【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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大体サブタイの通り。
一度やってみたかったif最終回ネタ。

※念のため申し上げておきますとあくまで一発ネタでガチ完結ではないです。



【緑谷出久誕生日記念】#Finale(IF)

 もしも、あの瞬間にかえることができたなら。

 

 彼らは躊躇なく、その道を選ぶだろう。

 

 

 *

 

 

 

「きみなんか……ヒーローじゃないっ!!」

 

 路地裏に、少年の声が響き渡る。

 

 

 "屋上からのワンチャンダイブ"──つい今しがた目の前の少年が放った言葉を、緑谷出久は赦すことができなかった。

 彼が他人に死を促すような発言をすることは、これが初めてではない。だがそれは彼──爆豪勝己の性格ゆえに条件反射的に行われるだけで、さしたる意味も意志も介在してはいない。今まではそう思っていたし、そう思っていたかった。

 

 だからこそ、そのひと言だけは赦せなかった。夢をかなえたければ死ねと、その方法まで明示して嘲っているこの男が。ずっと憧れていた、かなわないと知りながら、その背中を追っていた。そんな自分自身を一瞬忘れるほどに、緑谷出久の中に燻る憤懣が爆発したのだ。

 

 勝己はというと、先ほどまでの威勢の良さが嘘のように目を見開いて呆然としている。今まで見せたことのない姿。無条件に自分にあこがれていると思い込んでいた幼馴染に明確に否定されて、そんなにも堪えたのだろうか。ざまあみろ。

 そのあとに怒りの爆炎が肌を焦がすであろうことは想像できたけれど、それがどうした。これから先どんな方法で出久(じぶん)を貶めようとしようが、出久が彼を軽蔑したという事実は一生残るのだ。

 

 

 しかし勝己のとったのは──出久の予想しえたどのような行動とも、異なるものだった。

 

「──デクっ!!」

 

 怒りではない、ただただ焦燥にまみれた表情が間近に迫ったかと思えば、出久は力いっぱい突き飛ばされた。衝撃に耐えうる体幹を備えていない身体は、いとも容易く尻餅をつく。同時に吹きつける、桜咲く季節にふさわしからぬ凍てつく風。

 思わず瞼を閉じた出久は、ゆえに"その瞬間"を目撃することはなかった。

 

「……え?」

 

 

 そこには、氷塊に囚われた爆豪勝己の姿があった。

 

 

 *

 

 

 

 ようやくだ、ようやく世界を正しくやり直すことができた。

 

 ほんとうは、消えるべきはデクではなく自分だったのだ。"取り戻す"ために快盗を続けていながら、ずっと心の奥底で考えていたこと。だが時は戻せない、未来なき明日にむかって進み続けるしかない。世界の、そんな唾棄すべき理を、ねじ曲げる方法があった。ただそれだけのこと。

 

(これで良かったんだ、)

 

(なァ、そうだろデク)

 

 呆然と自分を見上げているデクの姿が、次第にぼやけていく。視界が狭まる。

 

 

(……おまえは、なりてぇモンになればいい)

 

 

──薄れゆく意識の中で、勝己は慟哭の声を聴いた。そのことに思いを致すことさえできぬまま、彼の存在は泡沫のものとなった。

 

 

 *

 

 

 

 路地裏に、少年のすすり泣く声が響いている。

 

 散らばった氷の粒を狂ったようにかき集めながら、緑谷出久はみひらいた瞳からぽろぽろと涙をこぼす。熱をもった水滴がしたたり落ち、氷を融かす。もはやおまえの努力になどなんの意味もない、取り返しがつかないのだとせせら笑うかのように。

 

「どうして、」

 

「どうしてだよ、かっちゃん。どうしてぼくを、かばったりしたの」

 

「……どうして、わらってたの……?」

 

 憧憬より憤懣をとった自分を、おまえなんかヒーローじゃないと否定した自分を。……あぁ、そうか。これは罰なのだ。何より大切なものより一時の感情を優先した、愚かな幼馴染への。

 

「はは……はははっ……はははははっ」

 

 自分の愚かしさが可笑しくて、出久は嘲っていた。幼馴染ばかりか、ヒーローになりたいという自分自身の夢さえも貶めてしまった少年は、それ以外に何もできない存在だった。

 

 

