【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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かっちゃん


#51 暁鐘 3/3

 

 

『──次のニュースです。昨日のギャングラーによる襲撃事件は、パトレンジャーの迅速な対応により死傷者を出すことなく解決されました』

 

 どこか浮ついた様子でニュースを読む女性アナウンサーの姿が、街頭ビジョンに映し出されている。次の瞬間には画面が切り替わり、ギャングラーによる犯罪の減少を実証するデータの数々。

 

「ねえ、またパトレンジャーがギャングラーやっつけたんだってよ!」

 

 街を歩く女子高生が、スマートフォン片手にそう声をあげる。

 

「ヤバイよね~カッコよくない?」

「警察って名乗ってるけど、フツーにヒーローだよね」

「だってパトレン1号、確かほんとにヒーローなんでしょ?烈怒……なんとか?」

「ま、ヒーローも警察もすごいってことよ」

 

 きゃっきゃとはしゃぎながら、去っていく女子高生たち。その姿を、すれ違う赤髪の青年が苦笑を浮かべて見送っていた。

 

「烈怒頼雄斗、な」

 

 

 *

 

 

 

 ドグラニオ・ヤーブンとの決戦から、一年が経過しようとしていた。

 

 この世界に潜伏するギャングラーの数は減少する一方にあり、街に再びヒーローとヴィランが跳梁する"正しき"超常社会が戻りつつある。しかし残党による事件が時折発生するたび、迅速に出動して人々を守護するパトレンジャーの支持率は、今やトップヒーローと比較しても遜色ないもので。

 

 

「──出せ……!さもなくば殺せ!!この老いさらばえた身体で無力に生き延びるくらいなら……死んだほうがマシだぁ……っ!!」

 

 パトレンジャーに倒されたはずのドグラニオ・ヤーブンが実は生きていて、国際警察の地下深くに幽閉されている──四方を無数の銃に囲まれ、自らの鎖で全身を縛りつけられた状態で──事実は厳重に秘匿され、国際警察でもごく一部しか与り知らぬことであった。

 

 

「──ギャングラー犯罪も、かつてと比較すると見違えるように減少したな」

 

 朝のオフィスで、心なしか胸を張るようにして言うのは飯田天哉だった。日頃の鍛錬の成果か、最近ますます育っているそこに複雑そうな視線を向けつつ、耳郎響香も応じた。

 

「ドグラニオは特別拘禁室にぶち込んだしね。組織としては終わってるでしょ」

「──とはいえ、油断は禁物だ」塚内管理官が立ち上がる。「ほんとうの巨悪は、最後の最後まで牙を研いでいるものだからな」

 

 その言葉に、背筋を伸ばして敬礼するふたり。──快盗に装備を返すという不祥事を演じてしまった彼らだが、その罪は状況を鑑みて不問とされた。生真面目な天哉は未だに納得していない様子だが、某潜入捜査官の尽力もあり上層部は快盗を可能な限り利用する方針を立てていた。そうでなければステイタス・ゴールド──とりわけザミーゴ・デルマを倒すことはできなかっただろう。

 

 では、彼は。鮮烈な赤が一同の脳裏をよぎると同時に、自動扉が開いた。

 

「はよざいますっ!遅くなってスンマセン!」

 

 がばりと一礼し入室してきたのは、切島鋭児郎その人だった。

 

「うむ、おはよう切島くん!」

「久々の古巣はどうだった?」

「古巣……かぁ」

 

 「はは」と、鋭児郎は苦笑する。出向元を称する言葉としては誤りではないのだが、如何せん正式に所属していたのは一ヶ月足らずなのだ。プロデビューしてからの殆どを、彼はパトレン1号として過ごしている。ギャングラー事件の減少に伴い、出勤を半々にする等の提案も上層部からあったが、中途半端をしたくない鋭児郎はそれを断った。事務所……と言うより所長のフォースカインドも、その決断を後押ししてくれた。

 

 にもかかわらずと言うべきか、先日のヒーロービルボードチャートJPの発表では椿事が起きた。"烈怒頼雄斗"としては活動していない鋭児郎が、下位とはいえランキング圏内に載録されたのだ。デビュー一年目のヒーローというだけでもレアケースなのに、そもそもそのヒーロー活動をしていないのだから前代未聞に決まっている。とはいえ市民にとって、ヒーローか警察かなどということは取るに足らない差異にすぎない。ありがたく受けることにした鋭児郎だったが、どうせなら国際警察としてランク入りしたかったと思う。せめて、パトレンジャー四人で。

 

