龍姫絶唱シンフォギアXDS   作:ディルオン

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第7話『集いし絆と、陽だまりに翳りなく』-5

『グウウッ!?』

 

 眼前に迫り来るノイズ。呼び出したスピード・ウォリアーは、人型ノイズの群れに囲まれ、逃げ場所を失っていた。それまで何とか敵の攻撃をかいくぐっていたが、もう限界だ。

 

『ウッ!』

「スピード・ウォリアー!?」

『グオオッ…!?』

 

 振り上げたハサミを真っ向から受け、スピード・ウォリアーそのまま光の粒子になって四散してしまう。

 

「くそっ…!」

 

 歯噛みしながら、Dホイールを旋回する。さっきまで俺のいた場所を、カエル状のクロールノイズが突進して通過した。

 壁に衝突して風穴を開ける様子に戦慄しながら、俺は必死に奴らの攻撃をかいくぐる。

 

(駄目だ、このままでは押し切られる…!)

 

 フィールドには伏せた『エンジェル・リフト』、そして手札には《sp-スピード・エナジー》がある。これで復活したスピード・ウォリアーの攻撃力をアップさせれば、蹴散らすことは出来る。

 だが……

 

「はあ…はぁ…はぁ!」

 

 大通りの中央付近……丁度街のど真ん中に当たる箇所で、周囲を索敵する。状況は全く好転しない。

 

(どういうことだ……どうしてノイズがここまで集中的に…!?)

 

 雪音クリスではなく、俺を狙っているのか? 

 だが、それだとマップに表示されているもう一つの緑の光点……今もイチイバルを身に纏ってノイズを蹴散らしている、雪音の説明がつかない。

 俺を狙うならば、こんな回りくどいやり方ではなく、もっと数で圧倒すればいい。しかし雪音を狙って数を分散させては中途半端だ。

 まだ敵の狙いがあるのか? それとも、俺の見落としている何かが……

 

「く…っ!?」

 

 ターンバックして人型の攻撃をすり抜けた。その後も何とか凌ごうとするも、徐々に奴等は輪を作って包囲網を狭めつつある。

 こっちも躱し続けるのは限界だ。

 

(使うしかないか!)

 

 既に走り始めてからスピード・カウンターは10以上乗っている。これなら加算される攻撃力はデュエルならば1000。下級モンスターなら撃破できる数値だ。

 俺は覚悟を決めた。

 手札から一枚カードを取り出して構える。

 そうして、ディスク部分のスイッチの起動画面に手を伸ばそうとした時だった。

 

「罠カード、発…ッ!?」

 

 

 ──―……ぅせええええええええっっ!!! 

 

 

 その時だ。

 Dホイールのモニターがもう一つ、更に緑色のモニターを探知した。俺は凝視する。間違いなく、アウフヴァッヘン波形である。しかもこの反応は、俺のすぐ近くまで来ている。無線越しに掛かってくる声と合わせて、俺は正体を知った。

 

「まさか…っ!?」

「ゆうせええええええええっっ!!!」

 

 黄昏の空を切り裂いて、一筋の閃光が俺の元へと一直線に向かってくる。空を仰ぎ見ると、ソレはまるで箒星だった。

 

「響!!」

「だぁっ!」

 

 咆えながら空を疾駆して、弾丸のように加速したまま、響は俺の隣へと降り立つ。

 地震かと思うほどの地響きが俺の内臓ごと揺らした。

 

「でええええいっ!!」

 

 着地したまま、駒のように身体を回しての上段蹴り。周囲に展開していたノイズは今まさに飛び掛かろうとする直前だった。

 向かってきたノイズは、その勢いを利用されカウンターとなり、マトモにダメージを受けてしまう。

 あっという間に、襲ってきたノイズは粉々に砕け散った。

 

「はぁー! ふぅー!」

「響、無事だったか!」

 

 息を整える響。思わず息を呑んでいた。正直、強くなっても、ここまで攻防一体の立ち回りを見せたのは初めてだったからだ。

 

「遊星、良かった会えて!」

「響、一体どうしたんだっ? 何があった!?」

「未来が…っ!」

「え?」

「未来が! 私とおばちゃんを逃がしてくれたの! ノイズの囮になって!」

「何だって!?」

 

 驚愕に顔が染まる。

 次の瞬間、同時に俺達の耳に爆音がつんざいた。見ると、商店街を抜けて山へと続く一体から、土煙が立ち上っている。

 

(小日向……シェルターまで逃げられなかったのか…!)

