【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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原作のかっちゃんがどんどん大人になっていて嬉しい反面寂しい。

「君はヒーローになれる」から始まり色々なものを得て成長していくデクに対し、かっちゃんは引き算の成長なんですよね。何かをあきらめたり、失ったり…。


そんなかっちゃんをもっと追い込みたい!(ゲス顔)


#7 侵入、国際警察 3/3

 激闘は、三つ巴の様相を呈していた。

 

「おらァッ、そいつもよこせや!!」

 

 罵声とともに、赤へ襲いかかる赤。その標的はもうひとつのVSビークルに他ならない。

 無論、パトレンジャーの仲間たちがそれを黙って見ているはずもない。1号を守ろうと動く──が、

 

「ッ!?」

 

 足下に火花が散り、彼らは思わず硬直した。

 

「邪魔はやめてもらおうか」

「VSビークルもギャングラーのも、私たちがいただくんだから!」

「何を……!」

「邪魔はあんたたちだっての!」

 

 VSチェンジャーで寄せ付けないよう目論むルパンブルーとイエローに対し、パトメガボーで銃弾を防ぎつつ果敢に攻めにかかるパトレン2号と3号。レッドと1号は、互いの持つVSビークルを獲るか獲られるかという一進一退の一騎討ちを演じている。

 そして、台風の目と化しているブンドルト。彼はしばしぽつんと立ち尽くしていたのだが、

 

「……両方ともオレのモンだぁぁぁ~!!」

 

 いずれのルパンコレクションも奪わねばならないことに思い至り、ソードを振りかざしてふたりに斬りかかる。

 

「!」

 

 それに対するふたりの反応は、どうしてか息が合っていた。すかさず距離をとり、飛び込んできたブンドルトを囲むような陣形となる。

 そして、

 

「「お、らぁッ!!」」

 

 掛け声が──重なる。同時に突き出される、赤と赤の拳。それはブンドルトの両頬を見事に打ち貫いていた。

 

「ぐぼぉ……!?」

「寝てろや!!」

 

 さらに、ルパンレッドによって蹴り飛ばされる。甲冑を纏った身体が、情けなく地面を転がった。

 

「おっ、チャ~ンス!」

 

 胸の金庫ががら空きになっているのを認めて、すかさず接近しようとするルパンイエロー。しかしパトレンジャーを足止め中だったことが災いした。

 

「させるかっての!」

「きゃっ!?」

 

 3号の妨害を受け、近づくことができない。ブルーのほうも、相手が2号に変わるだけでほとんど同じ状況だった。

 そうこうしているうちに、頑丈さが取り柄のブンドルトは早くも立ち直った。しかし肉体はともかく、精神は両っ面を殴られたショックから覚めていない。

 

「も……もうイヤァァ!」

 

 もとより頼まれ仕事だったこともあり、早々に戦意を喪失した彼は恥も外聞もなく逃亡を選んだ。ルパンコレクション──"稲妻のように飛び跳ねる~Jack bondissant tel l’éclair~"を発動させ、壁を破壊しながら外に飛び出していく。

 

「ギャングラーが……!」

「ッ、逃がすか!」

 

 いかに快盗との対決に熱が入っていようとも、パトレンジャーにとって優先して殲滅すべきはギャングラー。2号と3号は即座に追跡を開始する。

 その背中を横目で見つつ、レッドは思わず舌打ちをこぼした。1号からはなんとしてもVSビークルを奪いたいが、パトレンジャーにブンドルトを殺されては取り返しがつかない。

 

「おいブルー、イエロー!とっととあのクソペンギン捕まえてこい!」

「!、……いや言い方」

「任せていいんだな?」

 

 確認しておきながらも、彼は返答を待つつもりはなかった。性格的にも能力的にも、尻込みするような少年ではない。

 直後、ブルーとイエローは壁に開けられた大穴から飛び出していった。彼らの敏捷性ならば、警察とブンドルトに追いつくことも容易いだろう。

 

「……さァて」

 

 ふたりを見送り、改めて自らの敵へと向き直る。彼もまた、こちらを野放しにするつもりはないようだった。

 

「おいヒーロー崩れ、テメェの持ってる"ソレ"もよこせや」

「……ッ」

 

