【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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原作の死柄木がどんどん人間離れしていく…


#22 不審 2/3

 

 榎須江ダムに到着したパトレンジャーの面々は、ギャングラーが目撃されたというポイントへ向けて歩を進めていた。気合十分……と言いたいところだが、揃ってその表情にはわだかまりが残っている。

 

「……今回はついてこなかったね、死柄木弔」

 

 ぽつりとつぶやく響香。──切島鋭児郎の表情により翳が差したことは、この際言及しなかった。

 

「彼自身の言う通り、命令系統が異なるからな。今のところ、彼は客分でしかない」

「客分か……それならまだいいけど」

 

 鼻持ちならない本部のエリート──しかしその実態は、宿敵から送り込まれたスパイなのではないか。そんなふうに疑われていることを察していながら、歓心を得ようなどと微塵もしないあの態度。

 

「なんなんだよ……あいつ」

 

 鋭児郎が他人に対してこうも苦々しい表情を浮かべるのは、極めて珍しいことだった。弔はそれだけのことを言った……彼なりの真摯な想いを、踏みにじったのだ。仕方がない。

 

 しかし、彼らは任務の真っ最中──いつまでも来訪者のことばかりを考えてはいられない。

 

「!、見つけた」

 

 索敵を行っていた響香が、ついにギャングラーを発見する。──カバット・カババッチ、彼は未だダムの壁に何かを塗りたくり続けていた。歌いながら。

 

「……何をやっているんだ?」

「どうせろくなことじゃない。──行くよ」

「……ああ!」

 

「「「──警察チェンジ!!」」」

『1号・2号・3号、パトライズ!警察チェンジ!』

 

 

「そこまでだッ、ギャングラー!!」

「!?」

 

「パトレン、1号!!」

「パトレン2号ッ!!」

「パトレン3号!」

 

「「「警察戦隊──パトレンジャー!!」」」

 

「国際警察の権限においてッ──」

「──実力を行使する!」

 

 口上を述べると同時にガバットを包囲、銃撃を開始する。それがいかなる形であれ、悪事は絶対に許さない──その強い信念を、戦う力に変えて。

 

 

 そんな勇ましき戦う姿を、快盗たちは遥か高みから見下ろしていた。

 

「あっ、ほんとにいるよギャングラー!」

「見りゃわかるわ。……一応、あいつの情報通りか」

「ふん。信用云々は兎も角、使える男ではあるらしいな」

 

 死柄木弔が何を企んでいるのかは知ったことではない。──ただ目の前に、お宝を持ったギャングラーがいる。それがすべてだ。

 

(乗るしかねえんだよ、俺らは)

 

「「「──快盗チェンジ!!」」」

『0・1・0、マスカレイズ!快盗チェンジ!』

 

 変身と同時に地上へ降り立ち、

 

「ルパン、レッド!」

「ルパンブルー……!」

「ルパンイエロー!」

 

「「「快盗戦隊──ルパンレンジャー!!」」」

 

「予告する……!てめェのお宝ァ、いただき殺ォすッ!!」

 

 そして、目の前のギャングラーに襲いかかる。傍に張りついていた邪魔なパトレンジャーには、ブルーとイエローが対処した。

 

「快盗どもまで!?アンタも好きねぇ!」

「大っ嫌いだわ死ね!!」

「ガバッ、し、辛辣……!──ええいっ、ポーダマン!」

 

 少なからずショックを受けた様子のガバットが号令し、配下の戦闘員部隊が集結してくる。快盗と警察を合わせても、一気に数的有利を覆されてしまう形となった。

 ただ、度重なる戦闘によって両戦隊ともポーダマンへの対処には慣れている。数に圧倒さえされなければ、苦戦するような相手ではないのだ。

 

──そのような状況下で、同じ赤に身を包んだ快盗と警察は早くも対峙していた。

 

「快盗……!おめェら、性懲りもなくまた!」

 

 問い詰めつつ、VSチェンジャーの引き金を引くパトレン1号。対して狙い撃たれたルパンレッドは、手近なポーダマンの首根っこを掴んで自らの前面に押し出した。光弾を心臓部に浴び、彼は短い断末魔とともに絶命する。

