龍姫絶唱シンフォギアXDS   作:ディルオン

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大変お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
仕事などで手が付かない状況が続き、ここまで来てしまいました。
非力な私を許してくれ
コツコツ、更新していきたいと思いますので、よろしくお願いします。


第9話『星々と、繋いだ手だけが紡ぐもの』‐1

 

 

「ねえ聞いた? 不動先生の噂」

「聞いた聞いた!」

「街で不良に絡まれた娘を助けたんでしょでしょ?」

「そうそう!」

「しかもあの人バイク乗るんでしょ? 私見たことある」

「なんであの先生、物理の教師とかやってんだろうね?」

「頭もいいんじゃない? 手先が器用だし、食堂の壊れた空調とか、教員室のパソコンとかも直してくれてるんだって~」

「初めはどんな人かなって、ちょっと警戒してたけど…」

「無口でクールで喧嘩強いって、ヤバくない?」

「いやもうマジあり得ない位ハイスペックじゃん」

「よく見ると顔も結構カッコいいし。髪型変だけど」

 

 ………

 

 人間というのは単純なもので、一つキッカケがあれば、アッサリと変わるみたい。

 

 ここ最近、学園中は不動先生の噂でもちきりだった。

 もちろん、遊星への心変わりは嬉しいんだけど、ここまで手の平返しになるとちょっと複雑な気持ちだった。

 

 けど、遊星がどんどん信頼されてく様子を見るのは、やっぱりとても嬉しかった。

 弓美ちゃんの端末を直したこと、不良を追っ払ったことが知れると、徐々に遊星へ話し掛ける人数も増えていった。

 

 

「パソコン修理と……映画部のカメラと、あとは放送委員会のマイクだって」

「そうか、分かった」

 

 翼さんのライブの日から一週間くらいが経った頃だった。

 放課後、私が隣を歩く遊星に、手帳に書かれたメモを読み上げている時。

 

「……あの先生」

 

 ちょっと後ろから付いてきてる未来が呼び止めた。

 

「ん?どうした?」

「どうしたの未来?」

 

 私達は振り返って未来の方を見る。

 未来は眉間に皺を寄せて、こめかみに指を当てて、なんだかなんでか複雑な表情を浮かべている。

 

「…ちょっと、働き過ぎじゃないですか?」

「別にそんなつもりは無いんだが…」

「最近、放課後も遅くまで残ってますよね」

「ああ。修理とか改造の依頼が立て込んでてな」

「すごいよ~! もう予約待ちの子が5人いるんだから」

 

「気付いて下さい! もうこれ学校教員の仕事じゃないです!」

「「……」」

 

 未来はぷくーっと頬を膨らませている。

 私と遊星は目を丸くしてお互いを見て、そして未来を見直した。

 

「確かにそうだが……」

「これじゃまるで『街の便利屋さん』じゃないですか…」

「あ、いいねそれ。『ご近所さんのお悩み事を即座解決! 頼れるアナタの不動遊星!』みたいな…」

「いいわけないでしょ!」

 

 その一喝に、私と遊星は震えた。

 私達は気まずい雰囲気で目を見合わせる。

 

 未来が深いため息を吐きながら言った。

 

「響まで一緒になって……何やってるのよ、もう……」

「いや…だってさ、私のところにまで依頼が来るんだもん。この間、未来も頼まれてたでしょ?」

「そ、それはそうだけど……」

 

 そう。

 

 このところ、遊星の手先の腕を見込んで、機械とか器具とかの相談を持ち込む人が増え始めていた。

 その中には本当に便利屋扱いして来る人もいるかもしれない。

 けど、私が実際にあった人には、『不動先生にお近づきになりたい』っていう雰囲気を醸し出してるのも少なくなかった。

 

『不動先生、相談なんですけど……』

『ああ、いいぞ』

 

 二つ返事って言うのはこういうことなんだろうね。

 

 実際、遊星は壊れものの修理、機械のアドバイス、勉強の悩み……色々なコトを即座に片付けてしまう。

 これが学園中に広まって、ますます遊星への人気は高まった。

 

