足痛い、ブランクきつい!
更新遅れ気味ですみません。
青竜連合の現在のホームは28層のウーラスに構えていた。
狼ヶ原の名前の通り、当時はレベルの高い狼型のmobが多くPOPする名所だった。
ここにギルドホームに選んだのは血盟騎士団がその一層下でギルドホームを手にしたからだ。
私ことリュートとクレアとフレアで四十層攻略を妨害した黒幕と対峙するべく、血盟騎士団よりも早く向かうこととした。大部隊である血盟騎士団は準備がかかる、その間に失われる情報を掬い取るべく少数で小回りの効く我が月夜の黒猫団が先陣を切っているのである。
ギルドホームの扉は誰でも入れるようにしているのか、開け放たれている。
しかしながらその中から声は一切しなかった、聖竜連合という大ギルドにも関わらずである。
その異常事態を肌で感じ取った我らは緊迫感をそのままに滑るように入り込み、様子を伺った。
玄関口を抜けるとすぐに中央ホールがあり、その入り口にはあのミズが退屈仕切った目でこちらをゆっくり視認した。彼は相変わらず飄々とした物腰で意図がまるで読めない、ただ戦闘意欲のみが突出していてその他がかき消えているいうにも感じる。
「よお、来ると思っていたぜえ。さあ!やろうか。」
背中から大剣を抜き放ち右手に持った、相変わらず構えは無くだらりと持つ姿はまるで好きだらけであるがあの男に関しては全く意味がないのであった。
型破り、規格外、破天荒とは彼の代名詞であることが一度の手合わせで理解していた。
「待っていた?どういうことだ。ここで待っていてもメリットがどこにある?」
リュートは問いかけるが、ミズは一切お構いなしの様子で一度の大剣を右肩にかけると一気に距離を詰める。
リュートも即座に対応、最大リーチの突きを繰り出して迎撃に入った。ミズは穂先を見極めて大剣でわずかに点をずらしてさらに懐に潜り込んだ。
私はアレフォーマを引くことなく、右の回し蹴りにて対応して奴の先手を封じにかかった。
ミズはその足蹴りを攻撃対象に変え、大剣を振り下ろす。
焦った私は軸足を折りたたんで右足を地面に叩きつけるようにして回避した。すぐさま右足を軸にして後ろに跳ねて距離をとった。
すぐさま懐から短剣を投げつけダッシュする、ミズはよけることもしない。圏内である以上ダメージは通らないからだ、威力もない短剣はミズに触れることもなく床に落ちる。
牽制程度にもならない攻撃にミズは不敵に笑みを送った。
やはりこの男の強さは何よりも経験値の高さからくる重みがある。まだ二十も満たない人間がその領域に到達するにはデスゲームさながらの命のやり取りを現実で起こっていたのではないかとさえ感じた。
距離を詰めた私は槍のリーチではなく手数を選択し石突と斧部との波状攻撃を仕掛けた。
ミズはその高速横薙ぎを次々と叩き落として行く、普通のプレイヤーはこの攻撃を嫌がり、バックステップで逃げたりするのだが彼は長剣と小手で捌いているのだ。
さらに攻撃まで仕掛けてくる、私はその攻撃をサイドステップのみで回避する。普段は危険だがここは圏内、とりあえず命は落とさないので守りに入れば攻撃に転じられなくなると感じた私は攻め続ける戦略に出た。
「おっさん!なかなか相変わらず面白い動きするな。」
合間に刺突を行ってきたがそれを斧部で押さえ込んだ、鍔迫り合いに持ち込んでおいて力を逃しつつ石突でスイングし、一撃をこめかみに向けた。ミズはスウェイバックをしようとした所に石突を右足で蹴り込んで加速させヒットした。
強撃がヒットした為、紫電にひかる圏内犯罪防止コードが発生しバック音と共にミズは吹き飛んだ。
「ミズ、一言行っておくが私は他人におっさんと言われるのは大嫌いなんだ。
目上の人に対しての口の慎み方は配慮にいれてもらおうか。」
沈黙と共に起き上がったミズに不敵な笑みは無かった、無表情に近いが明らかに雰囲気がかわった。
「時間稼ぎと小手調べだけのつもりだったんだがなあ」長剣を一つ振ると、上段の構えをとった。
今まで構えの一つ取った事もないミズの始めての構えだ・・・。
彼のリアルでの試合を一度の見たことがある、守備などなく圧倒的な攻撃力のみが突出している異様な剣撃であった。対戦相手は攻撃をさせてくれず、無様に敗れて行く対戦者には憎しみが植え付けられたように舞台を去って行く姿が印象的だった。
一方的に強い勝負は時にその物を悪印象になる時がある、それはリアルもこのVRMMOでも同じことである。
彼はその上段の構えから一気に疾走した、私はそれに対してチャージを敢行した。
