彼「鈴」
鈴「はい、テレビのリモコン」
彼「サンキュ」
一「鈴」
鈴「――!うっさい馬鹿!」
一「ひでぶ」
完
此【そんな関係】
もう一度言おう、
「ぷっ!?ははは!ビビったか!いやーさっきからこのカツラが熱くって熱くって!とっとと外したいと思ってたんだよ!」
「「「は?」」」
【成程ね】
先程までいたリーゼントはそこにはいなく、目の前には一夏とはまた違ったイケメンが立っていた。
一夏と同じ様なシュッとした顔立ち、更にワイルドさが加わったみたいな、そして髪をすべて後ろになで上げてオールバックにしている男が。
「いやはや!自己紹介が遅れたな!俺の名前は
「あの?きょ、饗さん?さっきのリーゼントって?」
「ん?いきなり名前で読んでくれるのか!嬉しいなぁ!理由?なんとなくだ!」
と豪快に笑って見せる、そんな様子にさっきの険悪な雰囲気は無くなっていた。
「は、はあ」
「で、だ」
そう言いながら真剣な顔になりこちらを見る。
「すまなかった!」
「へ?」
いきなり饗さんは頭を下げる。
その様子に先程までナイフを突き立てられていた一夏や弾も驚いている。
「俺らは確かに人様に迷惑をかけるような連中だ、けど最低限のルールはある。だから追い掛け回して本当に申し訳ない!」
「え?饗さん達は暴走族なんですよね?」
「ん?ああ、もしかしてこいつがそう言ったのか?ははは!違う違う!俺らはただのダチ!多分コイツの嘘だろ?ちょっとワイルドに見せたい?みたいな!まあ?たまには喧嘩位ならするがな!」
そう言いながら饗さんは先程と同じように屈託のない笑顔で笑う。
「けど本当にすまなかったな!特に!そこで転がってる2人!マジでメンゴ!こうでもしないと落ち着いて話もできなさそうだったもんでな!」
そう言って2人の方を見やる。
笑っている饗さんの顔に毒気を抜かれた2人は先程までの張り詰めた表情が無くなっていた。
「まあ?そこの赤髪くんはこの中じゃ一番頑丈そうに見えたからちと手荒にさせてもらったんだがな?」
「ああ、弾ですから大丈夫です」
「なにその根拠?ひどくね?」
「親父さんの中華鍋とさっきの、どっちが痛かった?」
「……親父の」
「な?」
「ふーん、面白いなお前ら。どうだ?俺らのグループに入る気ないか?きっと楽しいと思うぞ?」
「お断りします。僕は今のこれが気に入ってるので」
「俺も彼方達がいるこのメンバーが一番だと思ってるんで」
「イテテ、俺は彼方と一夏がやりたい方に付いてくだけだぜ。お前らといると飽きないしな」
そんな僕たちの回答に饗さんは目をニヤニヤしながら見ている。
なんだろう、此方と同じ様な雰囲気がする。
同類?いや、もっと違う何か別のもっと深い何かが似ている?
