【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

29 / 156
かっちゃん四連覇おめでとう!
前回から5000票も伸びての1位…ヤベエっすわ~(語彙力喪失)
その影に隠れちゃいますが、キリシマンもデク轟に次いでの4位はなかなかの好成績だと思いまする。

拙作では今後も愛を込めてかっちゃんを曇らせていくのでお付き合いオナシャス!!



#10 紅蓮華 1/3

 

 ルパンレッドとパトレン1号の一騎討ちは、いつ終わるとも知れず続けられていた。

 

「死ねぇッ!!」

「ふ──ッ!」

 

 VSチェンジャーによる銃撃戦も、ルパンソード&パトメガボーによる鍔迫り合いも、互いの得意とする戦法はすべてやり尽くした。それでも決着がつく気配すらない。ただ疲労ばかりが蓄積していく。

 

「はぁ、はぁ……ふぅ」

 

 呼吸を整えつつ、寧人は思う。この敵、やはり自分とは互角の実力をもっている──そこは率直に認めざるをえない。

 

(だけど……ガキだな)

 

 体格や身のこなし、声色。ルパンレッドを構成するすべての要素が、彼が自分より年若い少年であると告げている。

 そう、子供なのだ。子供がなぜ快盗などに身を堕としたのか……ヒーローとして気にかかるところではあるが。

 

「ま……それはそれ、これはこれだよね」

「!」

 

 トリガーマシンバイカーを取り出し──VSチェンジャーに装填する。その動作に、ルパンレッドは身を硬くした。寧人は一気に勝敗を決するつもりなのだ。

 ここで全力を出しきってしまうのは憚られたが……やむをえない。彼もまた、自らが所持するサイクロンダイヤルファイターに手を伸ばそうとする──

 

──刹那、

 

『物間くん、応答してくれ!』

「!」

 

 塚内管理官からの通信に、1号の手が止まる。

 

『飯田くんと耳郎くんが、ギャングラーに取り込まれた……快盗たちも』

「!、……わかりました。救出が優先、ですね」

『ああ……頼む』

 

 なんとしてもルパンレッドのVSチェンジャーとダイヤルファイターが欲しかった寧人だが、危機的状況にある仲間を放り出すほど分別がないわけではなかった。銃を下ろし、怪訝な様子の敵に対して声をかける。

 

「お仲間がやられたみたいだよ、こっちのもだけど」

「は……!?」

「じゃ、そういうわけだから」

 

 相手が呆気にとられている間に、パトカーに乗り込み発進する1号。──我に返ったレッドも、慌ててそのあとを追っていくが。

 

「……ッ、」

 

 その心は、少なからず波立っていた。

 

 

「──ふぅ~、腹ァ膨れちまったぜ……」

 

 腹部をさすりながら、レストランから悠々と姿を現すメルグ・アリータ。周囲は既に国際警察の実力部隊によって包囲されており、彼は銃を向けられているのだが……気にも留めていない様子だった。

 

「止まれ!止まらないと撃つぞ!!」

「ハァ~?好きにすればァ?」

「~ッ、撃て──!!」

 

 容赦のない銃撃が開始される……が、量産品の武器が通用するはずもない。鬱陶しげに銃弾を払いのけながら、メルグは深々とため息をついた。

 

「チッ、これ以上臭いメシ食いたかねぇんだよ。──テメェらで処理しろポーダマン!!」

 

 号令に応じ、どこからともなく集結する雑魚兵士たち。彼らもまた量産型だが……ギャングラーである以上、常人では太刀打ちできない力をもっている。

 

──蹂躙。

 

 銃撃のお返しによって陣形が崩れたところで、隊員たちに襲いかかるポーダマンの群れ。ほとんどリンチのような形でのなぶり殺し。その凄惨な光景を眺めつつ、メルグは嘲う。

 

「へへへッ、ルパンコレクションも持ってねえ人間が粋がんじゃないよ。──じゃあなァ!!」

 

 そして……悠々と姿を消す。もはや追跡どころではなく、ポーダマンによる一方的な虐殺ショウが開始されつつある。

 

「うぅ──ッ」

 

