IS ~彼岸花の思い鈴蘭の如く~   作:まうす〜

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4話【装ちゃあぁぁくぅ!】

(ああ、ドキドキする。緊張するよ此方!)

 

【嘘つけ明らかにそれ武者震いの類だろ】

 

 オルコットさんと約束した日。

 入学式からきっちり一週間後の月曜日。

 大きなハプニングもなくその日はやって来た。

 

「くっそー」

 

 僕の横には悔しそうにする一夏。

 ちなみに一夏対オルコットさんとの試合は今さっき終わったばかりだ。

 結果は一夏の負け。

 まあ、ほぼ初めて操縦してあと少しの所で負けたんだ。

 完全な負け、恥ずかしい試合では無かったのはクラスの皆も分かっているだろう。

 まあでも敗因が……

 

「自爆ってカッコ悪いよなー」

「ううぅ!」

 

 そう、自爆。

 一夏に渡された専用IS、“白式(びゃくしき)”。

 武装は刀の形をした近接ブレード一つだけの変わり玉、対してオルコットさんのIS“ブルー・ティアーズ”は遠距離型の武装を主にした機体だ。

 一方的な試合になると思われもう少しで負けそうになる瞬間、一夏のISは一次移行(ファースト・シフト)した。

 一次移行って言うのはどうもISがその人の専用になる証らしい。

 その証拠に最初に見た白式の凹凸のあるフォルムは曲線とシャープなラインが特徴的なデザインに変化。

 その時に一夏の持つ近接ブレードも変化し近接特化ブレード“雪片(ゆきひら)弐型(にかた)”となった。

 “雪片”、ちふ姉がまだモンドグロッソに出ていた頃に使っていた専用IS武器の名称だ。

 姉弟揃って同じ武装には僕も驚いたけど“雪片”の特徴は相手のバリアーを無効化して相手に切りつけることが出来る近接ブレード。

 それだけ聞けば強力だが欠点がある、これを使用する際にISの命とも言えるシールドエネルギーを消費するのである。

 まさしく諸刃の剣、まあそれを思い出せなかった一夏は自分の武器でシールドエネルギーを無くし試合終了、一夏の負け。

 ただその時に見せた一夏の初めてとは思えない戦闘に会場になった第三アリーナは興奮の熱気に包まれていた。

 

「まあ、お疲れ一夏」

「おう」

「悔しい?」

「ちょっとな」

「ん、そっか」

 

 そこまで気にしてる様子はなく一夏は次を楽しみにしているようだ。

 次、つまり僕とオルコットさんとの対戦な訳だけど……

 

(勝てる気しないなー)

 

【だろうな、行けても引き分けって所か?】

 

(行けても、ね)

 

 今さっきオルコットさんとの試合を見て思った一番の感想。

 勝てない。

 さすがはイギリスの代表候補生だ。

 今まで積み上げてきた技術に勝つと言う気力、どちらも僕だけでは負けるだろう。

 でも……

 

「彼方」

「ん?」

 

 声をかけてきたのは箒、この一週間でだいぶ態度が昔に戻ってきたのがとても嬉しい。

 まあこうなるまで時間がかかったのは大体が一夏のせいなのは言うまでもないが。

 

「がんばれよ」

「おう!」

「彼方くん!今すぐ来て下さい!」

 

【おお!遂に来たか!】

 

 そう返事をするとピットの搬入口から山田先生の声が聞こえた。

 その声に僕と一夏、箒は駆け足で向かう。

 僕が扱うISそれが一体どんなものなのかワクワクしているんだ、四人とも。

 

「「「は?」」」

 

【何これー?】

 

 そこには灰色のヘルメットが置いてあった。

 そうヘルメット、一夏の白式みたいに眩しいくらいの白をまとってる訳でも、オルコットさんのブルー・ティアーズのような綺麗な(あお)でもなく。

 ただ灰色でシャープなデザインのヘルメット、気になる所といえば赤い単眼のようなものが面の真ん中にあるぐらい、ただそれだけ。

 これをISと言われて信じる人はいないだろう。

 

「ひ、ひぃぃ!それがぁ。君のISさぁ!」

 

(【この声は!】)

 

 そんな異質なナニかを呆然と眺めていると後ろから僕にしてみれば聞き慣れた笑い声が聞こえた。

 

「久しぶりだねぇ!彼方くぅん!」

「ひ!」

「だ、誰だコイツ!?」

「お久しぶりですドクター」

 

 走りながら僕らに手を振る不健康そうな白衣の男性、lgel(イーゲル)の開発チームリーダー兼医療チームリーダー通称“ドクター”本名は誰も知らない。

 その独特な雰囲気と話し方に一夏と箒は身構え先程から僕らを待っていたちふ姉と山田先生は頬を引きつらせていた。

 