(俺は、パトレン1号として戦い続ける。ギャングラーがいなくなるその日まで)

 

 

(……爆豪。おめェらを、救け出すその日まで)

 

 改めて、決意を掌に込めたときだった。

 

『!、──緊急通報!ギャングラーの残党が出現しました!』

 

 サイレンを鳴らし、ジム・カーターが声をあげる。場の空気が一挙に引き締まるこの感触は、確かにヒーローのそれと遜色ないものだった。

 

「──パトレンジャー、出動!」

「「「了解!」」」

 

 揃えた声で応じて、三人は戦場へと足を向けた。

 

 

 *

 

 

 

 その怪人は、名をカーゼミーと言った。

 ギャングラーの数少ない生き残りと言えば聞こえは良いが、今まで細々とした軽犯罪に甘んじていたゆえ見逃されてきた小悪党にすぎない。

 

 それが今、これみよがしに劇場を襲撃して暴れているのは、ドグラニオの屋敷に残されたルパンコレクションを偶々発見したからだ。要するに、戦力を得て気が大きくなっているというだけのこと。

 

「──動くなッ、国際警察だ!!」

 

 ゆえに、登場と同時にポーダマンの一部を射殺したパトレンジャーの存在にも、彼はたじろぐことがないのだった。

 

「来ると思ったぜ国際警察。まずは一発、喰らえぇイッ!!」

 

 言うが早いか、金庫を光らせるカーゼミー。その掌中にエネルギー弾を形成し、「波ァ──ッ!!」と叫ぶと同時に解き放った。

 

「ッ!!」

 

 内心劇場の支配人に頭を下げつつ。三人は障害物の陰に潜り込み、それをかわした。

 

「あいつ、コレクションを持ってるのか……!」

「油断ならないな……」

 

 ルパンコレクションを持つギャングラーと交戦するのは久方ぶりのことだった。白身銃を握る手に力がこもる。

 

 と、そのときだった。銃声とともに、カーゼミーが火花ともども吹き飛ばされたのは。

 

「は、久々で怖気づいたかよ。お巡りサン?」

「──!」

 

 忘れえぬ声。いや、そんなはずはない。

 己の聞き間違いかもしれないと思いつつ……それでも鋭児郎は、顔を上げるのを止められなかった。

 

「あ……」

 

 そして──彼らは、その姿を目の当たりにした。赤、青、黄。それぞれ異なるパーソナルカラーを纏った、快盗たちの姿を。

 

「安心しろや。ギャングラーが持っとる最後のコレクション……俺らがいただき殺してやる」

「爆、豪……!?」

「麗日くん……!」

「エンデヴァー……」

 

 不敵な笑みを浮かべる爆豪勝己に、仏頂面の轟炎司、「お久しぶりです!」と手を振る麗日お茶子。その挙動はまぎれもない、本物で。

 

「おめェら、なんで……どうやって?」

 

 山積する疑問の数々。それらを打ち崩すように、鮮紅の翼が彼らの間に降り立った。

 

『へへへっ、オレが開けてやったのさ!』

「!、おまえは確か……ジャックポットストライカー?」

 

 かつてパトレン0号──荼毘が使用し、その後快盗たちの手に渡ったグッドストライカーの兄弟。

 

「コイツには精神操作の能力があンだよ」

「!」

「尤も、勝手に隕石へ突っ込んで、消息不明となっていたのだがな……」

 

 ゆえにジャックポットストライカーの出現は、快盗たちにとってまったく予想だにしないもので。

 

 

──そう、彼らは一年の時をドグラニオの体内で過ごしていた。そこは時間の流れが違うのか、そもそも流れなど存在しないのか、腹も減らなければ眠くもならない。それでも心は動いているので、退屈のあまり色々な空間を見て回ったり、終いには三人でしりとりに興じていたのだが。

 

 その終焉をなんの前触れもなく知らせたのが、二冊目の台帳を通って現れたジャックポットストライカーだったのだ。

 

「──な、なんだ……!?身体が、勝手に……!」

 

 ジャックポットストライカーの能力により、ドグラニオの胴体に巻きついた鎖が外れ、金庫が開かれた。そうして快盗たちは、再び現世の空気を吸うことができたのだ。

 

「やった……!ついに出られたぁ〜ッ!!」

「ジャック……まさかてめェに救けられるとはな」

「だが、行方不明だった貴様を誰が宝物庫へ連れていったんだ?」

 

 その問いに対し、ジャックポットストライカーは何故か得意げに応じた。

 

『へへへっ。実はな、三人の快盗に盗まれちまったんだ』

「は?」

 