 ヒーロー崩れ──烈怒頼雄斗が、ギリリと歯を食いしばるのがわかった。気をよくしたレッドは、さらに挑発めいた言葉を続ける。

 

「ソレは元々ルパン家のモンなんだぜ?今アンタが使ってンのもな」

「………」

「拾ったモンパクって勝手に使って……泥棒はアンタたちなんじゃねーの?なァ?」

 

 さあ、どう出るか。我を忘れて怒り狂えば、ここから一気にやりやすくなる。

 果たして1号の呼吸が荒くなった。VSチェンジャーを握る手に力がこもる。しかし──

 

「……そう言われちまったら、正直返す言葉がねえよ」

 

 だって鋭児郎は、何も知らないのだ。ルパンコレクションのことも、ルパンレンジャーのことも──

 

「だけど……ッ、これはギャングラーからみんなを守るために使える力なんだ!何と言われたって、渡すわけにはいかねえっ!!」

 

 血の滾るような咆哮とともに──発砲。半ば予期はできていたレッドは、ひらりとマントを翻してそれをかわした。

 

「チッ……」

 

 また、綺麗事を。かえってこちらが苛立ちを覚える羽目になってしまったと、レッドは銃弾をお見舞いし返した。──あとになって思えば、その程度は序の口でしかなかったのだが。

 

「うおおおおおッ!!」

 

 雄叫びとともに距離を詰めてくる1号。回廊のオブジェクトをうまく盾にしつつ、レッドは相手を懐には飛び込ませない。手が届く距離を支配するのは……自分だ。

 

「ハッ……どーしたよヒーロー崩れ。コイツを取り戻してぇんだろ?」

「バカにしやがって……!」

 

 追う純白の赤、逃げる漆黒の赤。しかしここは敵の本拠地であって、いつまでもそのような戦法が通用するとは思っていない。

 

 一計を案じたルパンレッドは突如急旋回し、曲がり角に逃げ込んだ。

 しめたと、鋭児郎は思った。そちらは行き止まりだ。ここに出向となって日は浅いが、空いた時間に庁舎内を歩き回ってある程度つくりは把握している。それがこんな形でアドバンテージとなるとは思ってもみなかったが。

 

「ここまでだッ!!」

 

 勇ましく叫びながら、自らもそこへ飛び込む──

 

「……あれ?」

 

 いない。鋭児郎が思い違いをしたわけではない、確かにそこは袋小路なのに。

 

「………」

 

 いや、姿が見えないだけかもしれないと思い直す。たとえば透明になる個性、ギミック──この御時世、なんだって考えられる。

 

「そこにいるんだろ……。惑わされねえぜッ!!」

 

 躊躇うことなく、目前の壁面めがけてトリガーを引く1号。放たれた光弾は……鉄筋に、穴を開けた。

 

「あ、あれ……!?」

 

 姿を消しているのではなく……本当に、いない?

 偏差値でいえば70代後半の雄英高校ヒーロー科を卒業しているだけあって、鋭児郎は愚鈍ではない。……ないが、策略に長けているかといえばそうではない。自分なりに捻り出した読みがものの見事に外れてしまえば、戸惑ってしまうのも無理はない。

 

 一方の勝己は……気が短いのとは裏腹に、そうした能力に極めて長けていた。相手の反応までも予測したうえで、意表を突いた場所に身を潜めていたのだ。

 それを鋭児郎に知らせたのは、足下から飛び出した一発の光弾だった。

 

「な……ぐあぁッ!?」

 

 それを皮切りに、大量の光弾が襲いかかる。咄嗟に硬化してダメージを抑えようとする1号だが、相手の狙いはただ不意打ちでダメージを与えることだけではなかった。

 

「!?、うわぁぁぁぁッ!」

 

 蜂の巣にされた床が、硬化した1号の重みに耐えかねて崩落する。コンクリート片もろとも地下階に誘われる赤。不幸中の幸いか、それほどの高さはなかったおかげでダメージは最小限に済んだが。

 

「待ってたぜ……崩落ヒーロー!」

「ッ!」

 

 歓喜めいた声とともに、ルパンレッドが一気に距離を詰めてくる。その手にあるサイクロン。こちらにはバイカー。

 

(いちか……バチか!)

