たぶん今年最後の投稿になります。皆様よいお年を……。
劇場版、なんだアレ…なんなんだアレは……(語彙力喪失)
あんなもの見せられたらもう、かっちゃんとデクを描くしかないじゃねえかよ!
「うぉらぁぁッ!!」
野獣のごとき咆哮とともに、ルパンソードを振り下ろすルパンレッド。
すんでのところで刃をかわすメルグだが、今回の敵は単独ではない。一瞬動きが鈍ったところで、今度はパトレン1号や烈怒頼雄斗が警棒や己の拳といった武器で攻めたててくる。
多対一の構図──真正面からのぶつかり合いではメルグの劣勢は明らかだったが、彼には切り札があった。
「背に腹は代えられねえッ!!」
その腹部ががばりと開き、中から複数の触手が飛び出してくる。成人を絡めとり、引きずり込むにふさわしい長大さ。それが四駆のごとき高速で迫ってくる。──これが、勝己たちの仲間を呑み込んだのだ。
「ッ!」
咄嗟にマントを翻し、触手を避けるルパンレッド。パトレン1号は警棒で触手を振り払いつつ、彼らほど素早くは動けない烈怒頼雄斗を庇っている。
「あ……す、スンマセン、あざす!」
「まぁ、いいよ。快盗のおかげで多少余裕ができたからね。それに──」
本格的な衝突が行われる直前、ルパンレッドは「考えがある」と言った。それがなんなのか共有し連携に組み込むほどの猶予も信頼もないが、寧人は少なくとも彼を信用はしていた。"使えるヤツ"ではあると──
一方のメルグはというと、機敏に避ける快盗より防御に徹している警察と生身のヒーローに標的を定めつつあった。逃げる敵をちょこまか追うより、動かない敵のほうが狙いやすい。そうして頭数を減らしてしまえば──セオリー通りといえばそれまでだが、決して愚考ではないはずだった。
「そんな警棒一本でぇッ、いつまでオレから逃げられるかなァ!?」
「ッ、さあ、どうかな……」
悔しいがメルグの言う通り、パトレンジャーの装備をもってしてもギャングラーの猛攻に対しては防戦を強いられる。個性なる技能を得たといっても、人間のなんと脆弱なことか。
しかしその脆さゆえ、知恵を絞って作り上げてきたのが人間の歴史である。異邦人であるこの異形の怪人たちには、そんなこと知るよしもない。
そして食欲に頭脳の大部分を支配されているメルグ・アリータは、悲しいかな視野も狭窄ぎみだった。パトレン1号と烈怒頼雄斗を獲物と認識するがゆえに、残るひとりのことは次第に意識から遠のいていく。
それが、致命的だった。
「おらァッ!!」
「グオッ!?」
突然左腕がきつく締め上げられ、力いっぱい引っ張られる。何かと思えば、そこには真っ赤なロープが巻きついていて。
そして迫る、赤と漆黒の影──ルパンレッド。拘束したメルグの左腕にある金庫に、思いきりダイヤルファイターを押し当てる。
『1・2・8!』
──解錠。そして、
「ルパンコレクション、確保ォ!!」
「なァァ!!?」
流れるような早業だった。ランプ型のルパンコレクションを手に、目的を達したルパンレッドは素早く後退する。
そして能力の源を失ったことで、メルグの身体には早くも異変が起きていた。
「グッ、い、胃がァ……ぐほっ、ガボッ、ゲボゴホォォッ!!?」
耳を塞ぎたくなるようなうめき声とともに、メルグの口が人間ではありえないほど拡張される。
そして──ヒトの形をしたモノが、幾つも吐き出されてきた。
「うわぁぁぁッ!!?」
「痛、つつ……──ここ、外?」
常人にしては、妙にカラフルなその姿。それもそのはず、彼ら皆、それぞれのパーソナルカラーたる強化服で全身を覆っていた。
「飯田ッ、耳郎!!」
そう叫んで、真っ先に四人……のうちふたりに駆け寄ったのは鋭児郎だった。
「よかった、無事で……!」
「切島くん……なぜ、きみが?」
「もしかして、ウチらのコト聞いて駆けつけてくれたとか?」
ぶんぶんと頷く。その目尻に涙さえ浮かんでいるのを目の当たりにして、天哉と響香は顔を見合わせてくすりと笑った。立場が別れたところで、彼の気持ちはまったく変わらないのだ。
「………」
そしてそんな三人の輪に加わることなく、現在のパトレン1号である寧人は様子を見守っていた。仮面に隠れたその表情がいかなるものなのか、隣に立つ勝己は一瞬気をやったがすぐに打ち消した。