 いったい何を言っているのか。首を傾げる彼らの耳に入ってきたのは、複数の足音だった。

 

「!」

 

 身構える快盗たち。しかし近づくにつれ、暗がりの中にいた姿は露となり──彼らの鼓動は、次第に早まっていく。

 まさか。いや、そんなはずは。

 

 程なくして、目の前に達した三人組。少年ふたりと、年嵩の女性。皆、漆黒の中にそれぞれ赤、青、黄をあしらった衣装を纏っている。

 既視感では片付けえぬ姿。それでも確信に至らないのは、仮面を付けているから。

 

「………」

 

 その仮面は、容易くも取り外された。素顔が、露になって。

 

──炎司とお茶子とは、もはや言葉もなく駆け寄っていた。

 

「──母ちゃん……!」

「お茶子!」

 

 抱き合う母子。黒と黄の快盗は、お茶子の母親だった。

 そして、

 

「焦、凍……」

「……おう」

「何故、おまえが?」

 

 搾り出すような問いだった。親が子を救けるのは当然だ、でもその逆はその限りでない。まして、常々父でないと切り捨ててきた相手を。

 

「……おまえは、俺を取り戻すために全部捨てたんだろ。おまえにそんな借りを作るのは──」そこで言葉が途切れ、「いや……違ぇな」

「……?」

 

 見上げる焦凍の頬が、ぎこちなくも弛むのを炎司は見た。物心つくかつかないかの頃に数えるほどにしか見たことのない、微笑。

 

「おまえなんか、居なくなっちまえば良いと思ってた。でも……おまえが居ねえ家は、なんか、寒ィんだ」

「……!、焦凍──!」

 

 堪えきれず、炎司は末子を力強く抱きしめた。震える大きな背中に、彼の手がおずおずと回る。

 

「焦凍……すまなかった……!焦凍ォ……っ!」

「……しっかりしろよ、大人だろ」

 

 窘めるような落ち着いた声音は、一年分の時が流れたことを実感させた。

 

 

 仲間たちがそうして感涙に咽ぶ中で、勝己だけはその場から一歩も動くことができずにいた。

 

「………」

「……かっちゃん、」

 

 自らと同じ赤を纏うのは、デク──緑谷出久だったから。名状しがたい想いが湧き上がる、間違っても歓喜ではない。拳に、力がこもる。

 

「──何、やってんだよ。てめェ」

 

 だからそう、言い放った。

 

「馬鹿じゃねえの。俺のいねーところで、ヒーローでもなんでも勝手に目指しゃ良かったろうが」

「………」

「俺なんざいねーほうが人生ずっとマシだったって、てめェだってそう思ってんだろ!?」

 

 違う。

 

 こんなことを言いたいのではない。もうこれ以上、デクを呪いたくない。苦しめたくない。でなければ自分も苦しいのだとわかっていながら、それでも勝己はあらぬ思いを吐き出さずにはいられなかった。

 デク……出久はそれを、目を逸らすことなく聞いていた。幼い頃から変わらぬ大きな翠眼は、どんな呪詛を受け止めようとも凪いでいる。──彼の心は、最初から決まっていた。

 

「──そうだね、」

 

「でもそれは、お互い様だろ?」

「……!」

 

 二年前と同じ言葉に、勝己の手は震えた。

 

「……きみが僕を救けるために雄英へ行かず快盗になったって聞いて、僕は騙されてるんだと思った。だって、あのかっちゃんが。僕のことを忌み嫌っていて、自殺しろとまで言ったかっちゃんが、僕なんかのためにそんなことするわけがない。……でももしそれがほんとうなら、かっちゃんはどうしてそうまでして僕を救けてくれたんだろう。考えて考えて考えて、それでも答は出なくて、気づいたら僕も、きみと同じ道を辿ってた」

 

「僕はね、かっちゃん。きみのしてきたことはきっと一生許せない。あの日のきみを憎いと思う気持ちも変わらない。でも……でもね、それ以上にずっと、」

 

──もう一度きみと話ができて、涙が出るくらいにうれしいんだ。

 

「……!」

 

 凪いでいた瞳に透明な膜が張り、灯光を反射して潤んでいく。そこに映る緋色も、また。

 

 次の瞬間、勝己は目の前にある自分より幾分か小さな身体を抱きしめていた。

 

「デクおまえ……相変わらず、子供体温じゃねえか……」

「はは……なんだよそれ」

 

 かすれた声で笑う出久。震える背中が、そのあたたかさが腕の中にある事実が、凍りついた心をゆっくりと融かしていく。

 