 

 ここに来る道中、お好み焼き屋付近を見たが、二人の姿が無かった。逃げたものと推測したが、確認する余裕が無かった。

 息が止まりそうになる。しかし響の目は揺らぐことなく俺を向いた。

 

「遊星、お願い手伝って!」

「響…!」

「未来を早く助けなきゃ! もう時間がないんだッ!!」

 

 俺は目を見開いた。気圧される。驚いたのは響の身にまとう雰囲気だった。言葉では言い表せない。尋常ならざる威圧感を纏っている。それは怒気などでもない、強い意志を秘めた眼だ。

 困惑する俺をよそに、腕を響が掴んでいた。

 

「私、もう手を離したくない!」

「……分かったッ」

 

 彼女が手を繋ぎたいと言うのなら。道を切り開くのが、俺の役目だ。差し出されたカードを、俺はデバイスにセットし直した。同時に出力を最大限にまで切り替え、クラッチを踏み直す。

 

「走るぞ、乗れ!」

「はいっ!」

 

 響がいつか初めて共に戦った時のように、Dホイールの後ろに飛び乗る。エンジンを再始動させて、モーメントをフル回転させた。高い回転音が、街中に響く。

 彼女の『陽だまり』を救うべく、俺達は走り出した。

 

「小日向の場所は分かるか!?」

「多分、あっちの方! さっきの大きな音がしたトコ!」

「山野に向かう傾斜道か!」

「うん、それに他のノイズもいるかもしれない! あのノイズは音に反応してるみたいなの!」

「音…そういう事か!」

 

 全て合点が言った。だから俺のエンジン音に寄せられたのか! 

 ハンドルを切りかえして、響の誘導に従う。その最中、再び巨大な轟音が響くと共に、土煙が舞う。それは彼女がさっき言った傾斜道の途中だった。

 もう一刻の猶予もない。

 

「…未来……お願い、間に合って…っ!」

 

 肩を掴む響の手が堅くなる。

 後から聞いた話だが……この時、小日向は必死になって、ノイズの手から逃れていた。

 しかしそんな俺達をあざ笑うかのように、俺達の上空からノイズが飛来してきた。

 

「っくそ…フライト型か!?」

「こんなの…構ってる暇ないのに!」

 

 フライト型が三体。明らかに、こちらを視認してくる。これでは奴らを躱しつつ小日向の元まで向かわなければならないが、それでは間に合わない。

 逆にコイツらを殲滅してからでは手間を取られてしまう。

 

(俺が囮になるしか…!)

 

「そうだ…あのカードっ!」

「カード?」

「遊星、これ!」

「これは…っ!」

「未来が渡してくれたの!」

 

 言葉短く告げて、彼女は俺にあるモノを手渡す。それが逆転への布石だった。

 その意味は俺にも伝わった。これは二人の、小日向と響の絆が繋がり、俺の元へと辿り着いたカード。

 

「これで、どうにかできないかな!?」

 

 必死に俺に懇願するように叫ぶ響。その時、全ての布陣は整っていた。

 刹那、俺の右腕が熱く輝く。シグナーの痣が、強く光っていた。俺の想いと、赤き竜の意志が一つになったかのように。強く強く心の奥底が叫ぶ。

 捨てるな、足掻け、諦めるなと。

 力は、既に俺達の元にあるのだからと。

 

「……よく持ってきてくれたッ!」

 

 可能だ。彼女の持ってきてくれた……いいや、小日向との絆が作り出した奇跡が、文字通りの光射す道となる。

 

「やるぞ響、フォニック・シンクロだ!」

「遊星…!」

「俺のスピードをお前に預ける! 奴らを蹴散らして進め!」

「……はいっ!!」

「行くぞ! 来い、『ターボ・シンクロン』!!」

『タァッ!』

 

 加速する俺達。

 受け取ったカードをモンスターゾーンにセット。遊星粒子が凝縮されカードの形を為すと、そこから出現したエネルギーの奔流は、光となって再構築され、緑色のメットを被った二頭身のモンスターが出現した。

 続けて、さっきまで伏せていたもう一枚のカードを展開させる。

 

「更にリバースカード・オープン! 『エンジェル・リフト』! 戻って来い、スピード・ウォリアーッ!」

『ウオオッ!』

 

 セメタリーゾーンから戻って来たカードをフィールドにセット。高速で移動する戦士が、再び俺の傍らで疾駆する。

 

(よし、これでクリアする条件はあと一つ……!)

 

 この状況の打開策。

 それには奴等を速攻で潰しつつ、小日向の元まで全力で駆け抜けて救出するしかない。必要なのは、揺るぎない速度だ。今の俺のカードで、それを可能に出来る方法があるとすれば一つだけ。

 

(……今の響のレベルをモンスターに換算すると2相当だ。なら、『アレ』をすぐにでも呼び出すには…!)

 

「これしかない!」

「ターボ・シンクロン! フライトノイズに攻撃しろ!」

「えっ!?」

『ダァ!』

 

 ターボ・シンクロンがヘルメットのバイザーを降ろし、上空へとジャンプした。そのまま空中にいた敵に体当たりするが、ノイズは破壊できない。メット部分がひび割れて、ターボ・シンクロンは転がりながら俺の元へと戻ってくる。

 

「ぐぅ…!?」

 

 マシンがふらつく。当然だ。

 ターボ・シンクロンの攻撃力は小型ノイズより遥かに低い。これでは破壊はおろか、却ってダメージを受けるだけ。

 

「ゆ、遊星、何を…」

「大丈夫だ、ターボ・シンクロンが奴を守勢に回らせる…っ! 衝撃が俺にくるだけだ!」

「でも…!」

「お前達の想いに俺が応える番なんだっ!」

「えっ…!?」

 

