ユーザーはオタク スキルを実行します   作:ウェーヴ・カン

1 / 8
第1話

物事には必ず、表と裏が存在する。

それらは、まるで正反対の性質を持つ。

表にないものは裏にあり、裏にないものは表に存在する。

それは、誰にも曲げることのできない、自然の法則である。

 

今、我々が生きている、この世界。

私たちは、あたかも、人間が住む世界がこの世界のみだと、思い込んでいるが、それは間違いだ。

この世界は、『表』である――所詮、『表』でしかない。

ここで、先ほどの法則に則るならば。

 

①表があれば、裏もある

    +

②この世界は『表』である

 

=『裏』の世界が存在する

 

それは、隣にあって、隣にはない世界。

・・・・・・俗にいう、平行世界(パラレルワールド)に似たようなものか。

しかし、どれだけ強固なものでも、必ず綻びは生まれる。

『表』と『裏』。決して交わることのない二つの間に、それらを結ぶきっかけが生まれる。

そして、決してあってはならない、伝説が生まれる。

 

これから始まる物語は、ただ一つのことに気を付ければ良い。

 

常識を捨てろ(ブレイク・ユア コモンセンス)

 

当たり前は、当たり前ではなくなり、当たり前でないものは、当たり前になる。

この、過酷で苦痛な世界で。

少年は何を見せ、何を語るのだろうか――――。

 

 

 

 

 

 

「――――ッ⁉」

目覚めると、見知らぬ部屋にいた。

質素な部屋だ。自身の寝ているベッドが一台、それに小さな机と椅子、更に、その椅子に座っている15,6歳程の少女。

現時点で得られる情報はこれだけだ。

「・・・これじゃ、状況確認すら、無理があるか・・・」

少し考えこむと、

「・・・よし、寝よう」

そのまま布団を被りなおして・・・・・・

「――って、私がいるじゃない! 無視しないでよ!」

「ナイスノリ、ありがとうございます! ・・・でも、ツッコミで、ベッドひっくり返すのはやりすぎ⁉ ちゃぶ台じゃないんだよ⁉」

 

「・・・というわけで覚醒した、俺ですけど。・・・ここどこ?」

ベッド返しで、完全に目の覚めた少年――倉斗仁(くらとじん)、16歳、おかゆとアニメをこの上なく愛する男――は、

ベッドに腰かけたまま、目の前の少女に尋ねる。

「どこ、かぁ・・・・・。口で言うのはちょっと難しいかな・・・」

「じゃあ、身体で語れば?」

「そうね、身体なら・・・って、何さりげなくすごいことぶっこんでんのよ!」

ゼロ距離ラリアット。助走がないのに、首がもげそうになる。

「痛っててててて・・・・・ジョークですよ、ジョーク。フランシアンジョーク」

「・・・君、日本人でしょ。それはさておき、さっきの質問の答えね」

少女は、長く伸びる自身の黒髪を、指先でくるくるといじりながら、

「ここがどこなのかは、外に出ればわかる。・・・重要なのは、ここがどういう世界なのかってこと」

「どういう世界、とは?」

倉斗は訝し気に尋ねる。

「・・・・・・それも、見たほうが早いね」

そういうなり、少女はさっと立ち上がり、部屋の入口――ドアの前まで移動する。

そして、右手の人差し指と中指で、何かをつまむような仕草をする。

彼女がその手を、くるりと――ちょうど、ティースプーンでカップの中を混ぜるように――動かす。その瞬間、

 

「ッ⁉ ・・・・・・は? 消えやがった⁉」

 

倉斗の言葉通り。

少女の姿が、一瞬にして、掻き消えた。

思わず立ち上がり、ついさっきまで彼女がいた所まで移動、手を動かすが、何の手ごたえもない。

部屋中を見渡すが、目に入るのは、変わらない殺風景な室内。

少女の姿はおろか、気配すら感じない。

その奇怪な現象を前に、よろよろとしながら倉斗はベッドに、ドスンと再び腰掛ける。

倉斗の頭が恐怖と困惑で埋め尽くされ、完全停止している、その時、

「どう? ビックリした?」

いたずらっぽい声を、唐突に後ろからかけられ、倉斗はベッドから跳ね上がり、部屋の隅まで後ずさる。

「あれ? ちょっと驚かせすぎたかな?」

ベッドの後ろ。お茶目に笑うのは、間違いなく先ほどの少女だ。

「ゆ、ゆゆ、ゆゆゆゆ幽霊ぃッ⁉」

歯をカチカチと鳴らしながら、倉斗は後ずさりをやめない。

「ちがうって。ほら、ちゃんと足あるし」

「あ、ホントだ。よかった~(ほッ)」

「うわ~。これで安心しちゃうんだ。こんな人、初めてだなぁ」

少女はくすりと笑うと、倉斗を立たせようと、手を差し伸べる。

差し出された手を、まだ怖がる倉斗だったが、少し彼女の手に触れて、人間らしい熱を感じると、安心したのか、今度はしっかりとその手を握る。

「ふあ~。超ビビった。今の、なんだったんだ?」

怖がっていた倉斗の姿を思い出したのか、少女はもう一度くすりと笑い、

「言ったでしょ。ここが何なのか教えるって」

倉斗をベッドに座らせ、自身も椅子に腰かけると、彼女は言った。

「ここは、君たちが住んでいる世界の、隣であり、隣にないところ。君たちの世界の裏の世界。

だから、この世界(ここ)は『(バック)』と呼ばれている。

表にないものは、裏にある。――私たちは、異能力者、超能力者なんだ」

 

・・・現実は、逃避しようとしてもできない。

倉斗の視界がブラックアウトする。

・・・・・・どうやら、何かヤバい設定の世界に連れてこられてしまったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。