【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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ロボは次回に持ち越しになりました…。

オーレンジャーロボなんか8話まで出てこなかったしセーフ()


#2 Jurer vs Justice 3/3

 鬱憤を晴らすように、ガラットは手当たり次第に火炎を撒き散らしていた。

 

「ザミーゴの野郎、恩売った気になりやがって……。こうなったら、全部まとめてぶっ壊してから奪いまくってやるぜぇ!!」

 

 そして、ゆくゆくは自分がギャングラーの頂点に立つのだ。

 夢想のままに続けられる高笑いは、前触れなく降ってきた弾丸によって途切れた。

 

「痛でッ!?」

「──自分からノコノコ出て来るたぁ、チョロくて有難ェわネコミミ野郎」

「!!」

 

 炎上するビルの上に悠々と立つ、三つの人影。仮面で正体を覆い隠したその姿は、ギャングラーにとっては天敵ともいえるもので。

 

「しつけえなァ快盗どもォ!!」

「これで最後にしてやる」

「アンタのお宝、いただき殺しちゃってね!」

 

 挑戦的な笑みを浮かべつつ、VSチェンジャーにダイヤルファイターを装填する三人。

 

「「「快盗チェンジ!!」」」

 

『レッド!』

『ブルー!』

『イエロー!』

 

『0・1・0!』

 

『マスカレイズ!──快盗チェンジ!』

 

 トリガーを、引く!

 

 カードの形をした弾丸は強化服となり、三人の全身を覆っていく。

 そして、

 

「ルパンレッド!!」

「ルパンブルー……!」

「ルパンイエロー!」

 

「「「快盗戦隊──ルパンレンジャー!!」」」

 

 名乗りを挙げると同時に、彼らは炎をものともせず跳躍していた。その間にも銃口をガラットへ向け──撃つ。

 

「痛でででッ!?せ、せめて着地してから撃てやァッ!!」

「時間が勿体ねえだろうが!!」

「みみっち!」

「………」

 

 味方同士でもやり合いつつ、その実一気呵成に距離を詰めていくルパンレンジャー。VSチェンジャーによる銃撃を繰り返しながらも、あえてインファイトの距離にまで飛び込み、マントを翻しながら戦う──敵は撹乱され、まともに攻撃を放つことさえできない。

 ガラットの戦法は基本的に火炎放射頼みであるから、距離を詰められてしまうとかえって戦いにくくなる。快盗たちもまた、それを狙っていた。

 

「テメェらっ、纏わりつくんじゃねェ!!」

「お断りだブァーカ!!」

「このォ……あっ、そうだ!」

 

 こいつらが徹底的に撹乱を続けるというなら、こちらも意表を突いてやるまで!そんな思考に駆られたガラットは、三人の動きがわずかに鈍った一瞬の隙を突き、複腕を飛び出させた。

 

「!」

「死ねェ!」

 

 複腕からの火炎放射。しかし、

 

「馬鹿のひとつ覚えか、三流だな!」

 

 火炎をひらりとかわし、ガラットの懐に飛び込むブルー、イエロー。彼らの手にしたルパンソードが伸長し、マジックハンドの形状に変化していた。

 

「うおッ!?」

 

 マニピュレーターによって複腕を拘束され、さらにふたりがかりで残る腕を羽交い締めにされる。残念ながら、これ以上腕は増えない。

 狼狽えるガラット。真正面から、飛び込んでくるレッド。その手に握られたダイヤルファイターが、ガラットの金庫に触れる──

 

『2・1・5!』

 

 そして、閉ざされた金庫が開かれる。

 

「ルパンコレクション、貰った!!」

「ああッ、ドロボー!!」

「泥棒じゃなくて快盗!」

「……どちらでも構わんが」

 

 これで、快盗たちは目的の()()は達した。──そのとき、

 

 

「そこまでだッ、ギャングラーに快盗!!」

「!」

 

 にわかに響く勇ましい声……そして、銃声。

 咄嗟に手を放して退避したルパンブルーとイエロー。取り残されたガラットのみ光弾を浴びてしまい、その場に尻餅をついた。

 

 三つの人影。その姿を認めて、思わずイエローは「あれっ」と漏らした。

 