 それでも俺は笑う。

 ダメージを受けても、ライフは残っている。相当に無茶をやらかしたようだが、それでもここまで来れば俺達の勝ちだ。

 

「俺を信じろ! 必ず、お前を送り届ける……最短で最速で真っ直ぐに一直線に! お前の想いを、守るために!」

 

 絆を忘れない二人だから俺の心も救われた。

 仲間はこうだと思いださせてくれた。この絆が、ターボ・シンクロンをここまで連れてきてくれたのだ。ならば俺は俺として、必ず引き合わせてみせる。命を懸けて。

 

「ターボ・シンクロンの効果発動! 受けたダメージ分以下の攻撃力を持つモンスターを、手札から特殊召喚できる! 走れ、ロードランナー!」

『ピィ!!』

「ロードランナー…!」

「そいつに乗れ、響! 後は振り返るな!」

 

 画面に反射して、一瞬だけ映る響の顔を見た。

 戸惑い、少しの恐れ、そして……その不安全てを乗り越えようとする勇気が、夕焼けの光と共に輝いている。

 

「……分かった! お願い、ロードランナー!」

『ピピィ!』

 

 響は俺の肩に力を込め、隣を並走するロードランナーに飛び乗る。女の子一人を軽く支える力はあるロード・ランナーは、勢いを少しも落とすことなく響を載せて走り出した。彼女はいつも、響を守ってくれる。そしてこいつも、俺達の為に戦ってくれる。

 

『ウオオオッ!』

 

 響の前に、スピード・ウォリアーが付いた。彼女を守るようにして。

 行くぞ。

 全ての準備は整った。

 さあ、見せてやろう。

 この地獄を生み出したあいつ等に、そして何より、助けを求める彼女に向けて。

 絆が紡ぎ出す奇跡の力をッ! 

 

「罠カード、オープン! 『緊急同調』!」

 

『エンジェル・リフト』と共に、予め伏せてあったもう一枚のカード。響の救援時に、すぐフォニック・シンクロを行えるようにと持っていた罠カード。

 その効果は、バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行える。

 

 即ち! 

 

 

「レベル1『ロードランナー』! レベル2『スピード・ウォリアー』! そしてレベル2の『撃槍ガングニール』に、レベル1『ターボ・シンクロン』を、フォニック・チューニングッ!!」

「いっくぞぉおおおおおおおっっ!!!」

「集いし絆よ! 更なる旋律を紡ぎ出し、此処に光差す道となれ!」

 

 戦闘中の制約を無視して、フォニック・シンクロができる! 

 

 響の周りを、緑色の光点となったターボ・シンクロンが取り巻いていく。それはロードランナーとスピード・ウォリアーを巻き込んで包み、新しくシンフォギアへと再構成する。

 腰部に取り付けられたホイールが回転する。

 全身を縁取る真紅のボディと、両肩に装備された銀の大型イグニッションコイルが光る。手甲の代わりに装備されたのは、追う者全てを切り裂く、無双の爪。

 

「フォニック・シンクロ!」

「轟ッけぇえええええっ!」

「ターボ・ガングニール!!」

 

 

 力のニトロ・ウォリアーと対を為す、数多の景色を置き去りにする速度の超戦士。

 それが、ターボ・ウォリアーの力を受け継いだ、この姿! 

 

「これが……これが、私達の新しい力!」

「頼んだぞ、響!」

「うん!」

 

 拳を握りしめると、響は一直線に上空へと飛翔した。足裏に装備された巨大バーニアが、響のジャンプ力を倍以上に引き上げている。

 

「はああっ!!」

 

 襲い来るフライト型を蹴散らしながら、響は勢いそのままに突撃していく。

 狙うはただ一つだけ。今も轟音が聞こえてくる、あの斜面まで。距離は未だに遠い。だが行けると信じるしかない。

 

(どうか届いてくれ……響!)

 

 俺の願いを受けたターボ・ガングニールの鎧は、一瞬にして夕闇に溶けて消えた。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 

 

 音に反応してノイズは狙って来る。

 だから私が大きな音を出せば、残ったノイズを引き寄せられるかもしれない! 

 私は胸に大きく空気を吸い込む。熱い思いが、私の胸に歌詞となって頭へと流れ込んでくる。

 意識するよりも早く、私の口は旋律を奏でていく。

 

 ──―何故どうして? 広い世界の中で

 

 鼓動が早くなる。それでも、今までの戦いよりも、より滑らかに私は歌を奏でていた。

 空を私の身体は駆け抜ける。

 まるで羽が生えたように私の一歩は力強く、目的地へと導いてくれた。

 

 ──―運命は、この場所に 私を導いたの? 