 どれほどの間、そうしていただろう。

 

 

「──ギャングラーに、やられたのですね」

「!!」

 

 振り向いた出久。そこに立っていたのは、燕尾服を纏った人物。首から上が黒い靄のようなものに覆われており、体格と声からしておそらく男なのだろうという程度しか判別できない。

 

「……ぼくの、せいなんです」

 

 なぜギャングラーの仕業と断定できるのか、そもそも何者なのか……そんなことすら問うこともないままに、出久はぽつりと独白した。その翡翠色の瞳は、硝子のように虚ろで、何も映し出してはいない。

 

「ぼくが、きえればよかった」

 

 勝己には未来があったはずなのだ。自分の無価値な言葉になど左右されない、輝かしい未来が。しかし現実にはそれを奪ってしまった。もしも時間を戻せるなら、ぼくはあのまま──

 

「ならば、あなたの手で取り戻してはいかがですか」

「え……?」

 

 良い報せがある──そう言って男が差し出したのは、白銀の銃と玩具のような赤い戦闘機。それぞれ"VSチェンジャー"と"ダイヤルファイター"と呼称される魔具であることを知るのは、もう少しだけあとのことになる。

 

「世界に散らばった"ルパンコレクション"。すべて集めていただければ……我が主が、()()()()の願いを叶えます」

 

 取り戻す、自らの手で。その選択肢を提示された瞬間、少年の目に歪な輝きが宿るのを男──黒霧は見逃さなかった。

 

 

 緑谷出久はこの日、自らが英雄に至る可能性を捨てた。

 

 

 *

 

 

 

 それから、一年後。

 

「見つけた、目標(ターゲット)だ」

 

 夜の闇に包まれた街で、異世界より出でし異形の侵略者(ギャングラー)が英雄たちと死闘を繰り広げている。その光景を高みから見下ろすように、緑谷出久は居た。赤い燕尾服とシルクハットに、柔和な童顔を覆い隠す仮面を被って。

 

「準備はいい?轟くん、麗日さん」

「おう」

「うん!」

 

 彼を挟むようにして立つ、少年少女。同志である彼らとともに、出久は銃を携え月に吼える。

 

 

「──快盗、チェンジ!」

 

 

 

 fin.

 

 




デク誕if最終回、いかがでしたか?
詳しい経緯は省きましたが、過去に戻った爆豪少年がデクの代わりに囚われることを選んだ結果、今度はデクが快盗になってしまう――という内容でした。

デク誕なのでこちらも描写はしていませんが、ルパンレンジャー全員逆行しています。ですのでかっちゃん同様炎司さんも息子を庇って消えていますし、そもそも快盗になった要因が異なるお茶子は二周目突入です。以下キャラクターの基本設定↓

緑谷出久/ルパンレッド:
一見原作デクとさほど変わらないが、その中身は正気度マイナスの狂人。快盗バクゴーが精神病んでるレベルならこっちは完全に壊れてしまっている。自分を庇って笑いながら砕け散るかっちゃんの姿はSAN値直葬ものだったらしい。
かっちゃんのようにパトレン組の一挙一動に揺らぐことはほぼなく、表向きは親しく接するが快盗モードのときには容赦なくボコボコにする。サイコ!(小峠)原作でもはっきり敵と見定めた相手には結構容赦ないし多少はね?

轟焦凍/ルパンブルー:
親父を憎悪しているにもかかわらず取り戻そうとする、ジキルとハイドかとツッコミたくなるガンギマリボーイ。自己矛盾については自覚アリ。パトレン組のことはさほど嫌ってない。デクのように壊れてはなくその行動を鋭く指摘もするが、日常生活のダメさ加減はこちらが上。

麗日お茶子/ルパンイエロー:
独り二周目のうえメンバーのヤバさがマシマシのため大人にならざるをえない不憫な娘。基本的には一周目とあんまり変わらない。よいこ。狂人デクを好きになれるのクワァ!?

このように正真正銘15,6歳しかいないチームなので一周目のように喫茶店はやれず……快盗に専念となると余計にみんな精神がヤバそうです。お茶子かわいそう。
ルパン家の運営するスクールに在籍して表向き学園生活…なんてのも面白そうですね。間違いなくトガちゃんが同級生にいそう。


最後にデク、誕生日おめでとう!


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