だんだんと収拾がつかなくなってきた展開、私はうまくまとめる事ができるのでしょうか・・・。(涙)
ケイタ君より引き継いだ新生月夜の黒猫団はしばらく混乱した毎日が続いた。フレア、ソニアはパーティになったとたんギルドホームを入手するという事態に喜び、黒猫団のホームでくつろいでいた。
当の私は三日ほどホームを空けてギルド結成クエストを取得しにいった、今のレベルでは簡単なクエストだがなんせ説明が長くて面倒だった。
ようやく取得して戻った時にはキリト君はいなくなっていた、置手紙には短くお礼の言葉が綴っていたがやはり彼は私が丸め込んだ説得に納得していなかった。それにトラップの部屋に入ったときのあの少女とキリト君の会話は何か特別な何かがあったのだろう、唇を読んだが他愛のない一言だった。彼には何かが引っかかっていたのだろうな、暫くはそっとしてしておくの
が吉だろう・・・と思い込んでいた。
私は余計な事をしてしまったのかもしれない、キリト君の切り開こうとした可能性を摘んで私の常識を敷いてしまった。彼には彼で打開できる手立てがあったのかもしれないのに、その若さに見切りをつけて摘んでしまった・・・。
申し訳ない、エールと焼き魚で一杯やっていた私の手が止まる・・・。
「あら、また一人で飲んでいらっしゃるのですね?」薄い桃色のショールを肩にかけ、寝具用に誂えたドレスを纏ったフレアが私に優しく寄り添ってくれた。
「悪い癖ですね、思いつめた時は一人で食される・・・。」
「そ、そうか?フレア君のような女性ならいつでもご相伴するんだけどね!」エールを一気に流し込んで答える、後からおそうアルコールの呼気が心地よく感じる。
「あら?現実では一回も誘われた事なんて無かったのに・・・、まあいいですわ。今日はそう思って自分の分は持ってきました。」フレアは葡萄酒を一本私の前に出してきた、確か7層のクエストで手に入れる事ができるクエスト「農夫の苦悩」で手に入れる事のできるアイテムだった・・・。私には甘すぎるが彼女には最適な一品なのだろう・・・。私はそのボトル受け取
り、封を切ると心地よい音と共にワインレッドがグラス注がれていく。
フレアはそれを受けてゆっくりと喉に通していく、喉を通す彼女は優雅に杯を空にしたのであった。再びグラスに注ぎ、葡萄酒に合う牛乳加工物、つまりチーズを準備する。
「この世界にもチーズが?」
「再現には苦労したよ・・・。」牛乳の耐久値は恐ろしく低く常温においては半日も持たずに酷いものになる、なので加工する必要があるのだ。チーズを出すお店でNPCに頼み込みヒントを得る、料理スキルを上げてその手がかりとなるクエストを受ける、遠心分離器やら機材を買い込んでようやく成功した一品だった。かなりの失敗をしたがようやく食べられる物に仕上
がった時はうれしかったなあ・・・。
フレアはひとかけらを口にいれ、その味を楽しんだ・・・。そのあと一気に葡萄酒で洗い流す、ほのかな甘みと臭みが葡萄酒により洗い流される快感に酔いしれる。
静かな飲食が時間を支配する、現実ではいつもフレアは私の行動を静かに観察をしている。彼女の優しい笑顔がいつも背中を支えてくれるような感覚を覚える、そして今その笑顔が目の前にある。この世界に入り数ヶ月ソロ攻略をしていたがなんと頼もしい存在なんだろう・・・。
「そのくらいのエールで酔ってないですよね、仕合いませんか?」フレアは笑顔のまま立ち上がり近くに備えていた薙刀に手をかける。彼女の母は遠野流薙刀術の当代でありフレアは秘伝まで到達している、彼女の母が言うには口伝に到達するにはもう一つ足りないものがあると言っていた。女性の武道とされている遠野薙刀術では男性は目録までしか与えなれない、その領
域に達する事の出来ない私には理解はできないのだろう。
「久々に一つご指南いただきます、こちらの世界ではカタナのスキルは上げていないのでこの斧槍でお受けする事になりますが・・・。」フレアは全く意に介さない様子で、扉に向かう足取りに酔いは淀みなく外の庭へ歩き出す。途中で装備を整える為に自室に入るが着替えは一瞬である、十秒と待たずに庭へと姿を現した。私もすぐに着替えを終えており、彼女の数メート