そんな事を考えていると饗さんはうずくまっていたモヒカンを担いでこの場から離れようとする。
「んじゃ、迷惑かけたな。そうそうこれ、渡しとく」
そう言いながら僕に2つに折れた紙を渡される。
「俺の連絡先。もし何かあったら気軽に連絡しろ、すぐ助けに行ってやる」
「何で僕に?」
「ん?お前がこの中で一番弱そうだからって言ったら怒るか?」
「いえ、そんな」
「そうか、お前はこの中じゃ一番度胸があるのかもしれない、でもそれだけ。あの弾ってロン毛君はこの中じゃ一番我慢強くて頑丈だ筋がいい、あそこにいる一夏ってイケメン君も多分センスがずば抜けて高い、てか本当に人間か?まあ、何が言いたいか分かるか?」
「足でまといって事ですか?」
その不貞腐れた僕の声にニヤっとしながら僕にしか聞こえないような声で話す。
「いいや、タガが外れそうで怖いんだよ。お前、いつか死ぬぞ?」
「え」
【……成程。ね】
「まあ!困ったら連絡しろ!アドバイスぐらいしてやるよ!じゃあな!」
そう言って饗さんは小走りで小路から出て行った。
残されたのは僕たち3人で。
「不思議な人だったね」
「お、ああ。あ!そうだ。弾!大丈夫か?」
「大丈夫、心配すんな。多分あの人手加減してたんだろ?本気だったら骨、折れてたかも……」
「うわー。じゃ、帰ろうか鈴待ってるだろうし」
「え、それだけ?」
「だって弾だろ」
「え?なにその信頼怖いんだけど」
「あ、帰り肉屋寄らせて」
「ああ、さっき注文してたの」
「ん、今日はカレーだって」
「よし!」
「なぜに一夏が喜んでるの?」
「だっておすそ分けしてくれるじゃん?」
「そんなこと言ってるとまたちふ姉に叩かれるよ?」
「まあな!」
「んじゃま帰りますか」
そんな弾の言葉に無言で頷き饗さんが歩いて行った道に続いていった。
その帰り道、無事にお肉を買い終え鈴に話してあった集合場所にした僕の家に着く。
家の前には鈴がアクビをしながらボケーっと突っ立ている。
「遅かったじゃない、ん?何それ?」
「豚バラ肉~」
「?」
「買ってきた」
「あ、そう」
僕らに目立った怪我が無いことを確認して鈴は「ん~」と背筋を猫みたいに伸ばす。
その瞬間、ある物を見てしまった僕はそっと一言。
「鈴」
「なによ?」
「しまパンって良いよね?」
「しまパン?それって……は!!」
まあしょうがないよね?だってスカート短くしてる鈴が悪いんだもん。
「死ねー!!」
「甘い!」
僕の言葉の意味を理解した鈴はお得意の回し蹴りを繰り出す、それをヒラリとかわす。
「舐めんな!」
そう言って地面に足が着いた瞬間に二撃目を繰り出してきた!
「いつの間にここまでの力を!だが甘いぞ!奥義!一夏バリアー!」
「え」
その瞬間、横に居た一夏を無理矢理引き寄せ壁にする。
「うあ!?あっぶない!」
「「「ちっ!」」」
けれどその蹴りをイナバウアーの如く上半身を仰け反らせ回避した。
それに僕を含める3人が舌打ちする。
(惜しい!もうちょっと!)
【仲がよろしいこって】
「じゃ、俺帰るぞ。家の手伝いがあっから」
「ああ、ごめんね?面倒事に突き合わせて?」
「ん?気にすんな。その分こっちは楽しんでっからな。まあ気にしてんなら、たまにはお客さんで来いよ、蘭も喜ぶ」
「ん、了解!じゃ、またあしたー」
「おー、じゃあなー」
「またねー」
「え、俺無視?」
「じゃあ私も帰るわ。最近お父さんたち厳しくって」
「大丈夫?」
「さあ?でも最近喧嘩してばっかなのよねー嫌だ嫌だ。でも喧嘩するほど仲がいいって言うし大丈夫なんじゃない?」
「そっか。困ったら言ってね?出来る限りのことはするから」
そんな僕の言葉にクスリと笑って。
「小学校の時みたいに?」
その言葉に僕も同じようにクスリと笑って。
「お望みなら」
「ふふふ、じゃあ期待してるからね?じゃ!またあした!ばいばい」
「バイバーイ」
「ねえ?俺は無視ですか?」
「ん?一夏はとりあえず反省しよっか?」
「どういうこと?」
「そういうとこ」
僕はニコニコとしながらある人の名前を呟く、もうこの時間ならバイトも終わって帰ってきてるはずだから。
「ちふ姉~」
「どうした」
「へ?」
「一夏がね?」
「分かった」
「え?ちょ、ちょっとまって!千冬姉!何でそれだけで俺の頭を掴むんだよ!?」
「彼方を困らせたな?」
「ちょ!ま!?」
「行くぞ一夏!歯を食いしば――」
「千冬ちゃん!」
