相も変わらず、強引な設定で申し訳ありません。
世間ではゴールデンウイークと呼ばれる頃だろう、いつも行事でこの頃は樫原に帰って母さんの柏餅を食べながら直徒と庭で鯉のぼりをみていた事を思い出す。
残念ながら現在は茅場君の作ったデスゲームでクリスマス、年末と年始、節分、桃の節句に続いてデールデンウイークまで奪わっている・・・、一万人のプレイヤーの生殺与奪の権利を持ち、若者は進級や卒業、就職にも影響を及ぼしている。
私には自分の夢の為に一万人の人生を狂わせる事ができるかというとNOである、おそらくこのアインクラッドの全住民に質問しても一人として実行する者はいないであろう。私も凡庸な人間である・・・。
そんな凡庸な人間の言葉を茅場君は受け止めてくれるのであろうか?私は攻略の最前線となっている27層の宿でアイテムの整理をおこないつつ考えていた。
この一か月は激動の日々であった、10層あたりであのキバオウ率いるアインクラッド解放隊とMMOトゥデイなる組織が合併しSAO内最大勢力のギルドとなった。今はアインクラッド解放軍とたいそうなギルド名になっているが私は心の内では”トンガリ頭関西隊”と訳している。
彼らは人海作戦ともいえるイベントの消化とボス攻略まで単独ギルドでの突破をし始め、聖竜連合や少数ギルドも横暴ともいえる攻略に憤慨したが4桁を超える構成員のギルドに物申したところで情報の開示もないまま単独ギルド攻略となっていくのだった。
その最中にヒースクリフさんがアインクラッド解放軍の派閥に不満を持つ者や聖竜連合の少数ギルドで甘んじた体制に不満を持つ者、ソロ活動に限界を感じた者を持ち前のカリスマ性でもって勧誘、引き抜きを水面下で行っていた。
彼はとうとう動きだしたのだ、あの強烈なカリスマ性を持つ彼が動き出せばトンガリ頭関西隊など邪魔な存在になるだろう・・・。
25層で悲劇が起きた、トンガリ頭関西隊がまたもや単独ギルドで攻略に望み壊滅に近い損失を出したのだ。ヒースクリフさんがキバオウにさんざん忠告を進言したらしいがあの馬鹿は調子に乗っていて一向に聞き入れなかったそうだ。その後はヒースクリフさんが結成した血盟騎士団と聖竜連合の二枚看板をメインとしたレイド構成が26層まで突破した。ヒースクリフさ
んのギルド登場がタイミングが絶妙だった、あれがなければ軍の縮小と共に攻略組の崩壊でクリアは限りなく暗闇の果てに追いやられていた事だと思う。
整理を終えて現在の状況を確認する、アトリーターは最大にまで強化された。そろそろ別の武器を手に入れたい。それとソロ攻略が限界だ・・・、この層ではえげつないトラップが多々ありヒヤッとしてしまった。
私にあったパートナーが欲しい所だがめぼしい所はギルドに入っている、時期を誤ったかな?クライン君やヒースクリフさんにいまさらお願いするのはさすがのおじさんもちょっと気が引ける・・・。ベットで考えながら眠りに落ちてった・・・。
その日もいつものように27層攻略の為におじさんも迷宮区のマッピングを頑張っていた、いくつかやばいトレジャーボックスは目印をつけて後にする。私の技能の一つで、なぜか中身がやばそうなトレジャーボックスがわかるのだ。今までの経験もあるのだが、直感も機能する。リアルでもお歳暮とかお中元の中身をよく当てていたものだ!石鹸とかタオルとかは消費期限
がないから別の方によく転送した、間違えて送ってこられた人に送り返した妻のボケっぷりは面白かったが・・・。
今日も無事にマッピングを終えて攻略組の方々に転送する、マッピングを有償提供するのが多いらしいがそんな無粋な事をしたくない。一言もつけて送っておこう。
道具店にてごそごそ作業をしていると外から怒声が響いてくる、尋常ではない雰囲気だ。剣幕の中心をみると一人の男に対して数人のトンガリ頭関西隊のメンバーが絡んでいるようだった。圏内ならPKはないがあればボックスとかいうやつか?取り囲まれたら用意に出る事は出来ない、あれでは私刑に近いな・・・。
「さっさと帰れ!」とか「お前みたいな奴は前線にくる資格もない」とか「お前のせいだ!」とかかなりヒートアップしている。あいつそんな大層な事しそうな奴には見えないのだが・・・あっ!確かあいつは2層で武器破壊詐欺を働いた奴だ!
状況がわかった私は仲裁に入った、もしそうならおそらく囲まれた男はただではすまないだろう!