 

 歌が私自身に問いかける、私の人生。

 壊してばかりの生が私だった。これは呪いか、生き残った罰だと、私はあの日からずっと自分の心を虐め続けた。

 

 ──―繋ぐ手と手 戸惑う私の為

 

 心の痛みから逃れる余り、私は人助けにますます拘った。

 それしか私を保つ術がないと、心のどこかで蓋をして。

 怯える毎日をいつの間にか自覚しないままで過ごした。

 

 ──―受け取った優しさ きっと忘れない

 

 ガングニールが目覚めた時、戦う怖さよりも、私は安堵した。これで皆を笑顔に出来る。本当の意味でも人助けができる。

 その輪の中に自分がいないのを、すっかり忘れてた。

 

 ──―その場しのぎの笑顔で、傍観してるより

 

 そう。未来が思い出させてくれた。

 私の想いを。

 何がしたいのかを。

 ホントの私が置き去りにしてきた願いごとが。

 

 ──―本当の気持ちで 

 

 私はもっと欲張りだ。『自分は良いから他人の幸せだけ』なんて、そんな良い人じゃない。

 自分も、皆と一緒に笑いたいって思ってる。

 

 ──―向かい合う自分でいたいよ

 

 そうだ、私は人と繋がりたい。

 人の温もりを信じたい。

 もう一度、誰かと手を取り合う将来を夢見てる。

 そしてそれを捨てさせずにいてくれた、大好きな人がいる。

 

 

「だああああっ!!」

 

 

 ビルを蹴り、電柱に飛び乗り、木々をすり抜けながら、私は未来を探した。

 何処!? 

 何処にいるの、未来!? 

 必死に目を凝らす。フォニック・シンクロは私の視力を更に上昇させてくれた。

 

 そうして見つけた、たった一人の大切な人。

 

(いた! あそこ!)

 

 未来がいた。

 遊星に言った通り、やっぱり山へ続く斜面を登っている。

 

 ──―…はぁ! はあ! はあ!! ──―

 

 けどもう、それも限界だった。

 息も絶え絶えに走り続けている。未来が走り始めてからもう十分以上経過してる。あそこまで体力を維持できているのが奇跡だった。

 私は未来目掛けて突撃する。一旦着地と同時に、力を全て足裏に込めて一直線に大地を蹴った。

 

「未来っ! 今行くからッッ!!」

 

 走れ! もっと走れ! 

 歌え! 絶え間なく歌え! 

 間に合え、間に合って! 

 私はもう、一人じゃ生きていけないから! 

 

(……未来っ!?)

 

 街道を抜けて、私も斜面へ入った! ここを私も昇ればあと少し! 

 その時、私の視界が捉えた。

 未来の足が止まってる。その先に、あの大型ノイズが迫る。

 

「ぅぅううううううぁあああああああっ!!!」

 

 叫んだ。

 心の全てを力に換えて。

 お願い、どうか力を! 

 大切な人を救える歌を! 

 

 ──―きっと! どこまでも行ける! 見えない翼でも飛べる! 

 

 駆け抜ける私の目の前に、ノイズの群れが押し寄せる。

 私の歌を聴きつけたんだ。

 でも! いいから、こんなのなんかに……! 

 

 ──―この気持ちと君の気持ち! 重なればきっと! 

 

 負けなんてられないんだッ! 

 

「どっけええええええっっっっ!!!!」

 

 ダチョウ型のノイズが、私の動きを止めようとして、以前の蜘蛛の糸みたいな白い液体を大量にぶちまける。

 負けない! 

 こんなものに! 私と未来の絆は断ち切らせない! 

 

 ──―We are one 一緒にいるから

 

『そのまま進め!』

 

 遊星の叫びが聞こえる。それに従って、構わずに拳を振り下ろした。

 私の身体が、同時に糸をすり抜けていく。

 これがターボ・ガングニールの力。弱い力のノイズだったら、どんな特殊な力を持ってても、私には効かなくなる。

 

 ──―Hold your hand 心は

「いつでもおぁっ!!」

 

 ノイズが後ろで爆発してた。気にも留めずに走り続ける。

 もう、でもその間に。

 巨大なノイズは未来の眼前まで迫っている。

 

「っっっっっ!!!!」

 

 あと一瞬。

 あと一歩だけ間に合わない。

 お願い、未来、もうちょっとだけ頑張って! 

 あとちょっとで行くから! 絶対に助けるから! 

 

 ──―今を生き抜くために……

 

(そうだよ…私達は…まだ『一緒に、流れ星を見て』ないんだ!!)

 

 それは、あの日誓った約束。

 きっと忘れない。絶対に果たしてみせると、言葉にしなくても心で通じ合った約束。

 

 ──―私達は、出会ったのかもしれない

 

 私の想いを全て歌に変えた時、奇跡が起きた。

 

「……ぁ」

 

 未来が、もう一度前を向いて走り出した。

 ノイズは巨体を利用して未来を押し潰そうとしたけど、そのせいでちょっと狙いが逸れる。斜面が削るように地面を砕かれた。

 そのまま未来はバランスを崩して、道路を踏み外して山肌に沿って落下していく。

 

 ──―私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ

 

「………微笑みは」

 

 今だ。勝機を零すな。

 掴みとれ。永遠の友情ッ。

 

「シィングゥアゥィザアアアアアアアアッッッ!!!」

 

 両腕の大爪が二本、私の歌で更に巨大化した。エネルギーを凝縮させて、私はもう一度宙を舞う。咆えた私は止まらない。猛追してノイズとの距離を一気に詰める。未来目掛けて、私は山肌を駆け下りる。間に立ち塞がるように自由落下する巨大ノイズは、ここでようやく私に気付いた。その足を一斉に私に向けて伸ばす。

 けれど……

 

「―ッッァアクセルッ!!」

 

 そんなもので防げると思うな!! 

