IS ~彼岸花の思い鈴蘭の如く~   作:まうす〜

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6話【俺よりタチ悪いなおい!?】

「お兄様ー!」

「違います人違いです」

 

 オルコットさんとの試合から数日。

 男である僕らが周りに馴染んで奇異の目であまり見られなくなった今日この頃。

 僕、音無彼方は何故か彼女から熱いお兄様コールを受けていた。

 

「オルコットさん、あの…近いです」

「まあ!お兄様ったら!セ・シ・リ・ア!そうお呼びくださいと言ったはずですわよ?」

「セシリアさ――」

「セ・シ・リ・ア」

「……」

「むう……」

 

 僕の言葉に頬を膨らませるオルコットさん、周りの視線が体に刺さる。

 

「セシリア、離れてください」

「く・だ・さ・い?」

 

 ずいっと顔を近づける、その真剣な表情に僕は根負けした。

 

「セシリア、離れてくれ」

「はい!」

 

 私、音無彼方産まれてこのかた16年。

 初めて妹ができました。

 

【お・に・い・さ・ま♪】

 

(ぶっ飛ばす☆)

 

「いいなー」

「いいな~」

「「・・・・・・」」

「「!?」」

 

――――――――――――――

 

 

 セシリアとの試合から一週間、学園内の僕らについての噂話は徐々に少なくなってきている今日。

 僕、音無彼方にセシリア・オルコット(妹(仮))が出来てかれこれ三日程、あの試合から一夏は前と同じように授業に頭を悩ませ、箒は前よりも僕らと一緒にいることが多くなっていた。

 そんな中、僕はというと。

 

「デッドリーファング!」

「甘いわ」

 

 学園内にある屋内アリーナ、IS用の演習場で日々トレーニングに励んでいた。

 相手はというと。

 

【おうおう派手にぶっ飛ばされたなー】

 

「つぅ!」

「まだまだね、彼方くん」

「ええ、ありがとうございます。楯無さん」

 

 更識楯無、この学園の生徒会長にして学園最強の肩書きを持つ彼女とかれこれ四日ほどIS戦の練習に付き合ってもらっている。

 切っ掛けはと言うと……

 

『あ!楯無さん!』

『やっほー、彼方くん。試合見てたわよ』

『知ってますよ?』

『あら?ま、分かっちゃうか』

『楯無さん』

 

 セシリアと戦って数日後の放課後、寮に帰る道中で楯無さんに出会った。

 そうしてふと自分のトレーニング相手になってもらえないか提案しようと思った。

 

『練習に付き合ってください!』

『良いわよ?』

『え、本当に?』

 

 その返事に喜んだつかの間、楯無さんはどこにあったのか練習用の打鉄に乗り込んでいた。

 

『さあ、バッチこい!』

『あ、僕以上にマジだこの人』

 

 僕の言葉が終わるか終わらないか、それぐらいあっという間に楯無さんに掴まれ使われていない屋内アリーナに連れてこられていた。

 回想終わり。

 

「きみのそのスキルは確かに強力よ?でもそれは簡単に言えば弾丸なのよ」

「弾丸ですか?」

「そう、弾丸。威力は大したものよ?でも進む方向はいつでも一緒、環境によっては違って来るかもしれないけども、ね」

「成程……」

「だから君はスキルを使いこなす前にあなたの武器、バスターフィストの基本を使いこなせるように頑張りなさい」

「はい」

 

 そう僕にアドバイスをして先輩は練習用の打鉄を解除、いつもの不敵な笑みでこちらを見つめている。

 

「あの、何か?」

「え?ええ、君は前回セシリアちゃんとの試合が初めての戦闘だったのよね?」

「はい、そうですが?」

「正直に言って?本当に(・ ・ ・)?」

「?」

 

【……】

 

 感情を感じられない目が僕の目をジッと見つめる、嘘など絶対につけないのだと言うように。

 

「はい、本当に僕は今回の試合が初めてですよ。どうしてですか?」

「うーん?代表候補生にISを起動したての君があそこまで接戦したのがあまりに信じられなくて……」

「ひどいなー、じゃあ一夏はどうなるんですか?あっちのほうが明らかに凄かったと思うんですけど?」

 

