IS ~彼岸花の思い鈴蘭の如く~   作:まうす〜

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日常回


3話【かーくん】

 たば姉の作った白銀のISが日本を守り世界にISが世界最強の兵器であると認識させた事件。

 通称、白騎士事件。

 その後、僕の周りは色々と騒がしかった。

 まず、たば姉の家には大量の取材者や各国の偉い人達が押し寄せたみたいだけど、その度にたば姉が撃退するから今度はたば姉と仲が良い人達に興味が行ったみたいで……

 つまり僕と一夏、ちふ姉に大人たちが集まって来たんだ。

 でもまあ、ちふ姉は僕が初めて会った時の寄せ付けないオーラ全開で人を寄せ付けなかったからちふ姉は良かったけど、そしたら僕と一夏が標的にされちゃって皆が僕たちに質問するようになっていて。

 最初の内はちふ姉が僕と一夏を守ってくれて安全だったんだけど、日に日にやって来る人の数が増えるからちふ姉でも守りきれないぐらいまで人が押し寄せるようになっちゃって。

 それに聞いてくることも、最初はたば姉がどんな人だとかそんな普通の事を聞いてきたんだけど、次第にどんどん聞いてくる事とかがおかしくなってきて……

 

「やあ!篠ノ之博士は君たちの友達なんだよね?だったら何とか篠ノ之博士にお話し聞かせてもらえるように出来ないかな?何としても記事が欲しいんだ、頼む!この通り!」

 

 小学1年生の僕たちに土下座をする大人。

 

【大人のくせに恥ずかしくないのかよ】

 

「こんにちは、私は日本政府のものだが君たちは篠ノ之博士のお友達だね?篠ノ之博士に会えるよう君たちの方からお願いできないかな?勿論お礼はするよ?さあ何が欲しいんだい?言ってごらん何でも持ってこさせよう」

 

 国のためと子供を物で釣ろうとしてくる嘘っぽい偉い人。

 

【胡散臭い】

 

「おお!おお素晴らしきかな!あの白銀の天翔ける衣を創りたもうた女神に是非是非ご拝見を!ああ!ああ!祝福されし(かんなぎ)殿よ!どうか!どうか!天使共が観ていない内に!どうか!」

 

 何を言っているのかサッパリ分からない変な人。

 

【……巫?】

 

 いろんな人たちが僕たちの所に来ては、たば姉に会えるようにしてくれないかとか聞いてくるようになっていた。

 最初はたば姉も、もうちょっと我慢してね?て言ってたんだけど周りの大人たちの質問がエスカレートする内にたば姉がイラついたみたいで。

 ある日、いつもみたいに大人たちが僕たちを囲む中たば姉が現れて大人たちに言い放った。

 

「ふーん、そんなに僕と話したいんだ。良いよ、じゃあ聞きたい人は今から僕と一緒に来てよ」

 

 そう言ってたば姉は大人たちをぞろぞろと連れてどこかに行ってしまった。

 でもその時たば姉とすれ違った瞬間に聞こえた言葉が僕の頭の中から離れない。

 

「やっぱり他人なんて■■なんて価値は無い」

 

 そのよく聞き取れなかった言葉に正体不明の気持ち悪さが僕の中に入り込む。

 そんな感覚に襲われながらも僕は目で追いながらたば姉を見送った。

 それから大体1時間後、たば姉がニコニコしながら僕たちの元へ帰ってきて。

 

「いやーごめんねー?3人には本当に迷惑かけちゃったよね?特に!かーくんが一番大変だったでしょー?そうだ!もしかーくんが束さんにお願いあるならなんでも1つだけ聞いちゃうよ!なんでも?なんでもって言ったよね?エッチな事するんでしょ!エロ同人みたいに!みたいな!?じゃ!そういうことで!またねー」

 

 そう言ってたば姉はステップしながら帰って行った。

 それから僕たちは、たば姉の事で大人たちに囲まれることはないし、質問とかもされなくなっていた。

 

――――――――――――――

 

 

 あれからかれこれ1ヶ月が過ぎまだ夏の熱さが残る9月の中旬になった。

 そんなある日、僕は両手にある物を持ちながら、ちふ姉と箒の家に向かっている。

 何を持ってるかって?

 それは僕が一生懸命育てた彼岸花の花束だ。

(ふ、ふふ、ふふふ……フハーハハハ!)

