「うー、寒っ……」
二月の中頃俺、織斑一夏は高校受験のまっただ中にいる。
「なんで一番近い高校の試験受けるために四駅も乗らなきゃいけないんだ……。しかも今日、超寒いじゃねーか……」
昨年のカンニング事件、そのせいで各学校は試験会場を二日前に通知するっていう政府のお達し。
そんな無茶苦茶に心の中で愚痴りながら試験会場に向かっている。
俺が受けようと思っているのは私立
そんな三種の神器を備えた学校に入れば千冬姉に楽をさせられるというものだ。
「…先のことはまず受かってから考えよう」
余計なことを考えず今は目の前にひかえた試験に集中しようと思った時。
不意に俺はアイツを思い出した。
「彼方……」
俺と同い年でほぼ兄弟とも言えたあいつ。
俺のせいで深い傷を負ったあいつを。
片目を髪で隠した暗そうに見えて実はとっても明るくて楽しい親友。
そう、まさに試験会場の多目的ホールでキョロキョロしている奴にソックリな……
ソックリ?
「え?あ?彼方?」
「へ?一夏?あ、一夏だ」
そんなちょっと間の抜けな懐かしい声に目が熱くなるのを感じて俺は一年以上あっていなかった親友に抱きついた。
「彼方ー!」
「ちょ!?え!?い、一夏離れて!」
俺の抱きつきを無理矢理引き剥がそうとする彼方。
はて?こいつこんなに力強かったか?
そう思いながら
「彼方!お前傷はもう良いのかよ!?」
「ん?あーアレね。ん、大丈夫。藤堂さんの所でリハビリしたからね!」
そう言って自分の背中をバンバン叩く彼方。
彼方はあの時、脊髄を傷つけたって言っていたがこの様子だともう完治しているらしい。
「そういや!なんで連絡してくれなかったんだよ!俺も千冬姉も心配してたんだぞ!」
「ごめん……僕がしてたリハビリってけっこう極秘だったみたいでさ?他言無用だったんだよ、でも今こうして動けるんだから、さ?」
確かにそうかもしれんがちょっと納得できない。
そう思っていると彼方は頭を軽くかきながら聞いてくる。
「あ、あのさ一夏?聞きたいんだけど藍越学園の試験場所ってどこだか分かる?」
「え、お前も!?」
本日二度目の衝撃、こんなに衝撃を受けて俺は無事にテストを受かるんだろうか?
「一夏も?」
「おう!なら俺に任せとけ!案内してやるよ!」
そう言って彼方の前を歩く俺、口がニヤけているのを隠しながら試験会場に向かった。
「一夏ー」
「すまん迷った」
歩いて数分、俺らは迷っていた。
決して俺は方向音痴ではないただこの建物の造りが迷路のようになっているのが悪いんだ。
「ええい、次に見つけたドアを開けるぞ、俺はだいたいそれで正解なんだ!」
「本当に大丈夫ー?」
うう、彼方の視線が突き刺さる!
気にするな!ちょうど目の前にドアもあるし開けるぞ?開けるからな!?
おじゃまします!
「あー、君。受験生だよね。はい、向こうで着替えて。時間押してるから急いで」
部屋に入った途端、神経質そうな女性教師に言われる。
相当忙しいのか俺らの顔も見ずにパパッと指示だけして出て行った。
「着替え?」
そう呟く彼方。
(はて着替えとは?ああカンニング対策か、このご時世ごくろうさまなことだ)
そう思いながら目の前にあるカーテンを開ける。
そこには。
「ん?」
「え」
ひざまずいた鎧のような“何か”があった。
「っ」
それを見た瞬間の彼方の辛そうな顔。
理由は分かる、きっとコイツは“コレ”に嫌そうな顔をしたのではなくそれを取り巻く環境にそうなったんだろう。
俺らをバラバラにした環境を……
目の前にあるものそれは普通に生活しているのであれば誰でも知っているもの。
「IS」
正式名称は“インフィニット・ストラトス”宇宙空間での活動を予定されていたマルチフォーム・スーツ。
製作者の意図とは異なって“兵器”になった機械。
まあ兵器と言っても欠陥があるわけだが。
「なんで女にしか使えないのかねー?」
「一夏!」
そう言いながらISに触れる、瞬間。
「え?」
キンッと金属質な音が頭に響く。
それと同時に流れてくる膨大な情報の数々。
「嘘」
数秒前まで知り得なかった“IS”の知識を理解できる、認識できる。
視覚野に接続されたセンサーで周囲の状況を数値で知覚させ直接意識にパラメーターを浮かび上がらせる。
「な、なんだ……?」
「う、嘘だよね一夏?」
動く、“IS”が。
女しか動かせないと言われていたものが動く、まるで自分の手足のように。
「お前まで置いて行くのかよ……一夏!」
興奮する感情で彼方の声は気にならなかった、聞こえなかった。
ISを通して見る世界がとっても――
「もう置いて行かれるのは嫌だ!」