 そうだよね?だって一夏は雪片二型でセシリアのブルー・ティアーズをほぼ全部切り捨てたんだもん。

 あっちの方が人間離れだ。

 

【あれは、まあ。姉弟だし?そこまで不思議じゃないって思える自分が怖いぞ】

 

(まあね)

 

「そうね、一夏くんの場合はそこまで驚かなかったわ。だって彼にはそういう才能があるんだって理解できたもの」

 

 楯無先輩は再度こちらをジッと見つめてくる。

 

「でも君は違う。だって君にはそういった才能を感じられなかったもの」

「っ」

 

 その言葉に胸がドキッとした。

 才能がない、か。

 その言葉に似たようなことを中学校の時にも言われている。

 が、また言われると心に響くものがあるな。

 

【ははは!おいおい、言われてやがんな!】

 

「機嫌悪くしちゃった?」

「いえ……」

 

 別に機嫌が悪くなった訳じゃない、でもちょっと傷ついただけで……

 

「ぷ!ふふふ、君ってクールそうに見えてそんなことないのよね?可愛いわ〜」

「か、可愛い!?」

「ええ、その初々しい反応も含めてね?あ!そうだ!噂になってるわよ?お・に・い・さ・ま?」

「な、なんでそれを……」

「ふふふ~。お姉さん意外よ~?彼方くんがそういうプレイが好きだなんて~?それに今日だってそのお相手さんにアーンしてご飯食べさせたんでしょ?」

「違います!だってあれはセシリアが!」

 

【…………】

 

(此方?)

 

【お・に・い・さ・ま♪】

 

(ぶっ飛ばす☆)

 

「ふーん、そ。オッケー、まあ今日のところはこれでおしまいにしましょうか?」

「了解です」

 

 そんな僕の返事にニコッと目を緩める楯無さん、この人の引っ掻き回すような性格にも慣れてきた。

 そう思っていると楯無さんの目が僕の首元をジッと見つめている。

 

「どうしました?」

「え?ああ、彼方くんのIS。その待機形態が気になってねー」

「これですか?」

 

 そう言いながら首に赤と黒のツートンカラーで配色された、チョーカーのような首輪のような中途半端な形状をしている牡丹を触る。

 待機形態、それは言葉通りに自分のISを待機させている形態、専用機持ちの証でもある。

 ちなみにセシリアはブルー・ティアーズと同じ蒼のイヤーカフス、それと一夏は白いガントレット。

 

「待機形態は多種多様よ、大体がその人にあった形態で形成されるわ。でも君のそれは少し違う気がするの、まるでその形にしないようにしているみたいな中途半端さが」

「中途半端?」

「ま、君の場合は打鉄をバススロット(拡張領域)に入れてるせいかしらね?……つーーと」

「わひゃ!?ちょ!?楯無さん!首を指で撫でないでくださいよ!?」

「ふふふ、ごめんね?あ、そうだ。彼方くんはクラスリーグマッチのこと知ってるわよね?」

「クラス代表どうしが戦うトーナメントですよね?」

 

 ちなみに我が1-1のクラス代表は試合の結果でセシリアになる予定だったけどそれを辞退。

 僕か一夏どちらかになって欲しいって言われたから一夏に全て丸投げしたんだ。

 

「イエス!でも残念、お姉さんは彼方くんに出場して欲しかったのに……」

「冗談言わないでくださいよ、僕よりも一夏の方が強いんですよ?なら一夏が出るべきだ」

「そうだけどお姉さんは君の試合が見たかったわ……そうだ!」

 

 そう言って僕の顔と楯無さんの顔、二つの顔がふれ合いそうになるぐらいまで近づいてきて。

 

「お姉さんと今から秘密の試合しちゃう?」

 

 そう妖しく微笑んで僕の首に両手を回して囁く。

 

「っ!?」

 

