【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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#48 崩壊 3/3

 

 激突する、ルパンレンジャーとゴーシュ・ル・メドゥ。

 

 レッドがルパンマグナムを掃射するが、ゴーシュの刃はそれすらも弾き返してしまう。相性の良いルパンコレクションの獲得により、彼女はデストラにも匹敵する攻守を獲得している。歯噛みするレッドだったが、焦ってはいなかった。戦いは、これからだ。

 入れ替わるようにブルーとイエローが突撃する。マントを翻し絶えず動きながら、VSチェンジャーのトリガーを引き、ルパンソードを突き立てんとする。

 

「わかってるのよ。あなたたちの、戦い方はっ!」

「ッ!」

 

 パトレンジャーのときと同様、三人を相手にしながらもゴーシュは一歩も引かない。それどころか、余裕さえ見せている。──以前"世界を癒そう"ですべてを"視て"いるからだろう。

 そうであるとして……実際に体験してみないことには、わからないものもある。

 

「もはや隠す意味もない。──見せてやる!」

 

 ブルーの発した言葉に何かを察した少年たちは、咄嗟に後退する。それを見届けるや否や、彼はその身から劫火を発したのだ。それは獲物を狙う肉食獣のごとく、渦を巻きながらゴーシュへ向かっていく。

 

「ッ、これは……!」

「No.1ヒーロー、エンデヴァーの力を見くびるな……!」

 

 ギャングラーに太刀打ちできる数少ないヒーローとして、その地位に登り詰めた英雄。しかし独りの力では、社会そのものを安らげるには至らなくて。"平和の象徴"たりえない自分が情けなくて、せめてその願いを繋ごうとした。結果として家族を傷つけ、我が子の夢を壊し……その人生をも、奪ってしまった。

 もう、エンデヴァーはいない。ここにいるのは快盗ルパンブルーであり、轟炎司というひとりの人間。──それでも燃え滾る意志は、こうして息づいている。

 

「プロミネンスッ、バーーーーーン!!!」

「きゃあぁッ!?」

 

 その必殺の一撃が、初めてゴーシュに悲鳴をあげさせた。尤も彼女をノックアウトするには至らず、大きく後方へ押しやるところにとどまったのであるが。

 ただ、吹きすさぶ焔を乗り越えるかのように飛び出してきた赤と黄の存在は、流石に想定の埒外で。

 

「「死ィねぇぇぇ──ッ!!」」

 

 ふたりぴったり声を合わせて、渾身の飛び蹴り。それを胴体に喰らって、ゴーシュはうめいた。

 

「ううっ」

「はっ!?ついレッドと息合わせてもうたっ、世界中に口悪い女って思われたらどうしよう!?」

「知るかボケ!集中しろや!!」

 

 まだ、ゴーシュに致命傷を与えられたわけではない。むしろ、これで彼女が本気を見せれば、一気に形勢を覆されることすら考えられるのだ。

 

──それでも今この瞬間は、限りない好機だった。快盗ばかりでなく、警察にとっても。

 

『おい……!お前ら、』

「!、グッドストライカー……」

 

 物陰を経由するようにして、密かに飛んできたグッドストライカー。彼は"腹案"をもっていた。確かに、ゴーシュが離れている今なら。

 

 数秒後、ドグラニオはこちらに駆け寄ってくる()()()()姿を認めた。

 

「「「──今、救ける!!」」」

 

 ひとりから、三人分の声。赤を中心に左右を緑と桃に彩られた姿で、突撃する"U号"。ドグラニオは当然、迎撃を仕掛けたが、

 

『分離ィ!』

 

 グッドストライカーがVSチェンジャーから離れ、U号がもとの三人に戻る。同時に1号が個性で最大限その身を硬化し、ドグラニオの攻撃を受け止めた。

 

「ぐううう……!」

 

 それでもダメージを殺しきれず、押しやられる1号。弔を救けたいという気持ちが最も強いのは、他でもない彼なのだ。それでも彼は、U号の特性を鑑み囮の役割を自ら引き受けた。

 その隙に、2号と3号が弔のもとへ滑り込み、彼を拘束する鎖を無理矢理に引きちぎった。

 

