IS ~彼岸花の思い鈴蘭の如く~   作:まうす〜

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《母の質問》
夕「なんでママから母さんになったの?」
彼「……恥ずかしいから」
千「可愛い!」ムギュ!
彼「ふむぐ!?」
束「ギリ!」



此【なにこれ?】


4話【パンダ】

 白騎士事件から5年後。

 僕はもう6年生になり今さっき卒業式が終わった。

 そしてこの5年間で色々と変わったんだ。

 世界でISを乗れるのが女性だけだから世界で女性を尊重する女尊男卑の世界になったんだけど。

 おかしくない?ISに乗ってる人が凄いのは分かるけどそれ以外の女の人が男に指図するんだよ?

 うん、まあそれはいいや、それとISがあまりにも強力な兵器だって事でIS運用協定、 通称アラスカ条約が結ばれたんだ。

 まあ簡単に言えばISを兵器として使わないこと、それとこれを作った日本は責任を 持ってIS用の各国の人材育成とかその他もろもろ頑張れって内容かな?

 そしてこの条約が締結された結果、ISはスポーツになった。

 それでもみんな思ってるんだ、ISがスポーツじゃなくて兵器だって。

 そして身近な所でも変化があった。

 たば姉と箒がこの街からいなくなった。

 

――――――――――――――

 

 1年前――

 

『お伝えしますIS開発者である篠ノ之束博士が現在行方不明とのことです――』

 

 意味がわからないニュース。

 いつの間にかたば姉がいなくなった。

 僕たちに何も言わないで。

 

「じゃあな一夏、彼方」

 

 何かに疲れきった顔で僕と一夏に別れを告げる箒。

 その手には僕が渡した彼岸花の花束が握り締められていた。

 何も言えなかった、僕も一夏も、そしてあのちふ姉でさえも。

 そしていなくなった、箒もたば姉も。

 僕がいつまでも続くと思った今が壊れた瞬間だった。

 

――――――――――――――

 

 

 それからしばらく僕は心ここに在らずって状態だった。

 でも、こんな僕に一夏とちふ姉は今まで以上に一緒にいてくれて。

 まあちふ姉は少し度が過ぎてたとは思うけど……

 まあでもそのおかげでいつもの僕に戻れたんだ。

 箒とたば姉がいない寂しさは消えなかったけど。

 でもそんな中、その寂しさを紛らわすような奴に出会った。

 

――――――――――――――

 

 

 5年生になったばかりの頃。

 なぜか毎年、同じクラスの一夏と教室に向かうとブタとゴリラが合わさったみたいなガキ大将がツインテールの女の子をいじめている。

 

「やーい!パンダ女!おまえ動物くさいぞ!消毒しろよ!消毒!」

 

 いじめられているのは……

 

「あの子って一夏?」

「げ!」

 

 一夏は自分のほっぺを押さえながら顔をひきつかせる。

 そう一夏はあの子に一度なぐられている。

 もちろん一夏のせいだ。

 あの子の名前は(ファン)鈴音(リンイン)、中国人で今年からこの日本の小学校に来た転校生。

 そして絶賛一部の男の子に虐められている。

 でも日本語は普通に話せて可愛いし性格も明るくてとってもいい子だけど……まあ一夏のせいだね。

 一夏が最初に「お前の名前ってパンダみたいだな」って言ったのが原因で一部の子からパンダ女とか動物くさいって言われようになった。

 で、その時一夏は顔面にモロ、右拳を頂いている。

 けど今日はいつもと様子が違うみたいだ。

 いつもみたいに悪口を言っているブタゴリラ(名前思い出せないや)の言葉を凰ちゃんが無視しているのが気に入らないみたいだ。

 

「おまえなに無視してんだ!おいパンダ女!はーん、もしかして怖くて声も出せないのか?」

 

 いい加減、我慢の限界だったのか凰ちゃんはこめかみに青筋を立てながら罵声をブタゴリラ(ごめんやっぱ思い出せない)に浴びせる。

 

「うっさいわね!いい加減にしてなさいよ!あたしの名前も覚えられないの?このブタゴリラ!」

 

(あ、やっぱりブタゴリラって名前だっけ?)

