ソードアートオンライン ~ 決意の連弾   作:Edward

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混戦はまだ続きます。
私は混乱しています。


顕現

「俺が?完璧だって!」

彼は長剣を肩に担ぎ私に迫った、明らかに意外な行動である。

彼は今まで掴み所は一切なく常に異常な戦闘意欲のみが突出した、異端児というイメージでしかなかったがここで初めてミズの本心の行動が現れたと思われた。

彼は一切の無駄のない突きを繰り出した。それはこの世界においてのソードスキル、バーチカルと判定され橙のエフェクトライトが発光し、私に迫った。

 

「あっ!」ここで声を出したのはクレアだった。

ここまで圏内とあって手出ししていなかった彼女だが、ここにきてミズの失策につい声が出たのだ。

いくら強者のソードスキルでも予備動作のわかる攻撃など、リュートでも回避と反撃方法など思いついているから声に出たのだ。

リュートは案の定、バーチカルに対する反撃体勢をとり突きの一撃を返し技を敢行した。

それは我が遠野流派がもっとも得意とする、相手の力を倍返しにして叩き込む合気道と複合した基本であり極意としている返し技である。

 

風車・・・、それは相手の刺突を柄で受けて穂先で返す単純にして高度な返し技である。

これをリュートは試合中でも師範の攻撃にでも応用し実戦で使う程の度量のある男であった。ほとんど失敗に終わっていたのはリュートだからだろう・・・。

ミズにその初歩であり極意である薙刀術が見事に決まったのだ。彼はリアルでは脳内判断は早いのだが体が追いついてなかったのだろう、ここにきてリュートは脳内判断と動作が緻密になったことで私やフレアを凌駕する動きを見せつつあった。

彼は館の壁面にまで吹き飛ばされた、自身さえ吹き飛ばされたことに驚いている様子である。

 

 

 

 

リュートは一度斧槍を一回転させてその手応えを認識した、やはり彼は・・・。

私はその結論に理解し、彼に投げかける。

 

「ミズようやくだが君の事が剣を交えてわかってきたよ、君は狂気ではないんだね。

安心したよ・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「自分が完璧ではないと自覚しているのだろう、それは自身にはまだ到達していない次元があると認識しているからだ。多分それは戦闘意欲では得る物ではないぞ。」

「・・・・・・・・・、うるせえよ。」

「?」

「うるせえよ!それが何だ!それで俺は倒せるのか!俺にその一撃を入れるまでお前は何回死んでいたんだ!!」

 

ミズは初めて構えた、左手を突き出して長剣を上段に構えた独特なスタイル。先ほどリュートに視界認識以外の空間から与えた不意の一撃を与えたあの攻撃の最終形なのだろう、彼は今までにない闘気を放っていた。

 

 

 

 

俺は動揺の極地だった、口数も少なくいきなり戦闘意欲全開で迫られた連中は俺に完膚なきまで叩きのめされて呪いの言葉を吐くだけだった。

それが、この男だけは最後まで俺に食らいつき俺の心情を捉えようと画策するのだ。

最初にリアルで俺の情報を知りながらも食らいつく、この中年に俺はまた再戦出来ることを望んだ。

そして今回、楽しみにしていた再戦は俺の心情をことごとく看破していくのだ。

この数カ月に何があった?以前のこいつは俺と同じ孤高の男だったはずなのに・・・。

 

気に入らない、この上なく気に入らなかった。無性にこの衝動をこの男にぶつけたいと思った。

だからこそ俺は自身の最大攻撃の構えを取った。上段の構えだが、直立ではなく下半身を沈めて左足が後ろで蹴る姿勢だ。

飛燕、俺は名付けたが誰にも語ることはない。孤高の奥義・・・。

先ほどの上段は待ち構え体勢からの飛燕だが、これは先手からの必殺の一撃を叩き込むまさに瞬殺の一撃だ・・・。

できれば圏外でやってやりたかったが仕方がない、ここで消化不良になるよりはマシだ。

 

