BEY¢ND   作:ハレル家

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 ……すてんばーい……すてんばーい……

 ダルェもいない間に久々投稿!
 目指せ完結ゥ!


四天:誰が為自分の為

 

 人工島ダイダラ東エリア。

 普段なら人が寄り付かない廃棄されたコンテナ倉庫の中では異常が発生していた。

 黒い巨大な機械仕掛けの巨人を相対するかのように成人男性と同じぐらいの大きさの銀色に輝くロボットに変身したイデアを纏った臥煙がライトグリーンの瞳を灯しながら構えた。

 

「まさか、そんな手を隠していたとは……」

「……」

 

 ウィリアムが目の前の状況に軽薄な笑いを浮かべながら手を叩くが、臥煙は微動だにしない。

 

 ……様子見で撃つにしても、下手をすれば状況が悪化してしまう。ここは、アトラスで……

 

 目の前の銀色の戦士に警戒しながら腕時計に手を伸ばすウィリアム。

 残り数cmの距離となった瞬間、目の前にいた銀色の戦士が消え、気付けば伸ばしていた腕を掴まれていた。

 

「……なっ!?」

 

 ……速度特化型! 悪手だったか!

 

 自身の判断を悔いると銀色の戦士は腕をウィリアムの顔に向け、倉庫全体を昼間のごとく白く照らす程の強烈な閃光を放った。

 

「ぐぁ……目が……!!」

 

 目をやられ、チカチカと明暗を繰り返す視界に苛立ちながらアトラスをAIによる自動迎撃に切り替える。

 しかし、音が一切せず、静寂に包まれている事にウィリアムは怪しむ。少しずつ視界が元に戻ると銀色の戦士だけでなくオークレーもいなくなっている事に気付いた。

 

「……いない……となると……ライアン」

「こっちもいねぇ……逃げた」

 

 先程のフラッシュが目眩ましと時間稼ぎだと判断したウィリアムは懐から懐中時計ぐらいの大きさの物体を取り出す。

 

「恐らくですが、これを予想しなかったとでも?」

 

 スイッチを入れると中心に緑色の光が二つ点灯し、左側に点滅を繰り返す小さな赤い光が三つ表れた。

 

「……逃がしませんよ」

 

 ウィリアムは懐中時計ぐらいの物体--レーダーによって、倉庫の出入り口の方向を睨むように見る。その先に逃げた臥煙達(えもの)がいる。

 

 

 ◼️--◼️◼️--◼️

 

 

『ここまで来れば大丈夫だろう……今の内に都市へ逃げよう』

 

 ウィリアム達が追跡を始める前、臥煙とイデアが合体した銀色の戦士--アルカディアは左にオークレー、右に雪風を俵持ち--俗に言うお米様抱っこで運びながら安全だと思った場所に降りた。

 

「逃げてはダメ。まだ捕まってる人がいるわ」

『まだいるのか!?』

 

 逃走を提案するもまだ捕まっている人がいる事にイデアは驚く。

 

「私が知る限りじゃ、一人いる」

『まいったな……これ以上は危険だというのに』

「……他に武器とかないの?」

 

 悩むイデアに雪風が質問すると、イデアは人差し指で頬を掻くような仕草をする。

 

『……ハッキリ言って無い……このモードはアーマーというよりパワードスーツに近い状態だ……ボロボロになったアキヒトを支えて運ぶぐらいだ』

「……アキヒトじゃねぇ、明人だ……」

 

 イデアの言葉に反論する臥煙。だが、声はいつもより弱々しく、先程のダメージが残っている事が明白だった。

 

「それより、捕まっているヤツが一人いるんだろ? 早く助けて逃げようぜ」

『バカな事を言うな。撤退するべきだ』

 

 ダメージを負ったまま助けようとする臥煙をイデアが止める。

 

『お前は全身にダメージを負っている。今はアドレナリンの大量分泌で痛みは薄いが、激痛で動けなくなるのも時間の問題だ』

「だったら、動けなくなる前に助ければ問題ないだろ」

『もう一人が何処にいるのか分からずに闇雲に探すのか? 非効率だ』

 

 イデアの理屈を臥煙は無理にでも助けに行こうとするが、動きを止めてでも助けに行くことを拒む。

 