 

【何かお前、今日テンションおかしくね?】

 

(だってさ!やっと咲いたんだよ!うれしいに決まってるよ!)

 

 そう今、僕が持っている花束は前に僕が植えていた球根から咲いた花、彼岸花。

 最初はチューリップみたいな花が咲くんだろうなーって思ってたけど全然違って。

 その花には茎に枝も葉も無くてただ真っ赤な花だけが先端にあって花の部分も普通の花と違って、まるで真っ赤な花火みたいだ。

 

【まあ、発芽してたった7日で開花だもんな】

 

(うん!驚いたよ!いつもみたいに水をあげようとしたら芽が出てて、次の日には20cmぐらいまで伸びてたし5日目にはつぼみだっけ?それが赤くなってたんだもん!)

 そして2日後の今日ついに全部が咲いたから母さんに花束にしてもらっていつもお世話になってる一夏と箒たちの家に届けている最中だ。

(でもさっき一夏とちふ姉に届けた時ちふ姉、顔を真っ赤にしてたけどどうしたんだろ?やっぱり中学生とかになると花束って嬉しくないのかな?どう思う此方?)

 

【いや、多分逆じゃね?】

 

 ――??

 

【うん、まあいいや。それより早く箒の所行こうぜ】

 

(ん、そうだね)

 そう言って僕は少し小走りになって。

 

【おい!前!】

 

「へ?ふぎゃ!」

「ふええ?いたっ!」

 

 ちょうど曲がり角に差し掛かった辺りで僕は誰かにぶつかってしまって。

 

「ふえ〜、いたいよ〜」

「いてて、ごめんなさい!大丈夫ですか?」

 

 そこには赤みがかった茶色い髪の自分と同い年ぐらいの女の子が尻餅をついていた。

 

「だいじょうぶだよ〜、わたしも前見てなかったからね〜。君もだいじょうぶ〜?」

 

 そう言いながらその子はお尻についた汚れをパンパンとゆっくり手で叩き落としながらニコニコしている。

 よく見るとなんか随分動きにくそうで変わった服装だ。

 下はショートパンツで動きやすそうな格好だけど、上は涼しくなったって言ってもまだ9月なのに暑そうな長袖パーカーで、袖がみょうに長いしフードもきつねの耳?がついてる変わった服を着ている。

 それにすごく眠そうで開いてるのか閉じているのか分からないくらい薄目で目尻にほんの少し涙を浮かべている。

 

「うん大丈夫だよ。あ!花!」

 

 そう言いながら辺りを見渡すと花束は少しくずれてはいたけど無事なまま落ちていた。

 

「ほ、良かった」

「へ〜きれいなお花だね〜。ねえねえ〜君の名前教えてよ〜」

「うん良いよ?僕の名前は彼方、音無彼方だよ」

「うんそっか〜。じゃあカナリンだね〜」

「カナリン?それって僕のニックネーム?」

「うん〜!そうだよ〜彼方だからカナリン。ね〜?」

「う、うんありがとう」

 

【なんか随分マイペースな子だな】

 

(んスゴイね、いろんな意味で)

 

「ああ、わたしの名前はね〜?布仏(のほとけ)本音(ほんね)って言うんだ〜」

「布仏本音?変わった名前なんだね?」

「ふふ〜、よく言われるよ〜」

「うん、じゃあのほちゃんだね!」

 

 僕の言葉に少し目をぱちくりさせるとのほちゃんはさっきよりも顔をニコニコーとさせながら僕の顔をじっと見つめてくる。

 

「ねえねえ〜?のほちゃんて〜?もしかしてわたしのこと〜?」

「うん?そうだよ、もしかして嫌だった?」

 

 僕の言葉にのほちゃんはゆっくり首を左右に振って。

 

「うんん〜ぜんぜん〜。だいじょうぶだよ〜。えへへ〜のほちゃんか〜……あ!」

 

 いきなりのほちゃんは驚いた声をだしながら、ニコニコしたままいきなり体が固まる。

 

「のほちゃん?どうしたの?」

「う〜ん、あのね〜?じつはわたし迷子なんだ〜。ここには友達と一緒に来たんただよ〜」

「え」

 

 そう言いながらのほちゃんは自分の頭を撫でながらまいった〜まいった〜と全然まいってなさそうに呟く。

 

