IS ~彼岸花の思い鈴蘭の如く~   作:まうす〜

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《千冬さんは》
千「こら彼方!」
彼「ちょ!抱きつくのやめてよ!?」
千「問答無用!」
彼「わひゃ!?」
千「こら一夏!」
一「ちょ!ま!?流石にグーはマズイ!」
千「問答無用!」
一「ひでぶ!?」



此【弟思い】


4話【あぁ!さ・い・こ・う】

 僕が饗さんに出会って1ヶ月後――

 湿った空気そして湿った布と肌が擦れる音。

 僕は今自分の家のお風呂場にいる、はずだ。

 決して僕は今一夏の家のお風呂を借りている訳じゃない。

 じゃあ何で?

 

「彼方?痒い所があったら言ってくれ、しっかり洗ってやるからな?」

 

 何でちふ姉と一緒にお風呂入ってるの!?

 

「そう怯えるな?ふふ」

 

――――――――――――――

 

 

 ああなっちゃうちょっと前。

 今日は一人で帰っていた、一夏は先生に呼び出され鈴は親が迎えに来て。

 弾はどこにいるか良く分からないけど、珍しく1人で帰っていた。

 そうしてふと思う。

(平和だねー)

 

【だなー。大体面倒事は一夏経由だったしなー】

 

(そうだねー。一夏もいい加減そう言うトコ直して欲しいけど馬鹿は死んでも治らないって言うしねー)

 

【そうだな~。まあ、お前も似たようなもんだけどな……】

 

(???)

 そんな事を此方と話してのほほんとして歩いていると。

 

「ご主人様」

 

 そう言って自分たちと反対方向から歩いてきた女性。

 自分と同じ中学の制服、でも同学年の女の子とリボンの色が違うから自分よりも上級の生徒。

 中学生の女の子が背伸びした化粧でギャルのような見た目だった(・・・)人。

 

「先輩」

 

 この前自分にモヒカンさんをけしかけたリー先輩が頬を赤く染めて微笑んでいる。

 見た目は前とは違って校則ギリギリまで染めていた髪は自然な黒に、制服はきっちりボタンを留め、前見たパンツが見えそうなくらい短かったスカートは校則きっちりの長さに、はだけていたシャツはキチンと着こなして。

 元の顔の良さのせいもあってどこか良い所のお嬢様、大和撫子みたいな雰囲気を醸し出している。

(まるで人が変わったみたいだ。箒ももうちょっと落ち着けばこんな感じなのに)

 

【てかこの人変わりすぎじゃね?あの後ちょっと叱っただけだよな?】

 

(うん、そのはずなんだけど……)

 

「ご主人様、そんな先輩だなんて。気軽に沙華(いさか)って呼び捨てで読んでいただいて良いのに……」

「は、はあ。そうですかでは僕もう行きますんで。先輩も最近通り魔が出るみたいなのでお気をつけて。では」

「あぁ…そんなご主人様冷たいです。でもそんな中に私を大切に思う言葉が。あぁ!さ・い・こ・う」

 

 その言葉を聞いた瞬間僕は走り出す。

 

「ああ!ご主人様!お待ち下さい!ふふ、照れ屋さんですね」

「違います!もう帰って下さい!今から買い物に行かなきゃ行けないので!」

 

 走りながら振り向かずにそう答える。

 振り向いた瞬間に捕まってしまいそうな気がしたから。

 

「ええ、存じています。今日は家の近くのスーパーではなくて学校の近くのスーパーでセール中のネギと鶏肉、お一人様二点限定のトイレットペーパーを買いに行く予定なんですよね?」

「ちょ!?どうして知ってるんですか!?」

「ふふ、だってそこのスーパーのチラシ、ご主人様の町内だとギリギリ入ってこないのご存知じゃありませんか?」

「え、ええまあ。でも今日はセールだから広く配ったんだと思ったんですけど?」

「ええそうですね。でも違うんです、あのチラシは何時も通りに配られてたんです」

「はい?」

「ふふ、私が入れたんですよ?だってそうすればきっとご主人様は今日こちらの方に向かうと予想していましたから」

「は、はあ?あのチラシありがとうございます」

 

 そう言って走りながら少しお辞儀。

 

【何でお辞儀してんだよ!】

 

(わ、分からないよ!てか今のこの状況が一番分からないよ!?)

