「えっ!どうして・・・。」父の撤退の言葉に思考がまだ回らない・・・。
確かにエイシェント・ロード・ナイトに変化してから、難易度は上かった。
一番近い者に攻撃を仕掛ける簡易な行動しか与えられていなかったのに、一定のプレイヤーに執拗に攻撃を仕掛けるようになった。
しかし、それだけなのに撤退を早々に判断した父の提案には納得がいかないものがあった。
父はウインドーを操作し、一枚の洋紙皮を取り出していた。
フレアさんとソニアさんは父と僕の前に立って、ボスがこちらにターゲットを取った時の壁となっていた。
おそらく父がウインドー操作時は護衛するように決められているのであろう・・・。
父はこういう事態の時には言葉数が少ない、これが元で小さい時はよく言い争う事が多々あった。
しかしながら時間の経過と共に父の言い分が正しい事が証明されていくので、ここで僕は否定的な言葉を避けてしまうようになり、父の言葉をじっと待つことに決めていた。
父はその紙を一通り確認し終えると僕に向き直り言葉を進める。
「時間がないから結論を言う。・・・聖竜連合はこのボス戦に割って入ってくる可能性が高い・・・。
シプト、このまま戦って聖竜連合に経験値などを持って行かれることを前提とするか、ここで撤退して仕切りなおすのかを早々に決めた方がいい。」
「えっ・・・・・・・・!」
このボス戦はフルレイドで望んでいる、つまり入口は出る事は出来てもレイド以外の人間は侵入できないエリアになっている。
その状況下で割って入るなど到底無理なのに父はその根底を覆した内容で話を進めているので理解が追いつかなくなってきていた。
しかし、僕はその状況を仮定して想像を掻き立てていくと信じられない状況が出来上がっていた。
もしレイド以外の人間が侵入し、かつそのパーティがボスを倒してしまったとする。
最悪は経験値やコルの分配は均等割りにしているがまったく違うパーティなので均等割りはされずそのパーティのみで分配されてしまうのではないか?よくて、半々になるのでは・・・。
何より、終盤まで精神・体力も限界まで戦ったいる状態で元気な一個団体が乱入すれば独占することは決して難しいわけではないだろう・・・。
「シプトは今の話をよく考えて団長に報告してくれ、私達は結論が出るまでここで持ちこたえてみよう。」
父は斧槍を構えなおして、メンバーを引き連れてロートナイトを追っていくのだった。
ロードナイトは囲みを突破しており、騎馬の助走を十分に発揮して縦横無尽に戦場を駆けていた。
前線で迎撃を敢行しているがやはりその突破力は協力で最大の防御力を誇るヒースクリフでもロードナイトの一撃を完全に止める事は出来ないでいた。
リュートは血盟騎士団の壁役の男性にターゲットされていることを確認するや否や、ランスの一撃を槍のソードスキルである単発突き”チャージ”にて相殺に入った。
やはり騎馬の突破力の前に勢いは殺すことはできなかったが幾分が突破力は削げ、壁役のラウンドシールドで動きを止める事に成功した。
一気に囲みを作り、騎馬のダッシュを妨害、さらに盾装備の者たちで至近距離まで詰め寄った。
ランスは柄が長いため、逆に距離は詰めた方が一撃を受けても必殺の間合いではない。
盾で体を覆えば致命傷は避けられるとアスナは判断し、部下に命じていた。
彼女の見事な指揮によりロードナイトはとうとう3段目のHPを削り、ラスト一本にまで迫った。
攻略組プレイヤーは怒号をさらに上げて畳みかけをはかった。
私はHPがイエローになっていたのでメンバー全員が一度後退し、回復にあたっていた。
ほかのメンバーはまだHPには余力があり、荒れた息を整えていた。
ポーションを口にくわえながらシプトの姿を追っていた、ヒースクリフに自分なりの答をぶつけているように伺える。
彼の行動を考えれば、おそらく経験値もコルもラストアタックよりも攻略を優先するだろう。
それなりに非難はするだろうがアスナに判断を委ねるように思えた。
神聖剣のヒースクリフか・・・。
彼はこのゲームで初めてユニークスキルの存在を確認したプレイヤーであり、血盟騎士団を発足した団長。
さらに言えばあの地下の存在を私より先に見つけ、レベリングをしていた不思議な存在・・・。
「神の聖剣か・・・。」ぽつりとつぶやいたところでクラインがイエローに陥ったのでエギルと共に後陣へ待避してきた。
「リュート!やべえぜ、やっこさん両手剣になってからダメージ量があがってスイッチが追いつかなくなってきたぞ。」
「わかった、クラインさんとエギルさんは回復をして下さい!