今まさにちふ姉が一夏を殴ろうとして高く振り上げた腕を振り下ろす瞬間、僕の家の方から聞き慣れた声が聞こえた。
「がはっ!?」
「一夏ー!」
まあその程度じゃちふ姉の拳は止まらないんだけどね。
「ゆ、夕陽さん!ど、どうしたんですか?」
「もう千冬ちゃん?あなたの声が聞こえたからカレーのおすそわけでもって思ったのに!なにその格好は!?」
【うわー】
その母さんの言葉でちふ姉を見るとああ確かに、髪は整ってると思ったら所々枝毛みたいになってるし服装だっておばちゃんが着てそうなジャージを着ている。
「え、あ!?こ、これはさっきまでバイトで」
「そんなの関係ありません!さあいらっしゃい!私の部屋でちょっとお着替えよ!この前千冬ちゃんにピッタリなドレス見つけたの!きっと似合うわよー」
「え?あのちょっと!?こ、困ります!」
「さあ今日はどんなコーディネートしようかしらねー。あ、彼方おかえりなさい、一夏君も」
「うん、ただいま」
「夕陽さんこんばんは!」
「ふふふ、今日も楽しかったみたいね?ああそうだ、一夏君今日は
「え!本当ですか!ありがとうございます!」
「気にしない気にしない、その代わりお姉さん借りるわよ?彼方、台所に全部出してあるから盛り付けてあげてね?」
「うん分かった。あれ?買ってきたこのお肉は?」
「ああ、それは
「い、嫌だ!彼方!一夏!助けてくれ!あ、あー!」
そんなちふ姉の声虚しくズルズルと引きずられて行くちふ姉を僕らは哀れみの眼差しで見送った。
「ほんじゃま」
「おう」
【カレーだー!】
――――――――――――――
「ただいまー」
「おじゃまします!」
【ただいまー】
あれから僕らは何事もなかったかのように家に入る。
「じゃあ一夏、食べる前に手洗いとうがいね」
「おう」
洗面所で手を洗ってうがいして。
リビングまで行くとそこには。
「ん?やあ、お邪魔してるよ」
「彼方に一夏君おかえり」
そこには父さんと今父さんが働いている所の社長さんが仲良くカレーを食べていた。
「あ、父さん帰ってきてたんだ?それに藤堂さんも今日はどうしたんですか?またいつものサボりですか?」
父さんが務める会社
服装はいつも真っ白いスーツで身を固めていて世間で言う出来る社長らしい。
「ははは、サボリとは酷いなぁ大丈夫。我が社は別に僕だけの力だけで動いてはいないからね、僕のデスクに印鑑でもポンと置いておけば開発部の皆が勝手に良いものを作ってくれるだろうからね」
【嫌、それは駄目だろ】
そう言う藤堂さんの
そんな不思議な人だ。
父さんは藤堂さんの言葉にこめかみを抑えながら苦笑い。
お酒を飲んでたみたいで顔が赤く火照ってる。
「それがウチの良い所でもあって悪い所でもあるって分かってますか社長?この前だって開発部が勝手に作ったIS用の武器、出力上げすぎてまた爆発したじゃないですか。あの時は大変だったんですよ?」
「ああ、あれか。でも軽傷の人しか出なかったと思うけどね?」
「ええ奇跡的にも。何故か爆発源にいたドクターも無傷でしたしね。でもなんでウチがIS用の武器を作ってるんですか!ウチがゲーム会社っていうのを忘れていませんか!?」
「まあ彼は規格外って奴だからねぇ。それに確かに今はゲームしか制作してないけど将来的にはねぇ?多方向に売り込んでいきたいんだよ、まあ今の状況はロマンゆえにって奴だ。分かってくると嬉しいんだけどね警備部長」
「もー、マスコミからの対応が最近減ってきてるのはありがたいですけどねー。最近じゃ爆発しても物好きなマスコミしか来なくなりましたからねー。全く、スカウトされた時は楽な仕事って言ってたの…に……すぅ」
「父さん?」
【相変わらずこの人はお酒に弱いよな】
(お酒が好きなくせにお酒に弱いってどうかと思うけどね)
父さんが働いている会社の社長、
「おっと、全く光君ももうちょっとお酒に強くなってもらわないとだね、これじゃ」
「はい、そうですね。一夏手伝って、ソファーに横にしちゃうから」
「おう、光さんはほんといつも通りっていうか。あ!藤堂さん!この前くれたゲームとっても面白かったですよ!」
「そうかい?あれは来月発売する予定のゲームでまだβ版だったんだが、その様子だと中々に良いみたいだね。まあご飯を入れておいで、食べた後にでも感想を聞かせてくれよ。ああそれと、彼方君すまないがカレーのおかわりを頼む、相変わらず夕陽さんが作るカレーは絶品だ」
「はいはい分かりました。じゃあ一夏も盛り付けお願い」