 

【ごもっとも!】

 

「いえいえ、どういたしまして。そこで提案なのですがトイレットペーパー一緒に買いませんか?」

「は?」

「まあ少し止まって下さい。ご主人様が疲れてしまいます」

「は、はい」

 

 そう言って何故か素直に立ち止まる。

 少し息を荒げながら振り返るともう二、三足程の距離で息も荒らげず先輩はニコニコと笑みを絶やさずにこちらをじっと見つめている。

 

「ですからご主人様としては今回のセールでは沢山買っておきたいと思うんです、けどトイレットペーパーはお一人様二点限り、なら私も一緒に買えば四っつ買えますよね?」

「あの、それは流石に結構です。自分の家のことでほぼ赤の他人の先輩に手伝って貰うつもりはありませんから」

「ええ、そうですね。ご主人様がそういう人っていうのは知っています、ですから条件を出させて下さい」

「条件?」

「はい、今後私の事は先輩ではなくて沙華って呼んでください。もしならその後に先輩もつけて良いです。それともう一つスーパーからご主人様の家に帰る際に私と一緒に帰らせて下さい。ただ隣で歩くだけで良いので。それが条件です」

「は、はあ?」

 

 そう言って先輩は手を伸ばしてくる、まるでダンスのお誘いをするみたいに。

 怪しく、大人びた顔を浮かべながら。

 

【まあ良いんじゃね?】

 

(良いの?なんだか悪魔と契約する気分なんだけど)

 

【はは!トイレットペーパー二つの為に悪魔と契約とかウケる】

 

(まあその代償も一緒に帰ると呼び名だけどね)

 

【どうだか、契約する事自体がすでにヤバイと思うけどな】

 

(まあ良いよ、一人は寂しいからね)

 

「良いですよ先輩、じゃあ行きましょうか」

 

 そう言って先輩の手を軽く握る。

 そうすると先輩は少し頬を赤らめて。

 

「あら?あらあら?え、ええそうですね。で、では行きましょうか?」

 

 少し歩きを速くして、僕の手を優しく振りほどく。

 そんな先輩の後ろ姿を見てほんの少し口元を緩める。

 

「はい、そうですね」

 

 そう言いながら僕は先輩の後に付いていった。

 

【……んん?】

 

――――――――――――――

 

 

「あの、半分ぐらい持ちましょうか?」

 

 先輩と買い物した後、約束通り一緒に僕の家に帰る途中、心配そうに聞いてくる。

 

「だ、大丈夫。です!それに先輩との約束に荷物を持ってもらうなんてありませんから!」

「そうですか?でも手、震えていますよ?やっぱり私も――」

「大丈夫です!」

「もう!」

 

 先輩は頬を膨らませて僕の片方、食材の入ったビニール袋を無理矢理ひったくる。

 あっと一言こぼして先輩の方を見る。

 

「頑固な男性は確かに魅力的ではありますがご主人様には似合いませんよ?もっと人を頼ってください」

 

 ジトっと僕を睨みながらそう言う先輩、その顔がちょっと面白くて頬を軽く緩め。

 

「そうですか?そうかもしれませんね」

「ええそうです!だって……あら?」

「ん?どうかしましたか?」

 

 話している最中先輩はほんの少し見え始めてきた僕の家の方を見る。

 でもどちらかと言うとその奥を見ている?

 その視線の先には。

 

「あれ?ちふ姉?」

 

 ちふ姉がこちらをじっと見つめていた。

 僕と目が合ったちふ姉はニコッと笑ってこちらに歩いてくる。

 

「遅かったな彼方?」

 

 そう言っていつもの笑顔。

 

「うん。あ!今日ね、学校の方にあるスーパーが特売だったんだ!ほらこんなに一杯!後でちふ姉の家におすそ分けしに行くね!」

「ああ、ありがとう。いつも悪いな?愚弟の世話まで」

「うんん!全然!僕が好きでしてるだけだよ!」

 

 ちふ姉の笑顔に釣られて僕も笑顔に。

 でも。

 

「ところで彼方。この子は一体誰だ?」

 

 その笑顔を顔に貼り付けたまま先輩の方をじっと見ている。

 不思議とちふ姉の背中から赤黒いオーラみたいなものが見えるけど……

 

「え、ああ。この人は中学校のせん――」

「初めまして、わたくし彼方さんの彼女の沙華と言います。もしかして彼方さんのお母さんですか?」

 

(はいぃぃ!?)