 

「──うおりゃあッ!!」

 

 立ち上がった1号が放ったのは、捨て身の拳だった。その"身"が指すのは己の肉体ではなく……握って放さなかった、バイカー。

 今度はルパンレッドが意表を突かれた。ゆえに咄嗟に取り上げようと手を出したが、彼もまたVSチェンジャーとサイクロンで両手が塞がっている。

 

 結果──ぶつかり合ったビークル同士が、弾け飛んで落下した。サイクロンは1号の、バイカーはレッドの背後に。

 当のふたりはがっちり組み合うような姿勢となり、身動きがとれない。レッドはたまらず舌打ちを漏らした。

 

「チッ、とち狂った動きしやがって……!」

「……ッ」

 

 空いた左手同士がぎりぎりと力を込めあっている。単純なパワーでいえば、身体的にもスーツの性能的にも1号に軍配が上がるのだ。苛立ちが、さらに深まる。

 

「ウゼェんだよ……毎回毎回いい子ちゃんぶりやがって……!」

「ッ、俺はただ……自分のやりてェことやってるだけだ……ッ!」

「ハッ……おめでてーアタマだなァ!」

 

 嘲りを強調するかのような快盗の言葉。ひと月前の鋭児郎であれば、怒りしか覚えなかっただろう。けれど、あらゆる局面における彼らの行動を目の当たりにしてきた今は──

 

「ッ、本当に、そう思ってんのか……?」

「ア゛ァ……!?」

 

「おめェらだって本当は、守れるモンは守りてェって思ってんじゃねえのかよ……!」

「……!」

 

 息を呑む音が聞こえる。少なくともそれは、骨の髄まで邪悪に染まった者の反応ではなかった。

 

「なのにこんなこと……!もうやめろよ快盗なんて!こんなやり方、絶対間違ってる……!」

「……ッ」

 

「……あァ、そうかもな」

 

 鋭児郎は一瞬、呆気にとられて声も出せなかった。予想だにしない肯定の言葉は、今までの荒々しいルパンレッドとは別人のように静かで……寂しい響きを放っていた。

 

「けどな──」

 

──来世は"個性"が宿ると信じて、屋上からの……ワンチャンダイブ!!

 

──きみなんか、ヒーローじゃない……!

 

 

 そして、氷となって砕け散った──デク。

 

 

「俺たちはこれしか無ェから快盗やってんだ……!正論なんざ、クソ喰らえだ!!」

「な、ぐぁッ!?」

 

 一瞬の隙をレッドは逃さなかった。1号の頬を力いっぱい殴り飛ばし、よろけたその全身に光弾を叩き込む。今度は硬化する間もなく、衝撃に脳を揺らされた彼は膝を折った。

 

「ぐ、うぅ……ッ」

「……ンなやめさせてェんならよ、テメェらの持ってるコレクション全部よこせや……!」

 

 バイカーを拾い上げ、そう言い放つレッド。その絞り出すような声は、どこか苦しそうだと鋭児郎は思った。

 だが、そうであったとしても。

 

「──ッ!」

 

 死力を振り絞ってサイクロンを拾い上げ──VSチェンジャーに装填する。

 

「!、テメェ……!」

「俺だって……譲れねぇんだよ!!」

 

『サイクロン!』

 

 Go!──電子音声とともに撃ち出されたサイクロンが、たちまち巨大化していく。屋内で無茶苦茶だとは鋭児郎自身思ったが、幸いにして地下空間は広い。手段を選んではいられなかった。

 対するレッドも──対抗手段はひとつしかないと、理解していた。

 

「チィ……ッ、逃がすかよ!!」

 

 拾い上げたバイカーを装填し、

 

『バイカー!出、()ーン!!縦・横・無・尽!』

 

 その威勢のいい音声すら今は不愉快だったが、マシン相手にそれを露にしたところで無意味なのはわかっている。パトレン1号に続き、ルパンレッドもまたビークルに乗り込んだ。

 

 互いの矜持を賭けた、チェイスがはじまろうとしている。

 

 

 *

 

 

 

 逃げるブンドルト。追う快盗の青・黄と、警察の2号・3号。前者はルパンコレクションにより高い跳躍能力を獲得しており、後者は牽制し合いながらというハンディキャップがあるにもかかわらず、状況は膠着状態に陥っていた。

 

「こ、コイツらしつこいのよぉぉ……!」

 