 

 

 

「いくぞ!!」ミズは上段のまま始動となる初速を滑らかに動き出した、私は斧槍を最大リーチに持ち替えて迎撃に入った。

どのような変則攻撃なのか先ほどの受けても見切れていなかった。突然視界の認識外へ飛ばれたのだ、自身では見切るのはほぼ不可能だろう。

再びその恐怖が襲ってくる、私は必死に全ての感覚を澄まして対応をした。

たとえ圏内で死ななくても、ここで完敗をしてしまうと今後ミズに対して止める手段が自身で無くしてしまうことになる。それほど植え付けられたイメージは人に制約を与えてしまうのだ。

 

「!!」襲ってきたミズは突然、側面からやってきた者に勢いのある蹴りを当てられて再び側面に激突した。

「ミズよう、さっきから散々メッセージ送っていたろ。無視するたあいい心構えじゃねえか。」

突然乱入した女性は荒々しい態度でミズに吐き捨てた。

黒いレザーアーマーに、小さいラウンドシールドをつけているが武器は持っていない。

各関節部を保護する装備をしており一見は徒手系のスキルと思わせるが、本体は全く違うところにあるのだろう。ただ一つ言えるのはこの女性はミズ以上の厄介なプレイヤーとだけは認識した。禍々しく、妖しく、そして言いようのない恐怖を肌で感じた。

 

 

「お前でも邪魔するなら殺すぞ!!」

「おいおい、邪魔をしておるのはお前だよ。足止めしろって言ったじゃねーか?

だれがガチでやりあえっつたかよお。」

手をひらひらさせてミズの殺気を気にもせずに話し合ている。

 

「何者だ?」

「あん?」

リュートは構えを解くことはなく、新たに乱入した小柄なプレイヤーに語りかけた。

「あなたは一体・・・。」

「そりゃあ、敵味方で分類すりゃあ敵側になるがそれがどうかしたか?」

「ここは青竜連合のギルドホームだ、なぜメンバーでないお前たちが占拠できているんだ?」

「あ?簡単なことだよ、やつらからここを奪ってやったんだ。ホームだけじゃないぜ、コルからアイテムまで全部もらってやった。」

「な!なんだって!!」

ギルドの所有する莫大な資産を奪う事なんて可能なのだろうか?ギルドの資産運用は基本はギルドマスターのみである。その内資産の扱える制限を設けて承認のうけたプレイヤーしか資産の入金、出金はできない。

大きなギルドではその不正出金を防止するため、管理側に当たる人間は極力外に出ることを控えているし、ギルドマスター自身の不正を防止する策として複数の承認がなければ出金できないようにもできる。

少数ギルドならそんなシステムを採用していないので強奪は可能だが、攻略組クラスのギルドの資産を丸ごと奪うのは可能なんだろうか?リュートはそのあたりのプログラムの抜け道を思案したことがあったがシステムは完璧で無血で奪うことは不可能と判断した。

 

なのに彼らはそれを可能としたのだ。何らかの策を用いてボス攻略に不正な割り込みを仕掛け、プレイヤーたちの言動を縛って操った。そして資産の乗っ取り・・・。

 

「難しいこと考えているんじゃねーか?あんたは賢いが、人の昏い部分はまるで読み取れていないな。だからこんな自体を招いたんじゃねーか。」

「・・・・・・。」自身の心拍数が一気に跳ね上がったのを感じたこいつは・・・。

 

「おいおい、賢いあんたなら俺の言っていることはわかってるだろ。大島さん。」

「!!」

「あんたが、茅場先生の心の闇を捉え切っていなかったからこんな事態になったんだぜ。どんな経緯でここに来ているのかはわからないが、少しは自分の心の闇も直視しないとつぶれるぜ。」

 

