IS ~彼岸花の思い鈴蘭の如く~   作:まうす〜

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《友達って》
「大事だよ家族と同じようにな」
「ん?大切!」
「大事に決まってるじゃない!」
「大切だ!……妹の次に」
「彼方さんの次の家族の次には大切です!」
「は!大切に決まってるだろ!」
「友人と言える人物は…いると言えばいるか、大切だよ」
「大切、自分の命よりも」



【大切だよ今も昔もこれからも】


5話【足りない】

 肌に汗が張り付く感触を心地よく感じながら今日も私は歩いていた。

 格好はキャップ以外は昨日と全く同じ。

 昨日切りつけたあの赤髪の女の子、あの子にまた会えるかな?

 可愛かった、今まで切りつけてきた子の中で一番だったかもしれない。

 今度はどこを切りつけようか?

 ああでも今度はもっと違う手段で……こっちにはナイフがあるんだ抵抗なんてしないはず。

 

「は、は」

 

 ん?誰か走ってくる女の子?こんな時期にフードなんかして不思議な子だ……

 あれ?でも、もしかしてあの子は!?

 ああ素晴らしい…これはきっと運命だ!

 フードは傷を隠してかな?深くかぶってこっちに気づいてない?いけないじゃないか……前方不注意だよ!

 

「やあ、こんにちは」

 

 そう言って私は走ってくる彼女にナイフを突き出す。

 これで大抵の子は怖がって動かない。

 

「ひ!」

 

 あれあの子はこんなハスキーな声だったか?

 体格もちょっとあの子より大きいな。

 ああ、もしかして人違い?残念だ……

 まあいいさ、あの子はまた今度でも狙ってみよう。

 今はこの子をどうするか?

 

「おっと、大声を出さない方が良いよ?もし出すなら、分かってるね?」

 

 そう言ってナイフを更に突き出す。

 

「は、はい」

 

 ああ、イイ!イイね!従順な子は最高だ!ウチの糞女よりも遥かにイイ!

 

「あ、あのもしかして噂になってる通り魔さんですか?」

「ん?ああそうさ。知ってるのかい?」

「昨日、私の友達を切りつけたのもあなたですか?」

「んん?もしかして君は昨日の赤髪の子と友達かい?ああ!その通り昨日の犯人は私だよ!」

 

 あれ?どうして私はこんなに饒舌なんだ?

 いつもならすぐに切りつけて終わりなのに?

 まあ良いさ。

 

「そうだ!君もあの子みたいに同じ所に傷を付けてあげるよ!仲良くね!」

「黙れよ」

 

 男の声、そう思った瞬間切りつけようとしたナイフは女の子のいつの間にか身に付けた黒い手袋に握られていた。

 

「おお凄い。本当に切れてない、響さんに感謝しなきゃ」

 

 そう言ってフードを脱ぐそこには片目が軽く隠れた黒髪の男……

 

「お前は男か!」

「はいそうです。それじゃ」

 

 いつの間にか私は仰向けになっていた、意味が分からない。

 男は私に馬乗りになっている片手にはナイフを持って。

 ナイフを持って!?まて!待て待て待て!?

 それで一体どうするつもりだ!?

 

「待ってくれ!それでいった――!?うぅ!?」

 

 なにを!?と聞こうとした瞬間、男は躊躇なく顔面を殴りつけてきた。

 痛い!生まれてこの方殴られた経験をなんて一度も無いのに!

 

「黙れよ」

 

 私を見下ろす男の目は冷たく人を今にも殺してしまいそうな目をしている。

 違う……殺してしまいそうじゃなくて。

 

「あ!そうだオジサン!良い事教えてあげますよ!」

 

 そう言う男の目はさっきと180度変わって楽しそうな玩具を見つけた子供のような目で。

 ああやっぱりだ。

 

「ここ、人が絶対に通らないらしいですよ?」

 

 この男の目は人を殺す目だ。

 

「だから一杯楽しみましょうね!」

 

 ……

 …………

 

「助けてくれ……」

「え?どうしたんですか?」

 

 押さえつけられて十数分程たった、体には五箇所の切り傷といくつかの殴られた場所がヒリヒリする。

 

「頑張ってください!後もう二つなんですから!そうですよね?確か被害の数が七だから……うん!もう少し!頑張りましょう!」

 

 そう言って男は笑顔で私のナイフでゆっくり、ゆっくり首元に切りつける。

 最初は足首、次は太もも。

 切りつける度に場所が上に上に上がってくる。

 辺は軽い血の匂いが充満しつつある、なんで!?なんで誰も気づかないんだ!?

 こんな異常な光景に!?

 

「ん?ああ目撃者に期待しても無駄ですよ。ここら辺は今、開発地区なのでお昼は工事の人とかがよく出入りするんですけど夕方からは一切人は通らないんですよ。これで六つ目!っと」

「つぅ!」

 

 首元に切り傷を付けた男は満足そうな顔をする。

 痛い痛い痛い痛い!