 

 地獄にも春は来て、花が咲く。──煉獄の日々が、ようやく終わる。

 

 

 *

 

 

 

『──これで緑谷くんたちは、お役御免です』

 

 冷たくも聞こえる黒霧の言葉に、弔はフンと鼻を鳴らした。その手中にある仮面が、握りしめられた途端に砂となって崩れ落ちていく。

 

「酷っでぇよなァホント。あいつらまでスカウトしちゃって、出てきた爆豪くんたちに何言われるかわかったモンじゃない」

『そういうトムラだって、イズクたちを快盗として仕込んでたじゃないか〜!』

 

 グッドストライカーの横槍に、弔はばつが悪そうに白髪を掻いた。

 

「……爆豪くんたちを救けたかったんだよ、しょうがないだろ」

「私も、どうしてもコレクションを集めたいんです」

「は……あんたも心底お人好しだよなァ、黒霧──」

 

「──いや、朧サン?」

 

 黒い靄の向こうに、苦笑する少年の顔が浮かび上がった。

 

 

 *

 

 

 

 そうして今、快盗たちは再び戦場に立っていた。一年前と変わらぬ、不敵な笑みを浮かべて。

 

 対して、その姿を見上げる鋭児郎はというと。

 

「〜〜ッ、良かった……!ほんとに良かったなぁ……爆豪、みんなぁ……っ!」

 

 涙ぐみながら、彼らに祝福の言葉を贈っていた。それが心の底から出でたものであることは、疑いようがない。勝己は嘲るように鼻を鳴らしつつ、満更でない気分を味わっていた。

 そして天哉、響香もまた、彼らの無事と願いの成就を喜んでいたのだが。

 

「……ちょっと待った」

 

 不意に訝しむような表情を浮かべた響香が、そんな言葉をつぶやいた。

 

「じゃあなんであんたら、快盗続けてんの?」

「!」天哉もはっとする。「確かにそうだ……。ルパンコレクションを追い求める必要はなくなったはずだろう!?」

 

 至極当然の問いに、快盗たちは揃って肩をすくめてみせた。

 

「だってぇ……顔バレしてるからルパン家で働くしかないんやもん」

「ルパンコレクション、放っておけば世界の均衡を崩しかねないような代物だ。回収しないわけにはいくまい」

「そもそも、シゴトはきっちりやり遂げんのがプロってもんだろ?」

「ッ、そ、そりゃそうかもしんねーけどさぁ……」

 

 鼻白む鋭児郎たちに対し、勝己は追い打ちをかけるような言葉を口にした。

 

「つーわけで、とっととあんたらのも返せや」

「は!?」

「何を言っている!?ルパンコレクションを所持しているのは奴で最後でも、ギャングラーはまだ残っている!装備を渡すわけにはいかん!」

「……結局ウチら、ぶつかる運命か」

 

 決してひとつにはならぬ、誓いと正義の道。ただひとつ、交わる場所があるとすれば。

 

「──貴様らぁ……死ぬほど痛かったぞォ!?」

 

 立ち直ったカーゼミーが、怒りを露に声を張り上げる。対する快盗たちは、ひらりと高所から地上へと飛び降り──

 

『レッド!0・1──0!』

「──ルパンレッドォ!!」

『ブルー!2・6──2!』

「ルパンブルー……!」

『イエロー!1・1──6!』

「ルパンイエロー!」

 

『マスカレイズ!』

「「「──快盗チェンジ!!」」」

 

 トリガーを引き、放たれる輝き。それらを身に纏い、快盗たちは変身を遂げる。

 

──快盗戦隊、ルパンレンジャー。

 

「ッ、俺たちも行くぜ!」

『1号!パトライズ!』

「「「──警察チェンジ!!」」」

 

 負けじと警察チェンジを遂げるパトレンジャー。快盗、警察、そしてギャングラー。役者が揃ったこの瞬間、混沌の舞台が幕を開けた。

 

「うおおおおッ、俺は退かないぞギャングラー!!」

 

 殺到するポーダマンに立ち向かうべく、己を鼓舞する天哉──パトレン2号。そんな彼を援護するかのように、ルパンイエローの放った弾丸がポーダマンの一部を撃ち貫く。

 

「ムッ!」

「カッコいいよ〜、飯田さん!」

「あ、ありがとう!しかしきみたちを認めたわけではなぁい!!」

 

 こんなやりとりの一方で、

 

「よ、っと!──はぁっ!」

「ふん……!」

 

