転生したら紅世の王   作:シニカケキャスター

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第21話 敗走と追撃

 フレイムヘイズたちが撤退していく。“祭礼の蛇”の神体が帰還したからである。もっとも『仮装舞踏会』の連中がみすみす見逃すはずがない。

 

「さて、どうしようかな。」

 

 あれに混ざってフレイムヘイズを追い立てるのもいいだろうが、『トラロカン』が張られた場合、自在法ばかり使う俺にとって、最悪の状況となる。ここは『星黎殿』から見物するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 砲撃を青い立方体が受け止める。ティアの『清なる棺』だ。防御力が高い自在法であるため、あの程度では破ることなどできない。

 

「全く、しょうがない奴らだ…。」

 

 とりあえず戦場をめちゃくちゃにしようじゃないか。

 

「『長城』よ、塔と成れ。」

 

 黒紅色の炎の中から巨大な塔が現れる。

 

「この一撃を持って、お前たちに恐れを与えよう。」

 

 巨塔を回転させ、破壊力、貫通力を上げる。たとえ『清なる棺』を持ってしても、受け止めることはできない。

 

「貫け…!」

 

 塔は黒紅色の炎を上げ、飛んでいく。そして戦場に突き刺さり、爆ぜる。

 

「なかなか絶望的な光景だな。」

 

 戦場は黒紅色の炎に包まれている。これで何人、何十人、何百人が死んだことだろうか。フレイムヘイズも紅世の徒も、皆等しく滅ぶだけ。

 

「終わりだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 “祭礼の蛇”坂井悠二の『大命宣布』によってフレイムヘイズ兵団は事実上の崩壊を迎えた。敗残兵は散り散りに逃げて行く。統率なんてものはない。ただただ無様な逃げ様だ。なんともまあ、美しくない。

 

「これだから…。」

 

 使命感に駆られたフレイムヘイズどもは…。

 

「まあこの程度で錯乱する様な奴らに『仮装舞踏会』を倒せるはずもないか。」

 

 水の刃や青い立方体が見える。フレイムヘイズを一人でも多く救おうとしているのだろう。殊勝なことだよ、全く。

 

「だがどうやっても、その手から零れ落ちてゆく。」

 

 救える数には限りがある。一人で出来ることには限りがある。お前たちがいくら奮闘したところで結末は変わらない。全てを救うことなどできはしない。二兎を追う者は一兎をも得ず、というやつだ。欲張れば、その身も滅ぶことだろう。

 

「さて、どうなるのかな。」

 

 敗北の確定したこの戦で、お前たちは何を見て、何を感じ、何を思うのだろうか。

 

「お前たちが掴もうとしているものは、脆く儚い。」

 

 そして、その小さな手には余るものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 戦場に雨が降る。自己犠牲なんてものは俺には不可能な芸当だよ。まあ夢破れた者にはそんな資格はありはしないのかもしれないがな、あっはっは!

 

「このままいけば、二割の生存か。」

 

 あの三人娘が奮闘しても三割が限界だろうな。

 

「まあ、“千変”に鉢合わせたら終わりだろうな。」

 

 それがあいつらの意志だというなら、俺にそれを止める資格も権利もありはしない。俺はただ、黙ってことの成り行きを見続けるだけのことだ。

 

「これで何が変わるのだろうか。」

 

 新世界が創られたとしても、やるべきことは変わらない。

 

「向こうには一体何が待ち受けているのだろう。」

 

 いよいよ腹をくくることとなるのだろうか。

 

「うん?」

 

 三つの気配を感じ取る。この気配を、俺は知っている。

 

「たあぁぁぁぁ!」

 

 薄紅色の炎弾が迫る。

 

「ふん!」

 

 これを『長城』で難なく受け止める。

 

「それー!」

 

 水の刃が迫るも、『悪食』で消す。

 

「やあっ!」

 

 青い立方体も俺の『悪食』の前には無力だ。

 

「うーむ、まさかこんなにも積極的に攻撃してくるとはな。」

 

 やっぱり足止め目的か、それともこちらに注目させるためか。

 

「あなたの相手は!」

 

「私たち!」

 

 まあこればかりは戦わなければわからないか。

 

「仕方ないな、お相手しようじゃないか。」

 

 強化系の自在法は使えず、『帥鴉』や『帥蜂』を使っても統率が取れない。やはり『トラロカン』は実に厄介だよ。

 

「やっぱり使える自在法が限られているみたいですね!」

 

「まあ、限られたとて負けるつもりはないがな。」

 

 だがしかし、たとえ縛りがあったって、戦い様はいくらでもあるとも。

 

「そらよっと!」

 

 『長城』によって巨大な城壁を上空に出現させる。

 

「叩き潰してやろう。」

 

 そのまま重力にそって城壁を落とす。もちろんこんなものが当たるはずもない。

 

「実に面倒だ。」

 

 『因果の殄滅』を振るい、炎弾を放つ。

 

「やあ!」

 

 全てを回避したメルセデスが水の剣で斬りかかる。

 

「なんの!」

 

 俺はこれを受け流し、蹴りを入れる。

 

「どうして『仮装舞踏会』なんかに協力してるの!」

 

「どうして、か。」

 

 特に理由なんてないのだがなぁ…。

 

「強いて言うなら好奇心、かな?」

 

「好奇心?」

 

「そうだ。俺は紅世にて狭間渡りを作り出し、この世に渡り来た最初の徒となった。」

 

 それ故に。

 

「俺は見てみたいのだ、新世界とやらを…!そこに何が待ち受けているのか、知りたいのだ…!」

 

 徒にとっての楽園が、世界の破滅を引き起こすとしても。

 

 

 

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