そして鋭児郎のような勢いはないものの、自身の仲間のもとに一歩を踏み出そうとしたのだが。
「う……ウググググゥ……!」
「!」
唸り声とともに、メルグは早くも立ち直ろうとしていた。自身とほとんど変わらないサイズのオブジェクトを四つも吐き出したのだ、常人なら破裂して死んでいてもおかしくないところだが……流石にギャングラー、しぶとい。
「チッ」
舌打ちをこぼしつつ、ルパンレッドは立ち止まった。ブルーとイエローが無事なのは見ていればわかるのだ、わざわざ駆け寄る必要もあるまい。
そう己に言い聞かせ、懐からサイクロンダイヤルファイターを取り出す。寧人のパトレン1号とのタイマンでは果たせなかったが、今度は。
『──サイクロン!』
3・1・9──ダイヤルを回し、その隠された力を目覚めさせる。
『サ・サ・サ・サイクロン!』
サイクロンと合体したVSチェンジャーの銃口に、エネルギーが集束を開始する。同時に、レッドは声をあげた。
「おいブルー、イエロー!動けんなら手伝えや!!」
「!」
半ば怒声に近い叫びをぶつけられたふたりは、先ほどのパトレンジャーよろしく顔を見合わせて苦笑するほかなかった。
「まったく~、よかったのひと言もないなんて!」
「……まあ、よかろう。俺たちに必要なものでもあるまい」
「まあそうなんだけど……ハァ」
ため息をつきつつ、VSチェンジャーを構えて立ち上がるふたり。引き金を引くタイミングは寸分違わず合わせる──誰が命じるでもなく、彼らの心は一致していた。
『快盗ブースト──』
「死ねぇアリクイ野郎!!」
それが合図となった。
旋風の能力を得たレッドの銃からかまいたちのような緑色のエネルギーが放出され、そこにブルーとイエローの放った光弾が合わさることによってさらに勢いを増す。
そしてかまいたちはまるで意志をもっているかのごとく、獲物めがけて突き進んでいく。あらゆる魂を刈り取る死に神の鎌、いかに頑丈なギャングラーといえど逃れるすべはない。
「ぐァアアアアア──!!」
メルグ・アリータは光に呑み込まれ、五体を切り刻まれた。──爆発。
その場には、ひしゃげた金庫のみが残されたのだった。
「へぇ……まあまあ使えンな、コレ」
珍しく感心したように、ルパンレッドがつぶやいた。
──ギャングラーが爆死を賜ったとなると、必ずと言っていいほど姿を現す者がいる。
「珍味、楽しみにしてたのに」
「!」
空間を歪めて出現する異形の女──ゴーシュ・ル・メドゥ。彼女は金庫のもとに歩み寄ると、そっと手をかざした。
何をしでかすつもりなのか、この場にいる全員が嫌というほど理解している。ゆえに黙って見ているわけもなく、手の空いていたパトレン1号を皮切りに次々弾丸を叩き込んでいくのだが、
「無駄よ……そんなの」
──効いていない。
「私の可愛いお宝さん、メルグを元気にしてあげて……」
彼女の持つルパンコレクションが力を発揮し、自ら改造した腕を通してエネルギーが金庫に注ぎ込まれる。濃縮された生命エネルギーを与えられた金庫は瞬く間に巨大化し、
「ウォオオオオッ、サンキュ~ゴーシュぅ!!」
そして死したはずのメルグ自身も、金庫に合わせて高層ビル並みの巨大化を遂げた。
いち倉庫がそれを受け入れきれるわけもなく、破壊された天井がにわかに崩落する。もっとも、ゴーシュの挙動を阻止できなかった時点でこうなることを悟っていた快盗も警察(+烈怒頼雄斗)も、素早く外へ避難していたため被害を受けることはなかった。
──直後、まるでこの瞬間を狙い澄ましていたかのように、"彼"が夜空をかき分けて飛んできた。
『グッドストライカーぶらっと参上!パトレンジャー、お前らの絆にグッと来ちまったぜ~!』
「!、ならば今日は俺たちの出番か……!」
「ヤツには散々世話ンなったんだ、借りは返してやんないとね」
意気軒昂の2号と3号に対し、1号の反応は鈍かった。──それどころか、程なくして自ら変身を解除してしまったのだ。そして、
「キミ、やりなよ」
「へ!?」
皆が唖然とする中で、寧人はVSチェンジャーとトリガーマシンを鋭児郎に押しつけた。
「やれって……そんな」
「グッドストライカーがグッと来たのは、キミたちの絆だろう?」
