ユーザーはオタク スキルを実行します   作:ウェーヴ・カン

4 / 8
殻井兜兜
 年齢:十六歳
 所属:浅木高等学校、灰醍寮、遂行組織『ステイル』
 趣味:最近、寮最寄りの駅近くにあるラーメン屋『Bread』に休日行くのにハマっている
 能力:『忘却の民(ミラーズ・レーテ)
    『記憶』や『記録』を司る能力。場で起こった出来事を再現し見ることが出来る。
     記録された事柄を再現することも可能。
    (例えば殴られた衝撃を再現すると、同じ衝撃を敵に与える)
     ただし、能力を使用する際には記録、記憶が出来る何かしらを媒介とする必要が
     ある。
     (PC、携帯電話など)
     あと、燃費が悪い。連続しては使えない。


第4話

「……何だこれ。炎、か……?」

 強烈な熱を顔に感じながら、あまりの瞬間的な出来事に倉斗は腰を抜かしていた。

 不審者に突っ込んだ車が瞬時に消えたトリック。

 その答えは火炎、だ。

 どこからともなく沸き上がった炎が一瞬の内にして車の勢いを削ぎ、更に消滅させた。言ってみると単純に聞こえるが、その行為を実現するためにどれだけの熱が必要なのだろう。想像もつかないが、アスファルトに燻る小さな炎がその高熱さを物語っている。

(自己防衛……にしちゃやりすぎだな。となると、狙いは搭乗者か。それも……)

 そこで倉斗は数メートル先に立つ男をちらりと見る。

 そこにいる人物は純粋な一般人ではなく……

(明らかに俺を狙ってる。さっきから俺の方しか見てねえ)

 武道の心得など一ミリたりとも触れたことのない倉斗だが、そんな素人目線でもわかる程、男は殺気に満ち溢れたオーラを纏っていた。少しでも気を抜くとその殺気だけで心臓が止まりそうな位、冷たく、しかし獣の様に獰猛な眼だ。

 男が一歩、近づいて来る。

 蛇に睨まれたカエルの如く、圧倒的恐怖心に支配された倉斗は這いずることも、指一本動かすことさえままならない。

更に一歩。

 倉斗は微動だにすることなく男の接近を許す。

 そしてもう一歩。

 もう手を伸ばすとお互い届く程の近接した距離。

 徐に、男が懐からナイフを取り出した。この次の瞬間、自分は頸動脈一閃で死んでいるんだろうな、と倉斗は直感する。

 そして男がナイフを振り上げ――――

 

 ジュバリ、と。肉を裂き、骨を断つ音が響いた。ビシャリと、鮮やかな赤い花が咲く。それは次第に滝のようになり、流れ落ちていった。

 

「ッ⁉ ぁ、あああぁッ!」

 小さな苦痛の声を上げながら、アスファルトを赤く染めていく。

 ただし、その血はスーツの男の右手首から流れるものだった。

 無傷。全くの無傷である倉斗はポカンとした顔でその光景を眺めていたが、不意に背中に小さな衝撃を受けて、はっと我に返る。その背後には、男のナイフをぶん取った殻井が立っていた。

「オイ、いつまで座ってンだテメェは。さっさと立て」

 いともあっさりと。まるでこんな光景は当たり前だと言わんばかりの口調に少し困惑するが、どうにかよろよろと倉斗は立ち上がる。後方に下がろうとするが、どうにも足元がおぼつかない。いつの間にやら近寄って来た天賀谷の手を借り、どうにか男と距離を取る。

「どう、なってんだ。死ぬとこだったぞ⁉」

「言ったろ、病院でよォ――情報が不確定な奴は殺される。世界軸やら空間やら越えて来た来訪者なんざ尚更だ」

「招かれざる来訪者ってトコか……ちょっとカッコいいかもな」

「言ってる場合か……」

 少し言葉を交わすことで精神が多少安定し、尚且つ状況を呑み込むことが出来た。

 異世界から来た人物など、こちらの世界では脅威、異物でしかない。来訪者の情報を掴むなり始末しに来るなど、考えてみれば当たり前だ。どこからかは知らないが、この高速道路を使う情報を事前にキャッチし、待ち伏せしていたのだろう。

