【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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#40 誰そ彼れ 3/3

 ルパンレンジャーとデストラ・マッジョの死闘が続いていた。

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

 性別を無視した雄叫びをあげながら、中距離から銃撃を仕掛けるルパンイエロー。しかし光弾はすべて、デストラの手刀ひと振りで消散させられてしまう。

 

「ヌウゥゥンッ!!」

 

 一方、怒れるデストラは相手を雑魚と判断しながらも手を緩めはしなかった。ハンマーを振り上げ……振り下ろす。その長大さは、ある程度距離をとるイエローの脳天をめがけるほどで。

 

「うそ……!?」

 

 まずい、やられる──!心臓が跳ねた刹那、白銀の影が彼女を庇った。

 

「……ッ、」

「あ……死柄木さん!?」

「相手はダブルゴールドだっつったろ……油断、すんな」

「ご、ごめん……」

 

 防御力に秀でたルパンエックスだが、その衝撃は全身に響いていた。すぐには身動きできない。デストラは当然、追撃を仕掛けてくる。

 

「オラァァッ!!」

 

 そこにレッドが飛び込み、横からドロップキックを放った。吹き飛ばすことはかなわないものの、態勢を崩すことには成功する。そうして仲間たちを救け出したのだった。

 

「チッ、コイツ相手にフツーに戦ってても無理だ。──俺がやる」

 

 言うが早いか、ビクトリーストライカーを取り出すレッド。VSチェンジャーに装填し、

 

『ミラクルマスカレイズ!スーパー、快盗チェンジ!!』

 

 電子音声とともに、白銀の鎧がレッドのスーツに装着される。──名付けて、スーパールパンレッド。ザミーゴ・デルマにさえ膝を折らせた、この姿なら。

 

(コイツの動きを読めば……!)

 

 ビクトリーストライカーのもつ未来予知を発動させ、デストラに焦点を絞る。

 

──突っ込んでくる、真っ直ぐ。

 

 果たして次の瞬間、デストラは予知した通りに突撃してきた。姿勢を低くしたレッドは、彼が間合いに入ってきた瞬間を狙って跳躍した。そのまま背後に回り込み、

 

「死ねぇ!!」

 

 ルパンマグナムの、引き金を引く。強力な弾丸が至近距離から背中を貫き、デストラが初めてうめき声をあげた。

 

「っし……!」

 

 初めて攻撃が通用した──それは少年にとって、小さくとも勝利のように思えてしまう。

 

 しかし相手は、これまでには未曾有の強敵だった。

 

「出し抜いたつもりか……!」

「!?」

 

 猛然と振り向いたデストラが、その勢いのままにハンマーを振りかぶる。咄嗟に防御姿勢をとるレッドだが……その威力は、凄まじかった。

 

「がァ──」

 

 弾き飛ばされ、壁に激突する。内臓が飛び出しそうなほどの衝撃が、全身を打った。

 

「ぐ……っ」

 

 生身、あるいは快盗スーツ一枚では無事で済まなかった──痛みをこらえて態勢を保ちながら、ルパンレッドは戦慄した。むろん、仲間たちも。

 

「そんな、スーパーでもダメなん……!?」

「力押しの相手に、未来予知じゃ分が悪いんだよ」

 

 サイレンストライカーなら、あるいは──弔の脳裏にそんな考えがよぎったが、現実に今ここには存在しえないものである。無いものねだりをしてもどうにもならない。

 やむをえずスーパールパンレッドを中心とした布陣で正面切って戦っていたらば、あらぬ方向からデストラめがけて銃弾が飛んできた。

 

「──デストラぁッ、今すぐ異世界に繋げろぉぉ!!」

 

 そう叫んだのは、切島鋭児郎。──彼らパトレンジャーは快盗たちを一顧だにせず、デストラに躍りかかっている。

 

「なんだてめェら、戻って──」

「──向こうにエンデヴァーが取り残されてしまったんだ!早く救出しなければ!!」

「な……!?」

 

 いったい何があったのか──それを問うことさえ憚られるほど、彼らは鬼気迫っていた。無論それは、快盗たちとて共有するところである。六人がかりでデストラを追い詰めるよりほかに、今できることはない。

 

 それとて、容易いことではないのだが。

 

