快盗と警察、ギャングラーの入り乱れる三つ巴の戦場。しかしその構図の実情は、人外の者どもをより追い詰めるものだった。ルパンレンジャーとパトレンジャーも接触があれば銃を撃ち合うが、それは互いへの牽制程度のものであって、彼らの本命はギャングラーである。七人の攻勢を前に、ポーダマンはあっという間にその数を減らしていった。
「おいおい、完全に遊ばれてるな……」
「──植物やろォ!!」
「!」
真っ先に突出してきたのは、やはりというべきかルパンレッドだった。いや彼だけではない、パトレン3号もまた彼を追う形でギーウィに仕掛けている。
実質的には二対一の状況。しかし彼らの攻撃を軽くいなしつつ、ギーウィは余裕の笑みを浮かべていた。
「キヒヒッ、忘れたのかァ?オレのコレクションの力!」
「ッ!」
近距離からの銃撃──普通なら外さないような攻撃も、ギーウィの所持するルパンコレクションの力でことごとく外してしまう。
「クソっ、全回避かよ……!」
銃撃をあきらめて近接戦闘に臨むふたりだが、明らかに命中をとったという確信を得てなお空振りが続く。
「キヒヒヒッ……──ハァっ!」
ふたりが疲労しつつあることを目敏く見てとったギーウィは、スクリュー状に捻れた剣で反攻に出た。その鋭い斬擊は快盗スーツ、警察スーツを切り裂き、火花とともにふたりを吹き飛ばす。
「ッ、クソが……」
「何か、策がないと……!」
考え込んでいる間にも、ギーウィは勢いを増し追撃を仕掛けてくる。
「キヒヒヒッ、貴様ら運が無かったなァ!」
「ぐ……ッ」
ルパンレッドが、防戦一方になっている──運?
はっとしたパトレン3号は、懐からラッキーペンダントを取り出した。
(コイツを使えばもしかしたら……でも……)
おそらくは運を使い果たし、蔦に覆われた人々の姿が脳裏をよぎる。
(それに、これは元々ギーウィのもの。アイツに対して効果があるかはわからない……)
そんな状況で、いたずらにリスクを冒すのか?響香の心には逡巡があった。ゆえにラッキーペンダントを手にしたまま、動けない──
そうこうしているうちに、ルパンレッドがこちらに吹っ飛ばされてきた。
「ッ、クソ……──!」
唸るレッドの視界に、3号の手元──つまりラッキーペンダントが映る。
「!、……っし!」
あれなら!思考と同時に、ルパンレッドの身体は動いていた。パトレン3号に飛びかかり、反射的に身構えた彼女からラッキーペンダントを掠めとる。彼は快盗なのだ、その程度のアクションは造作もない。
「ルパンレッド……!」
驚愕なのか、制止なのか。判然としない呼びかけを無視し──ルパンレッドは、自らの首にラッキーペンダントを掛けていた。
VSチェンジャーを構え、「……当たれやァァァッ!!」──撃つ!
「キヒヒヒッ!むだムダ無駄!」
ラッキーペンダントを認識していないためか、相変わらず余裕綽々とルパンコレクションの力を発動させるギーウィ。その身体が幾重にもぶれ、弾丸がひとりでに逸れる。そこまでは、先ほどまでと同じ。
しかし次の瞬間、およそ偶然では片付けられない現象が起こった。実体をもたないはずの光弾が傍らのドラム缶に命中して反転し……再び、ギーウィを襲ったのだ。
「グワァッ!?」
予想だにしない一撃は、ギーウィの心身に甚大なダメージを与えた。砂塵にまみれながら転がるその姿を認めて、レッドは彼らしく鼻を鳴らす。
「はっ……まぁまぁ使えンじゃねーの、コイツ」
「きっ貴様ァ!オレのペンダントをグハッ!?」
立ち上がりかけるも、再び銃撃を受ける。気をよくしたレッドは、指の動く限りトリガーを引き続けた。
「ッ、無茶だよレッド!運使い果たしたら、植物になっちゃう!」
イエローの危ぶみの言葉にも、彼は耳を貸さない。むしろ嬉々として攻勢を強めるその姿に、パトレン3号はそら寒いものを覚えた。
(こいつ……植物になるってわかってて、こんな……なんの躊躇いもなく?)