 逃げ出したときもそうだが、なぜかおネエ言葉を発するブンドルト。普段は粗野で狂暴な人格を装っているが、本来の彼は極度にビビりな小心者。その性格が表に出てしまうと、どうしてか口調までこんなふうに変わってしまうのだ。いや口調ばかりでなく……動きまでへっぴり腰、ゆえにコレクションの能力も十分に活かせずにいる。

 

「……何アイツ、さっきから。ふざけてんの?」

 

 3号がそう吐き捨てるのも、無理からぬことであった。

 

「なんにせよ逃がさん……ここで絶対に倒す!」

「──その前に、コレクションは我々がいただく!」

「ッ!」

 

 三つ巴の衝突、あるいは逃避行。深夜の街で行われる終わりの見えない戦いは、しかし唐突に終局を告げる。

 

「そこまでだ」

 

 いかめしい声が響き、反射的に立ち止まる一同。──刹那、異様な気配が辺りに立ち込めた。

 

「!?──イエロー、伏せろ!!」

「え、きゃあっ!?」

 

 ルパンブルーが咄嗟にイエローを押し倒す。筋骨隆々とした壮年の男がいたいけな少女を……という構図は明らかに健全ではないが、無論ブルーにやましい気持ちなど微塵もない。

 

 次の瞬間、大量のミサイルが四方八方から飛んできて、一同に襲いかかった。

 

「なッ……ぐあああああ!?」

 

 なんの用意もしていなかった警察のふたりは、着弾したミサイルの爆発に吹き飛ばされる。直撃を受ければいかに警察スーツを纏っていようとも粉微塵になっていただろうから、それでも不幸中の幸いだったといえるが。

 何より哀れなのは、ブンドルトだった。

 

「何なのよ急にィィィ~!!?」

 

 彼もまたあえなく吹き飛ばされ……突っ込む先は、海。

 

「イヤァァァァ~!!」

 

 派手な水飛沫をあげながら、ブンドルトは漆黒の水底へ消えていった──

 

「ぐ、うぅ……ッ」

 

 吹き飛ばされたパトレンジャーのふたりは、大きなダメージを受けて焦げた匂いのする地面に倒れ伏していた。変身も解除されてしまっている。

 一方のルパンレンジャーは、予期して動いていただけに傷ついてはいなかったが──

 

「ッ、な、何なん今の……」

「………」

 

 イエローが困惑するのも無理はないとブルーは思った……が、彼はこの場でおそらく唯一、下手人の気配を感じていた。

 

(これはまさか、今朝の……?)

 

 脳裏をよぎる、一つ目の巨人の姿。姿を現さずとも発する凄まじい威圧感は、炎司の心に確信を植えつけていた。

 

 

──果たして炎司の察知したとおり、彼らに無差別攻撃を加えたのはデストラ・マッジョだった。数百メートル離れた陸橋から、その一つ目で獲物たちを見下ろしている。

 

「あの鉄クズめ……元々期待はしていなかったが、早々に逃げ出すとは」

 

 あっさりと仕事を放棄した元子分を罵ると、彼は視線を他へ移した。そこには、真に彼が標的しているモノたちが縦横無尽に駆け回る姿があって。

 

「まあいい。あとは私自身の手で成し遂げる」

 

 言うが早いか、デストラは種子のような形状をした巨大な弾丸を取り出した。その起動スイッチを押すと同時に、夜空めがけて投げつける──

 

「大きい顔をしていられるのもここまでだ。──警察に、快盗ども」

 

 

 *

 

 

 

 パトレン1号の搭乗するサイクロンダイヤルファイターとルパンレッドの奪ったトリガーマシンバイカーが、深夜の街で壮絶なチェイスを繰り広げていた。

 

 地上から攻撃を繰り出すバイカー。対してサイクロンは機体を右に左にと蛇行させて巧みにかわしていく。前者のパイロットが、たまらず舌打ちをこぼした。

 

「チッ、陸からじゃ当たんねえか……」

 

 対して、

 

「っし、これならいける……!」

 

 空を飛べるサイクロンを獲れたことは不幸中の幸いだと鋭児郎は思った。強いて言うなら飛行型を操るのは不慣れなのだが、それは相手とて同じはず。

 しかし、それでも快盗は一筋縄ではいかない相手だった。サイクロンの放つ攻撃もことごとくかわされてしまう。

 