 

 *

 

 

 

 異世界に無理矢理留め置かれた轟炎司は、自身を付け狙う謎の青年と対峙していた。

 

「……荼毘……!」

 

 その通り名を言葉にすると、青年は焼け爛れた口角を上げて笑った。柔らかな微笑。親愛すら窺わせるそれが、かえって不気味に感じられてしまう。

 

「貴様……いったいなんなんだ……!?なぜ俺を付け狙う?そもそもなぜギャングラーの世界にいる!?」

「………」

「貴様も、ギャングラーなのか……!?」

 

 人間に、擬態している。炎司の中で最も納得がいく答はそれだった。無論、それでも前者の疑問は解決しないが。

 と、微笑を浮かべていた荼毘が、くつくつと声を洩らしはじめた。それは抑えきれないものとなり、ついには哄笑へと変わる。

 

「ははははは、ははははははっ!!……やっぱあんたはそうでなくっちゃなァ。腕っぷしばっか強くて、ヒトの気持ちってモンをまったく理解しちゃいない」

「……ッ、」

「まァいいさ、この前言ったろ。"三度目"を生き延びられたら、教えてやるって」

 

 言うが早いか、漆黒のVSチェンジャーを構える荼毘。彼が人間であれギャングラーであれ……銃弾と拳で語るほかに、選択肢はないらしい。

 歯噛みする炎司もまた、VSチェンジャーにブルーダイヤルファイターを装填することで応じた。

 

「……快盗チェンジ!」

「警察、チェンジ」

 

 炎司を光が、荼毘を闇が覆い──それぞれを、対極の姿へと変身させる。

 

「ルパンブルー……!」

「パトレン、0号──ッ!」

 

 名乗りを挙げつつ、先を制したのは荼毘──0号だった。VSチェンジャーから漆黒の弾丸が撃ち出され、炎司──ブルーに襲いかかる。

 

「ッ!」

 

 横に転がるようにして、弾丸をかわすブルー。噴き出す焔によってその勢いをさらに促して、彼は荼毘に吶喊した。

 

「なるほどなァ、撃ち合いじゃ勝てないから接近戦か。適応力は衰えねえのな、歳の割に」

「歳の割には、余計だッ!!」

 

 拳と拳のぶつかり合いなら、性能差など。確かにそれは誤りではなかった。スーツのスピードと肉体の頑健さ、ブルーは両方を最大限に活かして敵に喰らいついている。もとより彼はトップヒーローたる能力の持ち主だ、個性一辺倒で戦っていたわけではない。

 荼毘という青年は、間違いなくそれをよく知っている。知っていながら、この戦いを有利に運ぼうという策を弄す気はないように見えた。

 

──あるいは、勝ち負けさえも。

 

 

 *

 

 

 

 ステイタス・ダブルゴールドと人間たちの死闘は、パトレンジャーの参戦によってかろうじて互角に進んでいた。

 

「うぉおおおおおおッ!!」

 

 雄叫びをあげ、突撃するパトレンジャー。デストラを屈服させて異世界の扉を開かせなければならない、身を捨ててでも。ゆえに彼らは手傷を恐れず攻撃を仕掛け続けていた。

 

「ちょこざいな……!」

「黙れ!早くお前らの世界に繋げろよ!!」

 

 いつになく乱暴な口調で叫ぶ3号。何より彼女が最も焦っていた。守ると誓ったのだ──既に一般人として生きている、轟炎司を。

 快盗たちにだってその想いは嫌というほど伝わったし、何より炎司は同志だった。こんなところで、失うわけにはいかない。

 

 同時に──快盗としての使命も、忘れるわけにはいかないのだ。

 

「イエロー、エックスっ!」

「!」

 

 レッドがサイクロン、マジックそれぞれをふたりに投げ渡す。その意味を瞬時に悟った彼女らは、警察がデストラを抑えている隙を突いて飛びかかった。黄金の金庫を開けるには、キーがふたつ必要だ。ふたつを同時に、押し当てる──

 

『7・5・2・6・1──1!』

『3・2・1・2・2──2!』

「ルパンコレクション、いただ──えっ!?」

「……!」

 

 ふたりはぎょっとした。──金庫の中は空だったのだ、ふたつとも。

 

