ユーザーはオタク スキルを実行します   作:ウェーヴ・カン

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 今回は諸事情により、プロフィール等々ナシです。
 ごめんなさい……。


第7話

「学校に行ってもらいます」

「……はい?」

 灰醍寮に来てから早一週間。八日目、突如呼び出された倉斗は学校宣言をされた。

 

 

 

 ユーザーはオタク スキルを実行します

 

 第七話 スクール生活

 

 

 

 午前五時。まだ大抵の人は寝ているであろう時間。起きているのはだいぶ歳の進んだご老人か、仕事が早朝からある人ぐらいだろう。

 眠気が一気に吹き飛んだ倉斗は突然の展開に困惑する。

「いや、え? 学校……?」

「ン? 何を驚いているのか知らないケド、学生が学校に行くのは当然のことだろう?」

 突然の宣言に驚きを隠せずあたふたする倉斗に、ハジメはさも当然という態度で接する。

「あんたが外に出るのは危険だって言うから、この一週間寮の中で過ごしてたんだぜ? なのに学校だなんて……逆に人が多すぎるだろ?」

「いやあ、そうなんだけどね……」

「なら――――」

「倉斗クン。僕らの目的を覚えているかい?」

 急に問いを投げかけられ、反論をしていた倉斗は一瞬沈黙。しかしすぐに記憶の底から回答を引っ張り出す。

「確か、俺を調べて『表』との繋がり方とかを調べるって……」

「That’s right! その通りだよ、よく覚えていたね」

 キザな言い回しにムッとしながら、倉斗は質問を重ねる。

「でも、それとどういう関係が?」

「君はこの一週間、この寮で何か変化があったかい?」

「ン? いや、特に」

「そう、そこだよ!!」

 倉斗の答えにハジメはびしりと倉斗を指差し、叫ぶ。

 椅子から立ち上がったハジメは倉斗の目の前にぐっと近づき続けた。

「僕らの目的……というかほぼ僕の、なんだが。『表』との関係性を調べる上で、唯一の研究対象である君に何も起きないというのは非常にマズイ。この調子ではいつになったら結果が出るのか分からない。時間は有限なんだよ」

「なるほど……より多くの能力者と接するような場所……それこそ学校のような場所だったら、刺激になって俺に能力が発現するかもしれない、と」

 倉斗が至近距離のハジメを押し返すと、彼は素直に席に戻る。

 どかりと座ったハジメは両肩を軽く上下させる。

「ま、そんなトコだよ」

「でもやっぱり危険なんじゃ……」

「いいや、その面も心配はない」

 倉斗の不安をきっぱりと制し、ハジメは堂々と言い放つ。

「君には天賀谷や殻井と同じ学校に行ってもらうからね。それに、いざとなれば僕も駆けつける。それに行き帰りには護衛もつける。安全面に関しては大丈夫だ。キミは楽しくアオハル! してくれればいい」

「その歳でそんなはしゃがないで下さいよ。つーか、アオハル! なんて現役高校生でも言わないっスよ」

「まあまあ、とりあえず一度行ってみてくれよ」

「……ここまで頼まれちゃ、断るのも失礼っスよね。いいですよ、こっちの世界の学校生活を堪能させてもらいます」

 倉斗が諦めて言うと、ハジメはにっこりと笑い頷く。

「うん、よかったよかった。実のところ、キミが行きたくないと言っていたら僕の能力で直接頭を探ろうと思っていたからね。やっぱり自然に能力を発現させるのが一番だね」

「え? あ、……はあ」

 ポンポンと湧き出て来た不吉なワード達に困惑する倉斗だったが、一つだけ実感した。

(……逆らわなくてよかった)

 もしかしたらヤバいことになっていたかもしれないと考えると、ゾッとする。

 何はともあれ、学校だ。

 今日中に準備を整え、明日明後日くらいには……、と考えていた倉斗にハジメが追加で言い放つ。

「あ、そうそう。言い忘れてたけど、学校、今日からだから」

「あ、はい。……え、今日から⁉」

 再び驚かされた倉斗だった。

 そして悟る。早朝から呼び出したのはそのためか……、と。

 

 

 

 

 