 体が火傷したみたいに熱く感じる、喉が渇いた……

 

「ぅぐ!?」

「じゃあこれで最後です!」

 

 男はナイフを振り上げる。

 ああやっと終わるそんな安心感、だがそれはナイフの切っ先を見て絶望に変わった。

 

「ま、待ってくれ!き、君は一体どこを切るつもりだい!?」

「んー?目?」

 

 そう言って男は一切表情を変えずにナイフを。

 

「や!?」

「止めないよ」

 

――――――――――――――

 

 

《女子学生無差別通り魔事件報告書》

 

担当者:●●● ●●

 

一ヶ月前から起きた●●町での切り裂き魔事件。

被害件数は七件、初期の犯行当初は早期の解決になると思われていたが警察が事件の犯人を直接捕らえることは出来なかった。

当時、分かっていた事といえば黒いフード付きコートとつばの長いキャップを身につけていること。

コートの方は特注らしく販売元の特定は困難とされ、キャップの方は中国の粗悪品を複数使っているため販売元の特定は出来たがそこから先の特定は困難であった。

犯行については最初から四件目まではただ女子学生の胸部を切りつけていただけであったがそれ以降から内容、目的が変わっている。

五件目の●●●さんが被害にあった際、犯人はこれまで通り胸部に深く切りつけるのではなく右腕の手の平に浅く切りつけた。

●●●さんは浅く切りつけられただけということもあってかこれだけでの警察の通報はしていなかった。

 

※後日、事情を聞いたところ自身が在学する学校内でそういった噂が流れるのを嫌って通報しなかったと供述している。

 

だがその二日後●●●さんの前に通り魔、容疑者●●が再び現れ今度は反対の左の手の平を浅く切りつけその際に一言、「また会おうね」と言って逃走した。

それによって事の重大さに気づいた●●●さんは警察に駆け込み五件目と六件目の被害者となった。

更に最後の七件目の被害者●●●さんの時は被害者に挨拶をした後、顔面のオデコに浅く切りつけた。

だがその七件目の●●●さんの事件の二日後に容疑者●●が血だらけで●●交番に這いつくばるようにして出頭してきた所を巡回中であった警察官が発見、確保。

出頭した際には早く捕まえてくれ、殺さないでくれ、助けてくれと懇願し錯乱していた。

その後検査した際、容疑者の体から第三者からと思われるいくつかの打撲痕と事件の数と同じ切り傷が見つかりこれが出頭する切掛けになったのではと予想される。

これについて理由を問いただしたところ知らない、記憶にはないの一点張りで恐らく今まで被害にあった被害者の身内による報復と見て目下捜査中である。

だがこの女子学生無差別通り魔事件はこれで解決になっただろう。

心残りは容疑者に危害を加え出頭までさせた第三者の存在と容疑者の居場所を特定した手段である。

 

※今回の容疑手の詳しい情報は外部資料1-1、被害者の被害状況については外部資料1-2を参照されたし。

 

以上

 

――――――――――――――

 

 

「で、これを俺に見せてどうしろと?」

「君が彼に教えたんだろ?」

「ええ、まあ。電話が来たんすよ、助けてくれって」

 

 夕焼けに染まるLgel本社の社長オフィス、いるのはいつもの二人。

 一人はいつもどおり飄々(ひょうひょう)とした表情で机に座ってもう一人の方を見ているこの会社の主。

 もう一人はこの会社の主から渡された書類に目を通しながら会話しているここで働くアルバイト。

 

「だから助けたのかい?僕の会社の衛星まで使って?」

「はい使いましたよ?だって言いませんでしたか?今後君には極力協力するって」

「ああ、そう言ったがそれはこちらからの協力で君が無断で使って良いとは言ってはいないはずだ」

「そうですか?まあ!過ぎたものはしょうがないですね!?でも驚きましたよ?ただのゲーム会社が人工衛星なんて持ってるんすから!」

 

 そう言って無断でLgelの人工衛星を使った村樹饗は豪快に笑う。

 その言葉に社長、藤堂綾鷹は少し顔を歪ませるがすぐに元の不敵な笑みに戻す。

 

「ああそうだね。じゃあ君があれを使って何か得をしたのかい?あんな――」

「復讐ですか?」

「ああ。復讐は無駄だなんて言わないが、でも今回の件はそんな事はしなくても解決できた」

「足りない」

 

 そうボソッと村樹は呟いた。

 

「足りないと思ったんす。あれだけじゃ、大切な友達や姉貴分といきなり離れ離れ。ああそいつは可哀想……でも足りない。そんだけの不幸じゃアイツは力を発揮できない。だからもっと不幸をもっと、もっと」

「力?」

 

 その言葉にバッと顔を明るくさせる、まるで自分の好きな映画を褒められたみたいに。

 

「ええ!見たでしょ!?あの時のアイツを!でも足りないんですよ!もっと、もっともっともっと!アイツは強くなれる!強かった!だから!」

「その気持ちは、昔の。前世の君の記憶なのかい?それとも今の君?」

「ああ……すいません。まだ分からないです。でも心の中で、直感かもしれないけどそんな感じがするんです!」

 

 そう言う自信満々の顔に藤堂は呆れるような顔をして肩をすくめる。

 まあしょうがない、この程度はまだ誤差範囲とでも言いたげに。

 

「まあ良いや。今日はご苦労様、帰ってもいいよ。ああそれと…君は本当にこっち側なんだね?」

「ええ多分!まあ自分はあなた方と違って持ち越しは無いのでハッキリとは言えませんがね!?ほんじゃま!俺は帰ります!お疲れ様でした!」

「お疲れ様」

 

 そう言って村樹を見送って机に備え付けられたパソコンのモニターを見る。

 

「不幸を与えれば強くなる、力を取り戻す、か」

 

 そこには来年度の第2回モンドグロッソ特別招待券についてと映し出されていた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。

次も日常回?になります、本編開始までもう少し、もう少しです。
ですので本編開始ははもう少々お待ちください。

次回の投稿は今回同様早くて今月、遅くても来月には投稿出来ると思います。

それとR-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただきましたので興味がありましたらご覧下さい。

では皆々様

待てしかして希望せよ
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