私は一昔前のゲーマーなら私の名前くらいは知っている人もいるかもしれない、ゲーム雑誌の取材も何度となく受けていたし茅場君に会社を任せた時にもニュースになったが私は顔を世間に出したことはほとんどない。それを私の顔を見て名前を判断するなんて、なんてプレイヤーだ。

 

戦慄を隠しきれない私は、彼女のそのあとの言動に注目がいく・・・。

「おっと、こんなことをしている暇はないんだった、ミズ!もう撤退だ、ここにいてもメリットがない。おそらくこいつら先遣隊で本体がそろそろやってくるだろう。」

彼女は懐から、クリスタルを取り出して撤退の準備にはいる。

 

私は即座に飛び出した、彼女たちをここから逃すわけにはいかない。斧槍を最大リーチでなぎ払った。

その場にいたはずの彼女は空中に飛び上がり、私の顎に見事に蹴りを食らわして見せた。

なんという軽業な芸当で有ることか、ある種の天才的な一面を見せた彼女はしたり顔で答えて見せた。

「動揺が見え見えだよ、そんなんじゃあ俺達を捉えることができないね。

それに安心していいよ、次の標的はラフィンコフィンだからせいぜい潰し合うことを願っててくれよ。」

「ま、まて!!あなた達は何がしたいんだ?趣旨が全く見えない、何を考えている!」

私はよろよろと起き上がると彼女を見据えた、目の色は昏く輝きその漆黒は全てをのみ混んでしまうのではと思ってしまう。

その瞳は全く悪びれた様子もなく、ただ悪戯をする子供と一緒である。が彼女の場合は規模が違い過ぎのであろう、見境のない好奇心・・・。私はそう感じ取った。

 

「かの茅場先生は言っていたっけ?これはゲームであって遊びではない、ってな。

でもさあ、やっぱりゲームである以上遊ばないとそれはゲームではないぜえ。

ゲームでできることはやっていいことだと明言したPOHとやらに賛辞と惨事を送ってやろうと計画していたところなんだ。

いやあ、彼はすばらしい!あって一通り意見を交換したらどちらがこのゲームの裏技をしっているのか殺しあってみたいなあ。」

彼女のセリフを生きている内に、彼女は悪魔に魅入られているとしか思えない言動をいとも簡単に口にしていていたのだ。

フレアはあまりの恐ろしさに、自身の腕を掴んでうずくまってしまった。

クレアは包むように抱きしめてケアに当たった。

 

「あなた達のゲームに対する見解はわかった、しかしここでのゲームオーバーは死に直結する・・・。それでもやりたいようにすることがあなた達のやり方なら、止めるのが私の役目だ。

例え茅場君が君たちを止めないのなら、私が止めてみせる!それが私の償いと義務だ!!」

斧槍に力が自然と入る、非力な私だがここで彼らを少しでも思いとどめないと今後ゲーム攻略はとんでもない方向へ向かうような気がしてならない。

茅場君、君はここまで昏い人間の感情の人間を想定してゲームを作ったのか?

想定外なら私は君を・・・。

様々な感情が私の中で渦巻く、だが彼女の言うように私もその昏い感情と言う物を意識はしていなかった。茅場君同様に私も責任があるということを認識した。

 

「っ!」彼女が突然のダッシュから右ストレートが飛んでくる、私は槍で払いのけようと払うが、ラウンドシールドで受け流し、右ストレートがバックナックルに変化して頬を打ち込まれた。もちろん保護されているのでダメージは通らない、衝撃のみが伝わってくる。

ミズの長剣程の衝撃はないので体勢を即座に取り戻すが、彼女の軽業に加えて手数の多さが恐ろしい。

ソードスキルにおいても体術のメリットは硬直時間がとても短いので連打をうけてしまう。基本体術は緊急事態用のスキル、もしくは硬直時間の合間に繰り出す補助として使用するケースが多いがここまで特化して使用するプレイヤーは初めて見た。