「だが、こんな雑魚を送り込んでくるとはなァ! 右手ぶった斬られてくたばったかァ⁉」

 実に一瞬。そのあっけなさに呆れ、殻井は斬り落とした男の右手をぐりぐりと足で踏みにじる。依然として男は(うずくま)り、呻き声を上げている。

 殻井はズボンの後ろポケットから手帳のようなものを取り出し、パラパラとページをめくり、あるページでピタリと止める。

「Ⅰ郡三十二位、代守狩氏。近接格闘、銃撃といった一般スキルはもちろん一流。それに加え、入念な準備と慎重性で数多の著名人を葬ってきた。能力は依然として謎。しかしその実績より危険度をⅠ群に認定する」

 読み上げ終わると、再び手帳をしまう。そして蹲る代守にツカツカと近寄ると、その腹に渾身の蹴りを見舞った。強烈な衝撃に、代守の体が軽く数十メートルは飛翔する。

「ンな雑魚だったか! ンじゃ『リスト』の情報はなんだよ! でっち上げか⁉」

 激昂する殻井の後方で倉斗は再び状況が分からず、フリーズする。新出単語があまりにも多すぎて脳の処理が追い付かない。

 倉斗の表情を読み取ったのか、後ろにいた天賀谷が解説を始めた。

「この世界では、世界の危険人物計五千人をランク分けして『レッドリスト』という一つのリストに纏めているの。Ⅰ郡が最も危険、Ⅴ群が最もマシ。能力に限らず、その人の身体能力、実際に行った行為などから総合的に判断される。あ、この世界って言うのは……こういう私たちみたいな人間の世界って話ね」

 言われて倉斗は即座に理解する。そういう世界、とは表には出せないこの『裏』での更に裏の社会という話だろう。

 今聞いた話をよく脳内にて咀嚼した上で……

「Ⅰ郡、だよな……? 呆気なさすぎね?」

 そう、あまりに呆気なさすぎる。最強ランクのⅠ郡であるにも関わらず、代守は一瞬にして殻井に再起不能にされた。これは明らかにおかしい現象だ。

 そうこう話しているうちにキレ終わった殻井がこちらに戻ってくる。

 明らかに落胆した顔つきだ。はぁーっ、と一度大きく息を吐く。

「クッソ……ひどく期待を裏切られたぜ‥‥‥」

「いや、あの……俺の命狙ってた人でしょ? 倒せて喜ぶもんじゃないのか……?」

 出会ってまだ一日も時を共にしていないが、中々に凶暴な性格だとは分かった。ここまで落ち込むのは珍しいのではないか? 小さな疑問が浮かぶが、まあそういうこともあるのだろう、と割り切る。

(さて、まあ敵はやっつけたみたいだし、あとは安全なとこまで案内してくれれば……)