 

「んな!ぶ、ブタゴリラって俺様のことかよ!」

「はん、あんた以外に誰がいんのよ。そんな豚みたいな体型でゴリラ並みの頭なんて大変ねぇ?」

「お!おまえ!い、いい加減にしろよ!」

 

(ヤバイ!)

 流石にこれ以上は言葉以外のものが飛び交いそうになりそうなので僕は止めにかかろうとするとそこに颯爽と一夏が間に入った。

 

「お前らいい加減にしろよ!」

「「「「「お前がそれを言うか!?」」」」」(クラス一同)

 

 この問題の原因が仲裁という名の油を注いだ瞬間であり、奇しくも一夏以外のクラスの皆の思いが一緒なった瞬間でもあった。

 それからすぐに先生が来たから良かったけどブタゴリラはまだ凰ちゃんに不満があるみたいで授業中もずっとにらんでいた。

 そして放課後。

 

「おいパンダ女ちょっと付いて来い」

「はぁ?あんた馬鹿じゃないの?なんであたしが付いて行かなきゃいけない訳?」

「っ!いいから来い!」

「痛!ちょっと!髪掴まないでよ!」

 

 ブタゴリラは凰ちゃんの髪を掴みながらどこかに行こうとしている。

 周りのクラスの子は巻き込まれないようにと必死に目を合わせないようにしていた。

(行くしかないよね?よし、じゃあ一夏を連れて……)

 一夏の席を見るとうつ伏せで寝息も立てずにグッスリと寝ている馬鹿がいた。

 

 ユサユサ、スパン!……キュポン!キュキュ、キュ、キュ、キュー、キューゥ!

 

 何をしても起きないので急いでブタゴリラの後を追うことにした。

 

【ふぁ〜、おはよう。どうした?そんなに急いで?】

 

(ああ朝から声聞いてないと思ってたら寝てたんだ。おはよ。今、凰ちゃんがさらわれた)

 

【はい?何?どゆこと?】

 

(ほら、あの、名前が……ブタゴリラ!)

 

【ああ、いつもあのチビッ子虐めてた奴か。成程ね、OK分かった。遂に我慢の限界で手を出すって訳だ。で、彼方は今からそこに行って止めようと?】

 

(うん、そうだよ)

 

【何度も言うが】

 

(分かってる。自分の行動の結果は受け止めるつもりだよ。どんな結果になっても)

 

【なら宜しい】

 

 そしてそうこうしているうちにブタゴリラに追いついた。

 そこは校舎の裏で決して女の子を呼んでドキドキするような事を言う綺麗な場所ではなく、薄汚れて誰にも見られなそうな場所だ。

 そこには凰ちゃんとブタゴリラ、それ以外にクラスメイトの……

(誰だ?)

 いや、見たことはある。

 すんごいお金持ちで……ああトンガリくんだっけ?

 その3人で何か話しをしているみたいだ。

 

「おまえ生意気だぞ!俺様の言うことを聞きやがれ!」

「そうだ!そうだ!」

「はぁ!?なに言ってんの!?あんたらあたしのなんな訳よ!てかさぁ?ブタゴリラ、あんた豚臭いのよね?風呂入ってる?」

「ぶ、ブタゴリラってまた言いやがったな!?いい加減にしやがれ!」

 

 ブタゴリラも我慢の限界になったようで腕を振り上げる。

 流石にそこまで行くと冗談では済まないので止めに入った。

 

「な、何してるの?」

 

 あたかもたまたま見つけたみたいに。

 まあ、たまたまで来るような場所じゃないけどね。

 

「あ?おまえ一夏の腰巾着(こしぎんちゃく)だろ?なんだよどっか行けよ、じゃま」

 

(あ?)

