【完結】Adieu au Héroes   作:たあたん

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かかかっかっちゃんんん

第2のオリジナルギャングラー、ブロイル・オバタリア
所有するルパンコレクションは『失われた焔のように〜Comme perdue flamme〜』。真っ赤なメダルです、元ネタは……言わずともわかりますよね、きっと。


#28 厨病子連れガラス 3/3

 

 ヒヨコをこれでもかとネコ可愛がりしている姿を目撃されてしまった若手俳優・常闇踏陰。

 彼は人生の中でも一、ニを争うのではないかという勢いで今、取り乱してしまっていた。

 

 ……鳥だけに。

 

「こ……ころ……◎△$♪×¥●&%#??!!」

「ちょっ……お、落ち着けって!」

 

 声にならない声をあげてのたうち回る踏陰を目の当たりにして、鋭児郎のほうも慌てた。よほど見られたくない姿だったのか。それは申し訳なかったが、彼のそばにはヒヨコたちがいる。

 

「ヒヨコっ、ヒヨコが死んじまうって!?」

 

 言ってから、まずったと思った。殺してくれと叫んでいる相手に、「死ぬ」と警告したところで逆効果ではないか。

 頭を抱えていたらば、踏陰の"影"が彼を止めてくれた。

 

『落チ着ケ踏陰!深呼吸ダ、深呼吸……ホラ、息ヲ吸ッテ……吐イテ……』

「ッ、……すぅー……はぁー……」

 

 黒影の指示に従って、深呼吸を繰り返す踏陰。そうして彼が落ち着きを取り戻すまで、鋭児郎はただそこに突っ立っていることしかできないのだった。

 

 

 *

 

 

 

「……取り乱してすまなかった」

「いや、その……まあ」

 

 消え入りそうな声で謝罪を述べる若手俳優に対し、本職ヒーローの警察官は返答に窮した。イメージとあまりに異なる姿を目の当たりにして、鋭児郎自身も感情に折り合いをつけがたいのだ。

 とはいえ黙りこくっているのもよくない気がして、おずおずと口を開く。

 

「ヒヨコとか……好きなんスか?」

「!」

「ヒッ!?」

 

 ぎろりと睨まれ、喉から変な声が出る。ただ踏陰も、怒りを露にしたわけではなかった。

 

「………好きだ。というより、小動物全般が好きだ」

「あー……意外、っスね」

「意外、か。……ふぅ」

「……?」

 

 首を傾げる鋭児郎。多くを語ろうとはしない踏陰に代わって、彼の影が口を開いた。

 

『踏陰ハクールデ陰ノアル自分ガ大好キナンダ。モシモ可愛イモノ好キト世間ニ知ラレタラ、ソウイウキャラニイメチェンシナケレバナラナクナッテシマウ』

「そ、そういうもんか?」

『ソウイウモンダ』

 

 ヒーローも半分はイメージ商売なので、話はわからなくもないが。

 

『ダカラ人前デハイツモ、踏陰ノブンマデオレガ可愛イ可愛イト言ッテイルンダ』

「………」

 

 そこまで、するのか。ただ対外的なイメージを保つためだけではない、自分自身の、理想の己で在るために。

 

「常闇さん、あんたってマジ……」

「………」

 

「マジで……漢らしいな……!」

「何っ?」

 

 はっと顔を上げた踏陰は、鋭児郎の赤い瞳がきらきらと煌めいているのを目の当たりにした。

 

「俺、常闇さんの徹底した厨ニキャラにずっと憧れてたんだ。俺には……っつーか、たいがいの人はやりたくても真似できないもん。どうしても照れが出ちまうし」

「そ、そうか……」

 

 クールで寡黙、演技がかった所作──これらを総じて"厨ニ病"と評されていることは踏陰も承知しているが、そのうえ「他人には真似できない」とまで言われては複雑な気分だった。この一点の曇りもない鋭児郎の表情からして、褒めているつもりなのは間違いないのだろうが。

 

「でも、それって単なるウケ狙いとかじゃなくて、心の底からそういう自分を愛してるからこそなんだよな」

「……ああ、その通りだ。俺が変わらず俺で在り続けることが、俺の誇りだ」

「なんか哲学的だなぁ……。──あ、でもさ」

 

「俺、常闇さんがヒヨコ可愛がってるのも……なんか、良いなって思ったから。人前で見せる必要はないけど、それはなくさなくても良いと思うぜ?」

「!、………」

 

