リュートさんはどのように彼らを再生させるのでしょうか?
そしてあの黒い二人組が登場です。
ネズハより”レジェンドブレイブス”のメンバーを確認した私はネズハ同様今後の再生の為一度会う事にした、やはり彼ら5人は2層の事件以降謝罪による武器の売却により中層ゾーンのプレイヤーよりも厳しい戦いを強いられていた。
一番の苦しみがプレイヤー間の交流が断絶している事だった。10層辺りまではベータテスターの事前情報が役に立ったが以降はプレイヤー間同士の交流による情報が需要となってくる、いちいち情報屋から有料な情報を入手していたらコルがとてもじゃないが足りなくなる。
いまだ精神的にダメージをうけており、誰一人自信を取り戻している者はいなかった。その日暮らしの戦闘で得たわずかなコルで細々とした生活を送っているようだったがネズハだけは鍛冶屋として生計を立て、彼らの復帰を期待してたみたいだが自身が先頭に立って先導するほどではなく日和見な生活をしていたのだった。
まずは彼らをどのように他のプレイヤーに認めてもらうように持っていくか試案する、謝罪と賠償はきちんとしているのだ卑屈になる必要はない、しかしそんな簡単に罪が雪がれるわけではないのは先刻どおり理解もしている。
私は中層ゾーンの内情にも詳しいエギルにおごりとの名目で酌み交わしていた、エギルもさすがに驚いていた。
「あんたはまたえらいもの抱え込んじまったな、噂は聞いていたぜ。その挙句軍のトップメンバーと公衆で完全決着やらかして殺害一歩手前まで及んだトリッキーな槍使いはやはりリュートだったのか、相変わらず無茶するぜ。」
「選んだの相手のほうだよ、初撃決着が常識のこの世界でまさかあんな強行策にでるのは想定外だった。それほど友人を偲ぶ思いが強かったんだな。」
「おいおい、関係ないリュートを殺しても友人は偲ばないだろう?」
「あ・・・。」グラスを持った手を止めて多少酔った頭に手をあてて笑ってしまった。
エギルはふっ、と笑ってグラスの酒を飲み干した、すぐさまリュートがバーボンのボトルを持ち琥珀色の液体を注いでくれる。リュートは面白い奴だ、彼のその行動をみて俺も中層ゾーンの育成をやってみようと心に決めたのだが黒鉄宮に放り込まれてもおかしくない連中にまで自分の懐に抱え込んでさらに前線復帰させるなんてまでは出来そうにない。
「エギルさんなら中層ゾーンに詳しいから彼らの使い道が浮かんでくるかと思ったんだが、甘かったかな?」
「・・・あの強化詐欺は有名な話だからなあ、ほとんどの連中は知っている話だし何されるかわからないこの世界で罪状を持ったら致命的だな。名前変更クエストで別人になった方が早いぞ」
「それじゃあ駄目なんだ、罪から逃れる行為はフェアじゃない。その強化詐欺を背負ってもなお認められる存在にしたいんだ。」私のグラスを持つ手に力がはいる。
「また面倒な話だな・・・しかし現実どうするつもりなんだ」エギルは氷をからから動かしてバーボンの濃度が落ちるのを待つ。
「ん~、そこが難しいんだよね。命を預かる戦闘系からの支援はまず無理だし、生産系ではかつての詐欺があるから駄目。あとは何ができるのかなあ。」
「確かにそうだなあ、命を預かったり物を預かるのは不審感を募らせる。」エギルは一気にバーボンを流し込んだ、喉に刺激を伴うアルコールはやはり心地よい。
「ん~と・・・!なあ、イベント代行なんてものはどうだ?」ポツリと私は提案した、続けてしゃべる。
「例えば、このクエストの報酬が欲しいが条件が整わないとかで参加しないイベントって結構あるじゃないか?それを代行する商売を始めさせるのはどうだろう、クエスト報酬を知っていて頼むわけだから詐欺はできないし、出来高払いならその場で物々交換になる。ネズハ君とあの5人で被らないようにスキルをあげていけばほとんどのイベントに参加できるし、彼らの強化にもなる。」エギルは驚く、確かにこの手段なら例え悪意を考え付いてもプレイヤーには被害は出ないし詐欺を働く余地はない。