「私からもお願い。どうにかならないかしら」

『なるならないの問題ではない。ヤツらに捕まってしまえば君達を助けた事が水の泡だ……引き際を誤ってしまえば取り返しがつかない被害が起こってしまう』

 

 オークレーの言葉にイデアは反論するが、一理ある正論をすぐに返されて言葉を飲んでしまう。

 

『ここは退くべきだ。一人助ける事が出来なかったとしても、責められる理由はない』

「やだ」

 

 助けに行く事を拒むイデア、逃げる事を否定する臥煙。平行線のまま時間だけが進み、

 

「……ねぇ……」

 

 そんな二人(一人と一機)に雪風が声をかけた。

 

「どうして、今日会ったばかりの他人に無茶できるの?」

 

 その言葉にオークレーは臥煙とイデアに目を向けた。

 

 

 ――■――■■――■――

 

 

 外はすでに夕方となり、陽が沈み始める。

 廃棄されたコンテナ倉庫が多く建てられた東エリアを二つの人影と一つの巨影が闊歩する。

 やがて歩みが止まり、ウィリアム達の前には探していた二人が見つかった。

 

「見つけましたよ」

 

 ウィリアムの言葉にオークレーと雪風は動じず、戦闘態勢を取る。ただ、一人足りない事にライアンが怪訝な表情を見せる。

 

「おい、あの野郎がいねぇぞ?」

「大方、別行動でしょう……ですが、我々の目的は彼女達です」

 

 ライアンの言葉にウィリアムは一歩、また一歩彼女達に近付く。

 

「よく逃げないでくれましたね。お陰で楽に終われそうです」

「……勘違いしないで……」

 

 ウィリアムの言葉にオークレーは麻痺が抜けきった事を表すかのように翼を広げ、警戒する。

 

「……『逃げない』じゃない……『逃げる事をやめた』の……」

 

 敵意を宿す瞳をウィリアムに向ける。その鋭さは先程よりも鋭利に尖り、同時に覚悟を持った事を言外に表しいた。

 

「……やれやれ、そうですか……」

 

 交渉に最初から乗らない事を先に言われたと理解したウィリアムは呆れたような仕草を見せ、ため息を吐いた。

 

「……“めんどくさいな。オイ”」

 

 一転、濃厚な殺意がオークレーと雪風を襲う。

 ダイダラによって設立された超人社会において馴染みの無い本物の殺意に体が震えるが、震える膝を握った拳で力強く叩いて抑えた。

 

「……ライアン、加減は無しです。こちらが上だと教えてやりなさい」

「お、良いのか。怪我だらけになっちまっても知らねぇぜ」

 

 ウィリアムの言葉に呆れたように言うも表情は反対に嬉しそうに笑みを浮かべ、拳を鳴らしながら突撃する。

 

「ハッハー! やろうぜ嬢ちゃん!」

 

 駆け出すライアンに雪風は氷の霜が張っているような鱗に覆われた拳で迎撃する。

 ガキィン、という人体では鳴らせない音が東エリアに響いた。

 

「流石は竜の超力(ビヨンド)を持つだけあるよなぁ!! 楽しませてくれよ!!」

「うるさい」

 

 ライアンの挑発に氷のように冷たく一蹴して拳を振るう雪風。その見た目に反して力が強く、お互いが拮抗する殴り合いが始まった。

 

「さて、私は上空に飛んだ蝿を打ち落としますか」

「誰が蝿よ!!」

 

 ウィリアムの言葉に強く反論するオークレー。兵器として起動しているアトラスが彼女を捉えて拳を振るうも、振るった後には別の場所に移動している。

 

「急降下ジェット!!」

 

 弾丸のように滑空しながら高速でアトラスの脚を攻撃するオークレー。コンテナ倉庫の壁を踏み台に加速してスピードは徐々に速くなり、やがてアトラスの反応が遅れるようになる。

 

 ……スピードはあちらが上……自動操縦にしましたが、処理速度が追い付きませんね。

 

「これで、決まり!」

 

 ウィリアムの思考とは別にオークレーの亜音速に到達した体当たりがアトラスの脚を崩して横転させる。これにより、アトラスは処理の再計算を行って動きを止める事になる。

 

 ……よし。次はあの男を……!?

