僕たちは三題噺の中で生きている   作:しぃ君

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三十一噺「幽霊の助言」

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「『夏祭り』、『幽霊』、『告白』」

 

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 夏祭り、それは老若男女問わず笑って過ごす催し。

 八月のお盆前、噺たちは近くの神社で行われる夏祭りに遊びに来ていた。

 …全員が浴衣を着ているのは偶然か、はたまた……

 

 

「偶然ってあるもんだね。」

 

「だな~。まさか、俺まで着ることになるとは…。」

 

「お前らは柄的に男物だから良いだろ!オレは完璧に女物なんだぞ!御丁寧に髪飾りまで用意しやがって……。」

 

「なんだかんだ言って、ふーちゃんが何時も着ちゃうからダメなんじゃない?」

 

「そうかもしれませんね。」

 

「まぁまぁ。ここで時間を潰すより、出店を回りながら花火まで遊びましょうよ。」

 

 

 淑が何とか話を纏めるが、風輝は未だに文句を言っている。

 それを他所に、噺は辺りの出店の看板を見た。

 焼きそば、フランクフルト、かき氷、綿あめ、チョコバナナ、ヨーヨーすくい。

 定番ものがズラリと並んでいる。

 

 

 因みに、全員の柄は男子から、噺が紺と白の縦縞、敬が黒と白の縦縞、風輝が金魚が描かれた黄色主体の物。

 女子は、淑が向日葵の描かれたオレンジ主体の物、誠袈が睡蓮の描かれた水色主体の物、明が紅葉の描かれた薄紅色主体の物。

 

 

「……誠袈は何か食べたい物とかある?」

 

「チョコバナナが食べたいです!」

 

「噺、オレも~!」

 

「俺も俺も!」

 

「私も私も!」

 

「じゃ、じゃあ、私も!」

 

 

 誠袈に聞いたはずが、何故か全員欲しいと言い出したのでお金を徴収し、出店の店主らしきオジサンに六本分のお金を渡した。

 

 

「おじさん、六本お願い。」

 

「あいよ。普通のチョコバナナで良いかい?チョコミント味もあるぞ?」

 

「歯磨き粉はちょっと……。」

 

「貴様!チョコミントに対して失礼だと思わんのか!」

 

 

 突然現れた黒髪の浴衣少女に突然怒られる噺。

 よくよく見ると、彼女の手には計三本のチョコミント味であろうチョコバナナが握られていた。

 ……思わぬ所でチョコミント大好きな人に勝ち当たったらしい。

 おじさんがチョコバナナを容器に入れるまでの僅かな時間で、少女は噺にチョコミントの良さを力説していた。

 

 

 何とか窮地は逃れたが、容器を貰って出店の前を去る時もガン見されていた。

 若干殺気が篭っていそうな目に身震いしながらも、淑たちが居る場所に戻ったが……

 

 

「あれ?淑さんと誠袈は?」

 

「え?お前と一緒に行ったんじゃないの?」

 

「六本も持てないだろうからって、追いかけて行ったのオレ見たぞ。会わなかったのか?」

 

「すれ違っちゃたんですかね?」

 

「……ごめん。僕探してくるから、これお願い。」

 

 

 三本と三本とで分けて容器に入れてもらっていたので、一つを敬に渡して彼は走り出した。

 風輝は人混みの中を無闇に探しても無駄だと止めようとしたが、その時には噺の背中は完全に人混みに紛れて見えなくなってしまっていた。

 

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「はぐれちゃいましたね…。」

 

「そうみたいですね。…あっ!電話!」

 

 

 神社の境内にて、はぐれてしまった二人はなくなくそこを訪れていた。

 分かり易いし、来やすい場所であるためだ。

 辿り着いてから途方に暮れていたが、淑が文明の利器の存在を思い出した。

 巾着からスマホを取り出して、電話をかけるために電源を付けたが……

 

 

「…う、嘘。電池切れ。…誠袈さんの方は?」

 

「…すいません、私の方も電池切れです。……でも、可笑しいです。私、家を出る直前までスマホを充電してたんです。…それが、まだ一時間も経ってないのに無くなるなんて…。」

 

「まるで、不吉なことの前触れみたい?なんちゃって。」

 

 

 ……二人の前に現れたのは、彼岸花が描かれた黒主体の浴衣を着た光だった。

 髪型も体型も違うのに、双子かと見間違う程似ている顔付き。

 誠袈も目を白黒させて混乱している。

 …逆に、当人たちは落ち着いていた。

 

 

「先輩の言ってた通り、ホントにそっくりなんスね。」

 

「…あなたが光さん…で、合ってますよね?」

 

