IS ~彼岸花の思い鈴蘭の如く~   作:まうす〜

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3話【箒、久しぶり】

「お前らそこに正座な?」

「お、俺は悪くないぞ!?」

「わ、私も悪くは!」

「あ?」

「「はい……」」

 

 あああ、めんどくさい。

 学園の寮、一夏と箒の部屋。

 正座するのはその屋主の二人、その目の前に立っているのはもちろん僕で。

 さっき箒の竹刀に当たった右頬がまだヒリヒリする。

 周りを見渡せば散乱する荷物に箒が突き破った穴のあるドア。

 そして何故かタオル一枚だけの箒。

 たく、本当にこいつらとときたら……

 

――――――――――――――

 

 

「はぁぁあ、意味がわからない。どうしてこんなややこしいんだ?」

「ややこしいから事前にテキストとかが届いてたんだろ?一夏のせいだよ」

「くっそー」

 

 楯無先輩に会った後、無事に教室に着き午後の授業も無事に済ませた放課後。

 机の上でぐったりとする一夏を見下ろしていた。

 

「ああ、音無くんに織斑くん。まだ教室にいたんですね、よかったです」

 

 その声の方を向くと山田先生が書類を片手にニッコリとして歩いてきた。

 何度も思うけど本当にちふ姉と同じぐらいの年なんだろうか?

 

「お二人の寮の部屋が決まりました」

 

 そう言って僕らに部屋の番号の書いた紙と鍵を渡される。

 

「あれ?俺の部屋って決まってなかったんじゃ?一週間は自宅からの通学って聞いてましたけど?彼方もだよな?」

「ん?僕は別に元々寮で生活するって聞いてたし荷物ももう運んでもらってたよ?」

「あり?」

 

 まあどこの部屋で生活するかは聞いてなかったけどね。

 ちなみにこのIS学園は全寮制になっている、まあ理由としては僕ら未来あるIS操縦者の保護らしいが何とも怪しい話だ。

 

「そうなんですけど。事情が事情なので一時的な措置として部屋割りを無理矢理変更したそうです」

 

 そう言いバツを悪そうにする山田先生、別にいいのにそんな気にしなくても。

 

「本来であれば音無くんと一夏くんの相部屋にする予定だったのですが今回、政府特命もあって準備が間に合わなかったので音無くんは相部屋を一人で。一夏くんは違う人との相部屋でお願いします。もう一ヶ月すれば音無くんとの相部屋もしくは個室を用意できるので我慢してください」

 

 なるほど、ん?一夏が女の子と相部屋?何だろうとてつもなく嫌な予感がする。

 

【それは予感じゃないぞ】

 

(じゃあ何さ?)

 

【必然だ!】

 

(なるほどなー)

 と言うか女子と男子一緒の部屋で同居ってそれで良いのかIS学園。

 

「あれ?俺の荷物って?一回家に帰った方が良いですよね?」

「ああ、それなら――」

「それなら私が手配しておいてやった。ありがたく思え」

 

 山田先生の言葉の続きを言ったのはいきなり現れたちふ姉で、一夏の方は固まっている。

 と言うかちふ姉、気配を消して現れるのはやめてほしい、心臓に悪い。

 

「すまんな音無」

 

 いやあの……心を読むのやめてね?

 

「善処する」

 

 あ、善処するだけなのね。

 

【と言うか何で千冬さんは心読めんだよ!?】

 

(だってちふ姉だし?)

 

「ああ、話が逸れたな。まあ着替えと、携帯の充電器は用意しておいた。遠分はそれで我慢しろ」

「じゃあ時間見て部屋に行ってくださいね。夕食は午後の六時から七時、寮の一年生用の食堂で取ってください。ちなみに寮の方には大浴場があって学年ごとに使える時間が決まってるんですが……まだ音無くん達の時間を作れていないので自室のシャワーで我慢してくださいね?」

「分かりました」

「えー?」

 

 一夏よ文句を言うのはやめなさい。

 

「じゃあ私達はこれから会議があるから失礼する。二人共、さっさと寮に向かえ。迅速にな」

 