「カレー!カレー!」
そんな事を話しながら今日買ってきた豚バラを冷凍庫に入れてカレーが入ってる鍋の蓋を開ける、開けた瞬間部屋に僅かに立ち込めていた香辛料の匂いを吹き飛ばすぐらいの濃いカレーの独特なスパイスの匂いが立ち込める。
それを横に置いてあったお玉ですくって今か今かとご飯の入った皿を持っている一夏の方に持っていく。
「ちゃんとサラダも食べるんだよ?」
「大丈夫大丈夫!へへ、じゃあ俺先に座ってるから!」
「あ、こら!たく、僕の分も手伝ってくれたっていいのに」
そう言いながら横にあったカレー皿に炊きたてのホカホカなご飯を入れてルーをかける。
「よしこれで。あ、藤堂さん!ご飯の量どうしますか?」
「普通で頼むよ。ルーは多めで」
「了解です」
そう言って藤堂さんの分もご飯とカレーをかけてこぼさないようにテーブルに乗せて席に着く。
「じゃあ――」
「いただきます!はむ!」
「…いただきます」
「頂いてます」
【頂きます!】
4人で一斉に挨拶をして食べる。
「んまー!」
「うん」
一夏がちょっとうるさいけど口の中でスパイスの独特の辛さとふんだんに入れられた野菜から出る甘さとふんだんに使われたお肉の脂で出た甘さの独特なハーモニー、それに今でも教えてくれない隠し味の深みのおかげで絶妙な味が広がって刺激する。
「はむ!ふむ!……んぐ!!んん!」
「はい水」
「ぷはっ!サンキュ!いやー相変わらず美味い!」
【んまーい!】
――――――――――――――
それから一夏は1回おかわりをして藤堂さんは3回おかわりをした、2人共よく食べる。
特に藤堂さんの胃の中は不思議だ。
父さんのも合わせて4人分の食べ終わった食器を洗面所に置いてさっきまで座っていたイスに座りなおす。
「さて、君たちに聞きたいことがある」
それを確認した藤堂さんは僕と食べ終わって爪楊枝で歯をいじっているジジくさい一夏を見て真剣な表情になる。
「まず最初に君たちは私の会社がどういったものか知っているかな?」
そんな当たり前なことを聞いてくる。
その問に真っ先に答えたのは一夏だった。
「そりゃ知ってますよ、ゲーム会社ですよね?
その言葉に続いて僕も答える。
「それに周りからはけっこう不思議がられていますよね?ゲーム内に登場する実在のISは機密レベルに細かくスペック通りだったり、ゲーム会社なのに社内でIS用の兵器を作っていたりと謎が多い会社だって」
そんな僕たちの答えに嬉しそうに目を細める。
どうやらこの答えで良かったようだ。
「うん、まあ
「ゲームバランスは全然ダメだと思いました!」
「僕も一夏と同じです」
「ほう、理由を聞いても?」
「先進国のISが強すぎる特に日本、逆に発展国のISはギミックが面白くてもISらしさを生かしきれてなくて弱いと思いました」
「同じく!同じく!」
「ははは!そうかそうか。じゃあ君たちにもし今の状況でISだけの戦争が起きたらどこが勝つと思う?」
「変な質問ですね?多分ですけどアメリカか日本じゃないですかね?」
「その根拠は?」
「戦争が起きれば物量もしくは質量のぶつけ合いです。そうだとするとIS保有数が多く物量こそ正義のアメリカ。そして日本は世界で最多のIS保有国、更に今様々な国で使かわれている日本の名機、第二世代機打鉄。それにやはり日本には束博士がいますからね。ああ、ちふ姉が乗っている暮桜あれはチートですねゲームでも他のと比較して性能が段違いでしたし」
「ふーん、成程ねー」
少し暑く語ってしまった自論に恥ずかしく思いながら藤堂さんの方を見る。
彼は先程と同じように笑っていた。
「君たちは今この世界の状況をどう思うかい?」
「この世界の状況?」
「へ?」
さっきから話がそれていたけどそれ以上にそれたことを話し始める。
「歪んでいるとは思わないかい?」
「歪んでいる?」
「そうだよ。だって不思議じゃないかい?第二次世界大戦以降、兵器の所持を禁止されていた日本は今じゃ最強の兵器と呼ばれるISを世界で一番多く保持している。それにIS用の兵器開発数だって世界で上位に入るんだ。これを聞いてどう思うかな?」
その質問の意味は分からなかっただってそんな当たり前のこと。
「別に
「ん?そうだな別に良いと思うけど」
「そうか、成程ね」
僕らの言葉に興味深く目を細める。
不意に口が動いて。
「じゃあ我が社は立ち上げたばかりの頃本当は――」
Pi!Pi!Pi!Pi!Pi!