フレアさん、クレアさん準備でき次第私に続いて下さい!」
私はロードナイトに一気に詰め寄った。
初めは壁役が最低六名で固めていたのに今は三名までに減っており後続のアタック役にも被害が出ていた。
回復に一度下がるが囲みが不充分により間をくぐり抜けたロードナイトは白銀の両手剣を馬上から無駄のない動作で振り払っていた。
アレフォーマを長く持ち、両手と突進と遠心力で持って白銀の一撃を弾き飛ばした。
ロードナイトはその場で馬が止まり、体勢の取り直しをしている。
私もアレフォーマははじき返されたが馬上よりも下半身が安定しているので弾き飛ばされた向きから体を捻って再度遠心力を作り出して胴斬りを与えた。
そのままソードスキルである2連撃重攻撃である《バイスクロス》にて袈裟斬りと逆袈裟斬りを使用、2撃目を両手剣で受け止めたロードナイトは騎馬を突撃させ体当たり気味に囲みからくぐり抜けた。
そして白銀の両手剣を馬上から無駄のない動作で私の背後より横薙ぎの一撃を見舞っていた。
今度はソードスキルを使用しているらしく橙を帯びた剣がエフェクトを散らしながら迫ってくる!
が、その一撃は第三者の手により弾かれた。ヒースクリフである、彼のスクトゥムが必殺のタイミングとなっていた一撃をとめてくれていた。
私はすぐさま体を捻って発動直後の硬直を狙って6連続重攻撃のスイングブラストを使用した、このソードスキルは特殊で体術と併せて熟練度を上げることで会得可能なスキル、突進からの突き上げ、切り下ろし、横薙ぎ、唐竹割、刺突から回し蹴りにより吹き飛ばしか可能である。
ここで騎馬のHPがなくなってしまい、徒歩となった。ロードナイトのHPは残り一段の半分を割り込みレッドラインとなる。回し蹴りを受けてボス出現の壁際まで吹き飛んだボスはゆっくりと立ち上がり、両手剣を捨てて玉座にあった一対の剣と盾を装備した。
「リュート君、いけるかね?」ヒースクリフは横に立ち共闘体勢をとる。
「はい、みんなの回復時間位は大丈夫。」
周りはほぼHPはイエローまで落ちており、回復に徹しなければいけない状況だった。
シプトと僅かしか会話していなかったが、その間に随分ひどくやられていたようだ。
「よし、私の防御力とリュート君の攻撃力なら先ほどまでのボスの力量なら二人で上回れる。」
「防御は任せましたよ、団長殿!」
この合図で持って二人がかりでロードナイトに走りよろうとした瞬間!