「まあ詳しいことはぁぁ装ちゃあぁぁくぅ!」

「へぼ!?」

 

《認証……認識。ようこそマスター》

 

 ドクターに無理矢理ヘルメットを着けさせられる。

 少し余裕のあったヘルメットの中は僕の頭に合わせるようにかしゅかしゅっと音を立てながら最適化され頭の中に誰かの声が響く。

 

初期接続(ファーストコンタクト)6%、一次移行まで約13分》

 

「それが君のIS“牡丹(ぼたん)”さぁ。存分に使いなよぉ?君専用、なんだからねぇぇ」

 

(牡丹……)

 

 そうして繋がる、“牡丹”に。

 自身の視覚野にこのISについてのステータスが表示されそれが直感的に理解できる。

 視界も360度全方位がISのハイパーセンサーのおかげで見えている、普通のひとであれば理解、認識できない情報量がISを通して処理、理解できる。

 だからこそ分かる、このISは異質だ。

 シールドエネルギーは他のISと同じぐらい

 ただ、ただISの武器を収納する拡張領域(バススロット)だけが他と比較して異常だった。

 量子変換容量は他のISに比較して約十倍、そしてその中に入っているのはたった二つだけ。

 一つはアームズとだけ書かれた機械じみた羽のアイコン。

 そしてもう一つが”打鉄”と表示されている。

 

「まさか」

「それは始まってからのお楽しみさぁ」

 

 不意にこぼした言葉、それに反応してドクターはそう言って自分の口元に人差し指を置いてこちらをジッと見ている。

 

「で、では音無くん。試合が始まりますから準備の方お願いします!」

「はい」

 

 山田先生はとても心配そうにこちらを見ている。

 そりゃそうだ今の自分の姿はとっても間抜けだ。

 ISを乗る際の男性用トレーニングウェア(ドクター作)にヘルメット型のIS?だけ。

 トレーニングウェアの方は半袖のシャツに長ズボンの様なデザインで、一夏の半袖へそ出し短パンのトレーニングウェアに比べれはこれのおかげで違和感はそこまで無いはずではあるけど……

 それに山田先生は……嫌、このアリーナにいる女子全員が男子を舐めているんだ。

 さっきの一夏の試合のおかげでだいぶ評価は上がっているとは思うけど。

 まあそりゃ約八年ぐらい女が天上天下の世の中だから分かるけど。

 分かるけど自分たちにしてみれば全然面白くない。

 さっき負けた一夏もそうだろう、今ここにいないけど弾だって同じはずだ。

 舐めるなよ。

 そう言いたいんだ、だからこの試合僕は負けたくない、負け試合でも。

 

「彼方……」

 

 声の方にセンサーを集中する。

 そこには心配そうな箒がいて。

 おいおい箒?何その顔?

 ほら一夏みたいにしてなよ?あいつ、僕が勝つもしくは面白いことするって顔してるよ?

 だからさ箒。

 

「心配すんな」

 

 そう呟く。

 そうして山田先生とちふ姉のいる方を見る。

 山田先生はいつも通りアタフタとしていて、ちふ姉の方は一夏の時と同じ平静を装いながら心配しているのがわかる。

 たく、ちふ姉も大概(たいがい)甘いんだから……こういう時は頑張れとか負けるなとか言ってくれれば良いの──

 

「彼方、力を見せろ証明してやれ。お前はやれるとな」

「!」

 

(たく……)

 

【この人は……】

 

 本当にちふ姉には敵わないや。

 口元のニヤケが止まらないよ。

 

「一夏!」

「おう!」

「行ってくるよ!」

「行ってこい!」

 

 さあ試合開始だ!

 

「あ、その前に山田先生?」

「はい?」

 

――――――――――――――

 

 

「ふざけてますの!?」

 

 試合開始、最初の声はオルコットさんのそれだった。

 怒っている、激怒している、大事なモノを汚されたような顔でこちらを睨んでいる。

 まあ理由は分かるけどさ。

 さっきの一夏に比較されてるんだろうなーてのは分かる。

 ま、トレーニングウェアにヘルメットで空に浮いているんだ、ふざけてるとしか思えないだろう。

 ちなみに今僕はISに絶対付いてるPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)で空を飛んでる、浮いてる訳だけど。

 

「ふざけてないよー」

「どこが!?そんなIS見たことも聞いたこともありませんわ!ハイパーセンサーだけのISだなんて!」

「でもねー、これが僕の専用機らしいからさ?我慢してよ」

「――っ!どうなっても知りませんわよ!」

 

 たく、親や先生に人は見かけによらないって教わらなかったのかな?