 男として、ひどく興奮するのと同時、それ以上に自分の頭の中で警報が鳴る。

 その表情、妖しくてそれ以上に恐ろしさがあって。

 ヤバイ。

 

「そう。だから私は彼方くんに試合に出て欲しいの」

 

 急いで飛び退いた僕を見て笑ってみせる楯無さん。

 その顔は先ほど感じたものはどこに行ったのかいつもどおりの笑顔でこちらを見ていた。

 

「あ、そうだ今度の練習はクラスリーグマッチが終わった……三週間後ね。けっこう時間が空くけど自己鍛錬は軽くでもいいから続けること」

「了解です、忙しそうですね?」

 

 そう言うと楯無さんはおおげさに肩をすくめる。

 

「本当よー、新人ちゃん達のお披露目会的な目的もあるからいろんな所からの招待要請が後を絶たないのよー。特に!」

 

 目をキランと光らせて僕の方を睨む。

 

「君ら男の子の内一人が出場するって情報も伝わってるからいつもは来ないような所からも来てて大変なのよねー」

 

 そう言ってお手上げのジェスチャー。

 

「ま、これも生徒会長のお仕事だから頑張るけどねー、はあ。前の生徒会長みたいにはいかないわね」

「前の生徒会長?」

「ええ、去年まで生徒会長をつとめてた人。天才、だったのかしらね。人を使うことに関しては私でも敵わなかったもの」

「へー、楯無さんよりも優秀……想像できませんねー」

「そう?こう見えて私、優秀じゃあないのよ?」

 

 舌をペロッと出してウインク、全くこの人は……

 

「はいはい。ほら、忙しいならちゃちゃっと帰りましょうねー」

「む、何かな?そのめんどくさそうな態度は?分かりましたよーだ、帰りますよー。じゃあ、またね!」

 

 そう言って一人颯爽とアリーナから出て行った。

 残ったのは僕だけで。

 

「……帰って風呂にでも入ろうかな」

 

【……そうだな】

 

「【……やっぱりあの人の相手は疲れるなー】」

 

 ぼそっとそう呟きながら寮まで帰ることにした道中。

(そう言えば)

 

【ん?】

 

(さっき楯無さんが言ってた前の生徒会長って一体何者なんだろう?)

 

【さあ?でも生徒会長してたなら調べればすぐに分かるだろ?】

 

(そうだね)

 

「痛!」

「きゃ!」

 

 此方の会話に集中していて横から走ってきた人に気づかず激突、相手は尻もちをつく。

 

「わわ!ごめんなさい!」

「あ、ごめんなさい。大丈夫、一人で立てますから」

 

 尻もちをつく女性に差し伸ばした手は払いのけられた、リボンの色からして三年生の……

 ショートヘアーで右目が少し前髪で隠れている女性……

(え?)

 ではなく綺麗な黒い長髪を前にたらした表情が見えない女性だった。

 

「では失礼します」

 

 その女性は僕に一瞥して階段の方に駆けていった。

 

【――は?】

 

(此方?)

 

【いや、何でもない。さ、とっとと部屋に戻ってシャワーでも浴びようぜ?汗が気持ち悪い】

 

(あれ?此方も汗かけたっけ?)

 

【ノリだノリ】

 

(ああ、はいはい)

 

 そうして部屋に戻る。

 でも。

(あの声、どこかで……)

 聞いたことがある気がする。

 

【………】

 

 此方も黙って考えるような気配。

 そうして僕らは前の生徒会長の事はすっかり忘れてしまった。

 

――――――――――――――

 

 

 それから数日後、いつの間に準備したのか『織斑一夏クラス代表就任パーティー』も無事に終わった月曜日……

(そう言えばパーティーの時の記憶が無いんだけど此方知らない?)

 

【知らん!】

 

(本当は?)

 

【知ってるけど教えん!】

 

(えー)

 何だかみんなの態度がよそよそしいんだけど?