「動けるか、死柄木くん!?」

「!、……ああ」

「なら、走るよ!」

 

 即座に離脱する三人。その背中に、ドグラニオはあえて追撃をかけようともしなかった。

 

「ほう。案外、警察もやるな」

 

 なんの思考もせず突撃してくるような猪にくれてやるほど安い獲物ではないが、何がなんでも手中に置いておきたいというわけではない。──少なくとも、ドグラニオにしてみれば。

 

「せっかく捕らえたエックスが……!」

 

 そう、ゴーシュにとっては決して認められないことだった。ようやく捕らえ、今まさに刻もうとしていた極上の獲物。逃して、たまるものか。

 

「──来なさい!」

 

 こうなれば奥の手だとばかりに、ゴーシュは異世界に"保管"していた実験体を召喚した。身体中に複数の金庫を持ち、モルモットをベースに様々な生物を寄せ集めたような禍々しい姿。被毛が漆黒であることを除けば、以前戦った個体と変わらない。

 

 そのとき不意に、ドグラニオが立ち上がった。

 

「どうしたゴーシュ、ひとりじゃ心細いのか?」

「!、ボス……?」

 

 好々爺のような声を発するドグラニオ。よもやゴーシュを助太刀するつもりかと、快盗も警察も戦慄した。実験体にギャングラーの首領までもが仕掛けてきたら、いよいよ保たない……!

 

 しかしドグラニオがとったのは、この場の誰もが予想だにしない行動で。

 

「せっかくの遊び場だ。──自分の力だけで、楽しくやれよ!」

 

 言うが早いか──ドグラニオは、己の金庫を光らせた。途端、ゴーシュと実験体の金庫がひとりでに開く。そこからルパンコレクションが飛び出し、ドグラニオの手中に吸い込まれてしまったのだ。

 

「何、今の!?コレクションが勝手に……」

「どうしてですか!?」

 

 ルパンイエローとゴーシュ、ふたりの女の上ずった声が重なる。とりわけ後者の取り乱しぶりは尋常でないものだった。この状況下でなんの前触れもなく、戦力を取り上げてしまうなんて。

 

──わかっていなかったのだ、ゴーシュは。ずっと傍に控えていながら。ドグラニオの本性が、どれほど冷酷で恐ろしいものか。

 

「今まで散々好き勝手やってたんだ、俺にも好きにさせろ。俺はなぁ、面白いものが見たいんだ!ハハハハッ!!」

 

 高笑いとともに、戦場から姿を消す──ルパンコレクションを抱えたまま。

 その姿を街頭モニター越しに認めて、ザミーゴなどは拍手喝采を贈っていた。ゴーシュに対して悪感情はない。それよりも、我らがボスの豹変ぶりが最高に愉快だったのだ。

 

 そして捨て置かれた形となったゴーシュは、あまりの事態に茫然自失となっていた。

 

「嘘……、そんな──」

「!、──今だ!」

 

 隙だらけの仇敵めがけて、ルパンレンジャーはあらん限りの火器を斉射した。もはや無防備なゴーシュはこれまでがまやかしだったかのように容易くその直撃を受け、壁に叩きつけられた。

 

 その隙に、狭い教会内から外に飛び出す。そこには既に、先んじて脱出したパトレンジャーと弔の姿があって。

 

「死柄木!」

「……皆、」

 

 よろよろと歩み寄ってきた弔。その紅い瞳が見開かれ、激しく揺らめいている。かつて感じた底知れなさ、恐ろしさはもはや、どこにもなかった。

 

「……俺みたいな人間ですらないヤツのために、こんな……」

「──前にも言ったろ、死柄木」

 

 弔……志村転弧が、家族を殺めた過去を知ったとき。「てめェがギャングラーに通じてねえなら、それで良い」──そう、勝己は言った。

 

「今さらてめェのルーツがどうだとか、キョーミねえんだよ。──救けてやったんだから、てめェの命、せいぜい俺らに役立てろや」

「……はは、」

 

 相変わらずの物言いだが、彼らとの間には既に積み重ねてきた年月がある。そう彼らが断言するなら、自分の中に異世界人の血が流れていることなど取るに足らないことのように思える。