 そう言いながら教室を後にするちふ姉と山田先生。

 そんな二人を見送ってお互い顔を合わせる。

 

「じゃあ行こっか?」

「おう」

 

 そう言って寮に向かうことにした。

 廊下で待ち伏せしている人たちを無視すると決めて。

 

「じゃあ僕この部屋だから」

「おう、じゃあな」

「心配だから後でそっちに行くよ」

「心配って、大丈夫だろ?」

「一夏じゃなくて相部屋の女の子が心配だからだよ……」

「?」

「この朴念仁が」

 

 一夏も自分の部屋に向かい僕もこれから何年間かお世話になる部屋のドアに鍵を差し込み開ける。

 

「おお」

 

 とりあえず第一印象はホテルみたいな部屋。

 そこにキッチンもあるんだから驚きだ。

 

「準備が間に合わなかったてのはこれかー」

 

 確かに広さで言えば相部屋だと思う。

 でもベットが置いてあるであろう場所には一つしか置いてなかった。

 

「荷物はーっと」

 

 自分の荷物を探す、ベットのすぐ脇に大きめのキャリーバッグが置いてあった。

 それを開けて中身を確認する。

 中は服などの生活必需品、それに暇つぶし用の本数冊。

 そうして藤堂さんに渡された衛星電話。

 それを確認してバックを閉じる。

 藤堂さんに今日のことを相談する前に、一度一夏の様子でも見に行こう。

 

「おーい一夏?」

 

 一夏に教えられた番号の部屋に着く。

 道中女の子に何回か話しかけられたけどそれをやんわり受け流して。

 

「あり?一夏どうしたの?」

「はぁはあはあ、ああ彼方か。助けてくれ!」

 

 何故かそこには自身の部屋の前でドアを背にして呼吸を荒らげる一夏が。

 

「どしたの?」

 

 事情を聞こうと近づくと僕。

 

「ちょ!ま!近づくな!」

 

 それを止めようとする一夏、でも僕はそのまま歩いて。

 

「ん?どうしたのさ?」

 

 そうして一夏の目の前に着た瞬間。

 ボキャ。

 

「「……」」

 

 突如、目の前にあるドアから竹刀らしき物が一夏の顔面すれすれで生えてきた。

 えーと、どういう状況?

 そう思った瞬間。

 ボキャ。

 

「あ」

 

 そんな音と誰かの声と同時に僕の頬を竹刀がなぞる。

 

「……」

「おい!箒!いい加減にしろよ!彼方に当たったぞ!」

 

 そうかー、一夏と同室は箒だったんだー。

 はっはっはっはっはっ……

 

「な!?ほ、本当か!?」

 

 そんな箒の声。

 それと同時にドアが勢いよく開く。

 

「ぐえ」

 

 そうしてドアに貼りつていた一夏は必然的に吹き飛ぶわけで。

 

「大丈夫か彼方!?」

「俺は?」

「すまない彼方……」

「あれ無視?」

「箒、一夏」

「「は、はい」」

「とりあえず二人共部屋に入ろうか?」

 

 ニッコリと笑顔で二人に提案する。

 さっきの箒の竹刀の音で廊下には野次馬が集まり始めていた。

 これ以上周囲の人に迷惑をかける訳にはいかない。

 

「さあ?入ろ?」

「「ひ!?」」

 

 僕の言葉に脱兎のごとく部屋に入る一夏たち。

 廊下にいる人たちにペコリと一礼して僕も一夏たちの後を追って部屋に入った。

 

「お前らそこに正座な?」

「お、俺は悪くないぞ!?」

「わ、私も悪くは!」

「あ?」

「「はい……」」

 

 冷たい床に正座する二人。

 その姿を見て少しため息をつく。

 

「まず最初に箒、久しぶり」

「あ、ああ。久しぶり」

「うん、やっと言えた。昔と全然変わってないみたいだね?まあ……力はついたみたいだけど」

「そ、それは!」

「うん、まあそこは良いよ。ま、話す前に箒はちょっと着替えてきなよ?」

「え?」

「今の姿、僕も一夏も刺激がちょっと強いかな?」

 