「ウソ……!?」

「ッ、道理でコレクションの力、使わないわけだ……!」

 

 にもかかわらず、これほどの強さ。ドグラニオの右腕の称号は、伊達ではないのだ。

 

「おのれェっ!!」

 

 デストラの振り下ろすハンマーを飛び退いてかわしつつ、エックスはグッドストライカーの名を呼んだ。そして、

 

「パトレンジャー、U号だ!」

「!」

 

 倒してしまうわけにはいかない。しかし弱らせなければ、この強敵に要求が通るはずもない。

 エックスの意図は、パトレンジャーの面々にも瞬時に伝わった。『イキナリ〜!?』と困惑するグッドストライカーを1号がVSチェンジャーに装填し、

 

『1号・2号・3号!一致、団結!』

 

 三人が文字通り、"融合(U号)"した。

 

「融合だと……小癪なぁッ!!」

 

 憤激するデストラ。しかし彼のボディを、快盗の面々が三人がかりで抑え込んだ。

 

「どけぇ!!」

「ウルセェ!!」

「す、すごい力……!」

「パトレンジャー、急げ……っ!」

 

 拘束は長く保たない。──もとよりU号は、一撃必殺の形態だ。

 

「イチゲキ──」

「「──ストライクっ!!」」

 

 デストラが三人を振りほどくのと、弾丸が風を薙ぐのが同時だった。

 

「────!!」

 

 エネルギーの塊がデストラの巨体を貫き、呑み込んでいく。一瞬の静寂のあとで光が破裂し、轟音とともに爆炎が辺りを赤く染めた。

 

「っし……!」

 

 命中をとった。倒せはせずとも、致命的なダメージを与えることはできたはずだ。

 そう、思っていたのに。

 

「ヌゥオォォォォッ!!」

「!?」

 

 劫火を振り払うようにして現れたデストラの身体には、傷ひとつついていなかった。

 

「ッ、バケモンが……」

 

 あのレッドの口からこんな言葉が飛び出すのだから、一同の衝撃は甚大なものだった。とはいえデストラも、消耗は自覚していて。

 

「私はドグラニオ様に期待されている……!貴様らごときと戯れている暇などないのだッ、──来い!!」

 

 虚空めがけた叫びが巨大な怪物を呼び出したのは、刹那の出来事だった。──"ゴーラム"と呼ばれる、デストラの手勢。それが二体も召喚され、辺り一面を蹂躪する。

 

「ッ!」

「あっ、デストラが!?」

 

 崩落する建造物。その瓦礫の群れのむこうに、デストラの姿が消えていく。真っ先に飛び出したのはルパンレッド、そしてパトレン3号だった。追いすがるふたりを、仲間たちは咄嗟に止めた。

 

「放、せやっ!!」

「今ならまだ……!」

「ムリだよレッド!!」

「危険だ、耳郎くんっ!」

 

 瓦礫だけならともかく、その原因であるゴーラムは今にもこちらを踏み潰さん勢いだ。──ならば、

 

「〜〜ッ、グッディ来い!!」

「!?、どうするのレッド、ブルーもおらんのに!」

「死柄木、てめェが代われ!──ルパンマグナムと、"ビクトリーストライカー(コイツ)"を使う!!」

「!、……わかった」

 

 彼らのやりとりに──蚊帳の外に置かれてしまったがゆえに、切島鋭児郎は違和感を抱いた。

 

(あいつら、何をあんな焦ってんだ……?)

 

 エンデヴァーが異世界に取り残されたことは、快盗たちになんの関係もないはずなのに。

 それを実際に問いただすことは状況が許さない。迫りくるゴーラムに向け、レッドはビクトリーストライカーを射出せんとしていた。

 

『ビクトリーストライカー!』

『グッドストライカー!』

 

『『──Get Set……Ready Go!』』

 

『いくぜ〜!スーパー、快盗ガッタイムぅ!』

 

 グッドストライカーを中心とするところは変わらず、彼と同等の巨躯を誇るビクトリーストライカーが頭部から胴体を、マジックダイヤルファイターと弔の所持していたトリガーマシンスプラッシュが両腕を構成。一挙に寄り集まり、最強の機人を誕生させる。

 その名も、

 

『完成!ビクトリールパンカイザー!!』

 