その言葉の先を言おうとした瞬間、藤堂さんのポケットから電子音が響く。
「ああ、すまない。電話みたいだ失礼するよ。もしもし?ああ、先日はお疲れ様。ん?本当かい?分かった確認してみるよ、また一時間後に電話するけどいいかな?ああ、ありがとう、じゃ」
そう言って電話を切ると申し訳なさそうにこちらを見て。
「どうしたんですか?」
「ああ、すまないちょっとバイト君の給料が払われてないみたいなんだ、ちょっと本社に帰って確認しなくちゃみたいでね、すまないが帰らせてもらうよ」
「そんな社長さんが直にやらなくても社員さんに頼めば良いんじゃ?」
「彼、僕個人で頼んだバイトでね。じゃ、夕陽さんにごちそうさまでしたって伝えといてもらえるかな?」
「分かりました。玄関まで見送りますよ?」
「ああ、気にしなくていいよ。じゃ、また今度。次は何かしらお土産を持って来るよ」
「そんな気にしなくてもいいのに」
「はは、気にしないでくれ。僕も我が社も光君には助けられてるからね。じゃ、また今度。二人共、
そう言って藤堂さんは手を振り玄関に向かう。
それを僕らは手を振り返しながら見送って。
「んっんー!よく食べた!じゃあ俺もそろそろ帰るよ」
「オッケー、じゃあカレーをタッパに入れるから待ってて」
「サンキュー!」
「はい、これ」
「おう、んじゃまたなー」
「うん。またあした」
そう言って一夏を見送って静まり返った居間に一人ぽつんと。
「んん、夕陽。ご、ごめん僕が悪かった…か、らパソコンを捨てないで」
【むにゃ、もう…お腹一杯。ああ、でも。もうちょっと……】
「……」
と言う訳でもなく四人分の食器を見て少しため息をしながら。
「ちゃちゃっとやりますか!」
――――――――――――――
周りに木に囲まれた山の中その中に天を貫く
一見すればモノリスにも見える不自然な建物、天才と言われた男、
その最上階、社長室と呼ばれる部屋、壁はエレベーターがある部分以外全てがガラス張りそれ以外にあるものと言えば重々しい机だけ、だがそれが殺風景という訳ではなく床や天井に敷き詰められた上質な素材のおかげで高級感漂う部屋になっている。
そんな部屋に二人の男がいた。
一人はこの会社の代表取締役である藤堂綾鷹、彼はその重々しい机に腰掛け書類の束に目を通している。
もう一人の男は最近会社に出入りするようになった社長直属のアルバイト、会社内では優秀なゲームのテスターとして通っている高校生位の少年がガラス越しに見える真っ暗闇の山々を見ている。
その沈黙を破ったのはこの建物の主の言葉。
「ああ、本当だね。すまない、振り込み忘れていた僕のミスだ」
「やっぱり!いやー、気にしないでください!ミスは誰にも付きもの!逆に藤堂さんがミスするっていうレアイベントを見れたんすから気にしないでくださいよ!」
その謝罪の言葉にバイトの少年は豪快に笑う。
「ああ!そうだ、今日会いましたよ!俺らと一緒って言ってた男の子に!」
そのバイトの少年、村樹饗の言葉に藤堂は目を細める。
「ほう、何か感じたかい?」
「いえ、なにも。ただ……」
「ただ?」
「ただ守ってやりたいなー、て思ったんすよね」
「守りたい?」
「はい、アイツ俺の経験が正しいなら早死するタイプだと思うんで」
「ふーん、成程ね。彼が早死するタイプか。まあそこら辺は君に任せる、それと思い出したかい?」
その言葉に先程まで笑顔でいた村樹は表情を暗ませる。