 散々に痛めつけた隊員のひとりに、いよいよとどめを刺そうとするポーダマン。ボロボロになった隊員にもはや抵抗する力は残っておらず、瞼を固く閉ざして現実から目を背けることしかできない。──彼の運命は、変わらない。

 

 ファントムシーフという、ヒーローの存在がなければ。

 

「ふ──ッ!」

 

 金属同士がぶつかる澄んだ音が響き、次の瞬間、ポーダマンは弾き飛ばされていた。

 

「……お待たせしました。まだ生きてますか?」

「!、パトレンジャー……!」

 

 今は赤の戦士、パトレン1号。未だ少年のいろを残した含みのある声を発しつつ、鮮やかに敵を叩き伏せていく。

 さらに、

 

「オラァァァッ、散れ雑魚ども!!」

 

 本来なら人助けを是としない快盗──ルパンレッドまでも参戦し、ポーダマンを蹴散らしている。何故か。

 無論、国際警察の面々を積極的に救援しようというのではなかった。

 

「オイコピペ野郎ッ、ギャングラーがいねぇじゃねえか!!」

「ッ、僕に言われてもね……。──ジム・カーター、ギャングラーは?」

『は、反応が消えてしまいました……!』

 

 ロボットのくせに随分と上擦った声でしゃべる。寧人の思考はかなり棘のあるものになっていたが、表には出さなかった。少なからず自分にも責任はあるのだ。

 

「……仕切り直しか。いったんそちらに戻る、ギャングラーの行き先のアナライズを頼むよ」

 

 とはいえまだポーダマンは残っている。迅速に決着をつけるべく、1号はバイカーを装填したままのVSチェンジャーを構えた。

 

『バイカー、パトライズ!警察ブースト!』砲身にエネルギーが集束し、『バイカー、撃退砲!』

 

 ルパンレッドがうまく一ヶ所に集めたポーダマンに、ギャングラーを一撃で粉砕する撃退砲が炸裂する。ポーダマン程度であれば、群れであっても末路は同じ。

 

 爆炎が落ち着いたときには、彼らは残骸ひとつ残さず消滅していた……そばにいたルパンレッドまでも──

 

「そんなワケないか」

 

 爆発に乗じて素早く逃げおおせたのだろう。見切りの早いガキだと、寧人は皮肉っぽくつぶやいた。尤も、そういうドライな思考回路にはむしろ親近感を覚えるのだが。

 

 

 *

 

 

 

 現在のパトレン1号である物間寧人が冷静に行動する一方で、居ても立ってもいられない前任者がいる。

 

「それ、本当なんスか……!?」

 

 言葉を失う新米ヒーロー・烈怒頼雄斗こと切島鋭児郎。パトロールから戻った彼は、同僚たちが立ち話をしているところに出くわしてしまったのだ。内容は……警察及び快盗と、メルグ・アリータの交戦の顛末について。

 

「あ、ああ……新しいパトレン1号のファントムシーフと、ルパンレッドは無事だそうだが」

「国際警察の知人から聞いた話だ、間違いないよ」

「ッ、そんな……!」

 

 鋭児郎は思わず拳を握りしめていた。飯田天哉と耳郎響香、警察戦隊を離れようとも、ふたりが大切な仲間であることに変わりはない。その仲間が、現在進行形で危機に陥っている──

 

「~~ッ!」

 

 そう、彼は居ても立ってもいられなかった。素早く踵を返し、走り出そうとする──先輩ヒーローたちの制止は耳に入らない。

 

 しかし、そんな彼の前に物理的に立ち塞がる者がいた。

 

「どこへ行く気だ、烈怒頼雄斗?」

「──!」

 

「フォースカインド、さん……」

 

 四本腕の任侠ヒーロー。二つ名に違わぬ強面で対峙する彼こそ、鋭児郎が所属するヒーロー事務所の所長である。

 左目に走る傷痕も相俟って、じろりと睨みつけられるとそれだけで身体がすくみ上がってしまう。しかし鋭児郎はごくりと唾を呑み込み、呼吸を整えた。上司相手に尻込みなどしていられない。

 

「行かせてください……!国際警察に!」

「行ってどうする?おまえはもうパトレンジャーじゃねェ、ただの新米ヒーローなんだぞ」

「ッ、それは……」

 