 そう思い、車が消されたため新しい移動手段に関して議論をしている殻井と天賀谷に話しかけようとした時だ。

 ふと、頭の中に小さな疑問符が浮かぶ。それは環境の違和感からでたものだ。

 先ほどまでと、今の周囲の状況。何かが違う。

 一瞬、思考。そして瞬時に気づく。

「天賀谷さん、殻井……代守はどこに行った?」

 二人の顔がさっと青くなり、緊張感が走る。

 倉斗が感じていた、違和感。それは呻き声が聞こえなくなったことだ。

 右手を切断され、痛みと格闘していたはずの殺し屋はどこへ行ったのか。

 切り落とされた右手も見当たらない。

 殻井、天賀谷が周囲を警戒するが、物音ひとつしない。

 そもそもおかしかったのだ。高速道路であるにも関わらず、車が他に一台もないことが。これだけの騒ぎを起こしても何のリアクションもないことが。

 殻井が、先ほどまで代守がいたはずの場所に近づく。地面にしゃがみ込み、周囲を調べ始めた。

「右手どころか……血の跡が一滴分も残ってねェ。どういうカラクリだ、こりゃ?」

 無論、人間がこの短時間に血を一滴残さずどうこう出来るわけがない。つまり、敵が消えたのは……

「野郎の能力か……」

 ここは超能力を持つものが住む世界。敵が何らかの能力を使ったとしか考えられない。

 しかし、先ほど目の前で車が燃やされ――――いや、溶かされるのを見せられたばかりだ。てっきり炎を操る能力だと思っていたのだが……。

「とりあえず、次の行動を考える。敵には俺達の能力はバレちゃいないが、野郎は倉斗がいる情報をがっちり掴んじまった。更に護衛が俺達二人だってこともな」

「何かまずいのか、それ?」

「裏社会の情報網なめんなよ、倉斗。俺達が護衛している、と分かった時点で速攻俺らの情報が調べられ、逃亡先やルートを予測されるだろォよ」

「かと言って、ここでじっとしているわけにもいかないからね」

「だが、幸運なことに、恐らく野郎はまだ俺達が護衛だってことをバラしちゃいねェだろォな。そこまでの時間はない。だから……」

 殻井はそこで一度言葉を切り、スマートフォンを取り出しながら続ける。

「ここで奴を始末しなければ、俺らの負けだ」

「でも、敵の能力も分からないんじゃ始末しようが……」

 倉斗が重大な問題点を指定すると、天賀谷が横で笑って言う。

「大丈夫。兜兜君の能力は、そういうのに向いてる」

 その笑いは安心感やらそんなものではなく……殻井の信頼度を知っている笑いだった。

 

「『忘却の民(ミラーズ・レーテ)』」

 

 瞬間。地面に伏せた殻井のスマートフォンから神々しいばかりの光が発され、辺りを埋め尽くす。その光は殻井を中心に半径三十メートル程をあっという間に覆う。

「よく見とけよ、天、倉斗。俺の能力は『記憶』。あらゆる記憶や記録を操る。それは記録された能力の跡を見ることも可能だ。見てろ、奴の移動の軌跡が……」

 その光はやがて、人の形になった。これが代守のことを指しているのだろう。よく見ると、その光の人形も右手を失った状態だった。

 人型が動く。蹲り、じりじりと自身の切り落とされた右手に近づく。そして……

「ッ⁉ これは!」

 思わず倉斗は声を上げる。なんと右手、人型と共にまるで水洗の便所を流したように、渦状に段々と散り散りになり再び一つに集まっていく。やがて一筋の彗星となりどこかへ飛んで行ってしまった。

 それが終わると、光が殻井の携帯電話に収束し、全ての光が消えた。殻井が携帯電話をポケットに収める。

「今のトコまでしか、俺の能力では探れなかったが……でけェヒントをもらったな」

 立ち上がった殻井が僅かな笑みを含んで言う。

「とりあえず、野郎の能力が瞬間移動やら空間転移やらのチート能力じゃねェってことは掴んだ。恐らく、野郎の能力は炎、だろォな」

 車を消したことはもちろん、自身が一筋の炎となることで高速移動したのだ。炎を操るに限らず、自身をも炎に化す。これが代守の能力だろう。

 自身の能力を秘密裏に保つ、というのは戦闘において最も重要な戦略だ。敵に自分の能力を知られると、対策を講じられて圧倒的不利な立場に立たされるからだ。

 今能力を見抜いたという点において倉斗達は圧倒的有利だ。

 あとは敵の居場所を追跡し、仕留めるのみ、だ。

「あとは始末すッだけだな」

「? 代守の居場所、分かってんの?」

「もう探知した」

 軽く言い放つと、殻井はもう一度スマートフォンを取り出す。

「ンじゃ、ちょっと行ってくるか……」

 爆風。一瞬に起きた風の正体を、倉斗は上空を見てようやく理解した。

 はるか上空、単身で空を舞う殻井の姿があった。

 




 皆さんこんにちは、ウェーヴ・カンでございます
 更新、遅ッ!
 と思いました。自分で。
 マジで遅い。でも、出来たと思ったらこのクオリティー。
 ………悲しい……。
 これからは、頑張って一週間一回更新程度のペースにはしたいですね。最低ラインの目標で。
 実はこの話も五月十四日の予定だったんですが……二日過ぎてますね。(ん? 過ぎたのは一日か……? 計算分からん……笑笑)
 ユザオタ、まだまだ続きます。
 頭ではイメージできていますが、何せ語彙力がないもので大苦労です……。
 読みにくい要素も、表現が意味不な要素も多々ありますが、これからもよろしくお願いします
 それでは今回はこの辺で……さようなら
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。