突然前方よりゲートが出現し、プレイヤーが現れだしたのだ。
「聖竜連合!どうしてここに・・・。」
回復を終えたフレアが横につめてきており、口にした。
「情報どおりか、しかしどういう事なんだ・・・。」
となりにいたヒースクリフに問いかける。
「回廊結晶だ、聞いたことはあるが手に入れていたとは・・・。」
「回廊結晶?」
「回廊結晶は数十人単位での移動が可能なクリスタルで出口をあらかじめ設定すればどこへでも転移できるが・・・。
まさかボス部屋を出口に設定するとは、考えなかったな。」
聖竜連合のメンバーは12名、入ってくるなりボスを囲み一斉にソードスキルを繰り出していく。
残りゲージは少ないので戦略も何もいらない、各々が最大火力のソードスキルを放ちボスのゲージの灯火を消し去りに図っていた。
シプト、アスナやクライン達も割って入ろうとしているが旨く囲んでいて無理にソードスキルを放てば彼らに当たる可能性があり無茶はできない・・・。
(考え至らなかったわけではない、回廊結晶は50層以上にならないと出現しないはず・・・。
私にも認知できていない、イレギュラーが発生しているな・・・。)
ヒースクリフ、いや茅場は心の中でつぶやいた。
ゲーム開始以降にこの世界にデスゲームと認知していながらも入り込んだプレイヤーは数人いるのは茅場は認知はしていた。
しかし自信のカーディナルシステムには絶対の信頼を置いている。
そのプレイヤーが例え私並の技術者であったとしてもダミープログラムと独自言語。
そしてカーディナルのレイドメンテナンスシステムにより不正書き込みは即座に修正される筈である。
それを免れてシステムのプレイヤー情報を改ざん、アイテムやスキルの不正入手はあってはならない。
ヒースクリフは一人険しい顔をして、事態を整理していた。
ソードスキルの一斉砲火を終えた聖竜連合は驚くべき光景を見た。
ロードナイトは盾を使用していたのは認知していたが囲み背後からのソードスキルが命中していたのにも関わらずHPが減っていない・・・。
「なっ!どういう・・・。」
それ以上の言葉よりも早くロードナイトのソードスキル、範囲攻撃で聖竜連合は吹き飛ばされた。
そして一人にターゲットをおくと硬直が解けるやジャンプから追撃に入った。
そのプレイヤーは転倒状態になっており起きあがれていない、いやもしかしたら一時行動不能に陥っている可能性もある。
空中からの切り下ろしをもろに受けたプレイヤーは一気にレッドゾーンまで落ち込みさらに貫通継続ダメージを受け、死へと向かっていた。
シプトは即座に反応しその剣を鞘部分から斬り上げてプレイヤーから剣を抜き取ると《バーチカル》にてダメージを与える。
わずかだがダメージを与えた事で無敵状態ではないことが伺える、なぜ先ほどはダメージが通らなかったのかがまだ不明であった。
「シプト下がって!」アスナも追いすがりロードナイトの《スラント》を《リニアー》ではじいて一緒にバックススップし、後に続いた聖竜連合とクラインとエギルによりスイッチされた。
不純な動機があるが精神力と体力に余力がある聖竜連合が加わった事により先頭はまた持ち直した。
今はこの事態を避難することはできない。私は再度己に力を入れて前線に走るのだった。
再び囲み込みに成功した攻略組だが、ロードナイトの防御の前に被害に対して与えるダメージが対した事がなくジリ貧となっていた。
ヒースクリフも流石に厳しい戦いで最善で最強の盾を用いてターゲットを撮り続け、サイドからの攻撃を促す。
私は今、再び一度離れた場所から観察を続けた。
闇雲な攻撃ではなくいかにダメージを与えられるのか思案を続ける。
その中で一つの可能性にたどり着き、その一撃に賭けることにした。
「茅場君なら必ず突破口は作っている!」
ダッシュの構えをとりソードスキルの準備をしてその時を待つのだった。
「盾を構えたら、ダメージは通らないよ!変わりに掲げ終わってから硬直がある!
みんな今は攻めないでスキルを立ち上げて!」
すぐにMOBのAIを見切るシプトは号令し対処に出た。
アスナは即座に自分の間合いまで切り込んで構えに入る。
クラインとエギルも続き、フレアとクレアはスイッチと第二波の準備にかかった。
そして盾を下ろした瞬間を狙い一斉砲火にて一気に勝負にでるがそれでもボスのHP全害には至らない。
保険であったフレアとクレアの攻撃でも減らし切れなかった。
ロードナイトは再び範囲攻撃をにて周囲を払いのけ、またダメージの大きい者から止めを刺しに入った。
次はダッシュからの突き上げにて聖竜連合の一名に入り、破散した。
ヒースクリフも追いすがり守りに入ったが神聖剣も万能ではない、届くことはなかった。
「うおおお!」
聖竜連合のフォローには遅れた満を持してボスの懐に入り込み重攻撃単発の《ウォーパルストライク》をぶちかました。斧槍でこのスキルは一撃のダメージ量は一番多く、部位欠損を比較的起こしやすいスキルである。
つかながった首なら再び飛ばすことが出来るのではないかと結論づけた私はこのタイミングを伺っていたのだ。
予想通りその首は宙を舞い、再びディランロードと名を変えていた。
直後アスナの高速技により、攻略完了となった・・・。
数々の問題を残して・・・。
次回は聖竜連合との軋轢を書いてみます。