IS ~彼岸花の思い鈴蘭の如く~   作:まうす〜

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7話【元、生徒会長?】

「久しぶりね、彼方」

「久しぶり、鈴」

 

 数年ぶりの再会になる二人目の幼馴染が昔と少ししか変わらずにそこにいた。

 

「鈴」

「ん?」

「会いたかったぞー!」

 

 そう言いながら鈴に抱きついた。

 

【何してんのお前!?】

 

「にゃあ!?」

 

 抱きついた鈴はいきなりのことで目を丸めて驚く。

 おお、この感触間違いなく鈴だ。

 鈴だ……

 

「彼方、ちょ。離してよ、みんな見てるからさ……」

 

 顔を赤くして僕は引き剥がそうとする鈴。

 でもその力は僅かだ。

 本気で離れようとはしていない。

 

「鈴、おかえり」

 

 そんな鈴に耳元で優しく言う。

 数年ぶりの再会、

 最後に会ったのは電話の向こう。

 あの時はただただ言葉で別れるしか出来なかった。

 でも今は、今はここにいる。

 

「彼方……」

 

 僕が思っていることに気づいたのか鈴も腕の力を強める、それが返事だと言うように。

 

【お二人さん、仲がよろしいのは良いが周りをもうちょい気にしろよ?】

 

「へ?」

 

 此方のそんな呆れ声に周りを見渡す。

 

「彼方!?」

 

 驚く箒。

 

「か、かーくん?」

 

 少し目を見開いて固まるのほちゃん。

 あれ?どうしてそんなに目が曇ってるの?

 

「お兄様……」

 

 僕らの様子をみて力なく倒れこむセシリア。

 ハンカチを咥えて羨ましそうにじっと見ている。

 それ以外にも驚いてる子、羨ましそうにこちらを見ている子とあまりよろしくない視線が集まっていた。

 

(ちとこれは……)

 

【マズイだろー】

 

 入学して今まで目立った事がなかった僕がいきなり見知らぬ女の子に抱きついている。

 現状を理解して少し冷や汗が流れる。

 

「ご、ごめん鈴!」

「え」

 

 流石にこれ以上抱きついてるのはマズイと抱きつくのをやめる。

 それに鈴は少し寂しそうな視線で僕を見つめていた。

 

「ね、ねえ!彼方くん!その子とは一体どういう関係――」

「静かに!」

 

 今までのやり取りを見ていたクラスメイトの皆さんが一斉に質問責めしようというタイミングでちふ姉の鋭い声が響く。

 

「要件を済ませたらどうだ」

 

 その言葉に背筋をピンと立たせる鈴。

 だいぶちふ姉の怖さが身にしみ込んでるらしい。

 まあ一夏が殴られたり、叩かれたり、絞められたりしてるのを見てれば当たり前の反応か。

 

「は、はい!あ、あんたらがさっき言ってたことだけどさ?」

 

 さっき言ってたこと?ああ、周りの子達が一年で専用機持ちのクラス代表は私達一組と四組だから楽勝だよね☆的な会話を一夏が蹴り飛ばされる少し前にしていた気がする。

 

「その情報、古いよ。二組の代表は専用機持ちで中国代表候補生の私。鳳鈴音なんだからね!」

 

 そう言ってふっと笑みを漏らす。

 おお、なるほど。

 少し前に携帯の方にメール(差出人不明)で今度転校生来るって、と来てたけど鈴のことなんだ。

(と言うかあのメールって誰からだったんだろ?)

 

【更識さんじゃね?】

 

(かね?)

 

「へー、鈴。代表候補生になったの?」

「まあね!」

 

 へへんと腰に手を当て胸を張る。

 まあ張る胸は僅かなんだけどね……

 

【言ってやるな】

 

「で?その二組のクラス代表で中国の代表候補生、専用機持ちの鈴は今日どうして急に来たのかな?」

 

 胸を張る鈴の頭を撫でる。

 

「うん!それでね!それでね!……って!違ーう!」

 

 喜んだと思ったつかの間、鈴は僕の手を払い除けた。

 

「うわ!?どうしたんだよ?鈴、頭を撫でられるの好きだったろ?」

「そうじゃなくて!一夏!」」

 

 鈴の指さす方、誰にも相手にされなくてしょんぼりしていた一夏の方に視線が行く。

 

「へ?」

「私が出るからには簡単に勝てるとは思わないことね!」

「あ、ああ」

「じゃ、じゃあ。私行くから!また後で話したいことあるから教室いなさいよ!じゃあね!」

 

 そう言い放ち逃げ出すようにして教室から鈴は出て行った。

 ……そっか、鈴もISを乗れるようになったんだね。

(此方、でもさ?)

 

【ああ、鈴の奴。たった一、二年で代表候補生になったってことだぜ?】

 

(今度の試合、楽しみだね)

 

【おう!……ところでよ彼方】

 

(どうしたの?)