「!」
「だから、このほうがパトカイザーのポテンシャルを最大限に発揮できる。──そうだよね、グッドストライカー?」
『確かに、オイラが一番グッと来たのはソイツだなぁ!』
「……どうします、管理官?」
見かねた3号が訊く。──と、暫しの沈黙のあとで答が返ってきた。
『やむをえない……許可する』
言い訳などどうにでも立つ。今は確実に巨大メルグを倒すことが重要なのだ。
管理官の判断を受けて、鋭児郎もまた肚を決めた。
「……警察チェンジっ!!」
『1号、パトライズ!』
──そして鋭児郎は、再びパトレン1号へと変身を遂げた。
「じゃ、あとは任せたよ烈怒頼雄斗」
「了解っス!先輩は安全なところに避難を!」
「言われなくても、そうするよ」
機敏にその場を離れていく寧人。それを見届けるまでもなく、鋭児郎の変身した1号はトリガーマシンを装填した。
「っし……行こうぜ飯田、耳郎!グッドストライカー!」
『轟・音・爆・走!』
『百・発・百・中!』
『乱・擊・乱・打!』
『一・撃・必・勝!』
『いくぜ~、警察ガッタイム!』
巨大化したトリガーマシンとグッドストライカーが、"ガッタイム"──合体によって、鋼鉄の巨人へと姿を変えていく。
『正義を掴みとろうぜ~!!』
「「「完成、パトカイザー!!」」」
帝王の名を冠した巨人が、異界の怪物と対峙する──
「よしッ、切島くん!」
「撃って撃って撃ちまくれ!!」
「おうよ!!」
三人の意気に合わせ、弾丸を連射しまくるパトカイザー。しかしメルグもさるもの、触手を駆使して弾丸を弾いていく。
「クソがっ、これ以上オレの食事を邪魔すんじゃねえ!!」
さらにそのまま伸びてくる触手。銃撃を続けていたパトカイザーは離脱が間に合わず、絡めとられてしまう。
「……ッ!」
「このまま捻じ切ってやるゥ……!」
ルパンコレクションを失っているため、天哉たちのように呑み込まれてしまう心配はない。だがそれを理解しているメルグは触手にギリギリと力を込め、パトカイザーのボディを打ち砕こうとしている。
コックピットに火花が散る。早くも絶体絶命か……"切り札"がなければ。
「させるかよ……まだ俺らには"コレ"があるんだ!!」
パトレン1号が力強く握りしめたのは、トリガーマシンバイカー。
『お~、やっちゃえやっちゃえー!』
ぬいぐるみ状に姿を変えたグッドストライカーまでもがけしかけてくる。もはや、躊躇う理由などどこにもなかった。
「っし、いくぜ!」
『バイカー!位置について、用意……』
『出、動ーン!!』
パトカイザーの頭部コックピットから射出されたバイカーが、みるみるうちに巨大化していく。
『縦・横・無・尽!』
パトカイザーを拘束する触手の上を、バランスを崩すことなく直進していくバイカー。
「な、何ィグワァァッ!!?」
当然対処など間に合いようはずもなく、突撃を受けて吹き飛ばされるメルグ。絡み付いた触手がことごとく解け、パトカイザーは晴れて自由の身となる。
間髪入れず、グッドストライカーが叫んだ。
『右腕、変わりまっす!』
トリガーマシン3号が分離し、入れ替わりにバイカーが新たな右腕となる。その挙動を確認するかのように大きく振り上げつつ、先端のヨーヨーを伸縮させるパトカイザー。
「「「完成──」」」
──パトカイザー"バイカー"。
マゼンタを基調としたトリガーマシン3号が離れたことでより無骨な姿となった巨人は、勇敢に敵へ接近していく。
一方のメルグもまた、触手を封じられたことで突撃を選んだ。尤も彼の場合、勇敢というよりは考えなしというほかないのだが。
そう、肉弾戦ともなれば、いちギャングラーなどよりパトカイザーバイカーの馬力が圧倒的に勝るのだ。
ホイールで思いきり殴りつけられ、仰け反ったところに左腕が叩きつけられる。反撃は一発も通らず、メルグはみるみるうちに劣勢へと追い込まれていく。
『よ~し、本気モードでいっちゃおうぜ!』
「おうよッ!」
跳躍するパトカイザー。大きく距離をとったところで、右腕を構える──ヨーヨーが、射出される。
「グオオオオッ!?」
何度も叩きのめされ、ついにメルグは身体をきりもみ状に回転させながら吹き飛ぶ。それを見た天哉が、嬉しそうにつぶやいた。