 と、それはさておいてその月曜日、授業の合間の休憩時間。

 今の状況に困惑していた……

 

「一夏ー!」

「ぐへー!?」

 

 ツインテールでしまパンの女の子にドロップキックを喰らって吹き飛ぶ一夏。

 

「いってー……あれ暗い?」

「な!?」

 

 持ち前のラッキースケベを発動、吹き飛んだ先、箒のスカートの中にホールインワン。

 

「――っ!?この馬鹿者がー!!」

「なしてー!?」

 

 なぜか持っていた竹刀で状況をまだ理解できていない一夏に見事なフルスイング。

 いやマジで今日はなんで竹刀を持ってきてたんだ箒。

 

「きゃ!?一夏さんの馬鹿ー!」

「ちが!?うぅー!!」

 

 更に吹き飛ばされた先にいたセシリアの胸をソフトタッチ。

 その瞬間、餌に触れた時のネズミ捕りばりの反射速度でセシリアの見事なビンタが炸裂し再度吹き飛ぶ。

 

「落ち着かんか!この馬鹿者共が!」

「だ、だからどうして俺なんだよ!」

「お前が事の発端なんだこの馬鹿者がー!」

 

(【確かに】)

 

 そう言いながら飛んできた一夏をキャッチするちふ姉。

 その一夏を頭上で逆さに持ち上げ両腿を手で掴んで一夏の首を自分の肩口で支えた。

 ん?この姿勢ってまさか?

 

(此方!あれはまさか!?)

 

【ああ!俺も生で見るのは初めてだ!】

 

「え?あ、織斑先生?これは一体?」

「いやなに、ちょっと示しておかないといけないと思ってな」

「……何を?」

「授業中は静かにするということだ」

 

 今の状況を理解した一夏は顔を真っ青にして汗を流しニッコリとしている。

 まあ、ちふ姉も同じくニッコリとしてるんだけどね。

 そうして静まり返る教室、先程まで騒いでいた皆は唾を飲み込んで目の前の光景を凝視していた。

 静寂。

 

「あ、消しゴムが~」

 

 そして消しゴムを落としたのほちゃんの声で動き出す。

 一夏を担いだまま一般平均以上の跳躍を見せるちふ姉。

 

「嫌だ!死にたくない!死にたくなーい!」

 

 自分が今、何をされそうになっているのが分かった一夏は懸命な抵抗をしている。

 まあ無理な訳だが。

 

「少しは自覚しろ!」

 

 そう言って空中から尻餅をつくように着地。

 その威力は周りにいた僕らに風の波になって教えてくれた。

 そうして一夏は……

 

「――……」

 

 絶命した。

 

「一夏ぁーー!!」

 

 …………

 

(てな感じになったら面白そうじゃない?)

 

【え!?今の全部空想!?】

 

(そりゃそうだよ~、いつちふ姉がキン〇バスター覚えたのさ?)

 

【もういい、話を進めるぞ】

 

(ん、そうだね)

 

 そうして僕の一瞬で考えついた空想から現実に戻る。

 そして今、ツインテールでしまパンの女の子にドロップキックを喰らって吹き飛ぶ一夏。

 

【あ、そこは本当だったのな】

 

 そうして吹き飛ぶ一夏を尻目にツインテールの女の子の方を見る。

 飾り気のない青のしましま模様のパンツをはく女の子、猫みたいな身軽さで地面に着地して。

 その昔と変わらない姿に頬が緩む、変わったのはほんのちょっとの背と着ている制服ぐらい。

 

(胸も変わってないって言ったら怒るだろうなー)

 

【なあ?本当に大丈夫か?最近俺、ボケれないんだけど?】

 

(大丈夫、全部僕の本心だからね)

 

【俺よりタチ悪いなおい!?】

 

 そうして女の子と目が合う、僕は嬉しそうに女の子は少し気恥ずかしそうに頬をかきながら。

 ツインテールの女の子、凰鈴音(ファン・リンイン)

 僕と一夏にとっての二人目の幼馴染がそこに立っていた。

 

「久しぶりね、彼方」

「久しぶり、鈴」

 

――――――――――――――

 

 

「だ、誰か俺を起こしてくれ……」

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回の更新は数日であげられる予定です。

それとR-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただきましたので興味がありましたらご覧下さい。

では皆々様

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