 一瞬目を丸くした踏陰は……ややあって、ふ、と笑みを洩らした。

 

「感謝する……と、言っておく」

「へへ、どーいたしまして!」

 

 微笑みあうふたり。そこに無邪気に戯れるヒヨコたちが混ざりあって、荒野の一角には実に柔らかな時間が流れていた。

 それを見守りながら、黒影もまたあたたかな眼差しを相棒に向けた。

 

(友達ガデキテ良カッタナ、踏陰……)

 

 この人と馴れ合うことをよしとしないキャラクターを、幼少期より貫いてきた踏陰である。彼を真に理解し、尊重してくれる友人というものは貴重だった。きょう会ったばかりのヒーロー?警察官?が、そうなってくれるとは。

 

「さあ、そろそろ休憩も……終焉だ。戻るぞ」

「お、おう!」

 

 ヒヨコを頭上に戻して、立ち上がる踏陰。彼の態度はすっかり落ち着いたものに戻っている。

 鋭児郎も立ち上がり、彼に続こうとした──刹那、電話が鳴った。

 

「はい、切島──」

『──切島、今どこっ?』相手は響香だった。『ギャングラーが戻ってきた、すぐ来て!』

「わ、わかった!──常闇さん!」

 

 立ち止まった踏陰は、戸惑うこともなく「ギャングラーか?」と訊いた。

 

「ああ。だから待っててくれ、すぐ終わらせっから!」

 

 グッと親指を立ててみせると、鋭児郎は戦場へと走り出した。今度はVSチェンジャーが手元にある。当然、戦う準備は整っているのだ。

 

「いくぜ……警察チェンジっ!」

『1号、パトライズ!』

 

 鋭児郎の身体が光に包まれ、次の瞬間にはパトレン1号へと変わる。走りゆくその背中を、踏陰はじっと見つめていた。相棒、そして幼子たちとともに。

 

 

 *

 

 

 

「コケーココココッ!!」

「……ッ!」

 

 自由自在に空を飛び回るニワトリの怪物に、パトレンジャー両名は苦戦を強いられていた。VSチェンジャーで羽を狙って撃つが、銃弾がことごとくすり抜けてしまう。

 

「くっ……何故当たらないんだ!?」

「あの羽、実体がなさそうだ……そのせいかも」

「ムッ、言われてみれば……!」

 

 そのために、攻略方法がない。攻撃の手が弛んだところで、ブロイルはすかさず反攻に転じた。

 

「次はこちらから行くザマス〜!!」

「!」

 

 視認不可能になるまで上昇したかと思えば、フルスピードで急降下してくる。回避が、間に合わない──!

 

「うおおおおおおおッ!!」

 

 だがしかし、"彼"の割り込みは間一髪間に合った。パトレン1号だ。

 

「!」

「切島……!」

 

 ただ庇いに入ったというだけではない。彼は硬化を発動し、ブロイルの突撃を弾き返したのだ。

 

「コケェェッ!!?」

 

 反動で吹っ飛ばされるブロイル。しかし彼女はあのピョードルの母親、すぐに態勢を立て直して再び空へ昇った。パトレンジャーの面々は、それを見上げることしかできない。

 

「悪ィ、待たせた……!」

「別にいい。……このままじゃ、攻撃が届かない」

「何か方法はないものか……!」

 

 先程のように、仕掛けてきたところに一撃浴びせるくらいか。望むところではあるが、それを見越してかブロイルは四方八方を飛び回ってこちらの隙を窺っている。

 

「あんたらの企みはわかっているザマス!そうは問屋が卸さないザマス〜!」

 

──その姿を、遅れて鋭児郎を追ってきた踏陰も目の当たりにしていた。

 

「ニワトリが、飛翔するとは……」

『………』

 

『踏陰……今、何ヲ考エテル?』

「……なんのことだ?」

 

 とぼけ方もクールな踏陰だが、生まれてこのかた、四六時中後ろにくっついている黒影に彼の本心がわからないはずがない。

 踏陰自身もそれをよくわかっているのだろう、強く問い詰められるまでもなく白旗を挙げた。

 

「……俺も、かつては英雄に憧れる子供だった。目の前で市井の人々を脅かす怪物が好き放題をしていて、看過できるわけがないだろう」

 