 

『ねえ、立花さんって、不動先生と仲良いよね?』

『不動先生って、何でも修理してくれるってホント?』

『実はお願いが…』

 

 ただ、今もとっつき難いと感じる人や、接点の無い子も多いから、直接頼みに来るのはハードルが高いって人もいる。

 

 そこへ行くと私や未来は、いつも遊星と一緒にいるし、仲がいいって見られてる。

 だから直接会うのを躊躇う子は、吸い寄せられるように私のところにやってきた。

 

『うんいいよ。遊…先生に訊いてみるねっ』

 

 懇願してくる人たちを邪険には扱えなかった。

 口を利くだけなら、と言って相談事を持っていくと、遊星はこれまた気軽に引き受けてしまう。

 

『ああ、いいぞ』

『え、ほんと?』

『別に断る理由は無いからな。それに困っているなら、助けるのが教師の仕事だろう』

 

 遊星に依頼を持ち込む人はここのとこ、更に増え始めていた。

 仲介をした私も、手伝いを買ってでた。遊星が認められる事が嬉しいのもそうだったし、私も彼の人助けに協力したかったから。

 

 ……と、そこまでは良かったんだけど。

 

 流石に未来が言うように、ちょっとやり過ぎちゃったみたいだった。

 というより、もう私だけじゃ捌けないレベルだった。

 

「いいんですか? 先生への注目が高まって、それで正体がバレちゃったら…」

「その辺りは上手くやるさ。それに、この方が上手く溶け込めている筈だ」

 

 心配する未来をよそに、遊星はあっけらかんとした様子で答える。

 それは私も同意だった。

 

「そうそう。今の方が寧ろ自然だよ」

 

 実際、奇異の目で遊星を遠巻きに見る人が減った分、疑いや勘繰りの視線が減ったのを感じていた。

 私自身、そういう目で晒されたことがあるから、人より敏感な自覚がある。

 未来も私の側で敵意の視線をよく知っていたから、寧ろ私より分かっている。

 

 それならこの方がずっと安全じゃないか、と私達は思った。

 なにより、困った人を助けたいっていう遊星の想いを尊重したいからだった。

 

「だから私達もサポートしなきゃ。ね?」

「……はぁ。分かったわ。二人がそう言うんだったら、協力する」

 

 未来も不動先生への取り次ぎを断らないのは、それが一番だって解っているから。

 私の人助けを知っている未来は、遊星の気持ちも理解してくれる。

 

「やったぁ! さすが未来っ、私を長年支えてくれてるだけあるねー!」

「響が暴走しそうで心配だからね」

「うんうん、頼りにしてるよ」

 

「あの、先生」

「ん?」

 

 眉間のシワは取れたけど、それでも未来が苦笑しながら遊星に言った。

 

「響、こんなですけど、よろしくお願いします」

「……ああ、分かってる」

「え、え、何の話?」

「ナイショ。それより」

「え?」

 

 私そっちのけで話している遊星と未来に食い下がろうとしたら、未来は私達を並ばせて言った。

 

「頼まれごとを引き受けるのは良いけど、受けすぎない事。ノイズが出た時、すぐに動けるようにしなきゃダメでしょ?」

「あ、うん。そうだね。大丈夫、それは分かってる」

「なら響の方から『困ってることありませんか~?』とか宣伝に行くの禁止ね」

「……あ、はい」

「…ホントにやってたの?」

 

 未来は唖然として私を睨む。

 

 い、いや、ほらだって、折角遊星が皆と仲良くなれるチャンスなんだなって思ったら、私も居ても立ってもいられなくなったって言うか……

 

 それに、やっぱり気の弱かったり恥ずかしがり屋な子は、話し掛けづらいとかあるし、そういうのも私が助けられたらなと……

 