 

 横転したアトラスを尻目に再び加速を行おうとしたオークレーだが、不意に足首を掴まれるような感覚と共に減速した。

 

「な、これは……」

「ふぅ、手間を取らせやがって……」

 

 いや、本当に足首を掴まれていた。ウィリアムの腕がゴムのように伸び、オークレーの足を掴んでいた。

 外そうと手を伸ばすオークレーだが、それよりも早くウィリアムが勢いをつけてオークレーを地面に叩き付ける。

 

「……が!?」

 

 ギリギリで受け身が間に合ったが衝撃は強く、肺から空気が吐き出される。

 

「手札と言うのは、相手を騙し、欺き、有利だと信じ込ませてから裏切るのが定石です。たかだか十数年生きた小娘に遅れはとりませんよ」

 

 自身の超力(ビヨンド)である軟化を手札と呼び、痛みに苦しむオークレーに弱った獲物に近付く狩人のように歩み寄るウィリアム。オークレーは強く睨むもウィリアムは涼しい笑みを浮かべるだけだった。

 

「……ふふ、その目を見れただけでも胸が軽くなりますよ。アトラス、飛ばないように彼女の翼を折りなさい」

 

 無機質な機械仕掛けの巨人(アトラス)の手がオークレーに伸びる。雪風が助けに行こうとするもライアンに邪魔されて動けない。

 少しずつ伸びていく魔の手に恐怖を抱いたオークレーが痛みを覚悟して目を瞑った。

 

「……?」

 

 しかし、いつまで待っても冷たい機械の無機質な感覚がこない事に疑問符を浮かべ、少しずつ目を開けると……アトラスが無数の触手に縛られていた。

 

「……なっ!?」

「どっっっせぇぇぇぇいぃぃぃ!!」

 

 言葉を無くして驚くオークレー、異常事態に声を荒げるウィリアムの後ろから気合いが入った活発な声と同時にアトラスが宙を舞って頭から地面に叩き付けられた。アトラスを縛っていた触手が縮んでいき、辿っていくと二つの人影があった。

 赤のメッシュが入った長い銀髪を一つにまとめて赤いヘッドホン、両肩から両手まで包帯が巻かれており、顔の左側を狐の半面で隠し、隠れてない碧の瞳が覗く。そして、右腕は無数の触手に分かれていた所から触手はこの人物の超力(ビヨンド)のようだ。

 そしてもう片方は見慣れた男性が立っており、その男性はオークレーを見つけると声をかけた。

 

「どうやら、間に合ったようだな」

「ふぃー! ギリギッリセーフ!!」

 

 アルカディアとなっている臥煙がオークレーの姿に安堵し、その横で触手を操っていた女性--蔦崎(つたさき)勇菜(ゆうな)が間に合った事に喜びを体全体で表していた。

 

「……バカな……どうやって……」

『それは私がやった』

 

 予想だにしない事に狼狽(ろうば)いを見せるウィリアムにイデアが説明する。

 

『オークレーが所有する携帯端末から衛生にアクセスして周辺の地図を獲得し、捕らわれている人物の個人情報を閲覧して携帯端末のGPS機能を逆探知して捜したのだ』

「まさか、港の近く……それもカプセル状の牢屋を閉じ込めて海の中に沈めていたなんて知らなかったけどな」

 

 お陰で時間がかかった、と言って疲れた表情で呟く臥煙。しかし、その様子にウィリアムは納得いかずに臥煙へ問いかけた。

 

「なぜ、なぜ、何故名前を知らない人の為にお前は無茶が出来るんだ!!」

 

 ウィリアムの言葉には理解できない感情が込められ、その瞳は動揺で揺れていた。その姿に頭を掻き、臥煙は答えた。

 その答えは、先程の雪風と同じ答えだった。

 

「……俺さ……夢とか無いんだよ」

 

 その言葉にウィリアムとライアンは疑問符を浮かべる。

 

「……夢……だと……?」

「ガキの頃から何も無くて、何で生まれてきたかも知らないんだ……でも、答えてくれたヤツがいる」

 

 アルカディアとなっているので表情はわからないが、答えを知っているオークレーと雪風には彼が語っていた時と同じ表情を浮かべているのだと理解する。

 

「『夢がなくても、守る事はできる。知らなくても、つなぐ事はできる』って言った……なら、俺は何度だって守って、何度だってつないでやる。アイツが好きだったこの世界の為なら、何度だってな」