 国際警察に馳せ参じたところで、自分に何ができるのか──フォースカインドの問いかけに対する答を、鋭児郎は持ち合わせてはいない。

 だが、それでも──

 

「……何ができるかはわかんねぇ、でも何かしようとすればできるかもしれねぇ!」何より、「この前まで一緒にがんばってきたダチが、ピンチなんだ!何かしなきゃいられねぇんス!わかってください、フォースカインドさん……!」

「………」

 

 フォースカインドは暫し沈黙していたが、

 

「……本来の仕事を放り出していくんだ、それ相応の覚悟はできてるんだろうな?」

「……!」

 

 ヒーローとしての仕事を──確かにそうだ。地道にヴィランから人々を守る、それは本来何より優先されるべきもの。

 けれど鋭児郎の肚は、既に決まっていた。

 

「……スンマセン……!」

 

 深々と一礼し、相手の傍らをすり抜けて飛び出していく。フォースカインドはもう引き留めなかった。振り向くこともせず、背中で若造の部下を見送るだけだ。

 

「いいんスか、行かせちまって?」

 

 様子を窺っていた鋭児郎に瓜二つの先輩ヒーローが声をかける。二歳ではあるが年長なことも手伝い、彼のほうが物腰は幾分落ち着いていた。

 

「止めても止まらんだろう、ああなっちまったら」

「……ま、そっスね」

 

 ダチを救ける──ヒーローである以前に"漢"としての、切島鋭児郎の矜持。同じような思考回路をもっている彼にも、それがよくわかった。

 

(飛び出したからには絶ッ対ダチ救けてこいよ……切島)

 

 本音を言えば、誰がどう見ても善人の後輩と、性格に難のある元同級生がどのような科学反応を見せるのか──そこが気になるところでもあった。

 

 

 *

 

 

 

「……だ、起きて……飯田、」

「ん……」

 

 身体をやおら揺さぶられて、パトレン2号──飯田天哉の意識は覚醒へと向かった。

 瞼を開ければ、こちらを見下ろす同僚女性の姿。記憶を一息に手繰り寄せる。

 

「ッ、俺たちは……一体」

 

 鈍く痛む頭を押さえながら、身体を起こす。周囲は薄暗いが、ややピンクがかった壁に四方を覆われていることがわかる。そして、どこからともなく噴き出す毒々しい色の霧。

 

「多分、あのギャングラーの腹ン中だ」

「!、ということは……」

 

「──あの霧は、消化液の類いだろうな」

「!」

 

 自分と同僚以外の人間の声に、天哉は驚愕とともに振り返った。──自分たち以外にあのとき呑み込まれたのは……快盗だけ。

 

 果たして、そこにはレッドを除くふたりの快盗の姿があった。ルパンブルーとルパンイエロー。彼らもまた、敵であることに変わりはない。咄嗟に銃口を向けようとするパトレン2号を、同僚が押しとどめた。

 

「待った。ここで戦りあってもしょうがないでしょ、まずは脱出する方法を考えないと」

「ム……そうだな、確かに」

 

 渋々VSチェンジャーを下ろす。快盗の側も意見は同じだったのか、敵対的な行動をとる様子はなく。

 

「ひと通り攻撃も加えてみたが、この肉壁には傷ひとつつけられなかった。ダイヤルファイターも不具合を起こしているしな……」

 

 VSビークルを巨大化させることで、メルグ・アリータの身体を内側から破壊して脱出する──そういう手段も使えないということになる。自分たちの力でどうこうするのは、至難の業と言うほかないようだった。

 

「……じゃあ、残った物間とそっちのレッドに頼るしかないってワケ?」

「そういうことになるな」

「ッ、他人任せとは……!」

 

 拳を握りしめる2号。──刹那、足下でしゅううと焼けつくような音が響いた。

 

「ッ!?」

 

 霧が、足下を侵しつつある。反射的に足を引っ込める……が、逃げ場などないことにすぐ思い至った。

 

「強化服を着ていなければ、我々はとっくに骨も残っていないだろうな」

「………」

 