「ご、ごめん遊星、勝手なことして……でも、皆が困ってたら助けないとって……」

「大丈夫だ。気にするな。むしろ響がそうやって気付いてくれた方が、俺にとってもありがたいからな」

「え、ホント?」

「ああ、だからこれからも……」

「だから響を甘やかさないで下さい!」

「あ、はい」

 

 未来の一喝に、直立する遊星。

 未来は時々お母さんみたいだった。

 

「……分かりました。これから頼まれ事は私が管理しますから。二人とも何かあったら私に言って下さい。いいですね?」

『はい、分かりました』

 

 こうして、遊星―私―未来、の繋がりで結成された三人は、この後も何かと人数が増えて、皆のお願い事を聞いていくお手伝い部隊になってく。

 

 けど、それはちょっとあとの話。

 

 

「ああ、ちょっとすまない」

「え?うん」

 

 

 通信端末の着信が入って、遊星は一旦止まる。

 そこから、全ての始まり。

 終わりへの、カウントダウンが始まった。

 

 

『遊星君、俺だ』

 

 

 

 第9話『星々と、繋いだ手だけが紡ぐもの』

 

 

 

 歌、というものに、殆ど関心は無かった。

 というより余裕が無かったかもしれない。

 

 子どもの頃から生きていくため、

 強大な敵と戦うため、

 或いは、俺達自身が活きる目的を見つけるため、

 

 響たちと出会うことで、初めて俺は音楽を正面から検証する機会を得た。

 

 人類にとって、音楽は単なる一文化ではない。

 デュエルに匹敵する……いや、それさえも超えた『なにか』。

 

 ならば『なにか』とは何だ?

 

 何故シンフォギアを纏うのに歌が必要なんだ?

 何故歌によってノイズを倒せるのか?

 そもそもノイズとは何なんだ?

 それを裏で操る『フィーネ』は何者だ?

 

 様々に湧き上がる疑問に回答を出せず、ただひたすらに目の前の脅威に対処するだけだった日々。

 しかしそれは終わりに向かおうとしている。

 

 

『遊星君、俺だ』

 

 

 二課の司令・風鳴弦十郎の呼び声に、俺は目を細める。

 隣では、響と未来がこちらを見上げて、キョトンとしていた。

 

『今出られるか?』

「ああ……すまない、二人とも。ちょっと外す」

「う、うん」

 

 響たちから離れ、廊下の角を曲がったところで、人の気配がないことを確認しつつ、彼の言葉を待った。

 

「もう大丈夫だ」

『すまないな、仕事中だというのに』

「いや、気にしないでくれ。それよりも……」

 

 彼の言葉には、かつてないほどの重みが感じられた。

 そしてこのタイミングでの急な連絡。

 身体の奥底がざわつくのを感じた。

 

 

『奴のアジトを突き止めた』

「奴?」

『……フィーネ』

 

 その一言に、目を見開いた。

 

『雪音クリスの足取りを調査したところ、街外れにある山奥の洋館。そこへ複数回に渡って出入りしていることが明らかになった』

「なら彼女も今そこに?」

『いや。雪音クリス自身はその後、二課のマークを振り切って、未だ足取りが掴めていない』

「……」

 

 フィーネ。

 この事件の黒幕と目され、恐らく俺がこの世界にやってきた原因を司る存在。

 

 ノイズを操り、ネフシュタンの鎧を強奪したのも、恐らく彼女だ。

 つまり、奴が翼の相棒であった天羽奏を死なせ、響をこの戦いへと巻き込んだ張本人でもある。

 

 そして雪音クリスを唆し、尖兵へと仕立てあげた……

 

『安心しろ。彼女を捕えるつもりは無い』

 

 俺の心根を読んだのか、弦十郎さんがやや穏やかな口調で言った。

 

『これまでの行動からして、雪音クリスが俺達と事を構えるつもりがないのは明らかだ。変に拗れさせて、また敵に回すのは下策だ』

「……弦十郎さん」

 

 彼女は罪を犯した。

 だがやり直して欲しい。

 いや、そうするべきだ。

 

 それは俺だけではなく、響や他の皆の願いでもある。

 