 私の想いは、私一人のモノじゃない! 

 だからあの時、奏さんは私に『生きるのを諦めるな』と言ったんだから。

 

「スラアアッシュッッッ!!!!」

 

 ノイズの足と私の爪が衝突する。

 一瞬の均衡。だけど砕くのは私の力。ターボ・ガングニールは、より強い相手と戦う時には、相手の力を半分にできる。

 より一層巨大化した爪の勢いが、ノイズを刺し貫いて、そのまま私の身体がぶち抜いていく。

 

「響っ!」

「未来っ!!」

 

 もうこれで遮るものが無くなった。私は叫ぶ。最後の力を振り絞って、足裏のバーニアが噴射した。グングンと距離を詰める。未来の背後には地面が迫っていた。もう十メートルもない。間に合え、間に合えと、心で叫びながら手を伸ばす。

 未来も手を伸ばした。そのまま私達の指先が近づく。一瞬が永遠とも思えそうな攻防。それでも私達は互いを求めた。

 お互いが必要だから、いなくちゃ、生きていけないから。想いが繋がるのは、私達の指先が触れ合うのと同時だった。

 

「きゃああああっ!!」

「でえぃ!!」

 

 指が触れあい、未来が私の手を掴んだ。私は一気に自分の方へと引き寄せて、胸元へと抱き留める。そのまま身体をぐるりと反転させて、自分の背中を下にした。バキバキと背中に何かがぶち当たって折れる音がする。

 それを突き破って、根元まで落下したら、今度は地面に着地できずに私達は土の上を転がる。

 

「「っっっっ!!!!????」」

 

 頭の中をかき回されて、ミキサーでシェイクされるみたいだ。声にならない悲鳴を上げながら、私と未来は地面に打ち付けられ、転がり続ける。未来だけは傷つけまいとして体をぎゅうと抱きしめたまま、私はいつ終わるかも分からない衝撃にずっと耐え続けていた。

 

 と、その時。

 

「「………ぇ」」

 

 唐突に、ソレが終わる。

 一瞬だけ未来と目が合う。

 向こうも同じことを考えてたらしい。

 ポカンとした顔のままで、私達は水面に打ち付けられた。

 

「「がボぼっ!!?」」

 

 鼻に水が入った。

 苦しい、何これ? もう意味分かんない! と叫びたかったけど、混乱してバタバタともがくばかりで叫ぶことも出来ない。

 水の中だったから当たり前だ。私は何とか体勢を整えようと足を突こうとして……

 

「「………ふえ?」」

 

 水面から顔を出した。

 私達の転がって飛び込んだ川は、最初から浅瀬だったらしい。

 

 

「……」

「……」

 

 

 呆然として、お互いに顔を見た。

 びしょ濡れになりながらも、川岸で、私達は向かい合う。

 本当に、久しぶりに、私は未来の顔を正面から見た。一日だけしか経ってない筈なのに、全然そんな気がしない。

 

「……ひ、ひびき」

「み、く」

 

 零れ出る言葉。

 どうしよう。何を言えばいいの? この時の私は、ただ未来の顔をじいと見つめるばかりで、何も出来なかった。太陽の明かりが眩しく横から光っている。周りの音は掻き消されて聞こえず、ただちょろちょろと流れる浅い川の水音だけが囁いてた。

 

「……あは」

「…は、はは」

 

 ふと声が漏れ出て。

 

「あは、はははははははっ!」

「ひふ、ふふはははははっ!」

 

 私達は、お互いの顔を見て笑い出した。泥だらけで、涙と汗でぐしゃぐちゃになった顔を見合って笑い合いながら、その様子がまたおかしかった。

 

「ご、ごめ、ごめんね、でも…なんだか……へん」

「み、未来だって……あははははっ」

「ふふふふ……って、痛っ、腰痛い……」

「痛っ! わ、私も痛い……あー、カッコよく着地すれば良かったよぉ……」

「いいよぉ……いったた……でも、あー、痛い…けど、生きてるって実感できるから……」

 

 そうだね…と、私は未来の顔を改めて見る。

 本当に、泥だらけの身体以外、怪我はなさそうだった。未来の表情も、本当にホッとしてる様子だ。

 

「……ありがと」

「え?」

「響なら、助けに来てくれるって信じてた」

「…うん。私もありがと……未来なら、諦めないでいてくれるって信じてた」

「……っ」

「だって私の友達だもん」

「響ッ!」

「わっ」

 

 先に動いてくれたのは未来だった。

 目にじわっと涙を貯めて、次の瞬間、再び私の首根っこを掴んで……いや、私の首に抱きついた。一瞬のことでオロオロするばかりだったけど、未来の次の一言で目が覚める。

 

「怖かった……怖かったよぅ……響ぃ……響…!!」

 

 未来の柔らかくて、甘い匂い。私の身体の中に吸い込まれていく。とめどなく涙があふれた。ああ、幻なんかじゃない。本物だよ。そうだよね? だって、こんなに温かいんだもん……絶対に、嘘なんかじゃない。

 

「……ょか、た」

 

 息が喉に引っ付いて、声が出ない。

 あれ、おかしいな。何で、何も言えないの? 