「警察……?なんでまだ、あのヒーローさん連れてるんだろ」

「………」

 

 当然、その理由を駆けつけた天哉たちが語ることはない。彼らにとってはもう、チームとしてこの戦いに臨むことが当然だったのだ。

 

「さあ行くよ!」耳郎が号令をかける。

「うむ!」

「ウッス!」

 

「「「警察チェンジ!!」」」

 

『1号!』

『2号!』

『3号!』

 

『パトライズ!──警察チェンジ!』

 

 VSチェンジャーに装填したトリガーマシンを、頭上めがけて──撃ち出す!

 

 放たれたそれらは警察手帳のようなオーラを生み出し、三人の身体を覆っていく。鋭児郎に赤、天哉に緑、響香に桃──三種類の、警察スーツ。

 彼らは今度こそ、明確な決意と覚悟をもってパトレンジャーへと変身を遂げたのだ。

 

「パトレン、1号ッ!!」

「パトレン2号!!」

「パトレン3号!」

 

「「「警察戦隊──パトレンジャー!!」」」

 

「国際警察の権限においてッ」

「──実力を行使する!!」

 

 宣戦布告の熱気冷めやらぬままに、パトレンジャーは堂々と参戦した。ガラットとルパンレンジャー……いずれも、攻撃対象として。

 

「うわっ、またぁ!?」

「おとなしく引っ込んでいれば、我々が片付けたものを……!」

「そういうわけにはいかないっての!」

「貴様らのような連中に、この世界の平和を任せておけるものか!!」

 

 ガラットを取り囲むようにしながら、撃ち合う快盗と警察。

 そこに飛び込む、赤。

 

「くだらねえ理想ばっか語ってんじゃねえッ!!」

「!」

 

 間近の2号めがけて、ルパンソードを振り下ろす──

 

──もうひとりの赤が、自らの腕で刃を受け止めた。

 

「ッ!」

「烈怒頼雄斗!」

「なんでもねえっス……こんくらい……!」

 

 警察スーツに加えて、"硬化"の個性を発動している──いまの鋭児郎を傷つけられるものが、この地球上にいくつ存在するか。

 ゼロ距離で睨みあったまま、彼は喉を震わせた。

 

「くだらねえ理想っつったな……。──だったらお前らは、なんのために戦ってんだ!なんのために、他人を傷つけてまでギャングラー(コイツら)と戦ってんだよ!?」

「……ッ」

 

 あまりにもまっすぐな声が。初めての邂逅のときと同じ、それは勝己の……否、快盗たちの胸の奥深くまでを抉るものだった。

 一瞬俯きかけたルパンレッド。しかし、

 

「テメェらになんざ、死んでも話すかよ……ッ!」

「ッ、そうかよ……!だったら──ッ!」

 

 1号の手に、パトレンジャー専用の特殊警棒"パトメガボー"が顕現する。

 ルパンソードのお返しとばかりに、レッドの胴体にそれを叩きつけた。

 

「ぐっ!?──ンのッ、クソが!!」

 

 後退させられつつも、悔し紛れにVSチェンジャーの引き金を引くレッド。硬化している1号に対してダメージを与えることはかなわなかったが、少なくともその執念を示すことには成功していた。

 

「ッ、平和だの正義だの……いい加減、聞き飽きてんだよ……!」

「そりゃ悪かったな……。でも俺たちは、何言われたって口を閉ざしたりはしねえ!」

 

「平和を守り、苦しんでる人たちを救ける──俺たちは、市民に誓ってヒーローやってんだっ!!」

「──!」

 

 そのことばに、レッドの動きが一瞬止まる。──と、そのとき。

 

「死ねェ赤いのォ!!」

 

 三つ巴からどうにか抜け出したガラットが、パトレン1号の背後から不意打ちを仕掛けた。四本の腕が、彼の脳天に振り下ろされる──

 

 刹那、ルパンレッドのVSチェンジャーが火を噴いた。

 

「ギャッ!?」

「!」

 

 吹っ飛ばされるガラット。ぎょっと振り向いた1号は、信じられないとばかりに即座に視線を戻した。──快盗が、俺を救けた?