 中学校の先輩って説明しようとした瞬間、先輩はとんでもない爆弾発言をしやがった。

 

「か、のじょ?は、ははは!全く!笑える冗談だ!なあ彼方!?」

 

 ちふ姉は大きく笑って僕の方を見る、その顔は今にも泣き崩れそうな顔をしながら両拳を強く握っている、一夏を殴る時以上に。

 

「あの、あなたは一体誰なんですか?質問に答えてください」

「あ、ああ。私は織斑千冬。彼方の家の隣に住んでいるものだ」

「あ、ご近所さんなんですね?こんばんは。さあ彼方さん行きましょ?」

「え?あ!ちょっと!?」

 

 僕の荷物を持っていない方の腕に絡まるようにして先輩はもたれかかる。

 その腕に女の子特有の柔らかい感触を感じて頭が沸騰しそうな程熱くなるのを感じて顔に出ないように我慢する。

 

「は、離してください……」

「え?嫌ですか?良いじゃないですか彼方さんの家までもう少しなんですから。ね?」

 

 そう言って僕の耳元で囁くように猫なで声でさっきよりも強く腕にもたれかかる先輩。

 その様子を見ていたちふ姉は顔を真っ赤にさせる。

 

「彼方から離れろ!」

 

 そう言いながら割って入る、それを予想していたのか先輩はヒラリとかわして。

 そうしてちふ姉の真っ赤になった顔を見て少し微笑む。

 

「ふふ、冗談ですよ。ああ勿論、彼女の所からですよ?だから安心してください、でも彼方さんはあなたの物ではないでしょ?だってただの(・・・)お隣さん。なんですもんね?」

「な!」

「ふふふ、では今日は帰らせて頂きます。最後まで一緒に帰れないのは残念ですが、まあ、良いです。ああ織斑さん、噂はかねがね聞いています。来年のモンドグロッソ頑張って下さい。応援しています」

 

 先輩はそう言ってさっき僕からひったくった袋をちふ姉に渡して近づいてくる。

 そうして息がかかりそうな距離まで近づくと、少し口元を歪ませて。

 

「さようならご主人様。んむぅ」

「ふぁ!?」

 

 先輩は僕の耳元でボソッとそう呟いて耳たぶを優しく噛む、脳が麻痺するような甘い感覚に襲われる。

 それを見ていたちふ姉は顔をさっきよりも更に赤くしてこちらをジッと見て今にも先輩を襲おうとしていた。

 

「じゃあ彼方さん。またご縁がありましたらお会いしましょうねぇ?」

 

 歩いてきた道を引き返しながら僕に手を振りながら立ち去ろうとする先輩。

 脳が麻痺しながら手を振り返す。

 そうしてふとちふ姉の方を見ると。

 

「彼方」

「ど、どうしたのちふ姉?」

「来い」

 

 僕の腕を掴んでちふ姉は引きずるようにして僕の家に入ろうとする。

 

「ちょ!い、痛いよ!ちふ姉!」

「うるさい」

 

(ちょ!助けてよ此方!)

 

【現在、おかけになった相手の通信機器の電源が入っていない、もしくは故障、または、ネットワークの故障が発生していると思われます】

 

(お前ふざけんなよ!?)

 

【あばばばば!】

 

(何それ!?ウザい!)

 

 そんな脳内会話を繰り広げているといつの間にか靴は脱がされお風呂場に連れて来られていた。

 やっと離してくれた腕に痛みを感じてさすりながらちふ姉の方を見るとニッコリとしてこちらを見ている。

 

「彼方?疲れただろ?お風呂にでも入ってこい。私は彼方が買ってきたのを冷蔵庫に入れてくるから」

「え、いや。自分で」

「い・い・か・ら入ってこい!」

「は、はい!」

 

 そんなちふ姉の気迫にしぶしぶ服を脱いでお風呂に入る。

 そうしてシャワーで体の汚れを軽く流して椅子に座る。

 それからいつもも通りにまずは――

 

「はい彼方。シャンプー」

「あ、ありがとう。ちふ姉」

 

 そういつも使うシャンプーをちふ姉から渡されて、いつも通り頭から最初に洗う。

 ちふ姉から渡されて?