いきなりの大声、不意に声の方を見ると彼方が俺の乗っているISに触れていた。
軽く目を見開いて。
まるでさっきの俺みたいに。
「え?これって」
「彼方?」
動かない彼方を心配そうに見ていた瞬間。
「き、君たち何してるの!え、嘘!?」
先ほどの神経質そう女性教師の声に驚いく。
『メインパートナー接続、続いてサブパートナー接続……初めまして■■■■』
そんな脳内に響く声、最後の言葉を聞くことは出来なかった。
――――――――――――――
そんなこんながあって俺は、俺達はIS学園の入学試験を受けるわけになった。
意味が分からん意味不明だ。
「なんだったんだろ?」
さっきの試験もそうだ、ISを動かして試験官を倒せ。
そんな無理ゲーな事を言われたと思えば相手の自滅でこちらの勝利。
どうも試験官の方は男性の
試験官なのに……あ、そうか女しかISは乗れなかったかそういや。
それならしょうがないなー、うんうん。
『では……音無彼方さん、入ってください』
心の中で自問自答していると不意に試験会場の体育館内に響くアナウンスで俺と同じようにISを身に付け片手に模擬刀を持った彼方がやって来る。
足取りは危なげでいつ転んでもおかしくなさそうだ。
さっき俺の相手をしていた試験官も心配そうにオロオロしている。
「よろしくお願いします」
「あ!よ、よろしくお願いします!」
礼儀正しくお辞儀する彼方、それに釣られて試験官もお辞儀する。
おいおいお見合いかよ。
「では参ります」
「は、はい!」
彼方は体をかがめる、走るようにして。
相手もそれを知ってか手に持った模擬刀を握りなおす。
今、熾烈な戦いが始まろうとしていた!多分。
「はれ?」
「え?」
瞬間、彼方の乗るISの後ろ後部スラスターに光が集まり消えた。
そうして気づいた時には試験官の目の前にまで近づいていた、勢いをそのままに。
「はにゅ!?」
「ひゃ!?」
「痛っー」
「イタタ」
あ、ぶつかった。
まあバリアがあるから大丈夫か。
彼方も大胆だ、まるでキスするみたいな姿勢になってるぞ?
「「ん!」」
「あ」
『あ』
前言撤回キスをした。
てかヤバくね?あの姿勢まるで彼方が試験官を押し倒してキスしてるみたいだぞ。
『な!?試験は終了!教員は今すぐ彼らのサポートを!受験生の安全を最優先に!』
うお!驚いた、さっきから聞こえるアナウンスの声、千冬姉に似ててどうも苦手だ、よく殴られていた頭頂部がズンズンする。
「ふえ?あ!彼方くん!大丈夫ですか!」
「え、ええ大丈夫です。そちらも大丈夫でしたか?」
急いで駆けつけた教員に二人は引き剥がされる。
当の彼方本人はボーッとしてキスをした試験官は心配そう覗き込んでいるようだが。
「え、あ……あぁぁ」
覗き込んですぐにゆでダコみたいに顔を真っ赤にして気絶する試験官。
きっとさっきキスしたことを思い出したんだろう、かわいそうに。
「や、山田先生!?ちょ!担架!誰か担架を!君は大丈夫!?」
「え?あ、はい大丈夫です。あ、でもちょっと眠くなってきましたお休みなさい。ぐぅ……」
「ええぇぇ!?ちょ!?担架追加!受験生寝ちゃった!?急いで!急いで!」
うーむカオス。
そうしみじみ思いながら試験会場の観覧席で眺める俺。
手に持ったお茶をすすって一言。
「これからどうなるんだ?」
後日、国からIS学園の入学についての様々な資料が届いた。
どうやら今後三年間はそこに通わなければ行けないらしい。
ふー、とため息。
「ま、なんとかなるか」
彼方もいるし。
そう思いながら古くなった電話帳やいらなくなった雑誌を早朝に来るちり紙交換車に渡すべく縛っていた。
――――――――――――――
そのまた後日、弾にIS学園に行くことを伝えたら驚いた後、泣いた。
恨めしそうにうらやましい、うらやましいと呟きながら。
ついでに彼方のことを教えたら……
「お前らなんて友達じゃないからな!ちくしょー!!」
そう言って家を出て行った。
泣きながら。
「ちくしょー!!」
その後まる二日間、弾は家に帰って来なかった……
ま、どうでもいいか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
これにて中学校編はおしまい。
次回からはついに本編が開始します。
最初の投稿から約一年と四ヶ月長い道のりでした……まあ自分の投稿が遅いのが原因ですが。
次の投稿は少し遅れるかもしれませんがよろしくお願いします。
それとR-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただきましたので興味がありましたらご覧下さい。
では皆々様
待てしかして希望せよ