そして転入生の正体とは…
「リザ先生!おはようございます!」
僕、音無彼方はいつもの様にママと幼稚園に行き門の前で園児を見守っている担任のリザ先生にお辞儀をしながら挨拶をする。
僕に気づいたリザ先生は、いつもの優しい笑顔を見せながら僕に挨拶を返してくれた。
「あら、カナタ君おはよう。今日は遅刻ギリギリだったけど、どうしたの?」
「うん、今日はママの準備が遅れちゃったんだ」
「あらあら、ユウヒったら大人なのにダメねー?」
リザ先生が呆れながら言ってると僕が来た方から不貞腐れた声が聞こえる。
「もー、悪かったわね。大人の癖に遅れちゃって」
「あら?ユウヒ、まだいたの?」
「いちゃ悪いのー?言われなくてももう帰りますーだ。彼方?気をつけてね?ムッター、彼方をお願いね?」
「もうユウヒったら、やめてよね?子供たちからならまだしも大人に母親(ムッター)って呼ばれるのは恥ずかしいから」
「はいはいじゃあリザ先生、彼方をよろしく!」
じゃ!っとママはそう言って愛用のママチャリに跨り家に帰っていった。
「じゃあカナタ君、一緒に教室まで行こっか?」
「うん!」
リザ先生は僕がここに入園して3年間、慣れない環境にいる僕に世話を焼いてくれてる先生。
ママとも仲が良いみたいで、たまにご飯を食べに行ってるみたい。
(先生とママは友達なのかな?ママはいっつも違うって言ってるけど)
そんな事を考えながら教室まで歩いてると、一緒に教室まで歩いていたリザ先生が何かを思い出した様で僕に話かけてくる。
「カナタ君?そういえば今日から新しい子がうちのクラスにやって来るの。女の子でとても可愛いんだけどどうも人見知りらしくてね?もしだったら今日はその娘と遊んでくれないかな?」
「うん!良いよ先生。その子の名前はなんて言うの?」
「本当に!ありがとう。その子の名前ね?“ラウラ・ボーデヴィッヒ”って言うの」
「ラウラだね?うん!分かったよ話してみる」
返事を聞いたリザ先生はその返事に満足したみたいで、僕にいつもの優しい笑顔になって。
「うん、いい返事。ほら部屋の端っこに座ってる銀色の長い髪の女の子が居るでしょ?あの娘がラウラちゃんよ」
ちょうど僕たちは教室に着いて、先生が教室の端っこを指差す。
「あの子?――!」
そこに居る女の子を見て僕は言葉が出なかった。
(かわいい)
そこに居たのは、暗い表情をしているけどそれを補うような、まるで雪みたいな銀色の髪それに宝石みたいな真っ赤な目、そして他の子達より体が小さい女の子。
何故か心臓がすごくどくどくしている僕の様子を見ていた先生は、ニヤニヤしながら僕に喋りかけてくる。
「あらら~?もしかしてカナタ君?惚れちゃった〜?」
「ち、違うよ!ただ、なんだか不思議な感じの子だなって思っただけだよ」
「そうなの?それならほら!話し掛けて来たら?あの娘、どうも話すのが苦手みたいでさっきから1人みたいだし」
先生が言うようにラウラに話し掛けた子は、話した後つまらなそうな顔で他の子達のグループに行っちゃってる。
先生が言ったとおりラウラは話すのが苦手みたい。
「じゃあ行ってみるね」
「ええ、お願いね」
そう言いながら僕はラウラに近付く。
ラウラは僕に気づいたみたいで、肩をビクッとさせて僕を見る。
そんなラウラに手が届くぐらいまで近づいて、笑顔で挨拶をする。
「はじめまして!僕の名前はカナタ・オトナシ。君の名前は?」
「え?えっとわ…私のな…名前は、ラウラ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」
ラウラは恐る恐る僕に名前を教えてくれた。
ラウラの名前は知ってたけど初めは大切だからね。
そして僕はラウラの言葉に続いてどんどん話す。
「ラウラ・ボーデヴィッヒって言うんだね?じゃあ、ラウラって呼んで良いかな?僕のことはカナタで良いからさ?」
「う?…うん、良いよ。か…カナタ。どうして私に話しかけてくるの?私、同い年の子と話したこととか、遊んだこと無いの。だからきっとつまんない」
(あれれ?先生は話すのが苦手って言ってたよね?全然そんな感じしないけど?)
「そんなこと無いよ!僕はラウラと話せて楽しいよ。ラウラは僕と話してて楽しくない?」
そんな僕の言葉にラウラは落ち込みながら話してくる。
「ごめんね、まだ良く分かんない。今まで同い年の人と話したこと無いから、ごめん」
「そんなに謝らないでよ?ラウラはいつもどんな人達と話しているの?」
その言葉を聞いてラウラはさっきよりも肩を震わせちゃった。
ヤバイ、もしかして聞いちゃいけない事を聞いちゃったかな?