「と、言うことで。今日から転校してきた、田中園正(たなかえんせい)君です。皆さん、仲良くしてあげて下さいね♡」

 担任の先生の紹介で、倉斗はぺこりとお辞儀する。

 教室には転校生への興味で、ザワザワとした空気が流れている。

 まあ、分からなくはない。今は六月中旬。この中途半端な時期に転校してくる者などかなり珍しい。

 指定された窓際の席に着くと、さっそく右隣りの少年が話しかけて来た。

 彼はその天然なのか染めたのか分からない茶髪を光らせて、和やかに話しかける。

「俺は学級委員長の鹿場十(しかばつなし)。分からないことがあったら、何でも訊いてくれよな」

 第一印象、優しそう。

 爽やかな笑顔を見て、コイツ絶対モテるだろ、と思いながら倉斗は質問をする。

「俺さ、まだ能力の発現がまだなんだけど、そういうのって普通なのかな?」

「え、うーん……どうだろ? そういう人もいなくはないって聞いたことはあるけど……あ、だからこの学校に転校してきたのか、えーと……田中でいい、それともエンセイ?」

「へ? エンs……ああ、そゆことね」

 一瞬、誰だソイツと思う倉斗だが、すぐさま思い出す。そういえば素性を隠すために偽名を使っているのだった。

「あ、あー……エンセイの方が嬉しいかな」

「オッケ。じゃあ、エンセイ。ウチが一番超能力強化に力入れてるトコだから、ここなんだろ?」

「え、そうなの?」

「知らなかったのか? 小中学校で自分の能力をある程度操作できるようにして、更に能力を活かした仕事がしたい人がウチみたいな育成学校で能力を伸ばすってのが基本だけど……小中学校は義務教育だろ?」

 あ、こっちの世界でもそういうのは変わらないんだね、と思いつつ倉斗は返す。

「あ、いや。一応受けたんだけど結局発現しなかったから。中学の先生の勧めでこっちに」

「ああ、そういうことか。ま、たまにいるらしいよそういう生徒。しょうがないよな」

 すんなりと話を受け入れてくれるあたり、本当に優しい人なのだろう。

 それよりも、能力の不発現が異常ではないと知って安心する。もしかしたら異常者扱いされるかもしれないと思っていたのだ。前例があるというのは心強い。

 もう少しこちらの世界のことを知りたいと思い、二人で話続けていると周囲の人々も集まって来、かなり賑やかになってきた。

 数分皆で喋っているとチャイムが鳴り、教師が教室に来た。

「席に着けー。授業やるぞー」

 そんなこんなで『(バック)』初の授業が幕を開けた。

 

 

 

 授業はあっという間に進み早くも一日が終わってしまった。

 元の世界では退屈だったはずが、こちらの世界の授業は非常に面白かった。『(バック)』の情報を多く掴めたからだ。

 まずこの世界、倉斗の住んでいた世界と同じように複数の大陸と多くの島々で成り立っている。各国の名称も全く同じ。宇宙の概念も存在し、この星も地球と名付けられていた。

 つまるところ、『表』の世界と同じような世界構成、認識なのだ。

 これは非常に助かった。一から常識を覆す必要がなくなったのだ、少なくとも地理に関しては。

 言語もほぼ同じ、これにも助けられた。

 日本語というものも存在しており、こちらも特に問題ない。ただ、倉斗の話方は少し古臭いらしいが……まぁ不便はない。

 と、いう感じで今日だけでかなりの収穫があった。学校に来たのも、かなり良いことだったのではないだろうか。心の中で、ハジメに少しだけ感謝。

 さて帰ろう、と鞄を担ぎ上げた時、

「おーい、エンセイ。一緒に帰ろーぜっ!」

 明るく話しかけるその人物は、ツナシだった。振り向くと、変わらない笑顔で立っている彼がいた。

 一瞬、躊躇する。果たして一緒に帰ってもいいのだろうか。ハジメは倉斗自身の存在を出来るだけ小さくしておきたいと思っている。ここで一緒に帰れば田中園正の情報――つまり倉斗仁の情報を与えてしまうことになる。しかし、目の前にいる男はどうも悪い人間には見えない。どうすれば……。

 と、その時。倉斗の持つ携帯電話がヴーと振動する。

「あ、ワリ。ちょっと電話」

 画面を見ると、ハジメと表示されている。すぐさま緑色の応答ボタンを押し、端末を耳に押し当てる。

 倉斗が何かを言う前に、電話の向こう側からひと言。

「全然オッケーだぜッ!!」

 そういうなり、電話は一方的に切れた。どこから見ていたのか。倉斗は周囲を見渡すが、それらしき人影は見当たらない。

「エンセイ? どうした、大丈夫か?」

 ツナシに声を掛けられ、はっとする。見るとツナシが心配した顔でこちらを見つめていた。

「あ、あー。うん、だいじょぶだいじょぶ。早く帰ろうぜっ!」

 一瞬きょとんとしていた彼だったが、すぐに笑顔に戻る。

「おう! 帰りにアイスでも食って帰ろうぜ!」

 

 

 