 ニッコリ、僕の顔が笑顔になって。

 

「え、でも。そこにいるの凰ちゃんだよね?嫌がってるよ?」

「じゃまだって言ってんだろ!いい加減にしねえと殴るぞ!」

 

(もうひと押し)

 

「ブタゴリラくん!でも女の子に乱暴はいけないよ!」

 

 ブチッそんなどこかの血管がブチギレるような音がして。

 瞬間ブタゴリラの顔が真っ赤になる。

 

【おお】

 

「じゃまだって言ってんだろぉが!」

 

 僕の誘いに乗ったブタゴリラは僕に向かって振り上げていた拳を振り下ろした。

 ブタゴリラの体格は他の子より大きくて、僕の体格は他の子より小さい。

 だから殴ろうとするとどうしても振り下ろす形になる、だから。

 

【走れ!】

 

(おう!)

 

 此方に言われる前に僕は全力でブタゴリラとの間合いを詰める。

 

「おまえ!」

「うわっと!」

 

 そうして詰めた瞬間に屈みブタゴリラの振り下ろした拳を避け、それと一緒に勢いよく動く顎に向かって思いっきり跳び上がって頭突きする。

 

「あ、よいしょ!」

「つぁ!」

 

 そうして頭に響く痛みに堪えながらブタゴリラの方を見ると顎を押さえながらうずくまっている。

 

「ブタゴリラ!大丈夫!?」

「お、おまえまでブタゴリラって言うんじゃねえ!」

 

(おし!)

 

【んじゃま】

 

「【逃げろ!】」

「え!ちょっと!」

 

 うずくまっているブタゴリラとそれを心配しているトンガリを尻目に、驚いて目をパチクリしている凰ちゃんを連れて急いでそこを離れる。

 そうして周りの目を気にしながら人気の少ない昇降口まで逃げ込む。

 

「はぁはぁ、ちょ、ちょっとあんた、音無だっけ?何で助けてくれたのよ?」

「はぁはぁはぁ、だって困ってたでしょ?」

「誰が!助けなんていらなかったわよ!あんな奴らあたし1人で倒せたし!」

「で、でも反撃してたらもっと酷いことされてたかもよ?」

「う、そ、そんなの関係ないわよ」

 

【強情だなー】

 

(なんだか箒みたいだね~)

 

「まあ良いや、教室に戻ろ?ランドセル置きっぱなしだしさ」

「ふん、しょうがないわね」

「ああ、それと僕は彼方で良いよ。友達にはそう呼ばれてるからさ」

 

僕がそう言うと凰ちゃんは目を伏せながら小声で話してくる。

 

「あんたとは友達じゃあないし、それにあたしと仲良くするとあんたもイジメられるわよ」

「ん?良いよ?」

「はぁ!?」

 

 僕が当たり前のことを言うとまるで鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしている。

 

「大丈夫!僕だけなら何とかなる自信があるから!」

「あんたさ?もっと酷いことをあんたと友達全員にされたらどうするの?」

「え?そんなの――」

 

 僕は当たり前のことを言う。

 

「全員黙らせればいいじゃん?」

「はぁ?何?その友達全員で反撃する訳?」

「違うよ?そんなことしたら皆に迷惑がかかっちゃうでしょ?僕だけでやるんだよ?」

 

(そんな僕の友達を怪我させるような奴ら邪魔だよ。ねえ?此方)

 

【……ああ】

 

僕の言葉でまた目をパチクリさせると急に真顔になって何かを我慢しているような顔になる。

 

「ぷ、あは、あははは!あんた馬鹿じゃないの!いいわ信じてあげる。ならあたしが虐められたらあんたが助けなさいよ?」

 

 そう言いながら今までずっと不貞腐れていた顔を崩してとっても明るい笑顔になった。

 

「うん、良いよじゃあ今から僕と凰ちゃんは」

 

 そう言いながら僕は手を差し伸ばす。

 

「ええ、友達。それとあたしのことは鈴でいいわ、凰ちゃんてなんかくすぐったいのよ」

「じゃあ、鈴。よろしくね!」

 

 鈴は僕の手を握る。

 その瞬間、僕と鈴は友達になった。

 

【狂っているのはお前か?】

 

 そんな此方の言葉に。

【それとも……俺なのか?】

 

 気づかないまま。

 それから僕と鈴は教室に戻りランドセルと一夏を回収して帰り道、鈴の家は途中まで一緒みたいだから3人で帰ることにした。

 その道中。

 

