一夏対鈴の試合開始まで残り一時間半。
『もしもーし?彼方くーん?』
「聞こえてますよ、どうしました楯無さん?」
『第一試合が始まったらこの前、一緒に練習してた屋内アリーナに来てもらえるかしら?』
「え?その試合一夏達の試合なんですけど……」
『お願い!ちょっとだけで良いから!』
「……分かりました」
『ありがとう!今度イイことしてあげるわね!』
「あ、それはいいです」
『何で!?』
試合開始まで残り一時間。
「えー!此方来れないのかよ!」
「ごめん一夏、ちょっと呼ばれちゃってさ」
「ちぇー」
「でも、頑張れ一夏」
「おう!」
試合開始まで残り四十分。
「鈴!試合は生で見れないけど頑張れ!」
「ええ!絶対にあいつのことコテンパンにしてやるんだから!」
「そう言えばどうしてそこまで一夏をコテンパンにしたいんだよ?中学の時に何かあった?」
「……秘密」
「……」
「……」
「本当は?」
「中学の時、一夏が毎日私の酢豚食べたいって……」
「酢豚?」
「日本で言うと味噌汁……」
「ああ……」
「それをおごってくれるって勘違いしてるの、アイツ」
「うん、まあ……頑張れ」
「ええ……」
「……ヨシヨシ」
「だから頭を撫でるなー!」
試合開始まで残り二十分。
「あ!楯無さん!」
「あら?彼方君どうしたの?」
「え?楯無さんさっき電話で、第一試合始まったらこの前の屋内アリーナに来てって言ってたじゃないですか?」
「え?ええそうね……その時に話すわ。じゃあね!」
「え!?楯無さん!行っちゃた……」
試合開始まで残り十分。
「そろそろ行こうかな?」
――――――――――――――
一夏と鈴との試合開始まで残り数分。
楯無さんに呼ばれていた屋内アリーナに着いた。
「楯無さーん!どこだろう?」
名前を呼んでも返事が返ってこない薄暗い屋内アリーナ。
(戻ろうかな?)
何度も呼んでも返事もなく人気のないアリーナを見てふとそう思う。
そうしてアリーナから出ようとした瞬間。
「っ!」
照明がすべて点灯、備え付きの大型モニターの電源が入った。
映ったのは一夏と鈴、二人の試合の生中継だ。
『ぐあ!』
映し出されると同時に一夏が吹き飛ばされた。
多分、鈴がやったんだろうけど。
攻撃は見えなかった。
《第三世代型兵器「衝撃砲」衝撃の砲弾です……》
(牡丹?)
【うを!?びくったー】
いきなり牡丹が喋りだす。
《マスター、ISの展開を》
頭に響く声には牡丹から聞こえる機械的な声。
それと一緒に警戒するような声。
《来ます》
その声と同時に何かが来た。
「楯無さん?」
見た目から見て恐らくIS。
白と黒の二機どちらも全身装甲。
曲線のあるデッサン人形みたいな見た目。
装飾らしい装飾もなく、あるものと言えば顔についた真っ赤な単眼のレンズ。
それと、体の数カ所に小型のスラスターがついている。
武装は不明、でも普通のISが持っている大型のスラスターを持っていないのが気になるが。
「「……」」
【此方、気を付けろ……】
(うん…)
ただただ無言で不気味な赤い目でこちらをジッと見つめている。
ジッと見つめ続ける、それがずっと続くと思ったその時。
「な!?」
モニターの方から大音量の爆発音が聞こえた。
一夏ではそんな音を出せない、出せたとしたら鈴か?