「あ~、うめー。やっぱバニラが正義よな~」

「いいや、チョコしか勝たんな」

 帰り道、ショッピングモールに寄った二人は、アイス片手に店内を練り歩いていた。

「ゲーセンでも寄って、晩飯もそのまま食ってくか、エンセイ?」

「ん、あー……。いや、俺はもうそろそろ帰るわ」

「おいおい、もうちょっと遊ぼーぜー」

 と、いう風でやいやいと二人で言っている時、ふとツナシが足を止め、目を細める。

 その時彼の眼の中に、何か鋭いモノ――――この間の殻井と同じような鋭さ――――があることに気づき、倉斗は一瞬胸が下からすうっと救われるような戦慄を覚える。

 が、ツナシはすぐにもとに戻り、何事もなかったように歩き始める。

 そして倉斗と肩を組み、今まで以上に大きな声で話す。

「やっぱもうちょい残ろーぜー!! (……振り向くなよ、誰かに尾行されてるぜ)」

 耳元でぼそりと呟かれ、倉斗は再度びくりと身体を振るわす。が、すぐに平常運転で振舞う。

「んー、やっぱもうちょい残っていこっかなー!! (いつから? てかどこにいる?)」

「おう、それがいいな! よーし、ゲーセン行くか!! (気づいたのは今さっき。右斜め後ろの柱の陰だ)」

 疑問は多かった。

 なぜ一般人のツナシが尾行に気づいたのか。もしかするとツナシは倉斗の正体を知っていて近づいて来たのか。尾行者が倉斗狙いなら――まあ十中八九そうだろうが――どうして倉斗の存在がバレているのか。などなど。

 しかし、倉斗の直感が告げていた。ツナシは悪い奴ではない。ここは話を合わせ、乗っておいた方が良いと。

 故に彼はただの転校生:田中園正という猫を捨て去り、別世界からの使者:倉斗仁として、追われるものとして対応する。

「やっぱ格ゲーでもやるかな、最初は!! (捕まえられるか? 多分狙いは俺だろうから囮になるぜ)」

「いや、音ゲーも捨て難いだろ! (いや、俺も心当たりが結構ある。一度分かれて、様子を見よう)」

「あ、俺小銭ねーわ。ちょっと両替してくるな。(オーケー。まず俺が分かれる。これで追ってきたら、頼んだ)」

「おう、行ってらー。(わかった)」

 大声で宣言し、倉斗は両替機へ向かう。

 肩越しにちらりと覗くと、どうやら怪しげな影がそそくさとこちらに接近してきた。

(やっぱ俺か。ツナシがどうにかしてくれるだろーけど……)

 倉斗はあえて人通りの少ない所の両替機を利用する。狙い通り、尾行者は少しずつ近づいて来た。

 瞬間、尾行者を更に尾行していたツナシが後ろから襲い掛かる。

 助太刀しようと、倉斗も振り返り戦闘の構えを取るが、その必要はなかった。

 そこには、電光石火で尾行者を組み伏せたツナシがいたからだ。尾行者に馬乗りになり、腕を後ろにねじり上げている。

 尾行者は抵抗するが、それが無駄だと悟ると抵抗をやめた。

「さてさて……」

 倉斗とツナシはそろっていやな笑みを浮かべる。尾行者の顔を無理矢理上げさせ、

「色々聞かせてもらいましょーか」

 倉斗が詰め寄った時だった。ツナシが不意に叫ぶ。

「⁉ 違う、エンセイ!! コイツは――――ッッッ!!」

 遅かった。倉斗は自身の圧倒的有利にあぐらを掻いていたために、緊急の事態への備えが出来ていなかった。

 尾行者が、崩れ落ちる。それは比喩でもなく、文字通りに。ぼろぼろと土くずのようになって、その姿を消す。そしてその中から出て来たものは――――

「爆、弾――――ッ⁉」

 漫画、アニメお馴染みの、線が格子状にひかれた手榴弾が。そしてもちろん、ピンは抜いてある。

 

(あ、死んだな)

 

 目の前の非日常に思考が停止した彼は、動くことが出来ない。

 そのまま爆発で四肢が粉塵と化し――――

「掴まれ、エンセイ!!」

 差し伸べられた手。その手を倉斗は無意識に掴む。藁にもすがる思いで。どうせ自分は何もできないのだから。せめて誰かに頼ろうと――――。

 

 瞬間。景色ががらりと変わった。

 