「警察とヨーヨーは、相性が良いのだな……!」
「えっ……あぁうん、そうかもね」
わかるようでわからない発言だと響香は思ったが……あえて突っ込みは入れなかった。──そろそろ、潮時なのだ。
「お返しだ!」
今度はヨーヨーをメルグの身体に巻きつけ、厳重に拘束する。先ほど自分がしていたように締めつけられ、メルグは骨を粉砕されるのではと恐怖した。
尤もパトレンジャーは、そのようなスプラッタな手段をとるつもりは毛頭ない。きっちり、あとも残さずに殲滅する。
「「「パトカイザー、ロックアップストライクッ!!」」」
シートから立ち上がり、三人同時にVSチェンジャーの引き金を引く。するとパトカイザーはメルグの身体を空中へと引っ張りあげ、銃口を突きつけた。
「!?、ギャアアアアアアッ!!?」
容赦なく浴びせかけられる銃弾。拘束されている以上、彼に抵抗のすべはない。
彼に唯一できることといえば、
「せめて……最後にデザートをォォォ……!」
そう、未練のこもった断末魔を叫ぶこと。
次の瞬間には、彼は高々と投げ飛ばされ……爆死を迎えたのだった。
「任務──」
「「「──完了!」」」
三人の声が揃う。顔を見合せ、彼らは笑った。お互いに表情は隠れているけれど、気持ちはわかる。
一方で、
「……なんだよ、しっくり来てるじゃないか」
パトカイザーバイカーの勇姿を見上げ、寧人はぽつりとつぶやいたのだった。
警察の勝利を、快盗たちもまた見届けていた。
「お~片付いた……。ハァ、これでひと安心やわぁ……」
「……まったく、久方ぶりに不愉快極まりないギャングラーだったな」
お茶子はともかく、炎司までもが珍しく露骨に胸を撫でおろしていた。快盗スーツのおかげで身体に害はなかったが、精神的なものになると話は別である。メルグがさっさと倒されたことに喜ぶのも当然といえば当然なのだが、
「なぁにがひと安心なんだァ、オイ?」
「!」
彼らにはまた別の、厄介な敵が存在していた。
「ば、爆豪くん……」
「テメェらよォ、俺になんか言うことはねェんかよ?」
「はぁ……助かった、礼を言う。これでいいか?」
渋々炎司がそう応じると、勝己は汚物を目の前にぶら下げられたかのように盛大に顔をしかめて舌打ち、そのまま踵を返した。
「……朝メシ、何が食いてえ」
「えっ?」
思わず訊き返してしまうのは、それが勝己の口から放たれることなどめったにない問いだったから。
答を待たず、さっさと歩きだす勝己。炎司とお茶子は再び顔を見合せたあとで、その背中を追いかけていく。
「なんでもいいぞ」
「ア゛ァ!?なんでもいいが一番困ンだよ!!」
「じゃ、じゃあ……卵かけご飯?」
「ンな作り甲斐のねぇモン作らせる気か丸顔コラァ!!」
*
「じゃ、短い間でしたけど……お世話様でした」
タクティクス・ルームに響く、惜別の言葉。数日前にも聞かれたそれは、その数日前に迎え入れられたばかりの青年によって紡がれたものだった。
「こちらこそ、全力を尽くしてくれて感謝している。ありがとう」
「くッ……しかし残念だ、きみと親交を深める時間さえなく……!」
「……しょうがないよ、急な人事異動だっていうんじゃ」
──ファントムシーフこと物間寧人は早くも警察戦隊を脱退することになったが、国際警察への出向が解かれるわけではなかった。
寧人と同じく出向という形でパリ本部に勤務していたベテランヒーローが、任務中に重傷を負って引退することになってしまった。その後任として、本部長クラス直々の指名を受けたのが寧人だったのだ。
ただ、日本支部があっさりそれを承諾したのは、不在となるパトレン1号の後任も既に決定しているからだった。
「バトンは返すよ。──烈怒頼雄斗」
「う、ウッス!」
緊張の面持ちでうなずく烈怒頼雄斗──切島鋭児郎。言うまでもなく、寧人の前任でもある。
「ま、近々またお会いしましょう。パリは遠いと皆さんお思いでしょうけど、案外そうでもないですから」
「ふ……、そうだな」微笑む塚内。「きみの今後の活躍、そしてまた一緒に戦える日が来ることを祈っている」
ありきたりな惜別の辞だったが、その言葉は本心から来るものだった。皆に惜しまれながら、二人目のパトレン1号は颯爽と退場していく──