 

「おまえ……」

「……付き合ってられっか!」

 

 これ以上の接触を忌避するかのように、燃え残ったビルの屋上めがけロープを射出、それに掴まって跳躍するレッド。

 

「レッド!?なんなのいきなり……」

「また勝手を……イエロー、我々も退くぞ」

 

 ガラットのルパンコレクションは既に奪取している。ここは退いても後があると考え、ふたりはレッドに従うことにした。

 

「ッ、また逃げるのか!?」

「一応の目的は達したのでな」

「悪いけど……またねっ!」

 

 ビルからビルへ、跳躍していく快盗たち。それと入れ替わるようにして、ガラットが襲いかかってくる。

 

「テメェらのコレクションよこせェェェ!!」

「ッ!」

 

 身構える2号。そこに3号が割って入り、

 

 メットから露出させたイヤホン型の耳朶を、ガラットの胴体に付着させた。

 

「喰らいなっ!!」

「!?、グギャアァッ!?」

 

 途端に耳をつんざくような爆音がガラットを襲い、彼はたちまちその場でのたうち回った。

 

「ふん……コレクション(こいつ)一辺倒だと思うなよ」

「……助かった、耳郎くん!」

「すげぇ、ヒーローやれますよ!」

 

 1号の何気ない称賛に、一瞬肩を強張らせつつ。それを気取られるより早く、3号は「ンな大したもんじゃないよ」とかぶりを振った。

 

「それよりチャンスだ、トドメを!」

「うむ!──ならば、これを使ってみよう!」

 

 2号がパトカーからアタッシュケースを引っ張ってくる。そこに仕舞われているのは、VSチェンジャー、トリガーマシンとともに支給されたアイテム。VSチェンジャーに装着することで一撃必殺の強力な光弾を放つことができるようになると塚内管理官から説明があったばかりだ。頑丈なギャングラーを相手に、これを使わない手はない。

 

 ケースを開き、拘束を外す──と、

 

『ふ~、やっと解放されたぜ!』

「!?」

 

 掴もうとした2号の手をすり抜け、ひとりでに翼を広げて浮遊するルパンコレクション。幻聴でないとするなら、いま響いた声も──

 

「まさか……オメーが喋ったのか?」

『トーゼン!オレの名はグッドストライカー!お前らにはグッと来たからな、手伝ってやるぜ~!』

 

 言うが早いか、グッドストライカーと自ら名乗ったコレクションは、1号のVSチェンジャーに半ば強引に取り付いた。

 

『グッドストライカー、突撃用意!』

 

 途端、驚くべきことが起きた。2号と3号の身体が光を放ち……その場から、消えうせたのだ。

 

「は……?」

 

 一体何が起きた?当惑すると同時に、全身を覆う奇妙な違和感。

 

『1号!』

 

 それもそのはず、1号のスーツに──

 

『2号!3号!』

 

 緑と桃の意匠が組み込まれている、つまり。

 

『一致団結!!』

「ゆ……」

 

「「「融合したぁぁぁ!!?」」」

 

 そういうことである。

 

「ど、どうなってんだこれ……!?」

「なんか汗くさ……」

「き、きちんと清潔にはしているぞ!」

 

 ひとつの身体に三つの魂。傍から見れば奇嬌な所作を行ってしまうのも無理からぬことである。ただ、これがグッドストライカーの能力のひとつであることには間違いなかった。"パトレンU号"──名付けるなら、そんなところであろうか。

 

「ひ、ヒヒヒヒヒィアハハハハッ!!な、なんッ、なんだそりゃあ……!」

「!」

 

 パトレンU号を目前で見て、堪えきれなかった"観客"がこの場には存在した。四本の腕で、しきりに自らの腹を叩いている。

 もとより、ある意味では彼のために変身した姿だ。そのことを思い出した三人の混乱は、自ずと鎮められた。

 

「……笑ってんじゃねえ!」

「は!?」

 

「「「イチゲキ──ストライクっ!!」」」

 

 『イチゲキストライク』と電子音声が繰り返され……ひときわ巨大な光弾が、周囲に激しい閃光を振り撒きながら放たれる。

 それは地表のコンクリートを発火させながら、獅子のごとき速さで獲物へ喰らいついていく。

 

