僕たちは三題噺の中で生きている   作:しぃ君

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十五噺「変わりゆく関係」

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「『 遊び』、『本気』、『嘘塗れ』」

 

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 先日の手伝いから週末を跨いだ月曜日、球技大会が開催された。

 運営は生徒会主導で、試合は各学年ごとに行われる。

 月曜に三年、火曜に二年、水曜に一年、木曜に各学年の優勝チームで対決、金曜には先生チームも加わり全学年で優勝を果たしたチームと対決。

 と言う流れである。

 

 

 種目は男子サッカー、女子バスケットボール。

 総当りで試合を進めて、勝ち点が一番多いチームが優勝。

 特殊ルールはなく、種目事にある既存のルールで取り仕切る。

 噺と淑が属するクラスは二組。

 敬は一組で、風輝は四組。

 

 

 遊びであれど勝負は勝負。

 本気でやらないと失礼に当たるので、彼もそこら辺は弁えていた。

 ベストを尽くそうと一人意気込んでいる所に、後ろから淑が現れる。

 

 

「こんにちは浅井くん。試合はまだですか?」

 

「うん、この次かな。そっちは?」

 

「今試合中ですけど、私が出るのは最後の試合だけなのでこちらを見に来ました。」

 

 

 少し気恥しそうに言う彼女を見ながら、噺は苦笑を漏らす。

 中に居た方が日差しが当たらず少しはマシだろうに、わざわざグラウンドに来るなんて……

 

 

「今日暑いんだから、室内に居た方が良いよ。室内でも水分補給はこまめにした方がいい。…確か、最高気温二九℃らしいから。」

 

「だったら尚更ですよ!浅井くんこそ何か帽子でも……。」

 

「おうおう、お二人さんはお熱いねぇ。」

 

「オレも混ぜてくれよ〜。」

 

 

 二人の初々しいやり取りに横から混ざるように、敬と風輝が現れる。

 風輝は運営側だろうに、大方誰かに仕事を任せて遊びに来たのだろうか。

 少しだけ仕事を押し付けられた人に同情し、謝罪の念を送る。

 

 

「……で?何しに来たの?」

 

「うわ〜、あからさまに嫌がってるよ。どうするふーちゃん?」

 

「どうするも何も、イジルに決まってるだろ!あと、ふーちゃんやめい!」

 

 

 宣言とツッコミを同時にやる風輝に尊敬しつつも、そっと目線を逸らした。

 殆ど女子にしか見えない容姿は体育着になっても健在なので、あまりジロジロ見ないようにしたのだ。

 …それを言うなら現在進行形で美少女を見つめているので、帳尻トントンどころか心臓ドンドンである。

 

 

 見つめているのにお互い少し照れて、視線を逸らした。

 ……何度見ても初々しい出来たてホヤホヤカップルのような光景。

 

 

「ごめん、ジロジロ見て…。」

 

「い、いえ、私の方こそ…。」

 

「……なぁ、ホントにこれで付き合ってないんだよな?」

 

「らしいぞ?どうする?いっその事俺たちも付き合うか?」

 

「オレは男子だ、付き合うなら性別を変えてからにしてくれ。」

 

 

 ……一瞬、場がシラケた。

 その場に居る全員の言葉を代弁するならこうだろう。

 

 

『いや、お前が変えるべきだろ!』

 

 

 絶対にこう言うに違いない。

 

 

 結局、十数秒ほどで場の雰囲気は普段のものに戻り談笑し始めた。

 なんだかんだ言って、淑は段々と噺以外の人物ともスムーズに話せるようになっている。

 未だに少し他人行儀な部分は確かにあるが、それでも充分成長していると言っていい。

 

 

 その様子を見た噺は朗らかな微笑みで空を見上げた。

 自分たちを照らし続ける太陽は仕事を休む気配がなく、今日も元気いっぱいに熱を届けてくる。

 

 

(…光。僕は今、彼女の役に立ててるかな?君のような陽気さは僕にないけど、清水さんをちゃんと照らせているかな?)

 

 

 返ってくるはずのない問を空に投げ掛けた。

 救えなかった少女は、名前の通り辺りを照らす光だった。

 …その光を助けられなかったことを今でも後悔しているし、もしもを夢見る時がある。

 だが、最近はそれもなくなった。

 

 

 後悔は少なからずあるが、夢は見ない。

 今手の届く人を大切にしたいと、そう思ったから。

 

 

(一度嘘塗れになった僕でも、誰かを照らすことは出来るよね?)

 

 

 自分の気持ちが本当は強迫観念による嘘塗れのものだったと知って、それでも助けた誰かの笑顔を求めた。

 そこには、彼の人としての本質があった。

 

 ──────────

 

 球技大会は一組の圧勝だった。

 二組も奮闘したが、一組には勝てず二位と言う結果だった。

 因みに、噺はミッドフィールダーのポジションとして試合に出て、ちゃっかりと一点決めていた。

 女子の方も結果は同じで、一組に一位を取られて二位。

 

 

 しかし、以外に悔しさはなくやり切った感覚があった。

 帰り道でそんなことを話しながら歩いていると、噺は後ろから誰かに抱きつかれた。

 その人物は……勿論誠袈である。

 

 

「兄さん!凄いですね!二位ですよ二位!」

 

「ありがと誠袈。…出来れば早く腕を退けてくれるかな?」

 

「あっ、すいません。淑先輩の方も二位だったんですよね?おめでとうございます!」

 

「私はあまり大したことは……。そう言えば、浅井くんはゴールを決めたらしいですよ?」

 

「ええ?!本当ですか??」

 

「本当だよ……。」

 

 

 一段と騒がしくなったかと思えば、後ろから明や敬に風輝の声も聞こえてきた。

 帰り道に二人で話すのが楽しみだった噺と淑。

 だが今は、大勢で話すのも悪くないと思えるようになっていた。

 

 

 季節はまだ夏、暑さが増すこの時期に何が起こるのか?

 イベント(面倒事)が目白押しかもしれない。




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