ソードスキルではなく、通常攻撃での攻撃だった。ミズがどのような変化のある攻撃を行うかわからない以上こちらもその変化に対応する必要がある。
ミズはまだ動かない、上段のまま距離を詰めている。私は穂先を喉元に決めて穿った。
もう衝突寸前なのにまだミズは動かない。
私の穂先が喉元を捉えたと思った、防止コードが働く当たりまで迫っていたにも関わらず。
私の穂先が当たる前に私への防止コードが働いていた、脳天にミズの長剣が強撃していたのだ。
私はダッシュとその衝撃でミズの体にぶつかった、穂先はいつの間になのか喉元まで迫っていたにも関わらず虚空を切り裂いたのみだった。
「おっさん、もう終わりか?」脳天の衝撃が強すぎるのか体がうまく動かせない。ミズはその巨躯から私の身体を片手で持ち上げ、長剣を私の喉元へ突きつける。
「おい、どうした?こんなもんか?」近づけすぎた長剣は圏内防止コードで止められているが、執拗に攻撃を繰り返して紫電が表示される。
リュートのあまりにも唐突の戦闘不能に身動きができなかった、自身の尻込み癖にはいつも後悔を産んできた。
私は遠野流の薙刀を物心がついた時から母から英才教育を受けており、自身の才能も恵まれている方で同世代においても前世代においても後れを取ることはなかった。
しかし母からはまだ皆伝を頂けずにいる、母によると私には皆伝には一つ足らない要素があると言われていて、リュートにはあり私にはないらしい。
私は一時期それがすごく疎ましく感じ、薙刀を捨てようとさえ思った。あの少しの間に修練したリュートに持っていて長年研鑽している私に足りない事が許せなかった。
SAOでリュートと再開した時、母が言う強さをここで見られると思い行動をともにした。
彼はデスゲームと理解した上でこのゲームに入るために関係者を説得して入り込み、自身のご子息を見つけ出し見守って行く事を重点にしてゲーム攻略を進めてきた。私にそんな意志力はあるだろうか?
私はこのデスゲームが始まった時、何もできず立ち尽くした挙句茅場さんを恨み、呪っただけだった。彼を見ていると、茅場さんすら救いの手を差し伸べようとさえ感じる。
私は、弱い・・・・。彼よりも能力があるのに、弱い・・・。
私は始めての自身の弱さに気付いた、あのミズはという規格外の男に真っ向から立ち向かうリュートに心から尊敬した。そしてその敬愛すべき者を蹂躙するミズを、私は倒す!
フレアは思考の整理が終わると、ミズに一直線に向かった。決心を決めた私の心は穏やかに、かつ能動的な思考に変わっていた。
ミズは突然動き出したプレイヤーに意識を切り替えた、リュートを放り出して私の方に身体を向けただけで構えはない。長剣はだらりと降ろされ、挑発のように私に攻撃を誘っていた。
ダッシュからサイドステップを組み合わせてタイミングと虚をつく足運びにて単調をさけ、ミズの左側の死角に滑り込むように動く。その運びに警戒しミズもサイドステップでその進行方向を塞ぎにかかるが、さらにその左側にステップしながら単発ソードスキルのスラントを繰り出した。
予想以上の動きをされたミズは手甲でガードを行うが、フレアの洗練された横薙ぎの一閃に防御は行えたが、体勢を崩しバックステップで距離をとった。
単発ソードスキルの硬直時間の短さでその行動の追走は容易であった、再び距離を詰めて次は通常攻撃にて遠野流の形式に持ち込んだ。
リュートは連続攻撃の多い型をこのんで学んでいたが、私は一撃の重みを重点においた型を好んで使用していた。
袈裟斬りから切り上げ、唐竹割り、平突きと渾身を込めて打ち出す。ミズもバックステップから体の体勢が整っていない事で回避ではなく、長剣での相殺で対応している。今なら彼の独特な攻撃はないと踏んだフレアは畳み掛けて行った。
「姉ちゃん、やるねえ!」ミズはまた笑みを作り出した。
私の剣を受けつつ、体勢を整えたミズは不敵な笑みを作り出した。おそらくこれは、すでに私の剣技を見切ったとでも言いたいのだろう・・・。
彼の強さは見切りの速さであると私は判断していた、先ほどのリュートとの戦いで見せたあの上段の構えは相手の攻撃を完全に見切った時でしか使用しないだろう。
相手の攻撃を見切り、視認情報の外側から打ち下ろされる渾身の一撃。いかに圏内コードで守られていても、その衝撃だけで相手の意識を奪う事からそう判断した。
私は薙刀を横一文字に構え、彼の出方を見ることにした。
遠野流の見の構え、風返し・・・。先制攻撃に対する迎撃の構え、これで彼の動きを私が見切る!