「わ」

 

「笑いごとじゃねぇエエエエ──!!」

 

 それが断末魔となり、ガラット・ナーゴは火球に呑み込まれたのだった──

 

「よし……!ギャングラー、撃破だッ!!」

「……マジでここまで出来るとはね」

 

 燃えさかる爆炎。ギャングラーが跡形もなく吹き飛ぶのを見届け、静かな喜びを噛みしめるふたりの警察官。積年の望みを成就させる、ようやくそのスタートラインに立つことができたのだ。

 鋭児郎もまた、気持ちは同じだった。……ただ、それ以上に気がかりなことがあって。

 

「あのー、いいカンジなトコ申し訳ないんスけど……」

「ん?」

「どうしたんだい?」

 

「これ……もとに戻れるんスかね?」

 

「「あ」」

 

 そう、三人は未だU号のままだった。

 

 「もとに戻れ!」なんて念じてみたところで、何も起きない。まさか二度と戻れないのではないかと、悲観的な想像すら過ぎってしまうのだが。

 

『飛びます飛びます!』

「!?」

 

 いきなりVSチェンジャーから分離し、宣言どおり飛び立つグッドストライカー。と同時に、彼らの身体は何事もなかったかのようにもとに戻った。その際の衝撃で、三人揃って地面に叩きつけられる羽目にはなったが……。

 

「い、痛ってぇ……」

「!、お、おい、どこへ行くんだ!?」

『束縛はヤメテ!』

「ハァ!?」

 

 呆気にとられるパトレンジャーを尻目に、夕暮れに染まる空へ消えていくグッドストライカー。別れ際、『また会おうぜ~!』と再会を予見させる台詞が聞こえてきたことだけが唯一の救いか。

 

「……ンなわけあるか!!」

 

 3号の突っ込みが、虚しく響いた。

 

 

 *

 

 

 

 根城に帰還した快盗たちは、表向きの稼業である喫茶の開店準備をすすめていた。

 

「ハァ、一時はどうなるかと思ったけど……ちゃんとコレクション回収できてよかったね!」

 

 てきぱきとテーブルクロスを掛けつつ、サムズアップをしてみせるお茶子。もっとも彼女の仲間である男ふたりは、積極的なリアクションを返してくれるような殊勝な性格はしていない。

 

「………」

「………」

 

 それにしたって、ふたりして黙殺するのはあんまりだと思うのだが。ノリの良さそうな国際警察の男たち──片割れはヒーローだが──を思い出し、密かにため息をついた。

 

「それはそうと爆豪くん、なんで急に退くことにしたん?あんな毛嫌いしとったのに」

「……鬱陶しいからに決まってンだろ」

「えー……」

 

 お茶子が釈然としない思いに駆られていると、

 

「ふ……、あの新米のことばに絆されたか?」

 

 黙ってやりとりを聞いていた炎司が、独り言のように皮肉る。勝己の眦がくわっと吊り上がった。

 

「ざけんな!大体アンタ、他人のこと言えんのかよ」

「何を言うかと思えば……生憎、俺はそんなに青くない」

「ブルーなのに?」

「……つまんねえんだよ死ね丸顔!」

「そこまで言う!?」

 

 和ませるどころか、思いきり火の粉を浴びてしまった。

 やはりこの男ども、できればパトレンジャーとやらの男ふたりと交換してほしい……なんて密かに考えていると、今しがた"OPEN"の札を掛けたばかりの扉がドアベルを鳴らしながら開かれた。

 

「あっ、いらっしゃいま──」

 

 ぱっと営業スマイルを浮かべ、振り向くお茶子。しかし現れた客人の姿を認めて、その笑顔は凍りついた。

 

「え……!?」

「──!」

 

 勝己と炎司の表情もまた、一様に強張る。

 

 

 ──客人の正体はほかでもない、先ほどまで死闘を繰り広げていた宿敵。警察戦隊パトレンジャーの、三人だったのである。

 

 

 à suivre……

 

 

 

 

 




次回

「俺たちのワンチャンダイブ」

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