 

 勝利の名を背負ったルパンカイザー、そしてヒューマナイズされたルパンマグナムは、横並びでゴーラムとの戦闘を開始した。

 

「オラァ!!」

 

 ビクトリールパンカイザーの左拳がゴーラムを強かに殴りつける。その一撃で硬い体皮にヒビが入る。有り体に言って、この機人の性能はゴーラムなど足元にも及ばぬものだった。一方のルパンマグナムは小柄な体躯を活かし、素早い格闘で相手を翻弄している。この戦いの趨勢は既に決まりきっていたし、放ったデストラ自身もそれは織り込み済みだっただろう。

 

「とっとと失せろや……!──グッディ!!」

『ええっもう!?しょうがないなァ!』

 

 次の瞬間、ビクトリールパンカイザーは勢いよく跳躍していた。そのまま元のVSビークルの面影色濃い飛行モードに変形し、ゴーラムの頭上をとる。──そして、輝く鞭のような光線を放った。

 

「!?」

 

 うめき声をあげるゴーラム。──彼のボディは、撓る光線にギチギチと締め上げられていた。もはや、指一本たりとも動かすことはできない。

 

『グッドストライカー、蹴散らしちまえキ〜ック!!』

 

 人型に再変形したビクトリールパンカイザーが、身体を錐揉み状に回転させながら鋭いキックを放つ。ビクトリーのVSビークルでは最大級の出力により、それは格闘技でありながら猛烈な威力を発揮する。ゴーラムのボディーを、完全に穿つほどの。

 

「!!!!!!」

 

 断末魔の絶叫とともに、爆散するゴーラム。──まだだ、もう一匹いる。

 そちらはそちらで、ルパンマグナムのアッパーカットを浴びてノックアウトされたところだったが。

 

 抑え役という役目を十二分に果たしたマグナムは、本来の銃形態になってビクトリールパンカイザーの手中に収まった。エネルギーがその砲身に集まっていく。標的は当然、二匹目。

 

『グッドストライカー、ぶっぱなしちまえマグナム〜!!』

 

 ルパンマグナムから放たれた光の矢が、獲物を呑み込んでいく。朦朧としていたゴーラムの意識はこの一撃にて完全に打ち砕かれ、肉体もろとも消滅したのだった。

 

『ひゅ〜、気分はサイコ「ふたりはジュレに戻れ。中年のことは俺と切島くんたちでなんとかするから」ちょっ……』

 

 グッドストライカーの決め台詞を遮っての弔の言葉に、快盗の少年少女は頷かざるをえなかった。

 

「……わァった。でも情報は俺らにもよこせ」

「ああ」

 

 一分一秒が惜しかった。彼らはそのまま分散し、轟炎司の安否を気遣いながら去っていく。

 

 

──よもやこれが、大いなる波乱の幕開けにすぎないとも知らずに。

 

 

 *

 

 

 

 赤と青、ふたつの劫火がぶつかり合う。

 

 格闘では決着のつかないルパンブルーとパトレン0号の死闘は、いよいよそれぞれの個性の真髄を出し切るところまで来ていた。

 

「ぬぅおおおおおーーッ!」

「……ッ!」

 

 自然界においては、蒼炎のほうが赤い火より温度が高い。実際、その点においてはパトレン0号──荼毘のほうが上回っていた。

 しかしそれは、戦闘における突破力とイコールではない。炎の爆発力においては、かつてエンデヴァーと呼ばれていた男のそれが上回っていて。

 

(俺はまだ……死ねん……!)

 

 こんな、暗闇に染まった異形の巣窟で。氷結とともに消えた焦凍を取り戻すその日まで、自分に敗北は許されないのだ。

 

「うおぉぉぉぉぉーーッ、プロミネンス・バーーーーーーン!!!」

 

 その叫びは、彼の最大火力を発するものだった。全身から火炎が噴き出し、それが十文字を描きながら前方へ放射される。

 

「ッ!」

 

 蒼炎を容易く呑み込み、より勢いを増した劫火の獣は獲物に喰らいつく。漆黒の警察スーツは熱によって破壊され、0号は爆風によって後方へ弾き飛ばされた。

 

「がは……ッ、………」

 

