僕たちは三題噺の中で生きている   作:しぃ君

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 今回の話は私自身もよく分かっていないので、頭を空っぽにして読んでください。


二十噺「運命を嫌う」

 ──────────

 

「『運命』、『許容』、『嫌悪』」

 

 ──────────

 

 運命、それは奇跡を持ってしても変えられるか分からない定められた事象。

 

 

「浅井くん。運命って信じますか?」

 

「…藪から棒にどうしたの?」

 

「いえ、先日見たテレビの中で……。」

 

 

 話を聞くに、巡り会いや別れは元々決まった運命だったのではないか?

 と言うファンダジーなテレビ番組を見たらしい。

 …運命、噺は少しだけ悲しそうな顔をして呟いた。

 

 

「…あるのかもね。…でも、僕はそれを許容することは……許すことは出来ない。」

 

「死…それさえも勝手に決められるから…ですか?」

 

「そうだね。…だって、目の前に助けられる命があるのに、その命はそこで終わることが運命なんだって……僕は認められない。」

 

 

 彼は運命の有無を否定しない。

 有るかもしれないし、無いかもしれない。

 別にそんなのどうだっていいのだ。

 ただ、誰かを助けられなかったことを、誰かの死を運命の一言で片付けることを彼は許容できない。

 

 

 もしそれが出来てしまったら……

 

 

「私は有って欲しいと思いますよ。だって、浅井くんや皆さんとあったのが運命だったら、とっても素敵じゃないですか。」

 

 

 雰囲気を明るいものにするために、淑は笑いながら言う。

 それに釣られて、噺もクスリと笑を零した。

 彼は運命を許容できない、彼は運命を嫌悪する。

 

 

 助けられなかった彼女の命が……あれはしようがない事だったの一言で片付いて欲しくないから。

 自分の不甲斐なさを運命で片付ける逃げをしたくないから。

 だからこそ、彼は運命を嫌悪する。

 

 

 でも、淑と出会った事が運命だったなら……それは喜ばしいことで、光との出会いも運命だったなら……

 

 

「清水さんの意見に共感できる部分はいっぱいあるね。」

 

 

 上から目線のようで違う。

 運命を許容しているようで違う。

 運命を嫌悪していないようで違う。

 

 

 今までの出会いが運命だったなら、それを素敵なことだと思うだけ。

 決して許容しないし、嫌悪し続ける。

 

 

「……私、頑張ります!浅井くんが心の底から運命って言う言葉が好きになれるように。」

 

「ありがとう清水さん。…やっぱり清水さんは優しいよ。僕の何倍も。」

 

「えっ?そうですか?私はそんなことないと思うんですけど。」

 

 

 帰り道、六月も下旬に突入し、太陽は六時を超えても仕事をやめない。

 夕焼けを眺めながら、二人は近くの公園に立ち寄った。

 理由があった訳ではない。

 なんとなく、それだけだ。

 

 

 ブランコをこぎながら、話を続けた。

 

 

「童話の結末に疑問を持ったことってありますか?」

 

「童話の結末に?」

 

「はい。童話の結末って色々あるじゃないですか?でも、それって作者が決めた定め。童話の中の登場人物たちにとっては、運命とも言えると思うんです。」

 

「なるほど…。」

 

 

 童話の結末。

 噺が思い浮かぶものは大抵がいい終わり方をしている。

 結末に対する疑問、そんなの簡単には──

 

 

「あっ。」

 

「何か思いつきましたか?」

 

「…一応。アリとキリギリス…かな。」

 

「それって確か、最後は夏の間に食糧を貯めていなかったキリギリスが、冬を越す食糧をアリに貰って終わるんじゃ…。」

 

「ざっくり言えばそうだけど、違う結末もあるんだよ。…働いてなかった君たちの自業自得だって感じで、アリがキリギリスに食糧を上げず。キリギリスは死んでしまうんだ。」

 

 

 アリが悪いように聞こえるが、物語上キリギリスの自業自得なのだ。

 夏を歌って過ごしていたのだから仕方がない。

 だが、噺は疑問に感じた。

 食糧を与えて見返りでも要求すれば良かったのではないか?

 腹黒い考え方かもしれないが、余裕があるならそうするべきだ。

 

 

 結末が二パターンあり、その内の一つでは諭して食料を与えた。

 利用しようと思えば出来た。

 それをしなかった理由は?

 

 

 ケチだっから?

 違う、それならさっきも言った通り利用した方が得が大きい。

 

 

 食糧が少なかったから?

 これの可能性もある…が、キリギリス一匹に賄えないことなどない。

 それなりに余裕を持っている筈だ。

 

 

 キリギリスのことが嫌いだったから?

 違う、バイオリンを弾いていたキリギリスを知っているのだから嫌いなわけではない。

 嫌いだったなら、嫌味を言う前に追い返すだろう。

 

 

「何で助けてあげなかったのか?それに疑問を持ったことがあったかな。」

 

「へぇ〜。私は全然知りませんでした。」

 

「そっか、じゃあさ清水さんはどう思う?」

 

「私……ですか?」

 

「うん。」

 

 

 乱雑にも見える返し、だが噺は単純に淑の意見を聞きたかった。

 淑の考えたことを教えて欲しかった。

 少し震えた唇から、小さい声で言葉を紡いだ。

 

 

「キリギリスのことが好きだっから…じゃないですか?」

 

「好きだっから…どうしてそう思うの?」

 

「…自分でもよく分かりません。ただ、嫌いな訳じゃないと思うんです。だから、何かがあったんじゃないかと。」

 

 

 あやふやでふんわりとした意見。

 雲を掴むような、そんな感覚。

 

 

「!私の妄想でよければ聞いてください。」

 

「良いけど……。」

 

「食糧が少しだけ足りなくなってしまったんじゃないでしょか?余裕を持って食糧を取っていたけど少しだけ足りなくなってしまって、冬の寒い中食糧を見つけに行こうとするアリを止めるためにキリギリスが断った……とか?」

 

 

 ありえない、そう言いきれないのが物語の嫌な所だ。

 作者の裏事情など分かりはしない。

 けれど、こうやって話をするのは嫌いではない。

 運命(結末)をどう読み解くかなど、読み手しだいだ。

 

 

「ふふっ、清水さんは面白いね。……凄くいいと思う。」

 

 

 笑う噺。

 淑は彼が運命と言う言葉を好きになれるまで、隣に居たいと思った。

 

 




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