 まあ周りの1-1の皆も同じような目をしてるのはちょっと心が痛むけどさ。

 てか、え?

 センサーでちょうど1-1の皆がいる反対方向、柱の影に楯無さんが初めて会った時みたいにこちらを不敵な笑みを浮かべながら見ている。

 あ、手を振ってくれた。

 たく、何してんだか。

 

「じゃあオルコットさん!戦いましょう!試合は始まってるんですから!」

「ふん!良いですわよ!さあ踊りなさいな!」

「は!一夏と同じことを僕に言いますか!?じゃあ踊りましょうか(シャル・ウィー・ダンス)?キティ?」

小娘(キティ)ですって!?今の言葉、後悔してももう遅いですわよ!」

 

(さあ此方!)

【さあ彼方!】

 

(【一緒に戦おうか!】)

 

 模擬戦第二戦開始。

 

「来い“打鉄”!」

「え?」

 

 武装を呼び出す、熟練者ならイメージするだけで呼び出せるらしいけど僕は初心者(ビギナー)だ大目に見てもらおう。

 

《イエス、マスター。実体化開始》

 

 そうして“牡丹”の拡張領域に量子変換(インストール)された“打鉄”を呼び出す。

 瞬間、体を鈍い銀色の粒子が体をまとい始める。

 

「さあさあ!行きますよ!」

 

 粒子がギュッと集まってはじけ飛ぶ、そうして体にまとうは第二世代IS打鉄、甲冑のようなデザインが特徴で昔の嫌なことを思い出させるISでもある。

 

《実体化完了、同調律40%》

 

 さあ見ろよ!史上初だ!一度に二機のISに乗るなんてさ!

 

「な!なんですのそれは!?」

「ん?見て分かりませんか?打鉄です日本のIS」

「それぐらい見れば分かりますわ!そんな事よりも今のあなたは!」

「はい、二機のISに乗っていますよ?多分センサーの方にも二機分写ってるんじゃないですか?」

「反則ですわ!」

「反則?でもルールには二機のISに乗っての対決は禁止するなんて載ってませんよね?」

 

 多分そう、だって今までそんなことあり得なかったんだもん。

 それにシールドエネルギーだってIS一機分しかないし卑怯じゃあない、はず。

 

《マスター、一次移行まで残り8分。一次移行しなければ武装“アームズ”展開不可、戦闘の回避を提案します》

 

(て、ええ!?武器使えないの!?たく、オッケー!)

 

「オルコットさん」

「なんですの!」

「僕も一夏と同じでまだ初期設定なんですよ」

「それがどうしましたの」

「だから……手加減してね?」

「っ!ふ、ふざけていますの!」

「いいえ?全然?」

「泣いても知りませんわよ!」

 

 そう言ってオルコットさんは武器を展開する。

 手にした武器は六七口径特殊レーザライフル“スターライトmk-Ⅲ”一夏の時にも使っていたやつだ。

 

《発射から目標の到達時間、約0.4秒。網膜上に銃口を元にした到達予想ラインを表示しますか?》

 

(イエス!)

 

 そう答えると網膜上に機体のステータスと一緒にスターライトmk-Ⅲの銃口から先に赤い線が伸びる。

 これを意識して避ければ当たる確率は減るだろう。

 だが問題が。

 

《マスター、ブルー・ティアーズから自立機動兵器“ブルー・ティアーズ”レーザータイプ四機、ミサイルタイプ二機、計六機が射出されました。同じく銃口を元にした到達予想ラインを表示しますか?》

 

 一夏が戦っている時に見た自立可動ユニット“ブルー・ティアーズ”、これが厄介だ。

 さっきの試合だと一夏はブレードでアイツ等を切り捨てていたけど……

(無理無理!ちふ姉とかじゃないんだから!)

 

「最初から全力ですか!てかそいつら全部一夏に切られてませんでした!?」

「ふん!武器の予備ぐらい持ち合わせていますわ!それに慢心はもうありませんわ。あるのはただ勝つのみ、さあ行きますわよ!」

 

 たく!ちょっとは手加減しろよ!

(イエス!表示して!)

 

《……イエス、マスター》

 

(っあぁぁ!!)

 

 先ほどと同じように網膜上に銃口から先に赤い線が計六本伸びる、が。

 同時に頭が沸騰するような感覚におちいる。

 当たり前だ、だって360度の視界を認識するだけでも疲れるんだ、それ以外に余計な情報が増えれば頭もパンクする。

 だから僕は。

(此方!)

 

【おう!俺が後ろ!】

 

(僕が前だ!)