 そう、踏陰自身かつてはヒーローを目指していたこともあったのだ。そして黒影は、その夢を実現できるだけのポテンシャルをもつ存在でもあった。

 

『デモ、オマエハヒーロージャナイ。俳優ダロウ?』

「……わかっている……!」

 

 わかっているが、それでも──踏陰の心にあの頃の熱情が甦りかけた瞬間、頭上の鳥の巣が輝き出した。

 

「!?」

『ナッナンダ!?ヒヨコ達ガ……』

 

 いや、光っているのは巣ではない。──ヒヨコたちだ。

 ピヨピヨ鳴いていたヒヨコたちが、輝きながら光のかたまりとなって、ゆっくりと巣から飛び出していく。そして、

 

 

「カァアアアアアアッ!!」

 

 漆黒の翼。否、すべてが黒に覆われた暗闇の鳥。それは逆立ちしたってニワトリではなかった。

 

「カラス……?」

 

 踏陰の周囲を、まるで護衛するかのように囲むカラスたち。彼らは一斉に踏陰を見た。

 彼らは言葉を発することができない。──しかしその想いは、目と目だけで十分に通じ合うことができたのだ。

 

「手を貸して、くれるのか?」

 

「カァ、」と短い鳴き声が返ってくる。それが、踏陰の決心を促した。

 

「黒影、一度だけで良い。俺とともに、ヒーローに……」

 

──ヒーロー"ツクヨミ"になってくれ。

 

『……アイヨ!』

 

 その言葉に、黒影も突き動かされた。その漆黒のボディが踏陰自身に重なり、覆っていく。

 

深淵闇躯(ブラックアンク)……!」

 

 そして、カラスたちが背中に集まり──

 

漆黒ノ不死鳥(レイヴンズ・フェニックス)!!」

 

 

──パトレンジャーにばかり気を取られていたブロイルの眼前に、不死鳥が姿を現した。

 

「コケェェェェ!?ど、どちら様ザマスゥゥゥ!!?」

「貴様の生んだヒヨコと……彼らを預かった者だぁ──!!」

 

 踏陰と黒影、そしてカラスたちがひとつとなった渾身の一撃が、ブロイルに炸裂する。

 

「コケェェェェェェ!!??」

 

 そして哀れ、彼女は墜落した。その身が地面に沈み込み、大量の砂塵を巻き起こす。

 

「今だ、警察戦隊!」

「常闇さん……!?」

 

 若手俳優の思わぬ参戦に、驚愕するパトレンジャーの面々。しかしその不意打ちがブロイルの意表を突き、空中から引きずり下ろしたことはまぎれもない事実だった。

 

「切島、今のうちに!」

「お、おう!」

 

 立ち直ったブロイルが、再び飛翔する前に。のっと言えば、怒りに燃えて踏陰に危害を加える前に。

 逸る彼らはひとつ、重大なことを忘れていた。

 

「ハイ、ちょーっと待った」

「!?」

 

 前ぶれもなく眼前に降り立った白銀の影。"彼"はブロイルを踏みつけると、その胴体の金庫にバックルを押し当てた。

 

『5・9──5!』

「ルパンコレクション、回収っと」

 

 赤いメダルのような物体を取り出し、喉を鳴らす──ルパンエックス。

 

「悪いね諸君。あとはお好きに」

「ッ、死柄木くんキミというやつは……!」

 

 きっちりルパンコレクションを回収されたことに不愉快を覚えるパトレンジャー(とりわけ2号・飯田天哉)であったが、理屈のうえでは彼の行為は責められるものでないとわかっている。

 

「……じゃあ、好きにさせてもらうぜ!」

『バイカー、パトライズ!』

 

 トリガーマシンバイカーをVSチェンジャーに装填し、必殺の構えをとる1号。仲間たちもそれに続く。

 

「──バイカー、撃退砲ッ!!」

 

 そして、放たれる。

 

「こ、コケェェェェイヤァァァァァァ──!!」

 

 飛翔の手段を失ったブロイルは、もはや必殺の砲弾から逃走するすべをもたなかった。ホイールの形状をしたエネルギーの塊がそのボディを直撃し、絶叫を搾り出しながら大爆発を起こす。爆炎の中で唯一残ったのは、いつもながらひしゃげた金庫だけ。

 

──そして、踏陰の頭上の巣が消え去った。

 

「!、………」

 