「ええ!それ大丈夫なの?友達は?どこで迷子になったの?」

「うん〜友達とね〜?どこかの神社に行こうとしててね〜行く途中で迷子になっちゃったんだ〜」

「ん?その神社って篠ノ之神社?」

「お〜!それそれ〜、知ってるの〜?」

「うん友達がそこの神社の人なんだ」

「お〜!じゃあそこまで連れて行ってもらっていい〜?」

「良いよ、僕も行く予定だったし。でもなんで篠ノ之神社に?」

「うん〜?なんだっけ〜?交流?らしいよ〜」

「ふーん?良く分かんないけどまあ良いや、じゃあ行こう!」

「お〜!」

 

 そうして2人+αで篠ノ之神社に向かうことにした。

 行く途中、のほちゃんは僕の事をたくさん聞いてきて僕は1つ1つちゃんと答えたながら歩いて。

 そうしている内に目的地の篠ノ之神社に到着する。

 そこには何時も道場で稽古している箒が鳥居の前の参道で素振りをしている。

 箒も僕が来たのに気付いたみたいで竹刀を振るのをやめてこちらに歩いて来た。

 

「おっす」

 

【オイッスー】

 

(なんで此方も?)

 

【良いだろー?雰囲気だ雰囲気】

 

(まあ良いけどさ)

 

「おお彼方かどうしたんだ?ん?一緒にいるのは誰だ?」

「そっちのお客さんだってさ」

「客人?ああ、1人迷子になったと聞いたけど、それなら道場に行ってみると良い。一緒に行こうか?」

「わ~ありがとう〜!ひとりで行けるから大丈夫だよ~。じゃあカナリンもありがとね〜!」

 

 そう言ってのほちゃんは長い袖を旗のようにブンブン振りながら道場に向かおうとする。

 

「あ!そうだ〜カナリン?」

「ん?どうしたの?」

 

 のほちゃんはテクテクとこちらに歩いてきて少し顔を赤らめモジモジしながらこちらを上目遣いでのぞき込む。

 

「あのね〜?多分カナリンとはね〜?もう会えないかもしれないんだ〜。だからあの〜……そのね〜?なにか思い出になるものもらえないかな〜?」

「ん?良いよ」

「ふえ〜?いいの〜?」

 

 その少し戸惑っているのほちゃんに少しクスッとしながら僕は元気に答えた。

 

「うん!でも、もう会えないからちょうだいじゃ嫌だな」

「ふええ〜?」

 

 僕の言葉に泣きそうになって目をウルウルさせてるのほちゃんの、のほほんとした雰囲気と今のギャップに少し背中をゾクゾクっとさせながら答える。

 

【……ラウラの時も思ったけどやっぱお前、Sだな】

 

(え?Sがなんなのか分かんないけどなんかかこういう顔って可愛いよね?)

 

【……お、おうそうだな】

 

「また会う時にお返しするなら良いよ」

 

 ウインクしながら僕はのほちゃんに答える。

 

「――!うん!ねえ〜?また会った時にね〜?お返しするから出会ったきねんに〜なにかもらってもいい〜?」

「うん!良いよ!あ!でもあげれるものが今無いんだけど……」

「ん〜?あるよ〜?その花束じゃあだめかな〜?」

 

 そう言いながらのほちゃんは僕が持っている花束を指差す。

 

「え?これ?うーんでも……」

 

【良いんじゃあねえの?家にまだあっただろ?】

 

(まあうん、そうだね)

 

「うん、良いよ。僕が育てた花だけど大切にしてね?」

 

 そう言って僕はのほちゃんに花束を渡す。

 

「へ〜!カナリンが育てたの〜?うん〜、大切にするね〜」

 

 僕の渡した花束をまるで赤ん坊を抱くみたいに丁寧に受け取ると今までで一番のとびっきりの笑顔で僕に言ってくれた。

 

「ありがと〜!また会おうね〜」

 

 その笑顔に少し照れ臭くなりながらも僕はしっかり返事をする。

 

「うん!また会おうね!」

 

 そう言うとのほちゃんは友達が待ってるらしい道場の入口の方に駆け足で駆けていった。

 

【なんか束さんみたいだったなあの子。変わってるって言うかなんて言うか】

 

(そう?たば姉はもっと変わってるよ?)

 

【……でもどうして道場の入口がわかったんだ?】

 

(?)

 

【なんでもねーよ、女ったらし】

 

(??)