──着実にギーウィの体力を削っていくレッドの攻撃だが、それゆえ終わりのときはあっけなく訪れる。
「!?、ぐっ……」
ペンダントが鈍い光を放ち、ルパンレッドの身体を蔦で覆っていく。苦痛に苛まれる中で、それでも彼は銃撃を続けた。──その努力を、水泡に帰すつもりはない。
「ふ──ッ!」
ポーダマンを片付けたルパンブルーが、真っ先にギーウィのもとへ飛び込んでいく。よろける身体を筋骨にものを言わせて地面に縫いつけ──金庫に、ダイヤルファイターを接触させる。
『1・9──2!』
「ああっ、よ、止せぇ!!」
当然、そんな願いを聞き届けることはない。
「ルパンコレクション……貰い受けた!」
コレクションを手に、素早く離脱する。
目的を遂げた快盗たち。しかしそのために多大な役割を果たした少年は今、全身を蔦に覆われて生命エネルギーを吸いとられ続けている。止めるには、大本を断つほかない。
『グッドストライカーぶらっと参上~!今日は快盗にグッと来たけどぉ……こんな状態!どうしようトムラ~?』
「……烈怒頼雄斗!」
「!、お、おうよ!」
呼びかけは、つまりそういうことである。ふらふらしている漆黒の翼を半ば強引に確保すると、パトレン1号は自らのVSチェンジャーに彼を装填した。
「いくぜ……"
一致、団結。パトレンジャー三人の身体が融合し、1号をベースに2号・3号の意匠があしらわれた姿──パトレンU号となる。
そして間髪入れず、彼
「「「──イチゲキ、ストライクっ!!」」」
さらに、
「エクセレントエックス──!」
『イチゲキ、エックスストライク!』
パトレンエックスの放ったイチゲキが大いなる追い風となり、膨大なエネルギーを秘めた弾丸がギーウィに襲いかかる。恐怖に駆られた彼はルパンコレクションの力で避けようとする……半開きになった金庫に、もはやそんなものは存在していないのだが。
「ぎ、ギ~ウィ~~っ!!?」
ゆえにギーウィは、悲鳴とともに爆散した。焼け焦げひしゃげた金庫が、がらんどうの廃工場にむなしく転がる──
──それと同時に、ラッキーペンダントはその効力を失った。生い茂った蔦は次々に死に絶え、囚われていた人々が解放されていく。
当然、ルパンレッドも。
「ッ!……ぐ、ぅ」
「レッド!」
その場に倒れ込んだレッドを目の当たりにして、イエローが慌てて駆け寄っていく。が、
「チッ……俺を心配すんなクソが」
「いや物言い!?……ハァ、だったら無茶せんといてよもう」
「同感だな。だが、よくやった」
仲間の手を借りることなく立ち上がる。少年の身でありながら、尋常でないバイタリティーなのは間違いない。しかしその様子を見ていたパトレン3号の胸には、評価とは別の感情が去来していた。
(あんなもののために、命を……)
自分の命を軽視しているのか、ルパンコレクションを重く見ているのか。どちらであれ、その意味は同じ。
──彼のブレーキは、壊れている。
「あんたまでやられたら、ライモンが寂しがるわよ」
戦闘の残り香漂う中に、出現する異形の女──ゴーシュ・ル・メドゥ。彼女は快盗にも警察にも目もくれず、自らの仕事を果たしに来た。
「私の可愛いお宝さん、ギーウィを元気にしてあげて……」
いつもながらルパンコレクション──"世界を癒そう"──のエネルギーが金庫に注ぎ込まれ、肉体を再構成……数十倍にも巨大化させてしまう。
「キヒヒヒヒヒッ!!ギ~~ウィィィィッ!!」
「……ハァ、茶番だな」
結果は見えているというのに。それでも放っておけば街に甚大な被害をもたらすことは想像に難くない。さっさと片付ける──それに限る。
『発車用意!──出発、進行!』
「エックス合体!」
エックストレインゴールドとシルバーが分かれ、パトレン2号と3号に巨大化してもらったサンダーとファイヤーが接近してくる。そのまま、連結。
『警察、エックスガッタイム!』
文字通りクロスするように合体し──
「──完成、エックスエンペラーガンナー」
そして、
「「「完成ッ、パトカイザー!!」」」
初めて並び立つ二大巨人。先手必勝とばかりに彼らは積極的な攻勢に打って出る。
──そのさまを、氷を噛み砕きながら見物している青年がいた。
「ふぅん、今日は快盗じゃないんだ」つぶやきつつ、「……で?俺になんの用?」
青年の背後には、ステイタス・ゴールド──ライモン・ガオルファングの姿があった。
「オレと、手ぇ組まねえか?──ザミーゴ」
思わぬ申し出に、青年──ザミーゴは「ほぉ」と意外そうな声を発した。ライモンが自分を嫌っていることは、ギャングラーの中でも知られた話である。ザミーゴ自身はライモンに悪感情をもっていない……というよりまったくと言っていいほど関心がないのだが。
いずれにせよ、それが協力などと言い出すとは。