そんな事を僕が考えていたらラウラは覚悟を決めた様に僕に話してくる。
「いつもは私の兄さんと話してるよ?でもたまに怖いオジサン達と話さなくちゃいけないの、それがとてもイヤ」
「そーなんだ、ラウラのお兄さんてどんな人なの?」
話題を変えようとしてラウラのお兄さんのことを聞くとラウラは僕の言葉で今度は石みたいに固まって、またなにかを考えて、苦虫を噛み潰したような顔で僕に言葉を返してくる。
「と…とっても個性的な人よ?」
「そ…そうなんだ、ねえラウラ?今から僕と遊ぼうよ。ちょうど積み木あるしさ」
更に話題を変えるように僕は脇にあった積み木の箱をラウラの目の前まで持ってくる。
そんな僕の言葉を聞いたラウラは心配そうに聞いてきて。
「本当に良いの?きっとつまんないよ?」
「うん!だって僕たちもう友達じゃん!」
「――!うん!」
ラウラはとても嬉しそうに満面の笑顔で答えてくれた。
その後、僕とラウラは2人で1日中遊んだ。
それで気づいたんだ、ラウラは遊びを全然知らないって。
なんでか聞いても「遊んだことが無かったから」の一点張り。
そうて何日か経つ内に周りの子達とも一緒に遊ぶようになって分かった事がある。
ラウラは最初、遊ぶとき何をしてもダメダメで、だけどすぐに慣れて他の誰よりも上手になった。
例えば、積み木だったら言われた形にすぐ作ることができるし、鬼ごっこだったら誰よりも上手く隠れるし、すぐに隠れてる子達を見つけることもできる。
でもよく分からないけどラウラは言われた事以外の自分で考えて決める遊びにはすごく弱くて、でも笑ってるラウラを見てるとそんな事どうでもよくなった。
そんなこんなでラウラと出会って1週間が経ったある日、僕らの事をリザ先生から聞いたママは今度の日曜にフリーマケットに行こうって言い出した。
ママが言うには「友達になったならもっと仲良くならなきゃ!」らしい。
僕がその事を次の日にラウラに言うと難しい顔になった。
「カナタ、誘ってくれるのは嬉しいけど多分無理だと思う。お休みの日はいっつも病院に行かなきゃいけなから」
「そっか…でもラウラ、病院ってどこか悪いの?」
僕がそう言うとラウラはしまった!という顔になって。
「ううん!全然!どこも悪くないよ!ただ兄さんの付き添いで!」
「あ、そうなんだ。じゃあラウラのお兄さんはもしかして体が悪いの?」
「うんそう!兄さんとっても体が悪いから毎週ね病院に行かなきゃいけないの!」
なんだそうなんだ、じゃあしょうがないよね?
僕も、もしママやパパが具合が悪くなって病院に行くなら僕もそうすると思うし。
でもラウラのお兄さん、とっても個性的で体が弱いってなんだか不思議な人だな。
「うん、なら仕方ないね、また今度誘っても良い?」
「今度…うんまた今度。また今度ね?良いよ」
そう言いながらラウラの顔はほんの少しだけ悲しそうなった気がした。
次の日。
「カナタ!カナタ!カナタ!!」
ラウラは僕を見つけると周りのことなんて気にもせず一目散に駆け寄ってきて。
「カナタ聞いて!日曜日行けるようになったよ!」
「本当!?でも良いの?お兄さんと病院に行かなくて?」
「うん!兄さんに昨日のこと話したらね?友達と遊んでおいでだって!」
そう言いながらラウラは僕の手を取ってピョンピョン飛び跳ねる。
ラウラが僕の手を取った瞬間、僕の心臓がピョンピョン飛び跳ねてたのはなんでだろう?
そう思いながら今日はラウラと二人だけでずっと遊んだ。
そしてそれから数日後、ラウラとママとのフリーマケットに行く日になった。
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GSプロジェクト
被検体C0037経過報告…担当官イモータル・ウォルソン
プロジェクトの一環としてC0037を幼稚園に入園。
初日に同年代の少年Oと接触、友人に。
この一週間で思考パターンの変化が見られそれに伴い、苦手としていた自己決定能力の向上も見られる。
今回の定期訓練にて今までよりも好成績を残す。
だがこの事がプロジェクトの進行を速めるかは未だ不明。
もう2週間の経過次第である。
追記
次の定期訓練の実施日に少年Oとの外出許可の相談を受ける。
訓練にはならないがこれが刺激になり更なる思考パターンの多様化、自己決定能力の向上の可能性があるため訓練よりも重要と判断、行くことを承認する。
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「頑張れラウラ、君次第だ」
薄暗い部屋に1人、男の寂しい独り言が響く――
最後まで読んでいただきありがとうございます。
幼稚園編は多分後2話ぐらいです。
次回の更新は1週間後だと思います。
(・ω・)ノシ