私は5人の中で一番喧騒が酷かった男に声をかけた。
「お話の所申し訳ないが、先ほどから話は聞いていた、しかしあの件は彼らも謝罪と賠償はしたんじゃなかったのか?もう半年近い話を蒸し返して一人の男を取り囲むなんていつらなんでもやりすぎではないのか?」
「うるせえ!こいつのせいで俺のダチが死んだんだ!!あの時はキバオウさんがそう決めてしまったから言えなかったがやっぱり納得いかねえ!」
「彼ももう金輪際あのような事をしないと当時約束していたし、あれ以降彼らは信頼の失墜でまともに攻略も商売もできていないんだ。充分罪を償っているじゃないか?それでも納得しないのか?」
「当たり前だ!俺がこの手で」武器に手をかける。
「やめろっ!それ以上先は言うなっ!」私の言葉に剣の柄に伸ばしていた手が止まる。そして
「彼に私刑をするのなら私がなんとしても妨害する!彼の身柄は私が責任を持って引き取ろう、彼がもし悪事を働けば私が賠償もするしプレイヤーが死ぬような事があれば私の手で彼を始末する。それで今回は手を引いてくれないか?」
「・・・・・・」紛糾していた男は黙って聞いてはいたが冷静ではない。顔は真っ赤になっており、私の話の穴を見つけているように思える。
「ネズハと貴様がグルじゃないのか!この場を引き上げる為の方便でしかない!」「そうだ」と取り巻きの男共も引く様子もなく根拠のない言動を口にしていく、ネズハも必死に関係がない事を言ってくれているがもう彼らには何も聞き入れないだろう。
この手の連中には話し合いでは納得はさせられない。やはりあの手でいくか、ため息混じりにアトリータを掲げて提案する。
「ならば、この世界にふさわしくデュエルで決着をつけようではないか!」
「なんだと!」
「私とデュエルして君が勝てば私とネズハ君の二人、君の提案する方法を聞き入れよう。私が勝てばこの件について追求をしない、ってのはどうだ?」
「・・・・・・いいだろう!受けてやる。」他のメンバーは不安そうにしているが当人はかなり気合が入った声で返してきた、腕には相当自身があるのだろう。
とめるネズハを宥めながらウインドーからデュエル申請を出して彼からの受諾を待つ、彼は浮かび上がったウインドーを操作して受諾された。しかしながら私はそのデュエル方法に見張ってしまった。「完全決着モード」と浮かんでいる、つまりHP全損まで勝負が続く死闘モードである。もし降参をタイミングを失えば死ぬ・・・。
辺りは騒然となった、デュエル表示は可視化されていてだれでも目にできる。その表示が完全決着モードとなればなおの事であった。
対戦相手の彼は笑みを浮かべている。彼の意図を考えるとこれは死闘というより心理戦だと分析する、いわゆるキチンレースだ。
もし私の方が上手で彼をHPレッドまで追い込んだ場合、私は躊躇してしまうだろうそこに付け入る。もしくは彼の方が上手である場合、私がどこかで降参を宣言すると思っているのだ。私はソロプレイヤーだからもし殺されても非難する所はないがもし私が彼を殺せば、ギルドに所属している以上非難が出るのは明白。お互いに何処で精神的に優位に立って、戦況を進めるのが鍵となった、しかし私は負けるわけにはいかない。ネズハ君の運命も背負っているのだ・・・。
カウントが一桁に入った、彼の意図を知った私はメニュウインドーでアイテムの順番を再度確認する。これが死闘になった以上、全ての能力を活かす為に見直していく。そして0カウントを迎えた。
「しゃああ!」ダッシュより派生する片手用のスキル”ラウンドクロス”は下からの斬り上げから袈裟斬りを行う珍しいスキルだ、その割りに硬直が少なく、つなぎに使える。
迎撃の為、”スイングアッシュ”3連続の斬りつけと最後の突きが重攻撃のスキルを繰り出す。
突撃する片手剣スキルが俊敏値と合わさってなかなかに重い一撃になっていた、アトリータの斧槍の横一閃と一撃目が斬り上げが激突し、お互いのスキルを妨害しあう。
「っく!」突撃ではない私の方が押されてきていたこのままでは最悪私のスキルが止まり、彼の一撃が入る・・・。
彼も初撃の強みを見切っており、余裕の笑みを浮かべていた。彼の突撃をなんとかこらえ勢いが少しなくなったのを感じてからバックステップする、”スイングアッシュ”がキャンセルされ硬直時間が訪れる。
彼とは距離をもう少し距離をとりたかったが彼は俊敏優先系なのか”ラウンドクロス”の2撃目を叩き込むべく距離をつめていた。袈裟斬りが胸部に入り悪寒と倦怠感が襲う、HPをみるとやはり筋力優先でないのか思ったより減ってはいなかった。