 

【現実逃避するのはやめて現実に向き合う時だと思うぞ?】

 

(…………)

 

 鈴のいなくなった教室、僕の周りは数人に囲まれている。

 

「音無、授業中だというのにさっきのようなことをしたのどういう了見だ?」

 

 僕のことを一夏を叱りつける時とはまた違う目で睨みつけるちふ姉。

 

「おおお、お兄様!?さっきの女性とはどういう関係なんですの!?抱き合って!頭を撫でて!?私には心にもない言葉でアーンされただけですのよ!?」

 

 そう言いながら僕に一生懸命抱きつこうとするセシリア。

 

「かーくん?今の子って誰?詳しく、くわ~しく聞かせてほしいな~?」

 

 そのセシリアをその体のどこにそんな力があるのか片手で押さえつけるのほちゃん。

 

「ねえねえ!彼方くんと彼女の関係は!?」

「もしかして彼女!?さっきあんなに親しそうに抱きついてたもんね!」

「え、一夏×彼方じゃなかったの!?」

「嘘!?これじゃあプロットが合わない!でも待って?彼女のいる彼が好き……これだわ!」

「待って!私は彼方×一夏だと思うわ!」

「「それも良い!」」

 

 その他にもちふ姉って言うストッパーがいなくなって僕に集まりだすクラスメイトの皆。

 てか一部ヤバイ事言ってないか!?

 でも……

(此方、これから楽しくなるね!)

 

【お前、この状況でよく言えるな……】

 

 呆れ声の此方。

 確かに今、この状況に冷や汗が流れているけどそれ以上に口元がにやけるのが抑えられない。

 いなくなった二人の幼馴染がこの学園で再開できて、新しい友人も出来た。

 これからのことを考えると笑いがこみ上げてくる。

 

【気持ちは分かる、気持ちは分かるぞ?でもなー、それよりも何度も言うけどよ?現実と向き合おうや?】

 

(うん……)

 

「皆さーん!静かにー!席についてくださーい!」

 

 授業中とは思えない騒がしい教室の中で、山田先生の悲痛の叫び声が響いた。

 

――――――――――――――

 

 

「やっと終わったー!」

 

 一人しかいない生徒会室にその声は響いた。

 クラスリーグマッチの対戦表作りが終わり向かい合っていたPCから背伸びするようにして離れる更識楯無。

 ただ対戦表を作るだけならものの数分で出来る作業、それが数時間以上かかったのには理由があった。

 

「彼方くん入れるのにこれだけ時間がかかるなんて思いもしなかったわ」

 

 そう言いため息をつく。

 そう彼女の作業が遅れた理由はクラス代表ではない音無彼方を大会に組み込んだこと。

 それが一番の理由だった。

 

「本当はちゃんと試合に出して上げたかったなー」

 

 組み込んだと言っても選手ではなくエキシビションマッチ、大会が終わった後、優勝者との試合である。

 本来であればこんな対応はありえないことだが生徒会長の強い推薦と、世界で二人だけの男のIS操縦者のうちの一人。

 それをかんがみての対応であった。

 

「でも気になるわ、あのlgelの対応……あれだけ今まで隠してたものを大っぴらに見せようとするなんて……」

 

 彼方くんを大会に参加させるにあたって一応は日本政府に通達、政府はビデオなどの当日の資料で了承。

 彼のメインスポンサーlgelにも聞いたところ帰ってきた返事は……

 

『全然大丈夫ですよ?ああ、そんな大層なものは要求しません。ただ……』

 

 今度、我が社の社員を数名そちらの学園を見学させて頂きたいのですが、と言う返事だった。

 こちらはそれに数名の監視者を常時付けることで了承。

 ただ、lgel……

 二年ほど前からIS業界に進出した元はゲーム関係の企業。

 それが今ではISの保有を国から許され、男のIS操縦者、音無彼方のメインスポンサーになると言う驚く程の成長率。

 どうやって短期間でそこまで成長したのかは不明、ただ彼らの作るIS用武器の評判はよく聞く。

 どれも褒めるような内容だらけ、ただ所々不鮮明な部分がちらほらあるのが気になる。

 そんな企業が学園見学を報酬に最上級の音無彼方(ブラックボックス)を見せびらかすような行為。

 とても信じられない。

 それとも……

 

「それとも秘密は彼じゃあないのかしら?」

 

 先ほど対戦表作りをしていたPCに映る情報、機密レベルは最上級。

 選ばれた極小数の職員しか見ることの許されない内容、織斑一夏や音無彼方に関する内容だ。

 それによれば。

 

『音無彼方――IS適正――――無し』

『IS――牡丹――――――解析不可』

 

 そう映し出されている。

 そのモニターを見る彼女、更識楯無の表情はとても冷たいものだった。

 水以上に氷のように。

 

「!?」

 

 そんな彼女が軽く身構えた、いきなり聞こえた無機質な電子音。

 その音の元はこの前、本音ちゃんが私と彼方くんを監視しようとして寝ていた清掃用ロッカーだ。

 警戒しながら開けるとそこには一つの携帯電話が置いてあった。

 

「誰の?」

 

 赤と言うよりも朱色の誰のかも分からないプリペイド携帯に電話がかかってきていた。

 画面には連絡している相手の名前、『あなたの親しい人』と表示されている。

 

「……もしもし?」

 

 恐る恐る通話ボタンを押す。

 それと同時にマイクから声が聞こえる。

 

「――!」

 

 よく知る声だ、二年生、三年生の生徒であれば誰もが聞いたことがある声。

 

「久しぶりですね?私達って親しかったんでしょうか?」

 

 何とか平静を保ちつつ相手と話す。

 虚を見せてはならない。

 彼女は針の穴程のスキですら入り込んでくる人だから。

 

「元、生徒会長?」

 

『ふふ、お久しぶりねぇ?楯無ちゃん』

 

 マイク越しからでも思いだす、彼女の美しい顔に似合わない口が裂けたような不気味な笑みを思い出す。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


R-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただきましたので興味がありましたらご覧下さい。

では皆々様

待てしかして希望せよ
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