「無理です、それにまだ信じられないんですよね俺や藤堂さん、それにあのガキンチョがそういう存在ってのが。まあ、信じたい気持ちはあります。ISっていうとんでも技術だったりがあるのを考えるとありえない訳じゃないと思いますしね。まあ何より――」
それに続きを言おうとした時、彼の口元が三日月のように歪む。
「“女”が特別なこの世界で“男”の俺が特別になれるってのは痛快ってやつですよ!」
そう言って彼は笑った。
それを興味深げに見ながら藤堂は眠そうにアクビをする。
「ふ、ぁ~。そろそろ解散にしようか、お金は明日の朝にでも振り込んでおくよ」
「うっす。了解しました!じゃあまたよろしくお願いします!」
そう言ってエレベーターに乗ろうとする彼に。
「ああ、村樹君に聞きたいことがあったんだ」
「ん?なんすか?」
「今のこの世界、どう思う?正しいかい?それとも歪んでいるかい?」
その質問に顔を少し傾かせて村樹は答えた。
「歪んでるんじゃなですか?ぶっちゃけ今の日本の情勢ひいては世界の情勢気持ち悪いと思います」
「理由は?」
「理由?ん~?何となく?直感ですかね、あ!エレベーター来たみたいなんで俺、帰ります。仕事ある時は呼んでください、マッハで来るんで。お疲れ様でした!」
「ああ、お疲れ様。また頼む」
エレベーターが村樹饗を乗せ1人になってしまった社長室、静まり返った部屋でボーッと外の風景を見る藤堂綾鷹は机の中に入れておいた銀色の懐中時計の様な物を手で遊びながら。
「ふーん。外部からの人間は違和感を感じることが出来て内部の人間は感じることが出来ない、か。だとすると彼はこちら側の人間じゃないのかな?でもなー。多分彼だと思うんだけどなー?全くどんな願い事でコッチに来たんだか。まあいいさ、まだ時間はあるんだ。まだ、まだね」
――――――――――――――
「ふう、洗い物おーわりっと」
四人分の食器を洗い終わってため息を少し溢す。
いい加減、食器洗浄機が欲しいなーと思いながらソファーで寝ている父さんを見る。
「んん~。ちょ、そこは弱いから。ら、らめ~…ぐぅ」
気持ちよさそうに寝ている父さんにクスリと笑ってある事を思い出す。
《此方起きてる?)
【ん~?どったの?】
(今思い出したんだけど……ちふ姉大丈夫かな?)
【あ……まあ、大丈夫だろ?てか眠い、とっとと風呂入ろうぜ?】
(そだね。そうと決まれば)
此方と話終わってお風呂場に向かう途中、2階に上がる階段にちふ姉のらしきジャージと下着がヘンゼルとグレーテルのパン切れよろしく点々と置かれているのを見て少し頬を引きつらせる。
今日は下で布団を敷いて寝ようそうしよう。
そう思いながら風呂場に向かうのであった。
――――――――――――――
その日、音無家では夜中色っぽい女性の叫び声が聞こえたのはまた別の話。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
読者の皆々様!おはようこんにちはこんばんわ!
覚えてる方いらっしゃいまますか?
まあ、これだけ間隔開けといて覚えてないなんて酷い!なんて思いもしませんが。
次回のお話はもっと早く投稿出来ると思いますのでお願いします。
分割投稿すればよかった(ボソ
それとR-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただいていますので興味がありましたらご覧下さい。
では皆々様
待てしかして希望せよ