 樹木に叩きつけられた0号。強化服が限界を迎え、もとの青年の姿が露になる。

 尤もそれはブルーのほうも同じだった。最大火力を前には快盗スーツも耐えきれず、轟炎司の生身を晒してしまう。滝のような汗に身を濡らしながら、彼はふうふうと浅い呼吸を繰り返していた。長らく全力で使うことなどなかった個性は、彼の体力をほとんど使い果たしてしまったのだった。

 

──それでも、勝者は自分。そう確信した炎司を嘲笑うかのように、傷ついた青年はくつくつと声をあげた。

 

「くくく……っ、ははははは……!やっぱ、すごいなぁ……あんたは」

「……貴様の敗けだ、荼毘」

「敗けか……そうだな、結局()()はあんたに勝てなかった。あんたより凄い炎を出せるのに、お母さんの体質を受け継いじまったせいで……」

「!、……なにを、言っている?」

 

 当惑する炎司の前で、荼毘は懐から徐にペットボトルを取り出した。何をするのかと思えば……その中を満たす透明な液体を、頭から被っていく。

 

「何を──」

 

 ますます困惑を深める炎司だったが、それは間もなく驚愕へと変わった。黒髪が、液体に侵されたところから白に染まっていく。いや……逆だ。黒く染めていたのを、水で落としたのだ。

 

「自分の炎に身を灼かれる……こんな滑稽なことはないよなァ。そのせいでぼくは、世界でいちばんだいすきなお父さんに捨てられた。でもぼくが死んだときはなんとも思わなかったくせに、"最高傑作(お人形)"のためなら地位も名誉も、何もかも捨てられるんだって。挙げ句、仲間と家族ごっこ!!」

「何、を……言って……」

 

「誰のことを言ってるか、わかるよなァ……?」

 

 ありえない、そんなはずがない。自身に言い聞かせる言葉は、まるで虎落笛のように虚しく響く。

 

「約束だ。教えてやるよ、ぼくが誰なのか」

「……ッ、」

 

「ぼくは……ぼくの名前は────」

 

 

 *

 

 

 

 同じ頃、国際警察の面々を乗せたパトカーが帰路をひた走っていた。

 

「早く……!早くエンデヴァーを救けないと……!」

「落ち着きたまえ耳郎くんっ!……責任を感じるのはわかるが、あれはきみひとりのせいではない」

 

 あの場にいた自分や鋭児郎にも当然、責任はある──天哉の言葉は的を射たものであったが、響香の心を和らげることはできない。

 ともあれ、彼女の焦燥は誤りではないのだ。一刻も早く、彼を救出する方法を考えなければ──

 

「なぁ……なんかないのか、死柄木?ギャングラーの力なしで、あっちの世界に行く方法──」

「……ないことはない。でも、無理だ」

「どういうことだよ?」

「その鍵を持ってンのは……多分、仕掛人(あいつ)だから」

 

 三人を襲い、こちらの世界に押し出した"蒼炎"──荼毘が、向こう側にいるとするなら。

 

(今度こそ、長官(あいつ)から真実を聞き出してやる)

 

 弔の決意とともに、地下駐車場に入庫していくパトカー。──しかし彼が庁舎に足を踏み入れることは、許されなかった。

 

 

「お、おい……どういうことだよ……これ?」

「なんなんです、貴方がたは!?」

 

 突如、四人の前に立ちはだかる機動隊。一様にこちらに銃を向ける彼らを掻き分けるようにして、背広姿の青年が姿を現した。

 

「──お久しぶりです、パトレンジャーの皆さん?」

「あんた……!?」

 

「物間、先輩……?」

 

──物間寧人。別名コピーヒーロー・ファントムシーフ。かつて鋭児郎の後任としてパトレン1号を拝命したものの、短期間でフランス本部へと異動った青年。

 その西洋人に混じっても遜色ない顔立ちに無を貼りつけた彼は、一枚の令状を四人の前に突きつけた。

 

「きみを逮捕する、死柄木弔……いや──」

 

 

「──轟、燈矢だ……!」

 

「──志村、転弧」

 

 

 そして、悪夢がはじまる。

 

 

 à suivre……

 

 




「ずうっと一緒だ、」
「さよなら、」


次回「穢された子供」


「――おとうさん」

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