「そうッスよ。私が朝陽川光です。」

 

 

 動揺はなく。

 真剣な瞳で淑は光を見すえた。

 嫉妬の心を向けていた相手であり、自分と似た顔を持っていた存在。

 ……何故動揺しないのか、彼女は自分でもよく分かっていなかった。

 

 

「…どうしてここに?」

 

「いやさ。誠袈ちゃんと淑先輩見てると、まどろっこしいんだもん。二人共堂々とアプローチすればいいじゃん。淑先輩に至っては、しっかりと言葉で伝えないと先輩は気付かないよ?」

 

「……二人共?」

 

「なんとな~く。淑先輩も気付いているんじゃない?先輩と誠袈ちゃんが普通の兄妹じゃないって。」

 

 

 …勘違いかもしれない。

 その思いは的外れだったらしい。

 仲の良い兄妹だとは思っていた淑だったが……もしかしてと思い始めた。

 

 

「誠袈さん…。」

 

「…悪いですか。自分の兄を好きになっちゃ。……しょうがないじゃないですか!気付いたら好きになってたんですから!」

 

「…よし、事実確認はOKっスね。後は……淑先輩の番じゃないですか?」

 

「私の…番……。」

 

 

 淑が内にある噺への想いを吐露そうとした瞬間。

 ベストタイミング……いや、彼女にとってはバットタイミングで彼は来てしまった。

 額に大粒の汗を垂らし、息は絶え絶えなのか肩が上下に揺れている。

 

 

「…まさか…とは…思ったけど…君だったのか……。」

 

「喋るのは息整えてからでいいっスよ、先輩。」

 

「有難く…そう…させて…もらう。」

 

 

 大きく二回ほど深呼吸をして、噺は何とか息を整えた。

 そして、息を整えたら整えたで、光たちの元に歩いて行った。

 

 

「…光、余計なこと喋っただろう?」

 

「真実を言ったまでですよ。…先輩たち、見ててまどろっこしいから。」

 

 

 カラカラと笑う光に、一発喰らわせてやりたいが……

 二人が居る手前そんなことは出来ない。

 ……それに加えて、誠袈のことがバレた可能性が大いにある。

 …出来るなら、淑には知られたくなかったがしようがない。

 軽蔑はされないだろうが…以前までと同じように接してくれるかは分からなくなってしまった。

 

 

「淑さん…その…。」

 

「誠袈さんから聞きました。噺くんはモテモテですね。」

 

「いや、そんなことは……。」

 

「謙遜しないで下さい。この場に居る全員、あなたのことが好きなんですから。」

 

「…………へっ??」

 

「…私はあなたに恋をしているんですよ。噺くん。」

 

 

 小悪魔のような微笑みで見つめてくる淑。

 頭の中が全く整理できてないまま告白を受けたため、余計混乱しているがこれでいいだろう。

 

 

(これくらい、仕返ししても良いですよね?だって、隠し事してたんですから……。)

 

「大体状況が掴めてきた。…ごめん、淑さん。返事は待ってもらっていいかな?ちゃんとした答えを出したいから。」

 

「…卒業式まで待ちますのでごゆっくり。…もし卒業式までに決まらなかったら…、その後は噺くんを最低二股野郎と呼びます。」

 

「滅茶苦茶嫌だ!!」

 

「ははは!やっぱり淑先輩って面白いっスね。」

 

 

 幻と言うか、幽霊と言っても過言ではない光は爆笑。

 誠袈は頭を手で抑えている。

 少し間が開き、噺が光と話し出す。

 

 

「光。今の君はなんなんだ?幽霊か……それとも…。」

 

「…別のナニカってことはないですから安心して下さい。先輩がネックレスを捨てない限り、私はこうやって時たま現れますからね。……関係が進んでなかったら頻繁に現れます。」

 

「何ともはた迷惑な……。」

 

「可愛い可愛い後輩に会えんるだからもっと喜んで下さいッス。」

 

 

 噺は適当にはいはいと返しながら、境内から出るために来た道を戻る。

 淑と誠袈と共に。

 

 

「君とはもう会わないことを祈るよ。」

 

「それぐらいの意気込みが1番っスね。」

 

「また会ったら、色々話を聞かせて貰えると助かります。」

 

「さよならですね、朝陽川さん。」

 

 

 それぞれが挨拶?をしながら去って行く。

 闖入者により更に加速する恋戦争。

 全員が同じ土俵に立ったら今、アプローチは増していくだろう。

 

 

 ……噺の理性が壊れるのが先か、淑と誠袈が彼の心を完全に射止めるのが先か。

 勝負はまだ半分にも届いていない。

 




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