 だって、親友が死なずに……

 

「わ、わ、たし、も……こ、わ…こわかった……ょぉ…!」

 

 ぎゅうと、力を込めた。未来を抱きしめ返していた。

 良かった。本当に、いなくならないでくれた。私の元に、居続けてくれた。

 ボロボロボロボロ、悲しくなんか無い筈なのに、喉がしゃくれて声が出なくて、涙がどんどん溢れ出てくる。

 

「わ、わたし……わたし、ね」

 

 未来が泣きじゃくりながら、必死に言葉を絞り出す。

 

「響が、隠し事してたから、怒ってたんじゃ、ないの」

「え」

「だって、人助けをする響は、いつもの、いつも、の、響……で、でも。でもねっ…!」

 

 未来はしゃくりあげながら続けた。

 

「辛いのも痛いのも、全部背負おうとしてるの……それを見るのが、堪らなく……い、イヤだった、の…!」

 

 私のガングニールで、困ってる人を助けたい。

 けど思い上がってた。

 

「また、いつか…っ…いつか、響が大きな怪我するんじゃないかって……し、心配して……でも、力になれないのが、それも、嫌で……我儘なのに……ただの! 私のワガママなのにッ!!」

「……うん」

 

 未来の手が、ぎゅうと私の強く抱きしめる。ボロボロと私の涙は拭っても止まらない。

 

「『響を失いたくない我儘なんだ』って……そう思ったら、今までと同じみたいになんて……で、で、出来なかったんだ…」

「うん、うん……」

 

 本当の人助けは、1人の力じゃできない。そんな当たり前のことを、私は知らずにいた。

 私を助けてくれる人、私が助けたい人、そして私が助けた人、全員が私を支えてくれる。

 戦ってるのは私だけじゃない。生きている人全てが一生懸命だった。

 

「だから……だから、先生のせいにして……先生のせいにして逃げる私が、もっと嫌いだったのに…!」

「…っ、未来…」

「ごめんなさい……ごめんなさい、響……ごめんなさい……!」

「……それでもね」

 

 この気持ちを、未来が思い出させてくれた。

 だからきっと、あのカードは……ターボ・シンクロンは、未来の所へ引き寄せられたんだよ。

 未来の髪をそっと撫でる。温もりがまた伝わる。

 

「……小日向未来は、私の『陽だまり』だよ」

 

 私がいつでも安心して、帰って来られる場所だから。

 もう二度と、見失わない。

 繋ぎ合わせて、照らしてくれた星があるから。

 

「だからね、未来」

「え?」

「一緒に、いてくれる?」

「……っ、うん。いるよ、一緒に。ずっと…ずっとずっと! 一緒にいるよ!」

「……うんっ!」

 

 私の誰かを助けたい気持ちは、生き残った負い目なんかじゃない

 奏さんから託された、私が受け取った気持ちなんだ。

 未来との絆を、失いたくない。

 遊星が渡してくれたターボ・ガングニールが、その証だった。

 

「……あ」

「なに?」

「い、や、ゃ、ね。ふ、ふひ、ふは、あはははは…み、未来、ど、泥だらけだよ、顔……あははははっ」

「な、何よっ、そんなに笑わなくたって……! っていうか、響だって同じだよ!」

「え、うそ!? 鏡ある!?」

「え? あ、端末で撮れば……」

 

 その後で、端末で私達の写真を撮って、それを見て、私達はまた喧嘩して笑い合った。

 何時の間にか、夕日が沈もうとしている。また明日に向かって歩き出してる。

 

 ねえ、遊星、聞こえてる? 私、守れたよ。

 翼さん、届いてますか? 私の歌、親友を救えました。

 奏さん、ありがとう。これが貴女が、皆が、教えてくれた…

 

「…私ノ奏デル、ソノ先ノ音色」

「え?」

「ううん、なんでもない」

 

 首を振った時、Dホイールのエンジン音が聞こえてきた。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 

 

「つまり、また戦う姿を見られた上に、小日向未来君の目の前で、多くの秘密を晒してしまったわけだな?」

「ハイ……ソウデス」

「違うんです。私が勝手に首を突っ込んだんです!」

「待ってくれ。責任は俺にある」

 

 今回の事件、なんと避難時に怪我をした二次災害者を除けば、死傷者はゼロだった。これだけの大群を相手にしながら、奇跡と言っても良い数字である。

 ただ、俺達が戦う際に無茶をやらかしたのは、前回と同様……いやそれ以上だった。

 