 そう、自分たちは"喰われた"のだ。いつまで無事でいられるか……そう長く猶予はあるまい。

 ただ天哉の胸中では、生きながらにして消化されて死ぬことへの恐怖より、先んじて取り込まれた人々の顛末が悔しかった。救けることができなかった──明確な、敗北。

 

(飯田さん……)

 

 ルパンイエロ──―麗日お茶子はそんな彼に気をやるようなそぶりを見せたが、態度には出さなかった。快盗と警察、呉越同舟はありうるにしても、あくまで敵として振る舞わねばならないのだ。でなければ、つらくなるのは自分なのだから。

 

 

 *

 

 

 

 独り戻ったジュレの店内は、静寂に包まれていた。

 

 当然だ。客がいるはずもないし……同志たちが、先に戻っているはずもない。彼らは、ギャングラーに呑み込まれたのだ。

 

「………」

 

 シルクハットとマスクを乱雑にカウンターの上に投げ捨て、椅子に座り込む。

 

──きっと、まだ間に合う。救けられる。

 

 頭ではわかっているのに、身体が動かない。やり場のない焦燥──デクが目の前で砕け散ったあのときを、思い起こさせる感情。

 

「……あいつらが、使えねーだけじゃねえか……」

 

 つぶやいた言葉が、ひどく空疎に響いた──刹那、

 

「確かに、お二方の自己責任ですね」

「!」

 

 誰もいないはずの店内に、こだまするもうひとつの声。振り向けばそこには、頭部を黒い靄に覆われた男の姿。「黒霧、」と、勝己は彼の名前を──本名かは知らないが──呼んだ。

 

「しかしきみはそう切って捨てることができない。違いますか?」

「……俺は、」

「爆豪くん、きみはもっと己を知るべきです。自分が本当は、どういう人間なのか」

「ッ、……るせぇんだよ……!ンなこと、アンタには関係ねえだろうが!!」

 

 ようやく空気を震わせるような声が出た。そう、これが勝己のリアル──どういう人間かをはっきり示す姿じゃないか。そう思って、自嘲をこぼしそうになる。

 黒霧は不快を露にすることもなく、「出過ぎたことを申しました」と頭を下げた。そして、何事もなかったかのように会話を続ける。

 

「お二方を救ける方法はあります」

「……わぁっとるわ。奴のコレクション奪えば、嫌でも吐き出すっつー話だろ」

 

 いかにメルグ・アリータが化け物と言っても、自身とほぼ同じサイズの生物を丸呑みにできるのはルパンコレクション"胸いっぱいの愛を~Tout ton amour~"を持っているがゆえだ。奴はその能力で胃袋を拡張しているのである。

 

「アンタにゴチャゴチャ言われんでも、連中は引きずり出す。……どんな手を使ってでも」

 

 デクの夢を断つためにデクを貶め、デクを取り戻すために己の夢を断った──手段を選ばないというのは、なんとも自分らしいではないか。

 そんな勝己の想いを知ってか知らずか、黒霧は靄を揺らしてうなずいてみせた。

 

「よろしくお願いします。ルパンレンジャーは、かけがえのない存在ですので」

 

 空々しく言葉を響かせ、黒霧は自ら産み出した靄の中に消えていった。再び静寂に包まれる店内、しかし勝己の頭脳は既に回転を始めていた。

 

(ヤツはこれまで三日は開けてレストランを襲撃していた。食った人間を消化して、また腹が減るまで……)

 

 となれば、次の出現など待ってはいられない。当然潜伏先に夜襲を掛けるしかないわけだが、その手がかりはない。

 

(……いや、ひとつだけある)

 

 "奴ら"なら、あるいは。勝己にもはや躊躇はなかった。快盗などに身を堕としている時点で、プライドなど店の片隅に落ちている塵芥ほどの価値もないのだから。

 

 

 




キリシマンは本当はファットガム事務所に入れてやりたかったんですが、関西舞台にはしづらいのと、「瓜二つの先輩ヒーロー」が同じ事務所にいる設定にしたかったのでフォースカインドさんに出てきてもらいました。

当然、原作キリシマンとはまったく異なる学生生活だったはずなので、ファットガムとのかかわり方も違うものになっているハズです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。