その考えは次の映像で塗り変わった。
『なっ――』
驚く一夏の声、それと同時にアリーナの中に観覧者を
そしてモニターは暗転、それから先はもう分からなかった。
「一夏!鈴!」
【よそ見すんな!】
《迅速に展開を、来ます》
「え?」
「「……!…………?」」
暗転と同時に二機のISが小型のブースターを吹かせこちらに向かおうとしていた。
「来い!牡丹!黒鉄!」
それと同時に僕は牡丹と黒鉄を展開。
急いで回避行動を取る。
「「…………?」」
それに反応せずに二機とも壁に激突、派手な音をたてた。
そうしてバランスを崩した体を元に戻しまたこちらをジッと見つめる。
「「…!」」
そして再度こちらに体当たり、それを先程と同じように避けようとすると、
「何!?」
そうしてまたさっきと同じく壁に激突、しなかった。
二機とも同時に緊急旋回、回避した僕に向かって左右から白と黒の蹴りが飛んできた。
「リアライズ!――つぁ!」
瞬時にバスターフィストを展開、蹴りを受け止める。
「アドバンスブロー!」
受け止め即座に反撃、白い方に思いっきり殴りつける。
相手は回避もせずに受ける。
【防御すらしないだと?】
そうして吹き飛ぶ白いIS。
「次!……?」
吹き飛んだのを確認して黒い方を見る。
だが先程と同じようにこちらをジッと見られる。
ジッとただジッと。
何が狙いだ?
「考えてても仕方ない!先手必勝!」
そう口にしながら黒い方にブースターを吹かせて殴る。
白い方と同じく直撃、同じ方に吹っ飛ぶ。
「「…………」」
そうしてジッとこちらを見る、不気味だ。
でも、
「攻めるしかないんでね!」
攻勢、相手はただただ受けるだけ。
そんな一方的な攻勢が一、二分すぎた頃。
「……?」
「……!」
「あぁ!」
【彼方!】
(大丈夫!)
状況は一変していた。
「デッドリーファング!」
高速のスッテプからの脇っ腹に向けて拳による抉り込み。
セシリアの時は避けることも出来なかった一撃。
代表候補生ですら避けることの出来なかった一撃だ。
それを、
「くっそ!」
「「……」」
二機ともそれをたやすく
さっきやった時は防御すら出来ていなかったのに。
【動きを止めるな!動き続けろ!】
(うん!)
一度距離を離す。
こちらの主な攻撃方法は拳、あっちは拳と蹴りのみ。
セシリアの時と違って相手に遠距離装備を持っていないのが幸いだ。
でもおかしい……
【こいつらどんどん動きが良くなってやがる!】
さっきこの二機は僕の攻撃に防御もせずにただ吹き飛ぶだけだった。
スキルも避けることが出来なかった。
出来なかったはずなんだ、一、二分前までは。
全ての攻撃が最初は当たった。
でも二回目はそうはいかなくなっている。
パワースラストは使用した瞬間に回避、後ろに回り込まれて攻撃を喰らった。
アドバンスブローも同じく回避、そして即反撃。
デッドリーファングは使用した瞬間に攻撃範囲外に離れて反撃。
僕の全ての攻撃が対応されている。
残りは後ひとつだけど……
「くっそ!賭けだ!」
そう叫んでスラスターにエネルギーを集中させる。
スラスターに光が集まるのをジッと見つめる白と黒のIS。
攻撃する様子はない。
「喰らえ」
充分にエネルギーが溜まった瞬間にスラスターのエネルギーを解放する。
「…………!?」
「…………!」
その攻撃を黒いISは両腕で防御、その結果防いだ両腕は壊れ無数の部品になって撒き散らす結果になった。
「え!?」
【こいつは!?】
それを見て驚く、全身装甲の黒いISのその両腕に人の部分は一切ないことに。
(でもこれで!)
これで大分戦況が変わる。
そう思った時。
バシュン。
そんな音と一緒に僕の足元が爆発した。
「く!?っああああああ!」
【彼方!】
《シールドエネルギー、大幅な減少を確認。高威力のビーム攻撃です》
何が!?