 

──だが、彼らの"秘密"は違う。その意味も、重みも。

 

「あ……飯田さ、──」

「………」

 

 ルパンイエロー──お茶子の声に、パトレン2号──天哉は背を向けたまま、答えない。握られた拳が震えているのを目の当たりにして……お茶子は、口を噤むほかなかった。

 彼の想いは、パトレンジャー全員が共有しているものだった。ただ現実に、この場の戦いが終結しているわけではない。

 

「……とにかく今は、目の前のギャングラーだ。──死柄木、これを」

「!」

 

 響香の手から返還される、Xチェンジャー。手に馴染んだその感覚。どうしてか他のVSビークルの力を行使できない自分が、死柄木弔となってからの唯一無二の相棒だった。

 

(……いや、今ならわかる。俺が半端者だから、使えなかったんだ)

 

 過去の自分が知れば絶望し、慟哭していただろう真実。さりながら今は、それも含めて自分自身を形作ってきたものなのだとさえ思える。自らの手で扱えないから快盗に、警察に託した。双方を跨いでいながら軸足を置くことのない自分を、彼らは仲間と、友人(ダチ)と認めてくれたのだから。

 

「──コレクションがなくても……私の腕はギャングラーイチ……!エックスも何もかも、刻みまくってあげる……!!」

 

 七人のあとを追うようにして、ゴーシュと実験体が飛び出してくる。後者はともかく、前者は先ほどの一撃が効いたのか息も絶え絶えの状態だ。動揺のせいもあるのだろうが、ルパンコレクションをすべて失ったとはいえかくも脆いものか。

 だが、自分たち人間にとってこれほど好都合なことはない。このマッドサイエンティストを倒し、ギャングラーを壊滅へと追い込む。

 

──そのために、

 

「ルパンレンジャー!おめェらに……協力を要請する!」

 

 絞り出すような1号の言葉に、快盗たちははっとした。

 

「……いいンかよ?俺らと手ぇ組んで」

「……おう。爆豪勝己は、俺のダチだからな」

「……!」

 

 この期に及んで、そんなことを。しかし異世界人の血を引いていて、かつて家族を殺めた者に対してそうであったように……たとえその正体が快盗であろうと、爆豪勝己という少年に対する想いは変わらないというのだろう。

 「馬鹿なヤツ」と、口の中でつぶやく。そしてルパンレッドである自分の答は、ひとつしかない。

 

「はっ……あいつをブッ殺しゃいいんだろ。ヨユーだわ」

「良いのか?」

「いちいち訊くなや、クソ髪」

 

──今この瞬間、七人の戦士が並び立った。唯一生身でいた弔もまた、ルパンエックスへと変身を遂げて。

 

「「「「快盗戦隊、ルパンレンジャー!!」」」」

 

「「「警察戦隊ッ、パトレンジャー!!」」」

 

 

「国際警察の権限においてッ、実力を行使する!!」

「………」

 

 

「──行くぜぇ!!」

 

 言うが早いか、ビクトリーストライカーを装填するルパンレッド。彼がダイヤルを回す横で、パトレン1号もまたサイレンストライカーを取り出した。

 

「死柄木、良いか?」

「!、……ははっ。いちいち訊くなよ、クソ髪?」

「うぐっ……」

 

 もう自身の手中にあるというのに、許可を求めてくる鋭児郎はたいがい律儀だと弔は思う。ダメだと言ったらどうするのか確かめてみたくはあったが、当然それは胸のうちにとどまるもので。

 

『ミラクルマスカレイズ!スーパー快盗チェンジ!!』

『グレイトパトライズ!超警察チェンジ!!』

 

 そうしてふたりの赤き戦士は、それぞれ黄金と白銀の鎧を纏った。──出し惜しみなどしない、一気に決着をつけるのだ。口に出すまでもなく、皆がその方針を共有していた。

 

「警察と快盗、ふたつの力で……おまえを倒す!!」

「ッ、できるものですか!」

 

 VSビークルの力で武装、一斉掃射に臨む両戦隊に対し、ゴーシュと実験体もまた己の持ちうる力すべてを使って対抗戦とする。尤もその火力の差は、発射の前から明らかであって。