「小日向を焚き付けたのは俺だ。俺に原因があることなんだ」

「いえ、師匠私が!」

「違います私が!」

「俺が」

「分かった分かった。麗しい友情を見せつけるのは家でやってくれ」

 

 頭を掻きながら弦十郎さんは苦笑して答える。

 

「人命救助の立役者にうるさい小言など似合わん」

「え、じゃあ……」

「以前にも言っただろう? 現場の判断を尊重するのが俺の流儀だ」

「……や、やったあ!」

 

 実質的なお咎めなしという言葉。響と小日向は顔を花のように明るくさせて、お互いに手を取り合っていた。

 俺も心の底から安堵する。

 

「お話し中失礼します」

 

 すると横からいつもの様に音もなく近付いた緒川さんが、俺達を呼び止めた。

 見ると彼の手には、リディアンの指定通学カバンが握られている。

 

「響さん。あの女性ですが、比較的軽症です。数日後には退院できますよ」

「本当ですか!?」

「ええ。それと未来さん、こちらはお店から回収しました。どうぞ」

「あ、ありがとうございます!」

「それと、遊星さんの端末です」

「ああ、ありがとう」

 

 俺はゆっくりと端末を受け取る。

 見ると、表面にかなり細かい傷がついていた。本体に影響はないだろうが、どうしたのだろう。

 もしや小日向たちが逃げ出す際に、落ちてしまったんだろうか。しかしそれにしてはこの壊れ方は少し不自然だ。

 

「それにしても遊星さん、何故あんな場所に?」

「あんな場所?」

「未来さん達が逃げ込んだ廃ビルです。あそこに転がってました」

「なんだって?」

「あの、不動先生……すみません、その」

 

 小日向が、不意に頭を下げる。

 

「それ……私が持ってきたんです。お店から逃げる時、咄嗟に…」

「小日向が?」

「あの、それで…ノイズの気を引くために、思いっ切り投げちゃって……」

 

 ああ、なるほど。

 妙に細かい傷がついてるのはそういう事か。しかしそれで小日向の命が救われたのなら安いものだった。寧ろ音に反応するノイズに対して、最大限できる貢献を果たしてくれたと言えるだろう。

 

「すみませんでした」

「気にするな。この位すぐに直せる」

「それだけじゃなくてッ」

「……」

「あの、今までのこと……私、先生が、怖い人じゃないかって疑ってて、それで…」

 

 ふと、隣にいる緒川さんと目が合う。彼は何とも言えない微笑みを浮かべて、俺と小日向を交互に見る。それで俺も、少し心が和らいだ。

 なんとも、この人には適わないな。

 ポンと、小日向の頭に手を置いた。

 

「俺の方こそ、先生として未熟だったからな。二人のことを、上手く分かってやれなかった…すまない」

「でも…」

「響にも言ったけどな……俺も、二人の絆に救われたよ。これが証拠だ」

 

 ポケットから一枚カードを取り出す。

 今回、一番の功労者であるターボ・シンクロンは、今までのカードと同様に破損も汚れも一切ない。夜の街灯を受けて反射している。

 

「それは…」

「小日向の命を救ったのは、お互いを大事に思う、二人の絆だ。だからターボ・シンクロンは応えて、俺の元へ帰ってきてくれた」

「…あの、どういうことですか?」

 

 小日向は要領を得ずにポカンとしている。彼女もまだカードの秘密は知らない。これを期に教えるべきかもしれない。

 それに、俺自身も今回の戦いでほぼ確信に近いものを得た気がする。

 

「君達の絆が、俺にとっても力になる。そういう事だ」

「私達が……」

「このカードが、その証だ。だから小日向、響をこれからも支えて欲しい。響には、小日向の力が必要だ」

「……」

 

 曖昧な言葉だったが、それでも胸に手を当てて、小日向は俺の言ったことを内側で反芻している様子だった。

 けれど、答えはきっと彼女の中で出ている。命をかけて戦ったのだから。きっと小日向の中には、『どうすればいいか』ではなく『何がしたいのか』が、もう分かっている筈だ。

 

「……はい、ありがとうございます。私、もう迷いません」

 

 微笑んで、小日向未来は、俺にそう告げた。

 

「私、響とずっと一緒にいますから」

 

 これからも、二人の間には困難が多く待ち受けている。それはとても言葉では言い表せないような、修羅の道かもしれない。

 けれど、何も恐れることはない。

 今日のように絆を思い出して、信じていけば乗り越えられる筈だ。

 

「えへへ! やっぱり未来は私のオアシスだね!」

「きゃ! ちょ、ちょっと響、いきなりくっつかないで、びっくりするでしょ!」

「ええ、いいでしょ~?」

「よくないっ、っていうか重い!」

「酷い! これでも体重気にしてるのに!」

「こらこら君達。そう言うのは家でやりたまえ」

 