 

「ハッ……ンだよヒーロー崩れ、今日は随分カリカリしてんじゃねーの?」

「ッ、るせえ!どうしてここがわかった!?」

「てめェらに教えてやる義理はねえ、ッなァ!!」

 

 反撃の光弾を放つレッド。VSチェンジャーの威力では警察スーツを破れないことはもうわかっている、まして切島鋭児郎が相手では個性で衝撃も殺されてしまうことも。

 実際、彼は予想通りの行動をとった。肉体を硬化させ、受け止める。しかし予想していたということは、それを見越した行動をとるということだ。1号がそうしてその場に踏みとどまっているうちに、レッドは標的を変えていた。──ガバットに、飛びかかったのだ。

 

「ええっ、オレぇ!?」

「たりめーだ、ろうがッ!!」

 

 マントを翻しながら、跳躍の勢いそのままに回し蹴りを放つ。狙いは頸部、これは間違いなく有効打と勝己は確信していた──

 

──刹那、ガバットの全身が鈍色の輝きを放った。

 

「!?、い゛……ッ!!?」

 

 足を襲う激痛に、ルパンレッドはらしくもなく悶える羽目になった。一方で、ガバットはガバガバと特徴的な笑い声をあげている──ダメージを受けた様子は、ない。

 何が起きたのか、鋭児郎には一目でわかった。

 

「アイツも硬くなれんのか……!?」

 

 ルパンコレクションの能力か。いずれにせよパトレン2号と3号も攻撃に加わってもなお、まったく通用していない。

 

「ガバガバガバッ、コレクションある限りオレは無敵だァ♪」

「……!──そうかよ、だったら!」

 

 走り出す1号。一歩また一歩と進むことに、その皮膚が硬くなっていく──

 

「烈怒頼雄斗──安無嶺過武瑠ッ!!」

 

 警察スーツの下で、彼はいよいよ荒山の岩肌のごとき様相を呈していた。ダイヤモンドのような肉体が、ガバットに激突する。

 

「ガバァッ!!?」

 

 弾き飛ばされたのは、ガバットのほうだった。

 

「な、何故ェ……!?」

「道具に頼って手に入れた力なんかにッ、烈怒頼雄斗は負けねえんだよ!!」

 

 拳を打ち鳴らすパトレン1号──烈怒頼雄斗。それはまさしくいっぱしのプロヒーローの、あるべき姿だった。

 

「チッ、いっちょまえにヒーローやりやがって」

 

 毒づくレッド。──だが、()()()()乗らない手はない。ちょうどガバットはこちらに背中の金庫を晒している。

 

「ええいっ、今のはちっとビックリしただけだ!もう一回硬くなって……アレ?」

 

 硬くなれない──ルパンコレクションの能力が作動しない。そのことにガバットが気づいたときにはもう、ルパンレッドの手が金庫から抜け出ていた。

 

「ハッ、探してンのはコイツかよ?」

「!」

 

 彼の手にあるのは──ルパンコレクション。

 

「ガバな……あイヤ、馬鹿な!?」

「馬鹿はてめェだ死ね!!」

 

 今度こそ飛び蹴りを炸裂させてガバットを吹っ飛ばし、レッドは仲間たちのもとへ舞い戻った。

 

「よくやった、レッド」

「前々回に続き最速タイ、やね!」

「マヌケが相手じゃ張り合いねーわ。──おい警察、ヒマそうだなァ?」

「……!」

 

 レッドの挑発に、パトレンジャー……とりわけ1号は憤慨した。ただ、その怒りを向けるべき敵は快盗よりまずギャングラーであることもわかっている。

 

「ギャングラー倒すのは……俺らの任務だ!」

 

 硬化を解除し、今度はパトメガボーを振るって猛攻を仕掛ける。コレクションを奪われたことに動揺してか、ガバットはもうまともに反撃できない。散々に殴りつけられ、挙げ句に自らがムシバミ菌を塗りたくった壁面に叩きつけられる。

 

 ようやくの手応えに1号が喜びを噛みしめていると、いつも通り漆黒の翼が飛んできた。

 