ダメージは少ないだろうがここまで手数を受ければ精神的に参ってしまう・・・。

 

右のバックナックルから左半身の当身、左のフック、右ストレートのスキル閃打を見事に決められてしまう。

私もここで打ち下ろしをするが、すでに間合いの外に逃げられてむなしく空を切った。

 

「おいおい、ミズがいうからどれほどの物かと思ったけど大した事ねーじゃねえか。

俺はミズのガテン系と違ってインテリ系なんだぜ。」

ミズは罰の悪い顔をしてその場にまだ座り込んでいる、彼らの上下関係はよくわからないが今はミズは静かにしており、手を出してくる様子はなかった。

 

反撃はここだと確信した、本当は彼らの口から聖竜連合を乗っ取った手口を知り得たいところであったが今は足留めして応援が駆けつける事にかけるしかなかった。

私はチャージにて一気に距離を詰めていく。

「ここでソードスキルか、もう考える余力もなくなったか。」

彼女はラウンドシールドで再び回避の体勢をとった、先ほどのように回避後に体術でタコ殴りにできると踏んであるからこそここでソードスキルは愚の骨頂と思っていた。

 

チャージはやはりラウンドシールで受け流され、右フックの構えをとった。

彼女はその右にソードスキルは曲打を使用しようとした時に動揺の表情が生まれた。

なぜならチャージの淡い青は消えることはなかった、さらにそのオーラは膨れ上がりリュート自身の体からも吹き上げている。

 

 

 

 

「なっ、なにい!!」

チャージの槍は止まるどころか、受け流しているシールドに力が入っていることに気づいた。

チャージは突撃の刺突攻撃、受け流したシールドに力が入るということはチャージのスキルが終わっていることになる。使用後の硬直が短い、いや体術より早い硬直解除と次弾発動はありえないはずだった。つまりそれは・・・。

 

ついにラウンドシールドを跳ね飛ばし、彼女に打ち下ろしの一撃がはいった。

凄まじい衝撃を受けた彼女は、頭を床に打ち付けてさらにバウンドする。

リュートはそのまま青いオーラを見にまとわせており、恐ろしく早い連撃を与えていく。

フレアはその動きが遠野流の連撃であることを認識した、しかしソードスキルでその連続技は存在しないはずである。一体リュートに何が起こっているのだろうか、検討もつかずその美しい連続に目も心も奪われていく。

「はあああ!」リュートが刺突の一閃を振り抜いた時、彼女は壁に吹き飛ばされた。

砂埃が舞う中、リュートは激しく息を切らし槍に持たれて転倒を免れていた。

「す、凄い・・・。」クレアはただ一言つぶやき、フレアは無言で頷いた。

 

壁面では彼女を抱いてミズが立っていた、彼女と思われていた人物はウイッグをついており、衝撃で外れていた。ミステリアスな女性ではなく端正な顔を持つ男性であったのだ。

砂埃が全て吹き飛んだ時、ミズの後ろにはボス攻略の時にみた集団転移のゲートが空いており逃げる準備は完了していた。

「ここは引かせてもらう、しばらくはお前達に会う気はないが必ず決着はつけさせてもらう・・・。相棒の名前はサワだ。打ち勝ったお前には言っておくが、俺たちを捜索はしないことだ。」

ミズはその転移空間に入ると同時にゲートは光の彼方に消えていくのであった。

 

結局私たちは真相を掴むことはできず、黒幕を捉えることもできず、深い心の闇を垣間見てしまうだけになってしまったのだった。

奇しくもこの後間も無く血盟騎士団がこの場に駆け込み、釈明をすることなったのだった。




聖竜連合を滅亡に追いやった詳しい説明は今後の展開時に順次説明して行きます。
とうとうオリジナルの流れを壊してしまいました。
今後で言えば、幻の復習者とかどう影響してしまうのか・・・。
まだ、構想も考えていませんのでゾッとしてしまいます。
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