アイテムの持ち逃げをしても報酬はくれないしこのアイテムが欲しいという前提なら別のアイテムだったと言い逃れもできない。
忠実に続けていけば信用回復になり、いつかは前線復帰する事も可能かもしれない。先ほどのデュエルでの対応といいリュートの発想力には驚かされる。
「よし!それで行こう・・・。でもう一つ本題、物は相談なんだがちょっとばかしコルを貸してください!」両手を合わせリュートはコルの融通の乞いだした。エギルはずるっと頬杖の手が滑り落ちる。
「やつらの武具が不安すぎてレベリングができないんだよ~♪エギル様~、お力を貸してよ~。」からみつくリュートを引き離しにかかるがぐにゃぐにゃしていてうまく引き剥がせない。
「わかったわかった!貸す、武器も格安で譲るからやめてくれ~!」おごりと聞いていたがいつの間にかたかりと化したリュートにエギルは後悔をする事になった。
19層の主街区のラーベルグで大量に発生したガーディアンは異物の駆除に遁走していた。一人のオレンジカーソル(犯罪者)のプレイヤーが入り込んだ為、あちこちでガーディアンがPOPしているのだ。その元凶たる人物は一体目のガーディアンを屠りつぶやく。
「何が恐ろしく強いだ・・・、装備が強いだけで身体能力はカスじゃねえか。」水野智英ことプレイヤー名”ミズ”ははき捨てた。長剣を振り払い、次のガーディアンを探している。一体倒してだけでLVアップ表示がしてファンファーレが響く。
「おおっ!カスモンスター倒すより能率がよさそうだな、ガーディアンなかなか経験値がいいじゃないか。この辺のガーディアン全部ぶっ殺せばとりあえず上の連中とハンデはなくなりそうだな・・・っと!」次のガーディアンの攻撃を避け次々と剣を振るっていく、彼の攻撃にソードスキルはなかった。
全て自分の身体能力に依存する通常攻撃だ、今の彼がガーディアンの一撃をまともに受ければ終わりだろう。ミズの攻撃も普通ならダメージを与えられていないはずだが、人体急所を的確に当てる事によりクリティカル判定になり少しづつだがガーディアンにダメージを与えている。何十回ともいえるクリティカル剣戟にてようやく一体を倒せるくらいまだLVが低いのだった、ミズは襲い掛かる何十体を相手に地道にダメージを与え続けていく。
しかし時間が経つにつれてLVがすさまじい勢いで上がって行き、ダメージを与える量が増えていくうち一体を倒す時間が短くなっていく。5時間も経った時点にてガーディアンはPOPしなくなり、カーソルがグリーン表示になった。
「ははっ!ガーディアン倒しきったらグリーンになるのか?面白しれえ!」ミズは狂った笑いをしながらゲームに興じていくのであった。
相棒の沢口雄太は、本日は解析をせず病院に訪れていた。今日はあの馬鹿がここにいてるとハッキングでわかっている。
ここに結城明日奈とかいうガキがいるらしいがそういつの見舞いに来ているらしい、このような大きな病院では来院者用のIDカードがないとエレベータにも入る事はできない。もちろん沢口は縁者でも知り合いでもない、入るために偽造カードを使用して内部に入る、面倒だが奴に威圧をかけるにはそれくらいの手間は必要だろう。
何食わぬ顔をしてエレベータに滑り込み奴がいるであろう結城明日奈の部屋をみつけ入る。
「誰だ!・・・どこのお嬢さんがわからないがここは今立ち入り禁止だよ。」激烈馬鹿が沢口をみるなり紳士ぶって退出を諭す。
「つれねえなあ、折角途中報告にここまできたのによお・・・。」と笑みをみせて答える。
「お前、男か!」そう、監視カメラがうじゃうじゃあるこの施設に何もせずに入るほうがどうかしてる。沢口は気に入らないが女性面してるから変装するなら性別も偽ったほうが効果的だ。
「忘れたのか?レクトの主任様、ナーブギアの解析は順調だぜ」