 

「ちふ姉?」

「ああ、どうした彼方?」

「はは、そっかそっか。ちふ姉も一緒にお風呂入ったんだー。食材は?」

「冷蔵庫に入れたぞ?」

「そっかー」

 

 はっはっはっ。

 そんな声がお風呂に響いて。

 

「あ、夕御飯作らなきゃ。先にお風呂からあがるね?」

「まあ待て、体ぐらい洗っていけ」

「はい……」

 

【おい!彼方見てみろよ!千冬さんすんげーパッツンパッツン!】

 

 そう言いながら中学校の頃の指定スクール水着を少しきゅうくつそうに身に付けたちふ姉は何も身につけていない僕を無理矢理椅子に座らせる。

 

「たまには私が洗ってやろう」

「え」

「何だ?問題でもあるのか?小学校の時はよく一緒に入っていただろ?」

「ハイワカリマシタ」

 

 ちふ姉はそう言って両手にシャンプーを泡立たせ僕の頭を乱暴に、でも優しく洗う。

 そうして耳の裏まで念入りに洗い終え、ボディーソープを手に背中を洗い出す。

 サウナみたいに熱く感じるお風呂でただヌルっとした手の感触を感じながらじっと我慢する。

 

「よし、じゃあ流すぞ」

「ん、じゃあ僕もうあが――」

「湯船にもつかれ」

 

 両手でまたガッシリとまた僕の両肩を掴む。

 こうなってしまうともう逃げられない、「はぁ…」とため息をついて渋々湯船に入る。

 

「温かいな……彼方。お前は好きな子はいるのか?」

「いきなりどうしたのさ?」

 

 僕の後ろで一緒に入っているちふ姉は声を少し弱々しくして聞いてくる。

 

「いないよ。それに今はそんな事よりも一夏達といた方が楽しいしね」

「そう、か。今日一緒にいたあの子は一体誰だったんだ?」

「ああ、学校の先輩だよ。イタズラ好きな人なだけだよ?もしかして本当に僕があの人と付き合ってると思ったの?」

「う、ああ……そう思った。その時な、痛くなったんだよ、心が。んっ」

 

 弱々しくそう呟いて後ろから包み込むようにして僕に抱きつく。

 背中に女の人特有の特にちふ姉は特別大きい柔らかい感触を感じる。

 そうして気付いた、ちふ姉の両手が僅かに震えていることに。

 

「ちふ姉?」

「なあ彼方。お前はどこにも行かないでくれ。束みたいにいきなり消えてしまわないでくれ。また今度あんなことになったら私は…私はっ!」

 

 抱きつく力を強めてギュッと更に僕と密着する。

 背中に熱い水滴の感触を感じて、僕はちふ姉の両の手を握り締める。

 

「昔、たば姉にも言ったんだけどね?僕はどこにも行かないよ。だから安心して?」

「ああ、ああそうだな」

 

 水滴の感触がさっきよりも増えていることに感じて僕は湯船から出ようとする。

 ちふ姉はさっきみたいに止めようとはしない。

 ただ僕と目を合わせないようにうつむいている。

 

「じゃあ僕は先に上がるよ。今日は夕御飯、一夏とちふ姉の分も作るからゆっくりしてってね?」

「ああ、ありがとう」

「うんん、気にしないで」

 

 そう言って僕はお風呂から出る。

 半袖のパジャマに着替えてキッチンに方に向かった。

 ソファーにかけてあった洗濯したてのいい匂いのエプロンを身に付け、母さんと父さんの分も含めた五人分の料理を作るために袖はないけどまくるようにして料理を作り始める。

(ちふ姉も、悲しかったんだね…)

 

【悲しまない人間なんていねえよ。いたらそいつは人間じゃねえただの機械だ】

 

(そうだよね……うん、きっとそうなんだろうね。じゃあ――)

 

 「たば姉も悲しかったのかな?」そう言おうとするのを我慢して。

 今日の夕御飯を作るのに取り掛かった。

 

――――――――――――――

 

 

 肌に汗が張り付く感触を感じながら私は歩いていた。

 格好は友人から作ってもらった少し値の張る特注の黒いフード付きコート、更につばの長いキャップ。

 これなら顔を見られることや服から特定される心配はその友人が言わなければ分からない。

 大丈夫、大丈夫、今までも捕まらなかったんだ。

 今日も大丈夫。

 

「はぁ、はぁ、はぁはぁ、はぁ」

 

 興奮で息が熱くなる、真っ暗になった街道を怪しまれないように堂々と歩く。

 ああ、興奮する。

 早く襲いたい早く女の子に出会いたい。

 早く女の子をポケットに入れたナイフで……「切りつけたい」。

 

「んっ!」

 

 そんな言葉を口走りそうになった口を自分の手で無理矢理押さえつけた。

 そうするとどうだろう?こんな人気のない真っ暗闇の街道の中一人、少女が歩いてくる。

 綺麗な黒髪をなびかせて良いとこのお嬢様か?塾の帰りかな?