キャンセルされた分硬直が先に解けたので体当たり気味に”チャージ”を使用、距離をとるためにも相手を吹っ飛ばした。これでHPで言えば私が有利になった。
そして左手に槍を杖みたいに床について右手でウインドーを操作し短剣を右手に装備、そのまま投剣を行う。飛ばされたところに短剣が腹部に入り驚愕していた。そこにアトリータを装備しなおし距離をつめていく。
「つまんねえ小細工を!」体勢を整えた彼は迎撃に入る、そこでダッシュからクイックチェンジ(武器装備変更、ウインドーにて省略設定)で別の槍を装備ジャベリンを装備。ダッシュ体勢から槍を投げつけた。
「なっ!」短剣と違い重量がある投槍はダメージが大きい、対処を間違えるとHPを持っていかれる。彼は剣で弾く選択を取った。弾いた瞬間私は眼前にまで走っていた、クイックチェンジで再度アトリータを装備し通常攻撃で胸部を貫いた。
「がっ!」彼は剣を落としてまるで吐血をするような仕草を取った、リアルでは胸部を貫かれたら本当に肺に溜まった血を吐くだろう。彼も頭によぎるものがあっての動作だろう。貫通継続ダメージが徐々にHPを奪う・・・。
「降参するか?死ぬぞ。」槍を持ち上げて足を軽く上げさせた、筋力重視なので相手の軽装な連中を持ち上げる事はなんてことはない。
「殺したいなら殺せばいい!俺から完全決着を提案したんだ、恨みはしないぜ!!」やはりこの男はこれを狙っていたか・・・。
「そうか、・・・なら遠慮はしない、死んでいけ!」抜き差しし、回転させてねじりこんで行く周囲からも悲鳴が聞こえだす。
たちまちHPはレッドを越していく笑みをこぼしていた彼もさすがに余裕をなくしていった、表情がこわばり私の顔色をみながら駆け引きを続ける。私は冷ややかに見つめかえて感情を読み取られないようにする。どちらが追い込んでいるのかわかったものではない、が・・・ついに彼がこの硬直状態から脱した。
「わ、わかった。俺が悪かった!だから・・・」
「降参しろ」前口上は油断を誘うものか、余裕がなかったのかは読み取れない。私も余裕をなくしている、降参してデュエル終了を促す。
「降参だ、リザイン!」と彼から槍が即座に抜け落ちウィナー表示がでた。
「ヒール!」彼に回復結晶を使って回復させた、彼は涙を流して安堵していた彼のHPがたちまち全快する。
「申し訳ない!」私は彼に深く頭を下げて謝罪の言葉を紡ぐ。
「いくらネズハ君を救うにしてもやり過ぎだった、君もネズハ君も可能性をなくすのは忍びないと思ったんだ。」
「可能性?」ネズハは近寄って来て尋ねた。
「許す事から始まる可能性がある事を知ってほしい。」二人の肩を掴んで言った。そして
「私が勝ったがネズハ君は私が責任を持って保護していくつもりだ、なのでこの場は治めてくださいませんか?」と彼に告げた。彼はまだショックを受けている様子だったが、了承してくれたのだった。
担がれるように引き上げていく彼らを見ながらネズハ君をみる。彼は呆然としていた。
「あっはっは!すまなかったな、助けるつもりが巻き込んだ見たいな感じになったな。」私の言葉に緊張の糸が解けたのか
「なんであんな事になったんですか!あなたのお陰で穏便どころが最大規模ギルドに狙われる羽目になるかも知れなったじゃないですか!!」
「まあまあ、でもどこかで自分の主張を言っておかないと未来も希望もない隠蔽生活が続いたわけだろ、結果はわからないが君にもなんらかの可能性が出てきたじゃないか」
「えっ!」ネズハはこの槍使いはそこまで考えていたのだろうか?と思案する、しかしとぼけた顔をしている今の彼からは意図は読めなかった。だがこの槍使いは見切っていたかのように真意を紡ぐ。
「ネズハ君、君達の話を聞いたときから会いたいと思っていたんだ。一度の失敗が何だ、振り払え!厳しいが皆に認めてもらってもう一度戦線を目指すんだ!私がサポートしていくから。」
「はいっ!!」彼の目には力が宿っていた。
確かにネズハ君達のした事は許せるものではない。だからこそ他のプレイヤー以上にこの攻略に貢献しないといけない。そしてその行動が認められた時、ネズハは大きく成長できる。私だけの役割が見出してきたような気がするのであった。
リュートはおじさんなんで反応速度も攻撃速度もありません。左利きを活かして右手が開いているときは闘いながらでもウインドー操作をして、トリッキーな攻撃を仕掛けています。訓練で投剣のみ右手でソードスキルが使用できるようになりましたが、そこまでどまりの予定です。
やはり最強決定戦はキリト君、アスナさん、ヒースクリフ殿でしのぎあって欲しいものです。・・・そういえば私の小説にキリト君全くでてこないですね・・・。