「き、貴様沢口か!なぜここが・・・。」相変わらず頭の回転が遅い男だ、答える気も起こらない。
結城明日奈と思われる女がナーブギアを被って横たわっている、起きていれば美少女あんだろうが何ヶ月も意識がない状態の患者は醜い。糞尿も垂れ流し、やせ衰えてみる影もない。まあ人間なんて糞袋だ、俺には興味はない。
それよりこの男は何をなっているのだ?その装置は臭気解析機だな。
「ふん、何やってんだお前・・・。意識のない女の匂いを解析するなんて、ロリコン変態か?」
「だ、黙れ!ナーブギアをどこにやった!!」病院にもかかわらず大声を張り上げる。
「ああ、あれは面白いから頂いた」
「なっ!」あまりの素直な回答に須郷も言葉がでてこない。
「しかし須郷さん、盗聴機と発信機を取り付けたのはいただけないな・・・。折角信用して昼夜も惜しんで解析したのにあんたの方が裏切るから報酬で頂いたんだぜ?解析データだけはここに来る前にメールで送っておいたよ。」
「俺は教えた覚えはないぞ。」
「あんた馬鹿だね。匿名で俺に持ち込んだあんたに尋ねてここに俺がいるという事はどういうことかわからないのか?」
「・・・・・・!」顔が真っ青になる。二歩三歩と後ずさり自分が設置した臭気解析のケーブルに足を引っ掛けて尻餅をついた。沢口は最大限の悪魔の笑みを作る、黒髪のロングのウイッグをつけ化粧を施した彼は美しい女性に変装しているがその姿は魔女であった。
「不法な取引だからな、盗聴機と発信機で掴んだ情報から時期をみてデータとナーブギアを奪いにくる腹積もりだったんだろ?なんで報酬は先にいただいておいたよ。」その言葉を聴いた須郷はあわてて端末からどこかにアクセスする、そして画面を確認した時全身が震えだした。端末が落ちて俺の足元まで転がってきた・・・、口座の残高表示があり0と表示されている。沢口は一円残らず頂いていた・・・。
「警察にはいってもいいがその時はお前の不正が全て明るみになる事を忘れるなよ、金以上に大事な物ってなんだかわかるだろう?」金は無くしても手に入れればいいが、情報は漏れれば人生が終わる・・・特に須郷のような奴は。
須郷は操り糸の切れたマリオネットのように頭をうな垂れていた、そして消え入るように語りかける。途中で足元にあった端末を踏み潰した。画面は割れていびつな表示をしている。
「俺にどうしろというんだ?報酬も得たし、弱みも握っている・・・。ここに危険を承知でここにきた理由は何だ?」
「はっ!まずはえらそうなお前に一泡食わせた顔を見にきた。そしてここからは俺の要求を聞いてもらう為だ。」須郷に顔に真近まで沢口は顔を持っていく、次は天使のような微笑を浮かべる。
「SAO内部情報を政府の連中は喉から手が出るほど欲しがっている、俺はやつらの欲しい情報のみを抽出して解析したデータを奴らに渡す。その上でパイプが欲しい、あんたの会社はアーガスのSAOサーバーを管理しているのだろう?俺を雇って奴らと接触する機会を作れ。」なお笑顔で伝える、だが笑みはもう卑しいものにかわっている。
「な、何でそんな事を・・・。」
「それを教える必要はないな、お前はこの条件を飲むしかないぜ」と言うと再び糸がきれたようにうな垂れた。この馬鹿はいつか大ポカをやって最後は務所行きだ、余計な情報を教えるほうがどうかしているだろう。
政府がVR技術を欲しているのは軍備関係だ。その技術力が次のターゲットだ、それを吸収すればもう一つ上の世界にいける!
馬鹿を放っておいて病院を後にした、帰ってレクトとアーガスのデータを解析するとしようか・・・。
抜き身の狂気は徐々に、SAOを浸潤していこうといていくのだった。
実際ガーディアンを倒すと経験値は多大なのかな?それとも倒せない存在なのかわかりませんので自己解釈しております。
須郷さんと沢口の会話が楽しく書けました、もしかして私も腹黒かもしれません。
オリジナルで暗い物語やってみようかな・・・。