「……ジュレの三人、気をつけたほうがいいですよ」
「!」
耳郎響香に対して、そんな耳打ちを残して。
「……物間くんは残念だったが、きみとまた戦えるのはとても嬉しい!切島くん、これからも一緒に頑張ろう!!」
「おう、よろしくな!ギャングラー殲滅まで、もう絶対ブレねえぜ!!」
「……そういえばいつの間にか仲良くなったな、きみたち。タメ口だし……」
そんなことはつゆ知らぬ男たちが、賑々しく言葉をかわしあっている。暫し悩んだ響香だったが、ひとまずは喜ぶのが先だとその輪に入っていった。寧人のことを惜しむのと同じくらい、今は鋭児郎の帰還を喜びたかった。
à suivre……
(Épilogue)
歓楽街の片隅にある、小洒落たオーセンティックバー。
本来落ち着いて酒を嗜むべきこの場所に、場にそぐわぬ酔い方をしている青年の姿があった。
「う゛うううう……ッ、ひぐッ、う、うぇ……!」
顔を真っ赤にして、子供のように嗚咽を繰り返す。元々どちらかというと童顔に近い目鼻立ちだから、そんな状態だととても成人男性とは思えない──少なくとも同級生だとは思いたくない。それがこの酒席をともにする男の感想だった。
「物間ぁ……呑みすぎだって。もうその辺にしとけよ」
「う、うるさいよ……う゛う……ッ!きょうはのむんらよッ!」
「………」
出会いが少年の時分であるがゆえに、素面では常に人を喰ったような態度の友人にこんな一面があるなどとは知りもしなかった。
最初はただただ面食らうばかりだったが、今となっては慈しむ気持ちもある。毒舌な自信家というパーソナリティは、他人に弱音を晒すことをよしとしない。酒の力を借りなければ、発散できないのだろう。
「パトレンジャー、そんなにやりたかったのか?」
「……あたりまえ、じゃらいか……ッ」
あぁ、これが本音か。男はふ、と口許を弛めた。それは当然、嘲笑などではない。
「ぼ、ぼくらって、ぎゃんぐらーからみんなをまもりたいっておもって、そしたらこくさいけいさつからこえかかって……!がんばろうっておもったけど、あいつら、もうれっどらいおっととちーむになってて……!ぼくじゃなくてあいつのほうがいいんだ、だってあいつ、すごくいいやつだから……!」
「物間……」
その烈怒頼雄斗を後輩にもつ身として、寧人の言うことは理解できた。鋭児郎は裏表がなく、寧人のように他人に毒を吐くこともない。まっすぐな熱血漢で、それでいて自分なりに悩みを抱えていて──強者にも弱者にも寄り添える、そんな青年だ。寧人とどちらが好感がもてるかといえば、自ずと答は決まってしまうだろう。
けれど男はこうも思うのだ。だからといって、寧人がチームに受け入れられなかったわけではないだろうと。
「けど、その烈怒頼雄斗が言ってたぜ。おめェとも一緒に戦えないのが、すげぇ残念だってさ」
「……!」
「アイツはお人好しだけど……性根のひん曲がってる漢らしくねえヤツのことは、絶対に好きにはなんねえよ」
「アイツがそう言うんだ。国際警察の連中だって、そう思ってンじゃねえかな」
「……てつ、てつ……」
目を丸くして、鼻水まで垂らして……これ以上はないくらい子供じみた表情を浮かべていた寧人。いや、上には上があった。その碧眼がうるうると、涙によって覆われていく。
そして、
「う゛わぁぁぁぁぁんッ、てつてつぅぅぅ~ッ!!」
「うおッ!?」
いきなり抱きついてくるものだから、危うくバランスを崩しそうになった。というか屈強な体格がなければ確実に椅子から落下していた。
「てつてつ、すきだぁぁぁ~ッ!もうぼくにはおまえしかいない゛ぃぃぃ~!!」
「すっ……ハァ!?バッカおめェ、誤解されんだろーが!!」
しかし寧人は離れるどころか、ますます身体を押しつけてくる。ほとほと困り果てつつ、おまえしかいないとまで言われて内心満更でもない気分になる同級生・鉄哲徹鐵なのだった。
──のちに週刊誌にスクープとして大々的に掲載され、やっぱり後悔する羽目になるのだが……それはまた、別のお話。
次回「快盗の正体」
「バクゴーたちが、快盗……?」
『気づかれたんだよ、お前らが快盗だって!』
『いつも俺様をこき使いやがって、許さねえぞぉ!!』