 そう言いながら箒の胸元の方に露骨に視線を送る。

 

「へ!あっあぁあ!」

 

 ちなみに今の箒の姿はタオル一枚だけという刺激的な姿なのだが、まあ僕も一夏もちふ姉のおかげで耐性は少しばかりはあるけど。

 あの同年代の中では大きいほうだと思われる女性特有の脂肪の塊は少しマズイ。

 そうして今の自分の姿を自覚した箒は一目散に自分のベットの方に駆け込んでいった。

 

「一夏、彼方!」

「はいはい、後ろ向いてるよ。はい一夏もねー」

「お、おう」

「覗くなよ」

「覗かないよ」

「覗かねえから!」

「む」

 

 僕らの返事に不機嫌になる箒、めんどくさい。

 一夏に見て欲しいなら欲しいってハッキリと言えばいいのに。

 

「すまない」

 

 そう言って僕らの元にやってくる箒。

 なんと言うか寝巻きが浴衣って言うのは箒らしいと言えばらしいのかな?

 似合ってるし。

 

「ん、じゃあもう一回そこに正座して」

「はい」

 

 こほん、そう一つ咳き込んで一言。

 

「どうしてこうなったの?」

「一夏が私の裸を見たからだ」

「ち、違う!あれは事故で!」

「一夏」

「はい」

「詳しく」

「はい、部屋に入ったら箒が風呂から出てきました」

「箒」

「風呂から出たら一夏がいた……」

「成程」

 

 ふむふむ大体現状は理解できた。

 まあここは。

 

「どちらも両成敗!」

「痛っい!」

「痛!」

 

 ゴチンと二人の頭を一殴り。

 うん、いい音だ。

 

「一ヶ月は一緒に暮らすらしいんだから二人ももうちょっと仲良くね?」

「な!?」

「あーそういやそうだっけか?」

「か、彼方!それってどういう!」

「まあ後は仲の良いお二人に任せて僕は部屋に戻るよ」

「ちょっと待ってくれ彼方!聞いてないぞ!」

「まあ僕らもさっき知ったしね?まあ何かあったらちふ姉にでも言えばいいさ」

「それで納得するとでも!?じゃあ一夏と彼方は部屋を変えてくれよ!?」

「嫌でーす、こんな暴力振る女の子とは一緒の部屋になりたくありませーん」

「うううぅぅ」

「まあまあ箒?一ヶ月だけ、仲良くしようぜ?」

「どうしてお前はそんなに冷静なんだ!?」

「ごゆっくりー」

「くそーー!!」

 

 箒の虚しい叫び声を笑顔で聞きながら部屋を後にする。

 穴の空いたドアに頬を引きつらせると廊下に見知った子が立っていた。

 

「あれ?のほちゃん?」

「あ~カナリンやっと出てきた~。じゃあ行こっか~?」

「へ?」

 

 僕の手を引くのほちゃん、僕としては意味不明な状況。

 

「え、あの?のほちゃん?どうしたの?」

「まあまあ~、気にしない気にしない~」

「て、え?」

 

 ズルズルと引きずられるようにして着いた所は何故か僕の部屋で。

 

「ちょっと待ってね~?」

 

 そう言って取り出す不思議な形をした二本の針金。

 それを扉の鍵穴に差し込んで……

 ガチャリ。

 

「じゃあ入ろっか~」

「……」

 

 ツッコミが追い付かない、どうして僕の部屋を知っていたのか。

 どうして鍵を開けられるのとか……

 

「カ~ナリン、傷見せて?」

「わ!ちょ、のほちゃん顔近いよ!?」

 

 ベットに無理矢理座らされた僕にニコニコーとしたのほちゃんが顔を覗き込むようにして迫ってくる。

 

「じっとしてて~」

「わ!……あれ?」

「ばんそうこうだよ~」

「あ、ありがと」

 

 どうやら僕の頬の傷にばんそうこうをしてくれたらしく、のほちゃんはそんな僕を見て満足そうな顔になる。

 