 弦十郎さんがまた苦笑して二人を宥める。

 家ならいいのだろうか…と俺はぼんやりと思った。

 丁度その頃、通りの向こうから乗用車やトレーラーが数台こちらへと向かってきている。現場処理の為に訪れた後続チームだ。了子さんも間もなく来るだろう。

 

「よし、響君たちは帰宅を命じる。後は頼りがいのある大人に任せて、ゆっくり休んで、疲れを癒すと良い」

「ハイ了解です、師匠ッ!」

「うん、言い返事だ」

 

 鷹揚に頷く司令官の言葉に、響はえへへと笑って、小日向と手を繋ぐ。

 そうして歩き出そうとするが、俺はその場を動かない。

 キョトンと、響は振り返った。

 

「遊星、帰らないの?」

「ああ。俺は現場処理を手伝ってから行く。二人で先に帰っててくれ」

「えっ? でも、遊星だって戦って疲れてるのに…」

「俺は殆ど動いてないからな。まだ大丈夫だ。それより、響の方が反動で疲労が来ている筈だ。早く休んでくれ」

「……うん、分かった」

 

 響は少ししっくりこない感じだったが、「響、行こう」と呼びかけた小日向の言葉で納得した。帰り際、彼女がこちらを一瞬振り向くも、澄んだ目で頷いたので、救われた気持ちになれた。

 

「………」

 

 勿論、帰らなかったのは手伝いだけじゃない。

 

(………雪音)

 

 イチイバルの反応は、あの後すぐにロストした。弦十郎さんが何も言わないという事は、恐らく姿を消したんだろう。

 後で詳しく話を聞かねばならない。俺も事情を聴かれるだろうが……正直先行きは不明だ。俺も匿ったと見做され処罰されるか、あるいは雪音も捜索は厳しくなり、辛い枷を嵌めるか。

 

 だが、だとしても。

 

「遊星ッ!」

 

 遠くから声がする。もう一度振り返って、響がこっちへ向かって叫んでいた。

 

「ありがとう、遊星! 未来と仲直りできたの、遊星のお陰だよっ!!」

 

 手を振って明るい笑顔を向ける少女。それだけで、俺のしてきたことは間違いじゃないと信じられた。

 

 

「俺は何もしてないぞ」

「でも、遊星は私の『お星さま』だからっ! 忘れないでねっ!!」

 

 

 それだけを告げて、響は小日向と手を繋ぎ、寮へ向かって帰って行った。

 ……礼を言うのは俺の方だぞ。

 何度も言おうとして言えずにいる言葉を、苦笑して仕舞った。

 

「君には、不思議な力があるな」

「俺が?」

「人と人とを結びつける役割。君を軸にして、誰かが必ず影響し合い、絆を育んでいく。君にはそんな力がある」

「…だから俺は何もしちゃいない」

 

 弦十郎さんの笑みを浮かべて出た言葉を、俺は敢えて振り払う。

 

(これで戻って来たカードは七枚)

 

 そして、今回のターボ・シンクロン。

 ここまで来れば、そして今まで俺が数々の難敵に立ち向かってきた道のりを顧みれば、行きつく結論は一つだ。

 手を繋ぐ力を持っているのは、響…間違えなくお前だ。だから俺はお前の力になってみせる。この世界を救う為にも、必ず。

 

「……ん」

 

 端末の電源が再び入ると、すぐに着信が来た。

 小日向からのメッセージだ。開封すると、短く一言質問が書かれていた。

 

『今日はありがとうございました。それで、お昼のあの子は無事でしょうか?』

「……」

 

 雪音クリス、という言葉を敢えて出さなかった。

 やはり小日向は聡い少女だ。彼女が訳ありで、隠し事をしているのを察知したのだろう。一先ず言うのを憚ったに違いない。

 

『シェルターに避難するのを見た。被害も確認されてないし、大丈夫だ』

 

 それだけを返信して、端末をポケットへしまう。それと同時に、弦十郎さんが、俺を鋭く見ていた。

 もう隠すのは不可能だ。

 ならば、寧ろ正面からぶつかるべきだ。

 

「弦十郎さん、あとで話がある」

「…ああ」

 

 短く、彼は答えた。

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 次回予告

 

 わーい! 未来も秘密を共有して、晴れて二課の一員だ! 

 これでもう何事も万事解決バンザーイ! 

 

 ……じゃないよねえ。

 心配だなあ遊星。クラスにも溶け込め切れてないし……

 何とか、出来ないかな? 

 

 え、翼さん明日お休みですか? 

 じゃあ、一緒に私とデートに行きましょうよ! 

 ね? ね? 遊星も一緒に行くよね? 

 ……え、師匠とお出掛け? マジっすか!? 

 

 次回 龍姫絶唱シンフォギアXDS 『防人の歌と、夢の守り人と』

 

「どころで響、デートの相手はどんな男なんだ?」

「…どういうこと響?」

「うわーんっ! ゆーせーのばかー!!」

 




読んでいただき、ありがとうございました。

改めましてですが、お気に入りや評価、感想を送って下さっている皆さん、本当にありがとうございます。
これを続けられるのはこういう応援あってこそです。
是非これからも応援、どうぞよろしくお願いします。
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