ル先で対峙する。
「ここはSAOの世界ですから、実戦さながらに行きましょう。」彼女の笑みはここで途切れる、凛々しく引き締められた口は引き締められ一礼のあと薙刀を下段に構える。私も一礼の後正眼の構えを取る。すでにデュエルのカウントは終わっている、今はデュエルではなく仕合を意識した形式になっているのだった。
・・・肌がぴりぴりする、彼女から発する何かが辺りの温度をさげているように感じるが体の中の血が激しく巡り発汗していた。気圧されているのか攻撃に転じて我を忘れて突撃をしたくなる、この対峙し長考する時間がとても嫌な物に感じる。
フレアは動いた、すべるように左足をだしたかと思ったら一気に距離をつめられた。
彼女の薙刀の方がリーチは短い、先に発されたが槍の一撃を打ち込んだがすり抜けるように回避し下段より斬り上げが襲う。
すぐさま槍を引き右手で槍を持ち薙刀を受け力比べとなる。すぐさま体を沈めてアレフォーマを旋回、足払いをかけようとしたのだが、いつの間に対応させたのか薙刀がすでに斧部を捕らえ封じられていた。フレアも私と同じ戦術基本である持ち手を旋回させた近距離石突き攻撃が襲った。
「くっ!」同じ動作を行っていた私はアレフォーマを必死に操りフレアの石突きに突き合わせた。金属音が響き、手にも伝わる。互いにバックステップで距離を取った。
(リュート様は才能は無いですが戦術と勘がよく働く・・・。)構えなおして感心する、私は物心ついた時より母に薙刀の英才教育を受けて経験値は膨大な物となっているがリュート様はその物差しでは測れない存在だった。
彼が初めて私の実家で薙刀を振った時の事を思い出す、へっぴり腰でどたどたした足捌きで門下生と一戦を交えたが彼は打たれなかった。初心の者はここで洗礼の一撃を数秒で受けるものを「止め」と言われるまで振り切ったのだ。
母は私にリュートを直接指導するように言われ仕事の合間に近くの道場で稽古を続けた。才は凡人そのものだったが、一本を取るのは一苦労だった。
リュート様はSAOに来てその剣技に変化が出てきている、ここでは体はリアルの物ではなく精神がデジタルデータに宿った借り物のような存在。肉体ではなく精神の力が物をいう世界において彼の意志力は才能を超える何かを与えているように思えた。
リュート様が飛び出した、次は乱打に持ち込みたかったのか短く持った斧槍は小さく振り払い続ける。筋力値の高い彼の攻撃は受け止めず流すように捌いていく、私は若干だが筋力よりも俊敏に割り振っている。体の捻りとステップを交えて斧槍の軌道を変化させながら反撃を待つ・・・。がおかしい、徐々に剣速が早くなってきているように感じる。それにリュート様の斧槍が小さな光を纏っているように感じる、受け止めるが受け流せきれなくなりバックステップを使わないと転倒しかねないものになっていた。
余力もなくなり全力で事に当たった、気付けば気合の声を出すようになった。
乱打戦の中で私は一瞬の隙をついて体術スキルである翔脚を使用してしまった、あたる事はなかったが体勢を大きく崩すことに成功、足技なので上半身は建て直しに成功し、薙刀の斬り下ろしを受けてデュエルは終了した・・・。
すっかりアルコールは抜け落ちている、火照った体に夜風が当たり心地よかった。最後の乱打戦では肝を大いに冷やしたが最低限の面目は保たれた。体術を使用したが遠野流には体術は存在するので決して卑怯ではない・・・、自分に言い聞かせていた。お互いに一礼し、称え合う。
「すばらしい上達ぶりですね、最後の乱打での打ち合いは正直負けると思いました。」息を整えつつリュート様に声をかけたが反応がない、何かに気が取られているようだった・・・。
「リュート様?」
「な、なんだこれは・・・。」意図が読めない、フレアはまだリュートに起きた変化に気がつかないのだった。
ミズは最前線の30層にきていた、もちろんこの暴虐武人な男には攻略には全く興味がない。数日前から最強と言われるプレイヤーである男に会うためにずっと広場でその男を待っていた。なぜかその男は最前線でレベリングとかを行っている様子はない、どのように最強を維持しているのかは知ったことではないが殺りあいたいと思っている。今日はボス攻略により広場に集