「あ!忘れてた!一夏とか言ってたわよね!?あんた何で最初に会った時あんなこと言ったのよ!」

「言ったこと?何のことだよ?ああ!鈴あの時なんで俺を殴ったんだよ!」

 

 事件の切掛けの一夏は、え?悪いことした?てかお前の方が悪くねって顔をしてやがる。

 その顔に更にイラついたのか鈴のこめかみにさっきみたいに青筋が立つ。

 

「なんでじゃあないわよ!あんたが変なこと言うもんだからあたしがこんな目にあってるんじゃない!それと!あんたが鈴とか呼ばないでよ、それ言っていいのは彼方だけだから」

「はあ!なんで俺はダメなんだよ!彼方もなんか言ってくれよ?」

 

 先程からずっと黙ってた僕に一夏は絡んでくる。

 それで僕は一夏の先程の疑問に答える。

 

「鈴は最初に会った時になんでパンダみたいって言ったのか聞きたいんだよ」

「ん?そんなこと……ああ言ったな」

「ほら言ってんじゃない!」

 

 鈴のその言葉に一夏は驚いたが屈託(くったく)のない笑顔で答えた。

 

「え?だってパンダみたいで可愛いじゃん!」

「な!ななななな!にゃに言ってんのよ!」

 

【おおこれは】

 

 一夏の言葉に鈴は顔を真っ赤に慌て出す。

 その姿に一夏は慌て出し、ずいっと鈴の顔を覗き込んだ。

 

「お!おい鈴!大丈夫か?」

「ち!近づくなー!」

 

 鈴は体を捻り勢いよく一夏の顔に向けてビンタをかました。

 

「ふびらい!」

 

 いきなりのビンタに一夏も為す術もなく綺麗に一回移転しながら地面に顔から倒れ伏す。

 

「あ!あんたが悪いんだから!そ、それとその顔もなんとかしなさいよー!」

 

【ちょろいな】

 

 ぶっ倒れた一夏に流石にまずいと思ったのか鈴は捨て台詞を吐くようにして一目散に逃げていった。

 

【おい、一夏を起こさなくていいのか?】

 

(へ?良いでしょ?だってちふ姉に毎日のように叩かれてるんだし?)

 

【まあそうだな、帰ろうぜ。今日はカレーだ】

 

(此方はカレー好きだね?まあ良いや。明日と鈴と一緒に遊びたいな)

 

 そんな事を考えながら僕はいつの間にか復帰していた一夏と家に向かうことにした。

 まあ家に着くと珍しくバイトから早く帰ってきていたちふ姉に会って……

 

「その顔は何だ!この愚弟が!」

「なんのことだよぉぉぉ!ぐべらぁ!」

 

 綺麗にグーパンチを食らったのは言うまでもない。

 ちなみに一夏さんの顔には僕が油性ペンで、今ではもう時代遅れになりつつある肉という文字をオデコに書かせて頂いた。

 

【鬼が】

 

(鈴のことを考えれば当然の報いです。)

 そんなこんなでその日は無事?に終わり次の日からブタゴリラの虐めは無くなっていた。

 どうもブタゴリラが自分のお母さんに昨日のことを話したら女の子を虐めたのかと、キツく叱られたようだ。

 だからその日からクラスは安全になって鈴を虐めてくる奴は現れなくなった。

 でも心配なのが昨日、鈴が一夏に惚れたことなんだけどね。

 まあそれから僕と一夏、鈴の3人で遊ぶようになった。

 僕にしてみればまるで箒がいるみたいでとっても嬉しかったんだ、失くした今がまた戻って来たみたいで。

 

――――――――――――――

 

 

 それから数ヶ月後の夏。

 ちふ姉はISの世界大会、第一回モンドグロッソで格闘部門優勝と総合優勝を果たし最強の称号、ブリュンヒルデを手に入れたらしい。

 らしい、とは一夏も僕もちふ姉がそんな大会に出るのも出たことも知らなかったからだ。

 だってISの大会があるからって何となくテレビを点けたらちふ姉が出てるんだもん、一夏と一緒に驚いたのを覚えている。

 まあそれでまた記者とかが来るかと思ったけど重要人物保護プログラム?だっけかな?それのおかげで無事に何事もなかった。

 でも気になったのがちふ姉がすんごく上手にISを乗りこなしてたことかな?