 ああ、危機管理がなっていないな。

 最近は通り魔が出るって話、聞いていないのかな?

 それとも、自分は安全だとかそんな事思っているのかな?

 ああ、それはイケナイな私が塾や学校だけじゃ学べないことを教えてあげよう。

 

「ヒヒ」

 

 ちょっと笑いをこぼしてポケットに入っているナイフいつでも取り出せるようにする。

 ああもうちょっと後二、三歩。

 一。

 二の。

 今だ!

 

「ふふ」

 

 ナイフを取り出して黒髪の少女に切りかかろうとしていた私は少女のゾッとする笑みを見た瞬間、尻もちをついていた。

 理解できないこんがらがった頭で私は少女を見る。

 

「どうかなさいましたか?まるで化物を見たような反応ですよ?さあお手をどうぞ?」

 

 そう言って少女は私に手を差し伸べる。

 それに私は言い表せない恐怖を感じながらその手を握り起き上がる。

 さっきまでの興奮の熱い汗が恐怖の冷たい汗に変わっているのを感じる。

 

「あ、これ落としましたよ?」

 

 少女はそう言いながら私がさっきまで握っていたナイフを平然と渡してきた。

 

「あ、ああ。ありがとう」

「いえ、どういたしまして」

 

 そうしてナイフを受け取った私の方をジッと少女は見つめている。

 

「あの、何か?」

「ええ、今日はもうこの通りは歩かないほうが良いですよ?あ、そうだ!あそこの通りから帰ったらどうでしょう?」

 

 すぐそこにある横道を指さす少女を見て、不思議な使命感を感じる。

 

「ええ、そうさせてもらいます。ではごきげんよう」

 

 そうお辞儀して横道に入っていく。

 もうさっきまでの恐怖はなく、最初の興奮が戻ってきた。

 

「ああそうだ。決して女の子に手を出してはいけませんよ?あら?もう聞こえていませんか?」

 

 そうだ、女の子だ。

 女の子を探さなきゃ。

 肌に汗が張り付く感触を感じながら歩く。

 格好は友人から作ってもらった少し値の張る特注の黒いフード付きコート、更につばの長いキャップ。

 これなら顔を見られることや服から特定される心配はその友人が言わなければ分からない。

 大丈夫、大丈夫、今までも捕まらなかったんだ。

 今日も大丈夫。

 

「はぁ、はぁ、はぁはぁ、はぁ」

 

 興奮で息が熱くなる、真っ暗になった街道を怪しまれないように堂々と歩く。

 ああ、興奮する。

 早く襲いたい早く女の子に出会いたい。

 早く女の子をポケットに入れたナイフで……「切りつけたい」。

 

「んっ!」

 

 そんな言葉を口走りそうになった口を自分の手で無理矢理押さえつけた。

 そうするとどうだろう?こんな人気のない真っ暗闇の街道の中一人、少女が歩いてくる。

 赤髪の女の子、活発そうな元気な子だ。

 遊びの帰りかな?

 ああ、危機管理がなっていないよ。

 最近は通り魔が出るって話、聞いていないのな?

 それとも、自分は安全だとかそんな事思っているのかな?

 ああ、それはイケナイな私が友達や学校だけじゃ学べないことを教えてあげよう。

 

「ヒヒ」

 

 ちょっと笑いをこぼしてポケットに入っているナイフいつでも取り出せるようにする。

 ああもうちょっと後二、三歩。

 一。

 二の。

 今だ!

 

「こんばんは?お嬢さん?」

 

 そう言って私はポケットの中で握り締めたナイフを振り抜いた。

 

――――――――――――――

 

 

「手を出しちゃいけないって言ったのに。しょうがない人……ふふ」




最後まで読んでいただきありがとうございました。

もう少し日常回は続きます(あと一、二話?)。
中学校編は番外を含めなければ三~四話ぐらい続くと思いますのでお願いします。

次回の投稿は早くて今月、遅くても来月には投稿出来ると思います。

それとR-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただきましたので興味がありましたらご覧下さい。

では皆々様

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