 夜明けと決着、いずれが早いかとお互いが覚悟を決めた直後──デストラによる介入が、明確な姿かたちをとって顕現した。

 

「グォオオオオオオ……!」

「!?」

 

 突如彼らの目の前に現れる、溶岩の鎧を纏ったかのような異形の怪物。それは赤く光る眼で二機をぎろりと睨みつけると、唸り声とともに異形の腕を振り下ろしてきた。

 

「ッ!」

 

 咄嗟に回避しつつ──ギャングラーかと、揃って思う。まずもっては当然の予想だったが、違和感もあった。ギャングラーにしてはまったく知性を感じさせない挙動、それに身体のどこにも金庫が見当たらない。

 

「こいつ……ギャングラーじゃねぇのか?」

『Exactly~!』

「!」

 

 突如響いた甲高い声は、いつの間にかコックピットに侵入していた漆黒の翼が発したものだった。

 

「コウモリ野郎、テメェいつの間に……」

『どうも国際警察が騒がしいみたいだったからな~、面白そうだと思って来てみたのサ!それよりアイツ、どうやらギャングラーの使役してる擬似生命体みたいだな』

「………」

 

 なぜそんなことをこの蝙蝠が知っているのか──疑念はあったが、ここで追及しても詮無いことだと思った。それより、ギャングラーではない……ルパンコレクションも持っていないというなら、話は早い。

 

『──おいヒーロー崩れ!』

「!?」

 

 いきなりどぎつい通信が入ってきたため、パトレン1号は面食らってしまった。

 

『アイツ殺んぞ、手ぇ貸せや』

「~~ッ、……わかった!」

 

 優先すべきは街を破壊するギャングラ──―擬似生命体──。快盗である彼がそう認識しているならば、自分だって。そう思うと同時に、鋭児郎は先ほどの一騎討ちで己が放った言葉への確信を深めていた。

 

 

『グッドストライカー!Get Set……飛べ!Ready……Go!!』

 

 ルパンレッドのVSチェンジャーから射出されたグッドストライカーが、サイクロンとバイカーを凌ぐほどに巨大化する。

 

『警察と快盗のタッグ、グッと来たぜ!ガッタイムはないけど、オイラも張り切って戦うぜ~!』

 

 三機のVSビークルが、擬似生命体"ゴーラム"に立ち向かう。火力の面ではルパンカイザーやパトカイザーに劣るものの、機動力でいえば圧倒的に分がある。ゴーラムの攻撃をかわしつつ、着実に反攻を続けていくトリオ。

 

「……コイツ、見かけ倒しだな」

 

 仮面の裏側で、勝己が獰猛な笑みを浮かべた。性能差で勝った敵ならば──それは、獲物でしかない。

 

「おい、トドメ行くぞ」

『ラジャー!』

『おう!』

 

 ゴーラムの猛攻をかいくぐり、まずバイカーが距離を詰めていく。内蔵された巨大なヨーヨーが放たれ──戻っては、また放たれる。

 

「グオォ……!」

 

 うめき声をあげながら後退するゴーラム。すかさずサイクロンが頭上に迫り、

 

「っし、喰らえ!」

 

 1号のかけ声とともに、ローターの回転がさらに勢いを増す。周囲に撒き散らされた旋風はやがて竜巻となり、街を巻き込むことなく標的のみを閉じ込めるという技巧を為した。

 

「グォ……オオォ……!」

 

 身動きがとれないばかりか、次第にゴーラムの身体が浮き上がっていく。こうなってはもう、彼に逃げる術はない。

 そして、"彼"がトリだ。

 

「やれ、コウモリ野ろ……グッディ!」

『……いい心がけじゃねえか!いくぜ!』

 

 躊躇うことなく、竜巻めがけて突撃するグッドストライカー。そんなものに翻弄されないのだという自信が彼にはあった。

 

『グッドストライカー・カミカゼアタック!!』

「グォアァァァァ……!!?」

 

 そして──衝突。同時にゴーラムが断末魔の声をあげる。その身を鋭い嘴によって貫かれ、彼にはもう命はなかった。

 

 ほんの一瞬の硬直ののち、風穴の開いた部分から亀裂が奔る。それが全身に達した直後──ゴーラムの身体は、爆炎とともに粉々に砕け散ったのだった。

 

