄木さん」

 

 心底申し訳なさそうに謝罪を述べるお茶子。男ふたりはそこまでではないが、心なしか気まずげな表情なのは確かだ。

 彼女らを安心させるように、弔は笑顔をつくった。

 

「いいよ、気持ちはわかる。このことは黒霧には黙っておくよ」

「……いいンかよ?」

「秘密をチクるほど俺はあいつと仲良くないし。……それに、早く取り戻せるんならそのほうがいいだろ?」

「うむ……感謝する、死柄木」

「ウワァ、中年にお礼言われた〜」茶化しつつ、「荼毘のことも調べとくよ。まァ今さらきみらのことバラしはしないと思うけど……色々きな臭いしな」

 

 「じゃ、」と片手を挙げて去っていく。その背中を見送りつつ、お茶子が揚々と声を発した。

 

「氷漬けにされたイセロブが生きてたってことは、デクくんとショートくんも無事だよ、きっと!ゴール見えてきたんやし、こっからは猛ダッシュでがんばろー!」

「ふ……、途中で転ぶなよ」

 

 和やかに言葉をかわす仲間たち。大浪の合間の凪のようなそれを聞きながら、勝己は今しがた去った男のことを思っていた。

 

死柄木(あいつ)、ザミーゴのことを知らなかった。なら、あいつの取り戻したい人間は……誰にやられたんだ?)

 

 

 *

 

 

 

 その頃、デストラ・マッジョはやけ酒を煽っていた。彼の目の前に置かれたボトルの数々はいずれも簡単には手に入らない高級品ばかりだが、その味を楽しむゆとりは今の彼にはなかった。

 

「あらぁ、まだ呑んでるの?」現れるゴーシュ。「コレクション盗られたのが、よっぽど悔しいのね」

「……ドグラニオ様が私に命じてくださった任だぞ。このままでは、合わせる顔がない」

「このままじゃ、ね。ふふふ……」

「……何がおかしい?」

 

 もとよりゴーシュの言動を不愉快に思うデストラだが、今日に限っては違和感を覚えていた。何か、意味深な──

 

「快盗に盗られたのはどうしようもないけど……"もう一個"なら、そこにあるわよ?」

「──!」

 

 弾かれたように顔を上げるデストラ。──同時に姿を現す、第三の影。その存在は、彼に驚愕をもたらすことになる。

 

「貴様……!なぜここに……」

「…………」

 

 その問いに答はなく。──ただサイレンストライカーを手に、荼毘は嗤っていた。

 

 

 à suivre……

 

 





「教えてやるよ、ぼくが誰なのか」

次回「誰そ彼れ」

「きみを逮捕する、死柄木弔……いやーー」


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