「一体、どういう風の吹き回しかなァ?」
「────」
ライモンの、答は──
*
パトカイザー&エックスエンペラーvs巨大ギーウィの戦闘は前者の有利に進んでいた。先手を打ったことはもちろんだが、ギーウィのように瞬発力を売りにしているギャングラーの場合、巨大化とは相性が悪いのだ。せめて周囲に障害物のない荒野ならまだしも、ここは市街地である。
パトカイザーが前衛として警棒を振るい、後衛に回ったエックスエンペラーガンナーが銃撃。いずれも単騎で戦闘を行うことが可能なロボットだが、役割を分けることによって隙がなくなっていた。
「ぐぅううう……!」
自信家のギーウィも流石に不利を悟ったのだろう、ここに来て慌てて後退を試みた。隙がないと言っても、操っているのが人間である以上好機は生まれる。
「おのれぇ……、返り討ちにしてくれるわぁぁッ!!」
左手から光弾を放つギーウィ。先の戦闘では見せなかった攻撃に、流石のエックスも不意を突かれた。エックスエンペラーのボディに火花が散り、コックピットに震動が伝わる。
「……ハァ、今さら出してくんなよそんなの」
かくし球……と言えば聞こえは良いが、牽制用か護身用か、といった程度の威力。そんなものを何発か当てたところで、戦況を覆せるはずがない。ましてパトカイザーもいる、捨て身の撃ち合いになっても優位は揺るがないだろう。
しかしパイロットはひねた思考回路の持ち主たる死柄木弔である。相手が遠距離戦をお望みなら、それに全力で逆らうのが彼の在り方だった。
「
『快盗エックスガッタイム!』
ダイナミックに側転すると同時に、巨人の手足がそっくりそのまま入れ替わる。同時にパイロットも自動的に黄金から白銀──警察から快盗へ。戦闘スタイルもまた、近接戦闘を是とするところとなる。
「パトレンジャー、ポジションチェンジだ。下がれ」
『!、……わーった!』
言いようは気にくわないが、それで"提案"を拒絶するほど子供でもない。パトカイザーが後退するのに合わせて、エックスエンペラースラッシュがギーウィに突撃を仕掛けた。右腕のブレードが、緑に覆われたギーウィのボディーを容赦なく切り裂いていく。
「グギャアッ!?」
「ははっ、いい声で鳴くなァおまえ。じゃあぼちぼち、断末魔でも聴かせてもらおうかな」
『……どっちが
心の底からそう思いつつ、パトレンジャーは彼の言葉を実現するべく行動に出ていた。パイロットシートから立ち上がり、VSチェンジャーの銃口を前面に向けて構える。
「いくぞ──パトカイザー!」
「「「弾丸、ストライクっ!!」」」
そして、
「エックスエンペラー、スラッシュストライクっ!」
息を合わせた必殺技が、炸裂──
「おおおおっ、オレの緑の楽園がぁああああッ!!?」
膨大なエネルギーの奔流に呑み込まれ、ギーウィの肉体は細胞から引きちぎられた。そして、行き場を失ったエネルギーが大爆発を起こす。その紅蓮の華こそ、勝利の証。
「っし、任務完了!」
「ミッションクリア……ハァ」
戦いは終わった。──この場にいる誰もが、そう思っていた。
「あーあ、ギーウィのヤツ敗けちゃったよ。サッムいねぇ……」
ギーウィを悼むどころか、侮蔑の言葉を吐いて踵を返すザミーゴ。彼はまだしも、ギーウィと常日頃行動をともにしていたライモンさえも反応はそう変わらない。「どいつもこいつも」と、苛立たしげな反応を見せるばかりだ。
さらに今の彼にとっては、死んだ仲間よりこれからの身の振り方のほうが余程重要だった。
「まぁいい……。返事は考えといてくれよ、ザミーゴ!」
ひらひらと手を振りながら去っていく。真面目に取り合っているか怪しいものだったが、今追及しても仕方がない。それよりも──
「これ以上人間どもを調子づかせて堪るかよ……!」
──刹那、獅子の咆哮が響き。
「な……!?」
「……!」
ライモンの言うところの人間どもは、言葉を失っていた。目の前の光景は夢幻なのではないかと、一様に呆けてしまっていたのだ。
目の前に立ちふさがるは、巨大化したライモンの姿。しかし、それはあまりに──
「うそ……何アレ大きすぎだよ!?」
地上にいたルパンイエローの言葉がすべてを物語っている。ライモンの身体は、パトカイザーやエックスエンペラーの倍以上にまで膨らんでいたのだ。
「オレ様の強さ……舐めてもらっちゃ困るぜぇぇぇッ!!」
その爪が、二大巨人のボディを一撃で抉りとる。火花とともに吹き飛ばされ、地面に倒れる機体。そこに撃ち込まれる、無数のミサイル群。
「ぐぁあああああ──ッ!!?」
炎に巻かれるコックピット。投げ出されたパトレンジャー、そして弔の運命は──
à suivre……
「信じてやるよ、快盗としてはな」
「……ルパンレッドを援護する!」
次回「グットクル共同戦線」
『みんなの力を合わせちゃおうぜ~!』