 

 仮面越しだが、強い意思と覚悟に満ちた言葉と同時に構える。すでに士気は臥煙達が上である。

 

「さぁて、反撃の時間さ!」

 

 両手に触手を大量に生やして戦闘意欲を見せる蔦崎。

 

『いや、目的を達成した以上ここに長居する必要は無くなった。直ちに撤退すべきだ』

「えー、なんでだい?」

「……あの人達を捕まえた方が良いと思う」

 

 しかし、出鼻を砕くかのように言うイデアに文句を言う蔦崎。雪風も蔦崎と同じ意見を言う。

 

『単純な話だ……時間がない』

 

 直後、周囲の壁や地面が大きくひび割れ、周囲に地響きが鳴り出した。

 

「え? え!?」

「どうなってやがる?」

 

 まるで地震が起こるかのような唸る重低音に蔦崎とライアンが戸惑う中でオークレーは具合が悪そうな様子の臥煙に気付いた。

 

「……ねぇ、一体何したの?」

 

 悪い事を隠そうとする子供のような様子の臥煙を優しく聞き出すオークレーに臥煙は呟き出した。

 

「……その……時間なかったから、手当たり次第壊しまくって……その……」

 

 オークレーのすぐ側のコンテナ倉庫の壁が崩れ、向こう側が見える。その向こうには--

 

「……少し、やり過ぎた……」

 

 --辺り一面に瓦礫の山が積まれた惨状と言うべき光景が広がっていた。

 

「壊しすぎよ! あなたはここを更地にするつもり!?」

「ごめん! マジでごめん!」

『しかし、目的の人物を見つける事が出来たからプラマイゼロだ』

「むしろマイナスだけど!? とにかく逃げるわよ!」

 

 ここにいたら崩壊に巻き込まれると判断したオークレーは逃げるように指示すると空に飛び、臥煙は蔦崎の触手を掴み、雪風と同じタイミングで空に飛んだ。

 

「待ちなさ、くっ!」

 

 逃走する臥煙達を阻止しようとウィリアムは腕を伸ばそうとするもコンテナ倉庫の壁が倒壊して阻止された。

 

「おいおい、やべぇぜ!」

「……仕方ありません。我々も撤退します」

 

 壊れていく周囲にこれ以上の長居は危険だと判断し、ウィリアムとライアンは車形態に戻したアトラスに乗って東エリアから離れて行った。

 数分後、東エリアの一部が崩壊し、明日の朝のニュースのトップになるが、そこで起きた騒動を誰も知らない。

 

 

 -■--■■■--■-

 

 

 中央エリア。

 人工島ダイダラの中心部にして、心臓の部分であるこのエリアは学校等の公共施設が密集している。そして中央にはそびえ立つ塔があり、そこは『超人特区』の1つで超人の安全と保護及び超力に関する研究が日夜行われている。

 その最上階にて、質素ながら高級感溢れる椅子に座り、机にて執務を行う人物がいた。

 机の横に設置されている電話機が鳴り響き、その人物はゆっくりと手に取った。

 

『……私だ』

 

 その声は老若男女が混ざったような声で性別が判別できないが、声の主から放たれる重圧から只者ではないと予測できる。

 

『……なに? ……作戦が失敗しただと』

 

 どこか不機嫌な様子を見せ、人がいれば気絶するような威圧が部屋を軋ませる。

 

『……背中に機械の腕を生やした青年……なるほど……』

 

 しかし、特徴を聞くと嘘のように霧散し、再び静寂で重い空気が漂い始める。

 

『後の事は私がやろう。お前達は謹慎処分として待機しておけ……最終フェーズと共に謹慎を解除する』

 

 その言葉を最後に連絡を切り、椅子に深く座る。その視線は空を見つめるも遠い所を見るような目だった。

 

『ここに来るとは思わなかったが、計画に変更はない』

 

 その言葉と同時に椅子から立ち上がり、外の景色を見つめる。

 島全体を見渡せる景色にその人物は薄ら笑いを浮かべた。

 

『……フフ……もうすぐだ……もうすぐこの世界を……変えるのだ』

 

 その言葉は誰の耳にも届かず、重い空気に消えていった。





 やっと起承転結の起がおわったぁ……

 長いこと掛かりましたが、少しずつ進みまっせ……

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