『気分はサイコ~!!』

「っしゃあ!」

「………」

 

 無邪気に喜ぶグッドストライカー……と、1号。前者は当然として、後者もルパンレッドに背中を許してしまっていた。今この瞬間から敵に戻ると決まっている、快盗に。

 

「……バァカ」

 

 

 刹那、後方から思いきり引っ張られるような振動が1号を襲った。

 

「うわぁッ!?」

 

 バイカーのヨーヨーが、サイクロンのコックピット付近を直撃した──その事実を察知したときにはもう、彼の身体は宙に投げ出されていた。

 そして主を失ったサイクロンは、みるみる縮小化してルパンレッドの手の中に収まった。

 

「ごくろう、お人好しのオニーサン」

 

 見下しきった口調でそう言ってのけると、彼はバイカーを反転させ、そのまま夜の街の中へ消えていったのだった──

 

 

 *

 

 

 

──数時間後

 

 夜明け前というまず喫茶店とは無縁な時間帯に、煌々と照らされたジュレの店内。

 座り込む壮年の男といたいけな少女を、柄のよくない少年が勝ち誇った表情で見下ろしている。その両手にはサイクロンとバイカー、ふたつのVSビークルが握られていた。

 

「……で、俺に何か言うことは?」

「………よくやった」

「ほぉ~。──丸顔?」

「や……役立たずでゴメンナサイ……」

「ハッ、よくデキマシタ」

 

 鼻を鳴らす少年に対し、男と少女は忸怩たる様子で沈黙することしかできない。──目標とするルパンコレクションを、彼、爆豪勝己はふたつも手に入れた。一方で轟炎司と麗日お茶子、ふたりがかりの収穫はゼロだったのだ。種々の条件が異なるとはいえ、反論できないのもやむをえない──

 

「……調子に乗るのは構わんが小僧、あのデストラとかいうギャングラー、かなり厄介だぞ」

 

 今回はミサイルとゴーラム投入で済んだが、彼が本格的にビークル奪取に動けばかなり厄介なことになる。直接ぶつかっていない勝己も、一応はその危機感を共有してはいた。

 

「わーっとるわ。……ま、なるようになんだろ」

 

 彼らしからぬ前向きな物言いをして、踵を返す勝己。行方知れずとなったブンドルトのことなど、まだ話し合うべきことはあるのだが。

 

「風呂入ってくる。覗くなよ、特に丸顔」

「なっ!?」

 

 べ、と舌を出して二階へ駆け上がっていく。その背姿を、ふたりは唖然と見送るほかなかった。

 

「の、覗くかバーカ!……まったくもう!」

「まあ、ようやくきっちり出し抜いたんだ。今くらいは浮かれさせてやろう」

 

 そういう子供の一面を、彼は自ら抑圧しながら生きているのだから。

 

──ふたりは、勝己が切島鋭児郎からぶつけられた言葉を知らなかった。

 

 

『もうやめろよ快盗なんて!こんなやり方、絶対間違ってる……!』

 

「……知ったような口きくんじゃねーよ、クソっ」

 

 真白い浴室の壁に、拳を叩きつける勝己。降り注ぐ湯の温かさとは裏腹に、彼の心は冷えきっていた。

 

 

 *

 

 

 

 少年の心に意図せず楔を打ち込んだ切島鋭児郎は、そうとも知らず国際警察庁舎の屋上に立ち尽くしていた。

 

「………」

 

 VSビークルは二台とも快盗に奪われ、ギャングラーには逃げられた。完全なる敗北──とりわけ前者の結果責任は、自分にある。

 そんな現実に対する悔しさは当然渦を巻いている。だが今は、それ以上に──

 

『俺たちはこれしか無ェから快盗やってんだ……!正論なんざ、クソ喰らえだ!!』

 

(あいつらは一体、何を抱えて戦ってんだ……?)

 

 考えてもわからない。答が出るはずなどなかった。風に吹かれて、鋭児郎の懊悩は深まっていく。

 

 

 昇る朝日はそれでも、残酷なまでに美しかった。

 

 

 à suivre……

 

 





次回「重なりあうもの」

「命に代えても市民を守る……!」
「それが、俺たちの絆だ!!」


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