ミズはつまらなさそうに、まるで物見遊山をしているかのように歩き出し私の間合いに入ってくる。
私はためらわず、間合いに入った瞬間に横一文字に持った薙刀を最大リーチにして切りかかった。それを手甲でさばいてさらに内部へ入り込む、バックステップをしつつ返しの石突で顎を突き上げるように狙うが、ミズはバック転をして回避し頭足反対状態からの切り上げを行ってきた。
それを薙刀側で受け止め、力づくで押し切った。中空状態のミズは踏ん張りが効かない、ここはチャンスと判断したのだ。
彼は飛ばされた反動を利用して左手で地を押して後方へ飛ぶと壁に着地してジャンプしてみせた。すぐさま間合いを詰められた私は、虚を突かれてしまい防戦必死となった。
ミズの攻撃はまるで予想がつかない、自己流の動きに加えて剣道の技術から薙刀や体術にも通じる身体さばきをする。その上に初動が見切れないので体感速度が実際より早い。
ソードスキルは一切使用しないのでこちらが使用すれば回避されるリスクが大きい。先ほどは不意をつけたのでソードスキルを使用したが、対峙するとそうはいかない。
一般の対人戦ではソードスキルでソードスキルを相殺してのパターンが多いが上級者になるとソードスキルの動きを先読みして回避し、相手の硬直時間を狙う。
例え単発スキルでも僅かな硬直時間があるので油断はできない。
彼の一撃一撃は重く受け止めると体まで持って行かれそうになる、徐々に体勢は不利になりついていけなくなり、ついには彼の切り上げにより薙刀を落としてしまった。
完敗だった、私から有利に仕掛けておきながら最後には力負けした。私は彼からの一撃を待ったがそれはやって来ない。彼は再びリュートにむかって歩き出した、私には眼中にないの事の現れだった。
「ま、待ちなさい!まだ•••」
「あんたは、強いがつまらねえよ。安定した強さだが、格上には何回やっても勝てない。」
「そ、それでも戦いなさい!!あなたにこれ以上、リュートと戦わせない!」
私はメニューから武器をクイックチェンジで変更、斧槍を取り出して再度闘志を燃やした。
「姉ちゃん、無駄だよ」
「リュートを狙う限り、私は諦めない!」
私は大振りから遠心力を加える、ミズは受けずに後ろに飛んだ。さらに追いすがって上段からの一撃を与えるが、剣先で斧部に触れると軌道を変えて回避する。
重量武器を空振りさせられて、ミズはすかさずカウンターを入れるべく最小の動作で横薙ぎの一撃の動作に入っていた。
私は武器を放棄して回避に入ったが彼もおってきていた、とてもかわせる剣速ではない。私は衝撃に耐えようと身構えたがその衝撃は来なかった。
私の前に頼もしい人影が、またも守ってくれたのだ。
現実でも、ここでもその生き様は変わらずにみんなを照らしてくれている。
自称おじさんはまだその決意を揺るがすことなく戦い続けているのだった。
「ようやく起きてくれたか?さあ続きをしようぜ!」
ミズは、リュートに向けて歩き出した。私と交えた時よりも気迫を醸し出し、疲労感は無かった。
対するリュートは疲労困憊の状態で、呼吸も通常よりも変則的である。明らかに打ち勝てる要素はないように思えるが、彼の目だけは強い光を宿していた。
一通り、呼吸を整え終えると彼は一言発する。
「ミズ、お前は強い。俺たちは現実なら一生かかっても勝てないだろうな。
しかし俺たちが今ここで生きている世界では、お前は完璧では行かないのだよ。それを彼に変わって証明してみようっと。」
リュートは斧槍を横一文字に構え、宣言した。
彼の真意は伝わらない、だけどこの決着は容易な結末に向かわないことだけは理解して行くのであった。
次も少し遅れますが、見守ってくださいませ。