 

 後ろを見ない。

 言葉通り、ISのハイパーセンサーから見える視界の後方180度を僕は意識しない、ただ前方180度に集中するだけ。

 だって僕には視界を共有するもう一人がいるんだから。

 

【言葉でお前に伝える!脳内処理はISを通せ!360度見渡すより楽なはずだ!迷うな!動けよ!】

 

 ISによって高速化された脳内処理、それの恩恵を受けた二人が前方後方を分担して処理する。

 これならこんな無理矢理の設定でも処理できるはずだ。

 だってこうでもしないと勝てないだろうから。

 

(うん!)

 

【奥の手はまだ使わねえからな!】

 

(分かってる!)

 

《一次移行まで6分》

 

 そうして打鉄のスカート状の装甲に着いた二機のスラスターを吹かして前方の赤い線をかいくぐりながらオルコットさんの元に駆け出す!

 

「一夏さんと同じことを!同じ手は通じませんわ!」

 

 そう言ってブルー・ティアーズをレーザータイプの四機を前方に盾のようにして置く。

 そうして一斉発射!そうなる前に銃口から避けていたから損傷はないけど。

(四機、残り二機は……)

 

【後方ミサイルタイプ二機!直線右35度!左35度!】

 

(了解!っう!)

 

「な!」

 

 後ろから一斉に飛んでくるミサイルをスラスターを使った強制バク転で回避する。

 体に掛かるGがISのおかげで軽減されているとは言え体に響く。

 避けたミサイルはお互いがぶつかって爆発、その爆風に押されるようにしてスラスターを加速させる。

 

「しゃあ!」

「くっ!」

 

 オルコットさんに接触しそうな距離まで詰めた瞬間、超至近距離で四機のブルー・ティアーズが再び僕を射抜こうと銃口を光らせる。

 だけど最初から僕の目的はオルコットさんに詰め寄ることが目的じゃなくて。

(時間稼ぎが目的なんだよ!)

 二機あるスラスターの内1機だけ出力を上げもう一機の出力を少し下げる。

 

「ふっ!」

 

 そうすると体は回転を始めその流れに逆らわないままブルー・ティアーズの一機の横っ腹を殴りつける。

 そうするとドミノ倒しよろしく四機のブルー・ティアーズは互をぶつかり合って照準がぶれレーザーは明後日の方向に飛んでいった。

 

「デタラメですわね!?」

「オルコットさんもね!」

 

《一次移行まで残り4分》

 

【彼方!斜め下右60度ロケット、斜め上左50度レーザー!】

 

(あいよ!)

 

【武器が使えるようなるまでは相手の裏を取るようにしろ!全方位が見れるからって後ろが見えるのにそこまでなれてないはずだ!】

 

(了解!)

 

 試合開始から約6分、先程までのふざけた空気は一変して先程の試合と同じぐらいの熱気がアリーナを包んでいた。

 

――――――――――――――

 

 

「すごい」

 

 ピットのリアルタイムモニターで呆然と試合を見ていた山田先生の最初の言葉はそれだった。

 凄いの一言、ただそれだけしか出ない。

 先ほどの一夏くんとオルコットさんとの試合も確かに見ものではあったが、こちらはこちらでまた別の見ごたえがる。

 

「綺麗」

 

 その声は横にいる篠ノ之さんの言葉だ。

 確かに綺麗。

 さっきの一夏くんは至近距離での行ったり来たりの一直線の戦い、でも今回は至近距離での相手の裏を取ろうとする円での戦い。

 それはまるで踊っているかのようにも見えるぐらいだ。

 ブルー・ティアーズから放たれる青いレーザーもそれを彩っているように見えてしまう。

 

「織斑先生、彼すごいですね」

「ああ……」

 

 横で自分と同じくモニターを凝視する織斑先生に同意を求めようとした言葉は渋い言葉で帰ってきた。

 

「織斑先生?」

「どうして彼方はこんなに戦い慣れているんだ?」

「え?それってどういう――」

 

 ことですか?と聞こうとした瞬間、音無くんのISが光りだす。

 間違いなくこれは一夏くんの時と同じく一次移行した光だ。

 

――――――――――――――

 

 

《一次移行完了、マスター。武装“アームズ”が展開できます》

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。

やっとですねーやっとここまで来れましたねー。
はや連載大体1年半、長いですねー、それなのに未だにここまでしか行っていない自分に自己嫌悪です。
ちなみにヘルメットデザインは……サイボーグ忍者です。
まあ次回でデザインまた変わりますが(ボソ

それとR-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただきましたので興味がありましたらご覧下さい。

では皆々様

待てしかして希望せよ
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