 

『──ド・ド・ド……ストライクッ!!』

 

 光が、弾ける。刹那膨れあがるは紅蓮の炎。その中に混じりあったのは……他でもない、甲高い女の悲鳴で。

 

「………」

 

 人間たちは皆、ひとりも損じることなく立っていた。ならば悲鳴の主は決まっている。炎に巻かれて実験体もろとも倒れ伏した、ゴーシュ・ル・メドゥだ。

 

「う……うぅ……ッ」

「……!」

 

 しかし……彼女にはまだ息があった。今の一撃で灼けた土を握りしめながら、よろよろと身を起こさんとする。

 

「なかなか、やるじゃない……ッ」

 

 ただ、もはや虫の息であることも確かで。放っておいても早晩、息絶える──彼女自身、わかっていたことだった。

 ならばと彼女は己の金庫に手をかけ、

 

──毟りとった。

 

「な……こいつ!?」

「良いこと、思いついちゃった……ッ。黄金の金庫を移植したら……どういう結果に、なるかしら……?」

 

 言葉の通りだった。黄金の金庫をそのまま、実験体の胴体に埋め込む。

 

「フフフ、アハハハ……!これが私のッ、最後の……実験──!!」

 

 それが、ゴーシュ・ル・メドゥの断末魔となった。次の瞬間には今度こそその身が爆ぜ、跡形もなく焼失する。数えきれない命を弄んできた狂った科学者の、呆気ない最期だった。

 

 しかしその"最後の実験"は、まぎれもない厄災として残された。黄金の金庫を埋め込まれた実験体はダメージなどなきかのごとく起き上がり、たちまちその身を膨れあがらせたのだ。

 

「な……巨大化だと!?」

「コレクションもないのに、どうなって──」

 

 人間大では黄金の金庫が蓄えた膨大なエネルギーを処理できず、実験体の図抜けた適応力により肉体が進化を遂げた──考えつくのはそんなところか。ただ、重要なのは巨大化したという事実そのもので。

 

「グォオオオオオオ──ッ!!!」

 

 禍々しい咆哮とともに暴れ出し、いとも容易く教会を瓦礫へと変える実験体。咄嗟にその場から離脱しながら、対処しようとする七人だったが、

 

「ッ、ぐ……っ」

「切島!?」

 

 ここで1号が、うめき声とともにその場に蹲った。硬化で防いだとはいえ、ドグラニオから受けた一撃は想像以上に彼の臓腑を痛めつけていた。ここまで動けていたのは、なんとしてもゴーシュを討たねばという気構えによるものだった。

 警察はもう、動けない──そうと見るや、いち早く口を開いたのは彼女だった。

 

「飯田さん!あとは、私たちに任せて!」

「!、麗日く……──ッ、」

 

 逡巡する2号──天哉。彼が即座に頷けないのも、当然のことで。押し潰されそうな罪悪感に抗うお茶子だったが、次の瞬間、彼がトリガーマシンスプラッシュを差し出してきた。

 

「!、……良いの?」

「………」

 

 返事はない。ただ、行動そのものが答だと言わんばかりに。

 それぞれが複雑な思いを抱きながら、快盗たちはVSビークル、そしてルパンマグナムを次々に巨大化させていく。エックスもまた、警察の協力を得てエックストレインを出発させた。

 

『大変なことになっちまったけど、ココはテンションあげてこうぜぇ!快盗、ガッターイム!』

 

 そして戦場に現れる、三体の巨人──ビクトリールパンカイザー、ルパンマグナム、エックスエンペラースラッシュ。街を破壊せんとしていた実験体は、その姿を認めていったん動きを止めた。──死闘が、はじまる。

 

 先んじて動いたのは、人間たちのほうだった。

 

「突っ込め、マグナム」

 

 ルパンレッドの命令を受けて、ルパンマグナムが走り出す。真正面からの突撃、ならば実験体も手をこまねいてはいない。ネジを打ち込まれたような両目が光り、レーザーを放って迎撃する。