『グッドストライカーぶらっと参上~!』

「来たなグッドストライカー!手ぇ貸してくれ!」

『ちょっ、オイラの気分も聞いてくれよう~』

 

 不平を述べつつも、彼もやぶさかではなかったらしい。そのまま大人しく1号の手中に収まり、VSチェンジャーに装填された。

 

「行くぜ飯田、耳郎!」

「よし来た!」

「……あんまり気乗りはしないけどっ」

 

 三人の身体が光に包まれ、

 

『1号・2号・3号!一致団結!』

 

 三位一体の戦士──パトレンU号が誕生した。

 

 ガバットはルパンレンジャーに翻弄され、完全に意識を外している。今が、好機だ。

 

『イチゲキ──』

「「「──ストライクっ!!」」」

 

 最大火力の砲弾が放たれる。いち早くその接近に気づいた快盗たちが素早く身を翻し、取り残されたガバットは──

 

「ガ……!?ガバ、ガババビッチ~~!!?」

 

 弾丸の直撃を受け、その身はあえなく爆発四散。劫火の中から投げ出されたひしゃげた金庫が、ダムへと落下していった。

 

「っし……!任務、かんりょ──」

「ごくろう、サツのイヌども」

「!」

 

 ルパンレンジャーは既に逃走を開始していた。いつまでもそれを許してはいられない──死柄木弔のこともある。

 

「今日こそ……逮捕してやる!!」

 

 U号を解除し、彼らは追跡を開始する。──そのために、ほとんど入れ違いでゴーシュ・ル・メドゥが出現したことには気づけなかった。

 

「さてと……私の可愛いお宝さん、ガバットを──あら?」

 

 ガバットの金庫が見当たらない。仕方なしにゴーシュは自身の金庫のコレクションを入れ替え、周囲をサーチした。そうして程なく、湖底に沈む目的のモノを発見したわけであるが。

 

「ええっ……ここからで、届くかしら?」

 

 まさかダイビングを敢行したくはない。周囲に敵がいなくなったこともあり、ゴーシュは悠長に考え込んでいたのだった。

 

 

 *

 

 

 

 一方、戦場から離脱したルパンレンジャーの前に、比喩でなく立ちはだかる男がいた。

 

Bon travail(ご苦労さん)、ルパンレンジャー」

「貴様、死柄木弔……か?」

 

 ルパンブルーの語尾が疑問形になるのも無理はなかった。彼は昨日の黒服でも国際警察の制服でもない、銀色に光る燕尾服姿でそこに立っている。まあ服装だけなら顔の特徴で判断すれば良いことなのだが、今、彼の顔面は手で覆われていた。彼自身のではない、手首から先だけの、妙に生々しいオブジェクトに。

 

「ンだよソレ、覆面のつもりか?」

「……さあね。それより、首尾は?」

「あ、うん。ばっちりゲットできたよ!ね?」

 

 不承不承頷いたレッドが、回収したルパンコレクションを示す。それを認めて、弔は覆面の下の唇をゆがめた。

 

「へぇ。流石、お見事お見事」

 

 心のこもらない称賛の言葉を投げかける。──その姿を、快盗のあとを追ってきたパトレンジャーもまた目撃していた。

 

「死柄木……!」

「やはり、彼が快盗に情報を流していたのか……!?」

「……ッ、」

 

 信じたい気持ちもあった。しかし結局、あの男は快盗の仲間だったのか。失望めいた感情がパトレンジャーの心中を覆いはじめたそのとき、弔は思いも寄らぬ言葉を口にした。

 

「じゃあさ……寄越せよ、情報料」

「……どういう意味だ?」

 

 その問いに言葉では答えず、

 

「──快盗、チェンジ」

 

 快盗Xチェンジ──Xチェンジャーがコールした通り、彼の全身は白銀に輝く鎧に包まれていく。それは彼の、快盗としての在るべき姿でもあった。

 

「孤高に煌めく快盗……ルパン、エックス」

 

 

「予告する。──ルパンコレクションは、俺が回収する」

「……!」

 

 仲間であるはずの快盗めがけて、エックスは躊躇なく引き金を引いた──

 

 

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