「あ、それと早く治るおまじないもね~?」

「おまじない?」

「うん!お・ま・じ・な・い!ん!」

 

 瞬間、頬にばんそうこうの貼ってある場所に柔らかいものが押し付けられたような感触。

 

「へぁ?」

「へへへ~じゃあまたあした~」

 

 その感触の正体を理解する前に部屋を出て行くのほちゃん。

 ちょっと待って今のってもしかして……

 

「……お風呂入ろ」

 

 熱い、今ので体温が五、六度上がった気がする。

 シャワーでも浴びて冷まそう、そうしよう。

 シャワー中、のほちゃんに貼ってもらったばんそうこうが気になったけどはがす気にはならなかった。

 

【zzz…】

 

(声聞かないなーって思ったら寝てたの!?)

 

――――――――――――――

 

 

「ふぅ」

 

 お風呂から上がって一息。

 

「おっと、忘れるところだった」

 

 そう言って藤堂さんに渡された衛星電話を取り出す。

 見た目は軍人さんが使う無線機を少し薄く小さくしたようなデザイン。

 藤堂さんが言うには電波が届かない場所でも宇宙の人工衛星を介して電話できるらしい。

 まあ試してないから分からないけど。

 もし何かあれば電話してくれと渡された物だ。

 

「あ、もしもし。どうも彼方です、お電話大丈夫ですか?」

『ああ、彼方くん。今は大丈夫、どうしたんだい?』

「はい、学校の方には無事入学。クラスの方は……来週模擬戦が行われる事になりました……」

『ほう?相手は?』

「セシリア・オルコット、イギリスの代表候補生です」

『ああ、イギリスの。成程ねつまり今日電話してきたのは』

「はい、僕のISを来週までに届けて欲しいんです」

『良いよ。元々それまでには届ける予定だったからね』

「ええ、そう言えば僕が乗るISについて何にも教えてもらってないんですけど?」

『ん?そうだね、まあ当日までのお楽しみってことにしておいてくれるかな?きっと驚くからさ』

「そうですか?分かりました、では当日までのお楽しみにしておきます」

『いい返事だ、全く国も君みたいにゆっくり待っててくれるとどれだけ嬉しいか……』

「最近大変なんですか?」

『うん、まあね。去年からIS事業に進出したlgel。ものの一、二年でISコアの保有を許された分期待が強くてねー……おっと失礼。つい愚痴をこぼしてしまったよ。まあ来週の模擬戦には間に合うようにするか気にしないでくれ。それと……彼方くん。君はまだ……記憶が戻らないかい』

「……はい」

 

 一夏にも箒にものほちゃんにもちふ姉にも教えていない事。

 僕は、僕達は脊髄を傷ついたあの日から後、入院してから藤堂さんの所でリハビリしていた事がおぼろげでしか覚えていないんだ。

 

『そうか……まあ前向きに考えよう。恐らく君のそれは何か強いショックを受けたものだろう、次第に良くなるとドクターは言っていたよ。だから安心したまえ』

「あ、そうなんですか?分かりました、信じます」

『ああ、信じてくれ。決して僕らは君を裏切らないからね』

「ええ、分かってますよ。では藤堂さん、また連絡します」

『ああ、僕も近々そちらに行くと思うからその時はよろしく』

「ええ、分かりました……」

 

 そう言って電話を切る、そうして思い出す。

 リハビリの時の思い出を、思い出すのは血の匂いと痛み。

 それと顔も思い出せない数人の誰か。

 でもまあ、いつか思い出すらしいからそこまで焦らなくていいかな?

 

「めんどくさい」

 

 呟いて目を閉じベットに横になる。

 そうして夢を見る、自分が飛んでいる夢、自分が炎の中にいる夢を。

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回ついにセシリア・オルコットとの対決、予定では前編後編でお送りする予定です。
自分としては初めてのちゃんとした戦闘回なのでうまく書けない、かもです。

それとR-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただきましたので興味がありましたらご覧下さい。

では皆々様

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