 

「そう言えば彼方はなんで私の家に?ただ迷っていた子を案内するために来たのか?」

「うんん、今日さついに花が咲いたんだ。だからその花を箒とたば姉にどうかなって」

「おお、ついに咲いたのか。ん?でもさっきあの子に渡してたよな?」

「ああうん、でもまだ家にあると思うから。……でも一応、電話で確認させてもらって良い?」

「はあ、まあ良いぞ。だがな全くお前といい一夏といい無計画過ぎないか?お前らの事を心配している人はいるんだぞ?」

 

(それを言われると辛いな……)

 

「……うんごめん」

 

 僕の落ち込んだのを見た箒は慌てながら何とかしようとする。

 

「いや!あのだな!別にそれをやめろとまでは言わないぞ?でももう少し考えろと言ってるんだ!」

 

 その慌てた様子を見ながら僕は少し頬を緩ませて箒の家に駆け足で向かう。

 

「なにしてるの?置いてくよ!?」

「おっおい!待て!」

 

 駆け足で箒の家まで走りながら僕は思った。

 僕は今日は忘れないと思う、のほちゃんに会えた今日を。

 また会おうって約束した今日をラウラと約束した日と同じように。

 これも僕の大切な今だから。

 

――――――――――――――

 

 

 私は両手で持たなくちゃ持ちきれない程の花束をしっかりと持ちながらバスに揺らされていた。

 

「もう、心配したんだよ?本音ちゃんどこに行ってたの?」

 

 そう言いながら私の隣に座ってる幼馴染であり仕える主は心配してくれる。

 

「ふふふ、私は心配して無かったわよ?本音ちゃんはとっても優秀ですもの。お姉さんは心配なんてするはずないわ」

 

 そう言って私にとってお姉ちゃんみたいな存在で、隣に座る幼馴染と同じように仕える主は前の席から身を乗り出しながら自信満々に予感的中と書かれた扇子広げた。

 

「全く本音?心配させないで?私だけじゃなくてお嬢様達にも迷惑をかけるなんて一族の恥じよ」

 

 そう言って前の席に座ってるお姉ちゃんは少しきつく私に注意する。

 でも知ってるよ?私が皆と合流した時、目が少し赤かったの。

 何時も私の事を心配してくれる優しいお姉ちゃん。

 

「う〜ん、ごめんね〜次からは気をつけるね〜」

「もうフラフラしてどこかに行っちゃだめだよ?」

「ふふふ、そういえば本音ちゃん?その両手に持ってる花束は何?」

 

 そう言って扇子を裏にすると隔靴掻痒(かっかそうよう)って文字が書いてある。

 思うようにいかないって意味だっけ?

 

「ふふふ〜。ひ・み・つ〜」

 

 うん秘密、こんなこと誰かに知られたら目も合わせられない。

 私が一目惚れしたなんて。

 もう会えないと思うけど、もしまた会えたならその時は……

 ふふ、どんな事をして遊ぼうかな。

 バスが先程よりも強く揺れる、まるで私のドキドキをごまかしてくれるみたいに。

 

――――――――――――――

 

 

「ええ!?実家に送った!?」

『ええ、彼方が育てた花ならお母さんの実家に送っちゃったわよ?』

「何で!?」

『何でって、彼方が1人で育てたっておばあちゃんに電話で話したらね?今すぐ送っておくれ!って言うもんだからねぇ?』

「ねぇって言われても……うん、分かった。夕方には帰るよそれじゃ」

 

 そう言って箒の家にある今ではあまり見ることがない黒電話の受話器を置き、横ですんごいジト目で僕を見ている箒に乾いた笑みを向けながら肩を落とす。

 

「はは、もう無いって……はー」

「無計画め」

「うう、ごめん」

 

 僕がシュンとしていると箒は溜息を吐きながら少し口を緩ませ。

 

「全く、別にそこまで落ち込むことはないんじゃないか?」

「え、なんで?」

「何でって、また来年があるじゃないか?」

「あ」

 

 そんな当たり前な事に少し口を半開きにする僕に箒は笑顔でこちらを見る。

 

「だって、彼方はもうずっとこの街で暮らすんだろ?ならまた来年にでも育てて持って来れば良いだろ?」

「う、うんそうだね。そうだよ、もうどこかに行く訳じゃないんだよね」

 

【あわてんぼうだなー。ま、お前の中でドイツの事が残ってるんだろ?】

 

(うん、そう…なのかな?自分の中でドイツにいた時みたいにまたどこかに行くのかな?大切な人がどこか遠くに行くんじゃないのかな?って思ってるみたい)

 

【まあ、お前らしくて良いんじゃないか?それってさ今を大切にしてるってことだろ?カッコイイじゃん】

 

(……)

 

【どうした?】

 

(……此方にほめられると照れる)

 

【キモ】

 

 ひどいなーと思いながら箒の方を見ると……

 ピクピク!