『寧ろ、雪音クリスが動いていない今が好機だ。ここ数日、フィーネも動きを見せていない。奴等が新手を打つ前にカチコミだ』

 

 力強く、彼は言い放った。

 彼の言う通り、雪音が敵対行動をとっていないと言うことは、フィーネは有能な右腕を失っていることを意味する。

 

 フィーネを倒す…あるいは拘束することができれば、一連の事件も恐らく収束へと向かうだろう。

 そうなれば、雪音もこちらの説得に応じてくれる可能性が高い。

 

 後は弦十郎さんが、如何に有利な条件を司法から引き出してくれるかだ。

 

「いつだ?」

『明朝。俺を含めた調査部の数名を引き連れて向かう。万一に備え、君もついて来て欲しい』

「……分かった」

 

 正直、この国の人間をどこまで信じるべきなのか……俺はまだ測りかねている部分も大きい。

 だが、この世界に来たことで得られた絆を、俺は信じたい。

 

『よろしく頼む』

「ああ」

 

 通信を終え、端末をしまう。

 すると、タイミングを見計らったように響が過度の向こうからひょこっと顔を出していた。

 

 

「遊星?」

 

 

 響がキョトンとして近付いた。

 

「すまない、ちょっと話していた」

「ひょっとして師匠?」

「……ああ」

 

 このタイミングで、二課からの通信と言うことは、呼びかける人物はそう多くない。

 弦十郎さんからの呼び出しというのは、彼女も予想がつくだろう。

 

 だが……

 

「基地の装備のメンテナンスを手伝ってほしい、と言われてな。すまないが、明日は自習になる」

 

 本当の事は言わなかった。

 

 ノイズが現れる場所に、装者ではない俺を連れていく。

 雪音と刃を交える可能性があるにもかかわらず、響には教えていない。

 

 恐らく、彼女には今回の件、言えない何かがあるのだろう。

 それは雪音のことなのか、別のことかは分からない。

 だが、彼の判断を信じることにした。

 

「随分、急なんだね?」

「ノイズの襲撃に備える為かもしれないな。敵もいつ来るか分からない」

「……うん」

 

 響はじっと俺を見る。

 曲がりなりにも、俺達はここまで二人でやってきた。

 それが急に事情を詳しく説明しないとなれば、勘付くところもあるだろう。

 

 一瞬、どうやって説得するか迷ったが……

 

「じゃあ、響はその間、きっちり勉強しないとね。こういう機会でもないと、どんどん成績下がっちゃうよ」

「うっ……」

「先生、響は私がちゃんと面倒見ますから、安心して下さい」

「ああああぁ~、やめてとめてやめてとめてやめてぇええ~~~!」

 

 未来が笑顔で、響の横に割って入るようにして話題を切り替えてくれた。

 ふと、彼女と目が合う。

 

「……」

「……」

 

『よろしくお願いします』

 

 さっき言われた言葉が、再び彼女の目を通じて飛び込んできたような気がした。

 未来は察しているのだろうか。俺が呼び出された理由に、雪音が関わっていることを。

 

 そうだとしても。

 

「ああ、そっちも、響をよろしくな」

「はい」

 

 俺は絆を信じて、突き進むだけだ。

 

 窓の向こうから音楽が聞こえてくる。

 リディアン音楽院の校歌だ。

 ここへ来て、まだ二ヵ月に過ぎないというのに、その歌は心地よく、まるで幼い頃から聞いていた子守歌のように、俺達の中へと染み入っていた。

 




大分時間を開けてしまい、読者の皆さんも「これはもう終わりですね」「遊びさ本気で見るわけないじゃん」「おわったビングだ、これ」みたいな風に思われてるかもしれませんが「うおーっ、更新されてるよよっしゃー!」「あのときのワクワクを思い出すんだ!」「俺達の満足はこれからだ!」って思って下さる方が一ミリでも居続ける限り掻き続けたいと思います。

なにとぞ、応援よろしくお願いします。
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