そう思う僕の全身に衝撃が駆け巡る。
「……」
白いIS先程まで一切何も持たなかったソレに、二門の大きな銃身を両肩に装着していた。
牡丹によればさっきの攻撃はビーム、それも高威力の。シールドの減りから見てブルー・ティアーズ以上の……
【彼方!避けろ!】
その慌てる声に意識を集中させる、よく見れば二門の銃身の先に光が溢れている。
「っうらぁ!」
その銃身から放たれたプラズマの塊が二つ打ち出される。
それを寸前のところで回避。
「……」
「え」
回避した先、両腕を失くした黒いISの方。
そのISも何かを両肩に担いでいた。
《マスター、回避を推奨します》
【彼方ぁ!】
「っう!?あっ――」
両肩に衝撃、同時に燃えるような何かを感じる。
真っ赤になる視界、その先には両腕のない黒いISが両肩に大きなレーザーブレードを装着して立っていた。
《体に損傷を確認、救命領域対応を開始》
牡丹の声で赤から黒に変わる視界。
(待ってよ牡丹!僕はまだ戦える!ま、だ……)
《お休みなさい、マスター》
――――――――――――――
「
「はい」
「体内のナノマシンを損傷部分に展開しろ」
「もう開始しています」
「そう、か。じゃあ――」
「もうその準備も出来ています」
「ああ、ならアイツを起こしてくれ」
「了解しました……どうぞ」
「よ、おはよう」
【うん、おはよう此方】
「おはよう彼方」
――――――――――――――
先程まで戦闘が行われていた屋内アリーナ。
二機のISは目標の無力化に成功し今後についての指示を待っている状態だった。
そんな中。
「あ、よいしょっと」
「「…………?」」
敗者である
ありえない、救命領域対応に入ったISはものの数分で解除される物ではないはずだ。
体の傷だってほぼ、治っているのはどういうことだ?
その不可解なことに思考を巡らせる二機に
内容は単純。
“目標の排除”
その指示を確認、同時に動く。
一つはIS規定を違反した高威力の銃口を向けて。
一つはIS規定を違反した切断能力を持つ刃向けて。
撃ち。
切りつける。
「うおっと!」
それを目標は避けた。
まるで大人が子供と遊んでいるかのような気軽な声を出して。
「「……?……??」」
理解不能、今の行動は先程までの目標と比較して全くの別人。
最小限のブースター噴出での回避行動は今までしてこなかった。
回避後の姿勢は今のような安定感はなかった。
ならば今いる目標は目標ではないのか?
入れ替わる時間はなかった隙もなかった、ならば
まだ目標のISは第一次移行、その可能性は1%にも満たない。
可能性を提唱。
それ以外にも八六通りの可能性を提示、全て一致せず。
たった0.2秒の間に二機のISが導き出した答えは1%にも満たない可能性、目標の
それならばこちらのする事は変わらない。
目標の排除、母の言いつけ通りに。
だがその前にこれまで蓄積した目標の分析データーを送信しよう。
提案、了任。
ISコア同士のコアネットワークを通じてデーターを送信。
送信……不能?
それと同時に気づく、コアネットワークに入れないことに。
「あらら?もしかしてコアネットワークに接続しようとしてる感じ?」
その様子に気付いたのか目標の少年は小首をかしげる。
「ああ、無理無理。ネットワークの接続切ったから」
「「…………?」」
この目標は何を言っている?
「だから切ったんだって?あ、でもあんたら同士の専用通信は使えるのかな?ま、良いや」
コアネットワークの接続は不可、母からの
ならば最優先事項である目標の排除を行うべきか?
ならば――
「リアライズ」
「「!」」
その言葉に目標の武装が銀色の光になって解除され、その代わりに右手の方に淡く銀色の光が集まりだす。
「デッドリーファング、こいつは確かに使いやすい。でも、お前さんらにはちと相性が悪いかな?来い――」
分析――不明。
選択、観察…攻撃…防御。
攻撃を提案。
二機のISは同時に動き出す。
一機は距離を離し両肩に担ぐビームバズーカを撃つために。
もう一機は逆に目標に肉薄、両肩に付けた大型のビームブレードを横に大きく薙って。
それを目標は回避する、その時の彼の手には銀色の光が一つの形になろうとしていた。
「ちと時間がかかったか?久しぶり、ブレイズガルム」
そう言う目標の手には巨大な砲身が握られていた。
「うん、手に馴染む。僕の
その言葉に返事するようにして彼の網膜には十個のスキルが表示される。
数ヶ月前と変わらない情報に目をならしながら彼は口元を少し緩めて。
「束姉、今からこの子達を壊すよ。僕は」
そう言う彼の表情は装甲で見えない。
でもその声には何かの覚悟を感じることは出来た。
その場にいる彼以外の人間、三人は。
「さあ、かかってこいよ」
そう言って彼はブレイズガルムの引き金を握り締めた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
R-18ですが小説をオリジナルで投稿させていただきましたので興味がありましたらご覧下さい。
では皆々様
待てしかして希望せよ