 ゲームセンター独特の薄暗い空間から、日の光が差す明るい場所へ。ショッピングモールの外へ。

 一瞬だった。歩いたとか、高速で動いたとかそんなレベルじゃない。

 超能力の使える世界で、一瞬にして場所が変わる。これは紛れもなく……

「しゅ、……瞬間移動キターーーーーーッッッ!!!!」

「エンセイ、うるせえよ!! ちょっと静かにしろ、暴れるな!」

 倉斗は夢にまで見た瞬間移動の初体験に泣いて感動する。

 そして発動した本人、ツナシはそんな倉斗を必死になだめる。

「な、なんだよ今の⁉ 瞬間移動⁉ マジカッケー!! ツナシの能力⁉」

「瞬間移動、ね……。少し違うけど、結果としてはそうだな。俺の能力は瞬間移動。範囲は俺中心にざっと半径百メートル以内ってとこかな」

「何で最初に言わなかったんだよ。それ使ってたら学校からここまで歩く必要なかっただろ?」

「いや、お前なあ。そう簡単に能力バラすかよ。そんなの俺らの世界……いや、何もねえや。黙ってて悪かったな」

 途中少し言葉に詰まっていたのが気になり追及しようとしたが、それよりも早くツナシが口を開いた。

「それより、問題はさっきの土人形だ。あれはガチで殺しに来てたぞ」

 言われて、倉斗も状況を思い出す。周囲を見れば、人々があたふたとしている。会話に夢中で爆発音が聞こえなかったが、どうやら爆発自体は周囲に知られたらしい。遠くからサイレンの音も聞こえる。

「ツナシ、不審者は……」

「今んとこはいない、な。だけどまた仕掛けてくる。とりあえず逃げるぞ」

 ツナシが先立って走り、倉斗も後からついて行く。

「ごめん、ツナシ。俺と一緒にいたせいで……」

「いいって気にすんなよ。こんな状況で落ち着いてられる俺もおかしいだろ」

「いや、でも狙われてんのは多分俺だからさ。もう分かれて行動した方が……」

 倉斗が必死に謝っていると、ツナシがピタリと停止する。倉斗も慌てて止まる。

「……エンセイ」

 背中を向けたまま、彼はぽつりと言った。その背中が、少し悲し気に見えたのは気のせいだろうか。

「俺はお前の事情なんかに首突っ込むつもりはないし、お前がどんな立場でも驚かねえよ。それに、これは俺が勝手にやったことだ。爆弾を見つけた時、俺一人で逃げることもできた。でもそうしなかったのは、俺がお前を助けたいと思ったからだよ」

 ツナシはゆっくりと倉斗の方へ振り向き、拳を倉斗の左胸に軽く当てる。そしてニカリと笑い、

「それに、さ……。一緒にアイス食った仲じゃんか。そう易々と見捨てれねーだろ」

 するりと、言葉が倉斗の心に入り込む。

今までこちらの世界で接してきた人々は、倉斗に『訪問者』として接してきた。『訪問者』はレアだから、守る。それしかなかった。もちろん優しい人もいるが、それは『訪問者』だからかもしれない。

しかし目の前のこの男は。単なる友情、自らの意志と思考で倉斗を守ると言ってくれている。初めてだった。こちらの世界に来てから。元の世界と同じような友達など、つくれないと思っていた。故に倉斗はツナシの言葉が深く胸に刺さり――――

「ああ……ありがとな、ツナシ」

 少し目に涙をためて言う倉斗に、ツナシは不思議がることもせずにただ微笑んで――――

 ――――瞬間、その表情が一気に強張った。

「エンセイ、避けろッ!!」

 間一髪。倉斗が右に思いきりステップした瞬間、先ほどまで倉斗がいた位置に、大質量の塊が降って来た。

 何かをごちゃ混ぜにしたような砂色のその物体は四散し、それぞれが形作られていく。

「これは⁉ ツナシ、さっきの――――」

「ああ、間違いなく同じヤロウだな。エンセイ、こいつらは俺が片すから早く逃げてくれ」

 ずいと前に出、ツナシが拳を構える。倉斗は逃げようと足を動かすが、すぐに止まってしまう。

「⁉ どうしたエンセイ、何で逃げな――――」

「ツナシ、どうやらそれは厳しいみたいだぜ」

 驚くツナシの言葉を遮り、倉斗もテキトーな構えをとる。背中合わせになったツナシは肩越しに倉斗の視点先を覗き見、はあっと息を吐く。

「なるほど、そういう事ね……」

 そこにはツナシの前と全く同じ、土人形が配備されていた。

 詰まるところ、二人は大量の土人形の刺客に囲まれていた。

 




 お~~~~~久しぶりです!!
 ウェーヴ・カンでございます。

 毎度言っておりますが、本当に遅くて申し訳ありません。
 最終更新から軽く三,四ヶ月は経っているかと……。
 こちらの作品ではあまりコメント等なかったのですが、もう一つ並行で創作していますジョジョの二次創作作品では催促のコメントもいただいたりと……。
 本当に申し訳ありません……。

 諸事情あってしばらく創作活動が出来ていなかったのですが、どうにか再開できそうです。
 どちらの作品もこれからは出来るだけ一週間間隔で投稿しようと思いますので、これからもどうぞお付き合いをば……。

 そろそろ時間になりました。
 それではまたどこかでお会いしましょう。
 さようなら!
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