まるといっていた、奴は必ずでてくると踏んでいた。
予想通り、最前線プレイヤーが集まる中に最強と思われる男性が取り巻きの連中をつれてやってくる。その中にあの弱い女もいた、てっきりあの戦闘で心が折れたかと思ってが思ったより強い女だったんだな・・・。邪悪な笑みが浮かんできた。
その男が攻略に向けた演説が始まった、くだらないがとりあえずは聞いてみよう。人柄を確認する事は戦闘においても有利に働く事が多い。
「諸君、今回もボス攻略にフルレイドが揃った事に感謝する。25層以降飛ぶ鳥を落とす勢いで攻略が進んでいるとは思うが慢心せず犠牲者が出すことなく突破しよう!」紅白の鎧を着た痩身の男は英雄になりえるその声量で鼓舞する。
剣を掲げると共に怒声が上がった、このタイミングを逃さない。注意が散漫になったタイミングでその男に近づいて背後に回ろうとするが、即座に反応する。ちっ!油断がならない男だ・・・。即座にメニュー画面からデュエルを申請を出す。
この事態を感じ取ったアスナや攻略組はその異常な行動に視線を持っていくがこの場合は先手をとる。
「最強さんよ、ボス攻略の前に俺と殺ってみないか・・・。」長剣を首筋に向け、殺気も怒気もない声で語りかける、まるで死神の宣告のように。
「君がアスナ君の言っていた異常な男か、なるほどその凶暴性は確かに今後の脅威になるな・・・。」血盟騎士団の団長は冷静な口調は崩さずに応えていく。そしてまだその冷め止まない騒動の中初撃決着モードをタップし、突然のデュエルが始まった。
辺りは騒然となる、全員に可視化されるデュエルウインドウが大きく表示される為後方にいたまだ冷め止まない物も騒動がとまりこの異常事態を読み取る。
ミズは距離を取り構えのない自然体でその時を待つ、団長ことヒースクリフは大型のスクトゥムを掲げて直剣を構える。ビープ音と共にデュエル開始が告げられたとたんにミズは邪悪な笑みを最大限にして突進する。
ヒースクリフはその一撃をスクトゥムで止め、直剣の横薙ぎの一撃を与えるがミズは手甲で捌く。止めるほどの強度は無いが捌く事なら手甲で回避する技術を手に入れてからは戦闘も容易になった。盾を持つと攻撃速度と敏捷性が失われる上に、盾を持つという安心感が守りに入る事が気に入らない、手甲の防御という離れ業で持って緊張感と剣で防御を止める覚悟を決めて
いる証でもあった。
二人の激闘は凄まじい物であった、周囲の者はあまりの突然の出来事と高レベルな戦闘に飲まれてしまい何も言う事も行動も出来ず見守るだけであった。
ヒースクリフの絶対的な防御力に対し、ミズの絶対的な攻撃力で互いの力が矛盾しあい相殺されていく・・・。
二人のHPはほぼ同じであり、そのHPは等しく減っていった・・・。
「よう」私はその戦闘の中、キリト君を見かけて声をかけた。
「リュート・・・。」彼は俯いて黙り込む。
「気にすることはない、いずれまた機会がある。・・・それよりどう見る?あの二人。」
「このままいけば、あの長剣の男が勝つな・・・。」キリト君が応える、確かに現実この展開ではそうなるだろう。ミズのあの能力はSAOでの能力ではなく現実に持っている力だ、それにSAOのアシストが入れば多分普通は勝てる者はいないだろう。
「私はヒースクリフさんが勝つと踏んでいる、賭けるかい?」私は砕けて彼に問いかける、情報屋のアルゴという女性がキリトの情報をよく知っているとの事でエギルを通じて知り合った。彼女の情報では四六時中迷宮区や効率のいい狩場でレベリングを行っているらしい・・・。いまからボス攻略だというのに彼の体調は万全とは思えなかった、疲労感から伺える声量の無さと注意の散漫さが伺える。それでも彼は今回のボス攻略はレベリングの一環と思っての参加なんだろう、一体彼は何に取り付かれているのか現在の私には想像が出来なかった。
彼は、私の提案を聞いていないかのように彼らの戦闘を見守っていた。