 同時に、翼となっていたカラスたちの質量も失われていく。カァ、という別れの挨拶を聴きながら、踏陰は静かに目を閉じた。

 

 

 *

 

 

 

「私の可愛いお宝さん……ブロイルを元気にしてあげて」

 

 空間を越えて現世に降り立ったゴーシュ・ル・メドゥの手により、死したブロイル・オバタリアはたちまち復活、さらには巨大化した。

 

「コケェッ、せめて警察だけでも踏み潰さなければ死んでも死にきれないザマスゥ!!」

「ッ!」

 

 踏み潰されて堪るものか。即座に巨大戦の用意に取り掛かろうとするパトレンジャーの面々だが、いつものようにグッドストライカーが来ない。

 

 それもそのはず。ブロイルが実際に行動に移るより早く、複数の戦闘機が先制攻撃を仕掛けたのだ。

 

「コケーッ!?」

「あれは……快盗!?」

「……グッドストライカーも、あっちについたか」

「なんということだ……!」

 

『──ごめんナ警察!オイラ、飛んでくる途中トムラに捕まっちまったんだ〜』

「ハァ……ルパンレンジャーにも華もたせてやんないと、あとで面倒なんだよ」

 

 大人の炎司とあまり拘りのないお茶子はいいとして、約一名面倒なのがいる──とまでは、流石に口にはしないが。

 

 

 いずれにせよ、ルパンレンジャーとエックスはそれぞれのマシンを皇帝の名を冠する巨人へと変身させ、巨大ブロイルの前に立ちふさがった。

 

「よォニワトリババア、踏み潰せるモンなら踏み潰してみろや」

「コケーッ、だったら引きずりおろしてやるザマス!!」

 

 翼を広げて襲いかかるブロイル。もはや飛ぶことのできない彼女だが、そのスピードは侮れない。一気呵成に迫ったかと思えば、胴体を嘴せしつこくつついてくる。

 

「チッ、ウゼェなコイツ……!」

「ああもうっ、──そうだブルー!私たちもエアロビで……」

「 何 か 言 っ た か ?」

「イエッ、ナニモ!」

 

 ルパンカイザーに対する決め手が敵にないため、緊張感に欠ける快盗たち。一方でエックスエンペラーを駆るルパンエックスもまた、緊張とは無縁の男だった。

 

「ハァ……賑やかなことで」

 

 せめてグッドストライカーくらいはこちらに欲しい──本末転倒だが──とぼやきつつ、エックスは攻撃を仕掛けた。斬撃が、ブロイルをルパンカイザーから引き剥がす。

 

「コケッ!?……る!」

 

 倒れ込むブロイル。そのボディが建造物すれすれに伏せたのを目の当たりにして、イエローが慌てた。

 

『ちょっ……建物壊しちゃダメ!撮影で使うんだから!』

「はあ?どうでもいいよンなの、ドラマだかなんだか知らないけど」

『どうでもいいわけないでしょっ、日本国民約一億が心待ちにしてるんだから!』

「………」

 

 一億はどう考えても盛っている。だいたい、弔としても壊したいと思ってやっているわけではないのだ。ギャングラー殲滅のために非生物の犠牲くらいはやむなしと考えているだけで。

 

「そこまで言うなら、自分でやれば?」

 

 言うが早いか──エックスエンペラーは分離し、もとのエックストレインに戻ってしまった。え、と思うのもつかの間、イエローの手にエックストレインサンダーが投げ渡される。

 

「え……こっちだけ?」

「……意趣返しか。相変わらず子供じみた男だ」

「フン、幾らでもやりようはあらぁ」

 

 先日のパトカイザーの戦闘を思い起こす。あるいは弔、ルパンカイザーでも同じことをやってみろと言いたいのかもしれない。左右で馬力の異なる腕を巧く使いこなす──警察にできて、快盗にできないわけがない。

 

「っし、いくぜ丸顔!」

「了解っ!」

 

『シザー!Ready……Go!』

『疾・風・迅・雷!』

 

 ルパンカイザーの両腕を構成していたブルー&イエローダイヤルファイターが分離し、ブロイルに突撃する。そうして動きを止めたところで、

 

『両腕、変わりまっす!』

 

 エックストレインサンダーが右腕に、シザー&ブレードダイヤルファイターが左腕に置き換わる。

 

『完成!ルパンカイザー"サンダリングナイト"〜!』

 