 響香──パトレン3号とルパンブルーは、互いに銃を突きつけあいながらも着実にポーダマンの数を減らしていく。もはや繕う必要もないから、後者は"ヘルフレイム"も交えた見事な戦いぶりを見せている。その熱を感じつつ、響香は感嘆のため息を洩らした。

 

「流石エンデヴァー、鈍ってはないみたいですね」

「ふ……当然、だっ!」

 

 そして、

 

「──ったく快盗、おめェらってヤツはよぉ!!」

 

 怒りの中にどこか弾んだいろを露にしつつ、鋭児郎──パトレン1号はルパンレッドと激突していた。その猪突猛進ぶりは、一年前となんら変わっていない。成長していないといえばそれまでだが、それが切島鋭児郎という男の変わらぬ本質だった。

 

「は……──死ィねぇッ!!」

「うおっ!?」

 

 レッドが掌から放つ爆破が、空間を灼く。その余波で数体のポーダマンが吹っ飛ばされたが、彼らは意に介さない。

 

「ッ、それがおめェの個性か……。へへっ、漢らしいぜ!!」

「基準がわからんわクソ髪ィ!!」

 

 どこか弾むように、躍るように続く両戦隊の激闘。大量に蠢いていたポーダマンは半ばそれに巻き込まれ、すっかりその数を減らしている、

 そんな中、渦中の人?であるカーゼミーはというと、

 

「ハッハッハ、この状況……逃げ恥だと思いますっ!」

 

 なんだか懐かしいフレーズをのたまいながら、そろりそろりと遠ざかっていく。そして部屋の隅まで来たところで、一気に離脱しようとした──刹那、

 

「──ぬおおおおおっ!!?」

 

 突如として天井から降り注いだ水流の束が、容赦なく彼を絡め取った。

 

「ぬ、ぬぬぬぬ濡れぇ……オレは濡れたらダメなんだぁ!!」

「──奇遇だ、なァっ!!」

 

 スプリンクラーの襲撃に右往左往している間に、ルパンレッドが彼に飛びかかっていた。

 

「ウガァッ!?」

『5・0──2!』

 

 金庫を開き、その中に手を突っ込む。握りしめた、不思議な感触。

 

「っし……!」

『──やったぁ、流石かっちゃん!』

 

 インカム越しに響く称賛の声に、心が躍る。──快盗の役目から解放された今もなお、出久が自分の背中を支えてくれているという事実。

 今、勝己の心はひどく満ち足りていた。

 

「爆豪!」

 

 友にするように名を呼ぶ鋭児郎が、こちらに銃を向けている。勝己もまた、それに応じた。仮面の中で、不敵な笑みを浮かべて。

 

 

 

 どこかで、鐘が鳴っている。

 目覚めを促すような、何かの到来を告げるようなその音。

 

 ああ、これは暁鐘だ。目覚めのときを報せるやわらかな鐘の音。

 

 どんな永い夜もいつかは明けて、朝が来る。

 

 英雄も罪人も等しく、燃ゆる太陽に照らされて生きていく。

 

 

「予告する。──てめェのお宝、いただき殺ォす!!」

 

 

 この残酷な優しい世界で、大切なものを抱えて生きていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 fin.

 

 

 

 

 

 

 

 




『Adieu au Héroes』、これにて完結です。休止期間も含めて2年近く、お付き合いくださり本当にありがとうございました。

二代目快盗たちのその後について補足しますと、

デク→ルパン家に残ってかっちゃんの傍に居続ける道を選ぶ
轟くん→二年遅れで雄英に入学(肉体的には一年遅れ?)
お茶子ママ→快復した夫とともに会社を再建

となります。スプリンクラーのくだりはちょっとわかりづらかったかと思いますが、つまりそういうことです。快盗戦隊の参謀デク、リーダーかっちゃんとは阿吽の呼吸で活躍してくれることでしょう。
あ、カーゼミーの「逃げ恥」発言は主演俳優&女優の結婚を意識したわけではありません、執筆は報道前でしたので。つまり偶然の一致。

これにてヒロアカ世界の快盗と警察の物語は大団円を迎えますが、不肖わたくしのヒロアカ二次創作は続きますので、よろしかったら引き続きお付き合いくださいませ。
というわけで、以下次回?予告!



「おめェら、爆豪と緑谷だよな……?」
「違ぇ。俺はカツキで、」
「僕はイズクです」
「やっぱ爆豪と緑谷じゃねえか!?」


次回「特別篇―Connected to Ryusoul Adventure―」


「「リュウソウチェンジ!!」」
『ケ・ボーン!!』

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