激闘は死闘へと変貌するかのように二人の道程は激しさをましてくる、ミズの邪悪な笑みは失せ一瞬の攻防に少年のようなすがすがしさを垣間見えるくらいになっていたがヒースクリフ君はまるで別の世界で戦っている様子だった。何かがおかしい・・・、一体何が・・・。
その違和感を拭い去る事は決着がついてもわかることが出来なかった。デュエルの結果はかつて見た事がない事態となっていたのであった。
双方とも精神力がつきたのであろう、一定の距離のまま攻撃に転じる事が出来なくなっていた。ヒースクリフの剣は耐久値が限界なのが、クイックチェンジで予備の剣に変えている。ミズも同様に耐久値が限界を迎えているが予備がないようで構えてはいるが体術を使うような構えを見せている、ミズは剣ではないが構えている姿を見るのは初めてだった。
互いにHPは半減近くまで落ちてきている、ここで必殺の一撃が入れば初撃決着といえどもHP全損もありえる・・・。
精神力は尽きているが瞳の輝きは落ちていない、おそらく最後の一撃を入れる為に時を伺っていた。
ヒースクリフ君は突然、メニューウインドーを操作し始めた・・・。ミズはその行為を中断する様子もなく待っている、何でも使って来いといった感じだ。その自身の絶対的な自信は何処からあふれてくるのか私には理解できずにいた。
操作を終えたヒースクリフ君の体から白いオーラのような物が見える・・・、彼は一体何をしたのだろうか・・・。
「待たせたな、先手は君に譲ろう・・・。」ヒースクリフ君はミズに余裕の台詞で挑発する。彼は再び邪悪な笑みを浮かべて突進する、挑発を感情的に受けたわけではない。どんな奥の手を使ったのか興味である行動が大多数を占めているように思える。
最強の矛が盾に攻撃を与え続ける、凄まじい連続攻撃に攻略組の連中も固唾を呑んでしまう。剣戟の凄まじさと防御し続ける
二人に純粋な賛辞を心の中でおくってしまう・・・。
その中でウインドー操作をした前後の変化に理解した。
「ヒースクリフ君のHPが減らなくなった・・・。」隣にいたキリト君も同意見のようで頷いていた。
ミズもその変化に気付き、距離を取り、そして一言・・・。
「ちっ!つまんねえな!!その能力、やめだやめだ!」長剣をおろして降参を口にする。
「あんたなら俺の境遇がわかってくれると思ったんだがなあ!強いがあんたは闘った中で一番最低な男だよ。」
周囲のヒースクリフを神格化している団員から非難の声が上がる。
「うっせえな!俺は夜10層のフィールドにいる、死ぬ覚悟がある奴はかかって来い!」と威勢よく宣言した後転移結晶を用いてその場から離れていった。
30層の攻略は本日中止となり翌日に持ち越された、レイドリーダーのヒースクリフ君は精神的に大きな疲労と武器、防具の耐久値を減らしてしまったので解散となった、しかしその衝撃的な一連の騒動に動揺が走っており皆動けずにいた。
隣にいたキリト君も同様であった。
「あのヒースクリフ君のあれはなんだったんだろう。」
「俺も、人づてできいた話だが、25層攻略で使用したユニークスキル。神聖剣だろう?」
「ユニークスキル?」
「情報屋も必死に集めているらしいが、発現条件がわからずSAOにおいて一人にしか与えられないスキルといわれている。神聖剣は何人も侵す事のできない絶対領域といえる防御力で持って制圧する剣と認識している。」
「そんな能力が、他にはあるのか・・・。」
「判らない、何種類あるのかもどんな能力も不明のまま・・・。公表されているのは現在はヒースクリフだた一人だけだ。」キリト君も興味はあるのだろう、情報屋からの内容をそのまま伝えているようであった。今後ユニークスキル使いはこのゲームにおいて大きな力となるのだろう、茅場君は一体どのような者に狙いをつけて分け与えていくのか興味出てきたのであった。
私のわかりやすい文中の通り、リュートさんはユニークスキルを手に入れております。
某ホームページによるとこの時期辺りにキリト君も二刀流スキルを手に入れた時期といわれております。
どのようなスキルで、どんな効果があって、どの場面で使おうか大体決めておりますのでその時まで楽しみにしていただけたらと思ってます・・・。