 名付けて、雷鳴の騎士。

 

「コケッ、で、電気は苦手ザマス!」

「はっ、そいつァいいな!」

 

 敵が苦手だと公言したものを利用しない手はない。サンダリングナイトは右腕から電撃を放ち、ブロイルに浴びせかけた。彼女の周囲で火花がスパークし、衝撃で土砂が舞い上がる。

 

「コケーッ、こ、このぉ〜〜!!」

 

 果敢にも特攻するブロイル。至近距離なら電撃も活かせまい──その読みはたしかに当たっているが、それはサンダリングナイトの手を封じることと同義ではない。

 

「ふん」

 

 鼻を鳴らすブルー。時を同じくして左腕のシザーが突き出され、ブロイルはあっさりと後退させられた。

 

「コケェ……!盾を持つなんて、快盗のクセに生意気ザマス!」

「どんな理屈!?」

「けっ……口うるせえババアが。ガキのいる地獄に落ちろや!」

 

 どちらが悪役なのかわかったものではない操縦手の台詞とともに、サンダリングナイトはいよいよ必殺の構えをとる。シザーからブレードを抜き取り、その刃に電撃を纏わせていく。

 そして、

 

『グッドストライカー・捌いちまえスラスト〜!』

 

 電光を纏った剣が幾度となく振り下ろされ、標的の五体を情け容赦なく切り刻む。しかも相手は頑丈なギャングラーであるからして、その際に大量の電流を流し込むという容赦のなさだ。

 ギャングラーの中では平凡にすぎないブロイルが、これに耐えられるはずもなかった。

 

「コケェェェ……!ピョードルや、ママもそっちに、行くザマス……──心の一句ゥ!」

 

──爆発。

 

「永遠に……」

「アデュ〜!」

『気分はサイコー!』

「………」

 

 勝己とお茶子とグッドストライカー(こいつら)、すっかり息が合っている。ブルーが密かに嘆息する中で、ルパンカイザーはばらばらに分離し、それぞれ飛び去っていくのだった。エックストレインサンダーを除いて。

 

「……ま、連中ならこれくらいできて当然か」

 

 もとのサイズに戻ったサンダーを握りつつ、つぶやくルパンエックス。思うところあるようなそぶりを見せつつ、彼がそれを表に出すことはなかった。今は、まだ。

 

 

 *

 

 

 

『──先日、ある共演者に我が泣きどころを知られてしまった』

 

 液晶ディスプレイのむこう、常闇踏陰が気取ったポーズで何やら語っている。

 

『しかし彼は、それでもなお俺の生き様を漢らしいと評価してくれた。……弱点も含めてな』

 

 荒野にジャケットの裾を靡かせながら、天を仰ぐ踏陰。その背後からぬっと飛び出した黒影が、カメラに向かってピースしている。

 

『これからも俺は俺で在り続ける。しかし彼のような友人がいる限り、さらにひと皮剥けることもできるのではないか……そんなふうに、思えた』

 

 カメラに背を向け、静かに去っていく。そこで番組は終わった。

 

「……ゆうじん……ユージン……友人?……友人!」

 

 その響きを確認するかのように何度もつぶやいて、切島鋭児郎はへらりと頬を弛ませた。番組の中で踏陰が"友人"と形容した相手、それが彼自身であることは誰の目にも明らかだった。「漢らしい」なんて褒め言葉を使う人間は限られている。

 

「ずいぶん浮ついてんね、切島くん」弔がつぶやく。

「憧れの俳優に友だち扱いされたんだ、しょうがないでしょ」

「彼の包容力にはやはり、目を瞠るものがあるな……あやからねば」

 

 改めて鋭児郎の人格を称揚する仲間たち。鋭児郎自身にとっても、踏陰の生き方にふれられたことは大いなる収穫だったろう。ヒーローとして、己の在り方に誇りをもつことは能力を磨くことと同じくらい大切なのだから。

 

 

 ただ肝心のドラマのほうはというと、尺の都合で天哉の台詞がカットされたばかりか、鋭児郎たちもごく一瞬しか映っていないというありさまなのだった。

 

 

 à suivre……

 

 

 

 

 

 

 

 





次回「聖母」

「久しぶりね、かっちゃん」
「……どうして……」

「忘れてしまったほうが、良いこともあるわ」
「……忘れちまったって、なかったことにはならねえんだよ」
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