 しかしながら、それらがマグナムに命中することはなかった。小柄な体躯ゆえに的が小さいというのはもちろんのこと、地上でのスピードはルパンカイザーやエックスエンペラーをも凌ぐ。その速度でもって、彼は一撃も喰らうことなく接敵することに成功した。そして紅蓮の徒手空拳で、真っ向から実験体と取っ組みあう。

 無論、力比べでは実験体のほうに圧倒的な分がある。しかしこれが一対一の勝負ではないことは言うまでもない。

 

 跳躍したビクトリールパンカイザーが頭上から火砲を浴びせかける。灼熱の雨に実験体が悶えていると、今度はエックスエンペラーがその刃で攻撃を仕掛けた。

 

「はっ……今はもう、俺らのターンなんだよ」

 

 そして、この怪物のターンは二度とはやってこない。

 

「グルゥゥゥ……!」

 

 自らの不利を察したのか、実験体はなんと、文字通り尻尾を巻いて逃げ出してしまった。思いもよらぬ行動に唖然とする快盗たち。そのせいで、追跡を開始するまでにラグができてしまった。逃げ足の速い相手に──

 

「──逃がすものか!」

 

 そう声をあげたのは、地上にいるパトレン2号だった。彼を筆頭に、パトレンジャーの面々が銃撃を仕掛ける。

 

「!!」

 

 蚊の止まったような攻撃に、実験体の標的は彼らに移った。再びその瞳からレーザーが照射され、空気を灼きながら迫る。避けようにも、攻撃範囲が広すぎて間に合わない──!

 

 と、そこにビクトリールパンカイザーが割って入った。どうにも取り繕えない──パトレンジャーの面々を、庇ったのだ。

 

「ふぅ……セフセフ」

「借りは返したぞ」

「次は……こっちの借りだァ!!」

 

 再び逃走しようとする実験体だがもう遅い。ビクトリールパンカイザーの火砲が襲いかかり、漆黒のボディーを貫いていく。

 

「グアァァァァ!!?」

 

 悲鳴とともに川へ落下する実験体。──趨勢は、決した。

 

「ゲームオーバーだ、──転換(コンバート)!」

 

 スラッシュからガンナーへ、姿を変えるエックスエンペラー。そして、

 

「エックスエンペラー、ガンナーストライクっ!!」

 

 パイロットたるパトレンエックスの手により、エックスエンペラーが必殺の火砲を放つ。

 

「グオォォッ!?」

『間髪入れずに行っちゃうぜぇ〜!』

 

 マジックの光の鞭、スプラッシュの水球が実験体を二重に拘束する。そうして完全に動きを封じたところで、ビクトリールパンカイザーは飛行モードへと変形した。

 

『グッドストライカー、蹴散らしちまえキ〜ック!!』

 

 グッドストライカーの先端を武器とし、錐揉み回転とともに放つ一撃。もはや身動きのとれない実験体の胴体ど真ん中を──穿く。

 

「!!!!!」

 

 その一撃は、実験体の耐久力を大きく上回るものだった。声にならない断末魔とともに、その身が大きく爆ぜる。ゴーシュの金庫もろとも、"それ"はこの世から跡形もなく消滅したのだった。

 

「………」

 

 勝利。三体の機人が並び立つ勇壮なる光景とは裏腹に、そのコックピット内は冷たい沈黙に包まれていて。

 

『お前ら……これからどうするんだ?』

 

 耐えきれなくなってか、グッドストライカーが訊く。とはいえ快盗たち、その問いに対する答など持ち合わせてはいなかった。──つまりは、ノープラン。

 

「まずは黒霧に新たな隠れ家を用意させるほかあるまい。宿無しというわけにはいかないからな」

「ケーサツにチクるんじゃねーぞ」

『チクるわけないだろー!?なぁトムラ〜?』

「だと良いけどな」

「………」

 

(アデュー……飯田さん)

 

 

 いずこかへ飛び去っていく快盗たち。警察の面々は立ち尽くしたまま、その姿を見送ることしかできない。透き通った雲ひとつない蒼天を、彼らは生まれて初めて恨めしく思った。

 

 

 à suivre……

 

 






「ダチひとり救けらんねえで、何がヒーローだ……っ」

次回「ロング・グッバイ」


「あんがとよ、烈怒頼雄斗」


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