僕たちは三題噺の中で生きている   作:しぃ君

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十二噺「火蓋は切って落とされる」

 ──────────

 

「『終わり』、『始まり』、『堂々巡り』」

 

 ──────────

 

 終わりと言うのは、突然やってくる。

 光の時と同じく、残酷な現実と共に。

 だが、今回は違った。

 違う意味で、噺は現実を突き付けられた。

 

 

 今まで自分のことを多少は慕ってくれてると思っていた大切な妹が、自分に少なからず好意を抱いているなんて思いもしなかった。

 ……それは、家族として好かれているだろうとは考えていたが、まさか一人の男として見られていたなんて。

 正直、頭が追いつかなかった。

 

 

 家に帰ったら帰ったでこんな時間に妹を一人で帰させるなんて何事か、と正にこっ酷く怒られてから食事をとる。

 あまりにも衝撃的なことが起き過ぎて、彼の舌は味を感じさせてくれなかった。

 それから、お風呂にゆっくりと浸かってひたすらに全身を脱力させた。

 

 

 完全に脱力させたら、少しづつ今回起こったことを考えた。

 何故、あんな事をされたのか?

 これは考えなくても分かる。

 

 

「僕に対して恋愛感情的なものがあってそれを伝えるため……ってことで良いんだよな?」

 

 

 じゃあ次だ。

 何故、このタイミングで?

 口付けをされる前までしていた会話を全力で捻り出す。

 まだ一時間も経っていないと言うのに……それだけ誠袈からの口付けが衝撃的なものだったのだろう。

 

 

 思い出した会話は────

 

 

『兄さんは、淑先輩のことをどう思っていますか?』

 

『……?大切な友達かな。』

 

『…それ以上になる事ってあると思いますか?』

 

『恋人ってこと?……それは…分からない…かな。』

 

(そうだ!あの時は清水さんのことをどう思ってるか聞かれて……それで最後に……。)

 

 

 中々出てこない最後に発した言葉を掘り出す。

 一分ほど経過して、ようやく言葉を思い出した。

 自分の出した問に合う答えのヒント。

 

 

『でも、もし清水さんみたいな人と付き合えたら幸せだろうね。』

 

(…………あれ、僕何気に無自覚すぎる最低な発言してるんじゃない?)

 

 

 妹が自分のことを好きになる訳はない。

 そうやって決め付けていた噺の最大のミスであり、最低な野郎とも思える発言。

 気付くのが遅すぎである。

 先日起きた淑との仲違い事件と同等以上に不味い。

 

 

 兄妹と言う関係性がボロボロに崩れ去る終わりが手に取るように分かる。

 

 

「これって、僕詰んでないか?」

 

 

 もし、誠袈の想いに答えたら……さぞかし彼女は喜ぶことだろう。

 けれど、親は?

 あの緩和でさえ首を横に振る案件。

 正に至っては話すら聞いてもらえず勘当ものだ。

 

 

「でも、答えなかったら答えなかったで誠袈を傷付けることになる……。」

 

 

 堂々巡りだ。

 考えている間に時間は過ぎていき、最終的に彼は逆上せて正に救助された。

 

 ──────────

 

「お前がお風呂で逆上せるなんてな……何かあったか?」

 

「あったと言えばあったけど、言いたくないかな。」

 

「そうか。」

 

 

 正はそういう人間。

 本当に困ったら頼ってくれると分かっているからこそ何も言わない。

 どっしり構えて待つ、簡単に見えても難しい。

 それが出来る人間なのだ。

 

 

 時たま、噺は父である彼のそう言う姿を羨ましく思う。

 立派な大人、と言う言葉の理想形の一つに違いないと確信している。

 起き上がったあとは部屋に戻った。

 

 

 暗いはずの自室の電気がついている。

 ……予感はしていた。

 的中はして欲しくなかったが。

 

 

 不自然に重く感じるドアを開けて、部屋の中に入った。

 中にはいつも通り、可愛らしい動物柄のパジャマに身を包んだ誠袈が居た。

 頬は紅潮しており、体をモジモジさせている。

 された側の噺より、した側の彼女が緊張しているのは如何に。

 

 

「……えっと、誠袈?」

 

「ひゃ、ひゃい!にゃ、にゃんでしょうか?!」

 

 

 噛みまくってるし、声は裏返ってるしでプチパニックを起こしている。

 普段の彼なら頭でも撫でて落ち着けてやろうとするところだが、今回は少々訳が違う。

 噛みまくってても訳せないことはないので、噺は可哀想に思いながらも話を続けた。

 

 

「さっきの……キスのことなんだけど……。」

 

「……そ、それは…その。」

 

「無理に理由は聞きたくないから、言えないんだった──」

 

「い、言います!……私は兄さんの事が、兄妹ではなく家族でもなく、一人の男性として好きです。私のために怒ってくれて、私のために頑張ってくれる兄さんが好きです。…それより、誰かのために頑張れる兄さんが好きです。……きっと、今後兄さんを好きになる女性の大半はその理由ですよ。」

 

 

 誰かのために頑張れる。

 言うは易く行うは難し、この言葉の通りだ。

 彼女の告白の言葉は兄である噺を誇らしく語る妹のそれでいて、一人の少女としての言葉だった。

 

 

 返事は?

 どう返せばいい?

 頭の中に出てくる単語を幾つ組み合わせても、良い言葉は浮かんできそうにない。

 何か返さなければ。

 そう思えば思うほど、何も言えなくなってしまう。

 

 

 どことなく、噺の雰囲気でナニカを感じ取った誠袈は彼の真似をして朗らかに微笑んだ。

 

 

「今は答えなくていいです。他の誰かを好きになっても構いません。ですけど、私は簡単には諦めませんから覚悟してくださいよ?」

 

 

 朗らかな笑顔から打って変わって、いたずらっ子のような顔で笑っていた。

 風呂場で起こった堂々巡りはもう起こりそうにない。

 何故なら、遠い未来のことを考えるのが馬鹿らしいと感じたから。

 今はもう少しだけ、このぬるま湯に浸かっていたい。

 

 

 ここからが始まり。

 問題はあるが、恋愛戦争の勃発である。

 先行を取ったのは誠袈。

 淑は後手に回ってしまった。

 何時壊れても可笑しくない関係がスタートしたのだ。

 

 

 恋愛戦争の行方は誰にも分からず、最高の結末を勝ち取るために日夜戦いが行われるだろう。

 

 

※この作品は一応は三題噺です

 

 

 

 

 




 毎日これを書いてて思ったこと。
 三題噺ってなんだっけ?

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