 見ると……

 ピクピク!ピクピク!

 箒の後ろに居間があるんだけど襖の隙間からメカメカしいウサ耳が2つ?すんごい速さでピクピクしている。

 

「んん!?」

「どうした彼方?まるでネッシーでも見つけたような顔をして……んん!?」

 

 僕の見ている物に気付いた箒は僕と同じリアクションをした。

 ピクピク!ピクピク!ピクピク!

 そして僕は恐る恐るそれを着けているだろう人を呼ぶ。

 

「あ、あのー?たば姉?」

 

 ピク?ピクピク……ビクビクビクビク!

 

「「ひ!」」

 

【怖!】

 

 僕の言葉に反応する様にウサ耳はけいれんし始める。

 でも僕と此方、箒が驚いた理由は別にある。

 

「かーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくんかーくん」

 

 襖の隙間から顔を出したたば姉の目が死んでいるのだ。

 まるで死んだ魚の目のような虚ろな瞳で僕を見つめながら、僕の名前をまるで呪文を唱える様な禍々しさで連呼している。

 

【彼方!ヤバイ!アレはヤバイ!逃げろ!】

 

「ひぃ!」

 

 此方の言葉にハッと我に返りあまりの恐ろしさに玄関に走って逃げようとした。

 逃げようとしたのだ。

 

「かーくん!!」

「姉さん!?う!」

「いて!」

 

 後頭部に鈍い痛みを覚えながら痛みで閉じた目を開くと脇で箒が気を失って倒れているのが目に入った。

 そしていつの間にか僕の上にたば姉がまたがっている。

 

「箒!たば姉!何を!?」

「かーくん、なんで?なんで僕にくれなかったの」

「く、くれなかったって何を?」

「お花。かーくんが一生懸命育ててたあのお花。なんで?なんで僕たちにあげるために持って来てくれたのにあの子に渡しちゃったの?今日初めて会ったあの子が気に入ったの?好きになったの?何ヶ月も一緒な僕よりも?あ、もしかして僕のことなんてもういらなくなったのかな?そうかー。違うよね?僕、なんでもするよ?なんでも創るよ?なんでもあげるよ?かーくんが死ねって言えば死ぬよ?なんで?言ってよ。なにか悪いところがあったの?なら直すからだから。だからねえお願い。お願いだから僕を捨てないで」

「たば姉?」

 

【束さん……】

 

 たば姉は涙なんて流していなかった。

 でも。

 でもたば姉が泣いてるように見えて。

 だから僕は。

 手を――

 

「ひぃ!か、かーくん?」

 

 僕は右手をたば姉の頭の上にのせ、僕が怖い夢を見た時に母さんがよく僕にしてくれるみたいに頭をなでる。

 

「たば姉?僕はどこにも行かないよ?また来年。また来年さ、持ってくるよ」

「どこにもいかない?」

「行かない」

「捨てない?」

「たば姉は僕の物じゃないでしょ?」

「うん、そうだね。うんそうだよ」

 

 そうしてたば姉の目にはいつの間にか生気が宿りいつも通りのたば姉に戻っていた。

 

「んふふー、じゃあ来年は絶対にもってきてよー?」

「うん、約束」

「やくそくー」

「はは」

「ふふ」

 

 そう言って僕とたば姉は笑う、まるで先程のことなんて無かったみたいに。

 

「はははは……あ」

 

でもとっても大事なことに気付いた。

 

「どうしたの?」

「箒」

「あ」

 

【あ、起きた】

 

 このあと滅茶苦茶説教された。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

これなら分割投稿すればよかったかな?でも後悔はない。

それに今回の投稿も2週間かかっちゃいました。

まあ次回で小学校編は最後ですが……まあ作品の時間がかなり飛びます。
つまりチャイナ娘の小学校での内容はかなり少なくなるかもです。
チャイナ娘好きな皆々様申し訳ありません。

では皆々様

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