 まるでずっと前からISを動かしていたみたいで。

 まるであの白騎士みたいで。

 まあ大きい事と言えばこれぐらいかな?

 で、まあ無事に何事もなく6年生になり卒業式を迎えた。

 ずっと一夏とは同じクラスだったのは不思議だったけど、中学に入学したら一緒のクラスにはならないだろうって思うと少し寂しくなった自分が少し恥ずかしい。

 

【おーい、夕陽さんが呼んでるぞー?】

 

 僕がこれまでのことを思い出していると此方が僕を現実に連れ戻した。

 少し慌てながら母さんの方を見ると母さんがカメラを握り締めながら僕を待っている。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 僕が慌てて向かうと母さんはいつもの優しい笑顔で迎えてくれた。

 

「いいの、いいの!最後ですもん。寂しいわよね?」

「う、うん。まあ……ね」

 

 そうだ、小学校での生活はこれが最後だと思うと寂しい。

 その僕の気持ちを感じ取ったのか、母さんは僕の背中をバンバン叩きながら話す。

 

「ほらほら!そんなしょげてないで写真撮るわよ!ほら!一夏くんと鈴ちゃん、千冬ちゃんの所に行きなさい!」

 

 そう言いながら母さんは指をさす。

 その方向を見ると……

 

「あ」

 

【はは】

 

「おい彼方!早く来いよ!写真撮ろうぜ!」

 

 万遍の笑みで僕を呼ぶ一夏。

 

「ひゃ!もう!一夏!あんたいきなり大きな声で叫ばないでよ驚くでしょ!」

 

 そう言いながら一夏に負けず劣らずな声で叱りつける鈴。

 なんだかんだ言ってもやっぱり一夏のすぐ近くに居たいようでいやいや言いながら一夏の隣にずっといる。

 

「ほう?鈴?お前も一夏と同じぐらいうるさく聞こえるが?」

 

 ちふ姉もいつもみたいに凛としてはいるけどいつもよりも優しい目をしている。

 そうして騒いでいる3人のその姿に僕は眩しいものを感じた。

なにが眩しく感じたのか分からない、けどこれを失う訳にはいかないと自分の中で強く思った。

 どんな犠牲を払っても。

そんな誰にも、自分ですら自覚できなかった決意を胸に秘めながら一夏達の元に向かう。

 今をもっと楽しむために。

 

「お待たせ!」

 

――――――――――――――

 

 

 最近、ごく稀にどっちが俺なのか分からない時がある。

 どっちがアイツでどっちが俺なのか。

 俺がアイツになろうとしてるのか、アイツが俺になろうとしてるのか。

 もしもアイツが俺になろうとしているなら……

 だが頻度はごく稀だからまだ慌てなくてもいいだろう。

 何してんだ?俺は……何で死んでも人様に迷惑をかけてんだよ。

 そしてアイツは狂ってやがる、いや狂いつつある。

 緩やかに、岩が水で形を変えるみたいに。

 もしも俺のせいなら……俺は。

 死んでやる。

 どんな手段を使っても。

 悪魔にだって願ってやるよ。

 今度こそ救いたい、救われたいんだ。

 今度こそ……

 

――――――――――――――

 

 

 白騎士事件の数日前――

 

「ふふふふふ」

 

 薄暗い部屋の中、明かりが部屋にある無数のモニターや機械のランプ光だけなのでまるで秘密基地のような雰囲気の部屋で篠ノ之束は他よりも小さなノートパソコンのモニターを見ながら不敵に笑みをこぼしていた。

 

「ふふふー、いやはやたまりませんな〜」

 

 彼女の見ているモニターには無数の写真データが入っているようだ。

 

「いやはや、かーくんはやっぱりいいねぇー」

 

 モニターには近所の住んでいる小学生の写真が3桁近く映っている。

 その写真のどれもがカメラ目線ではないことから恐らく盗撮したのであろう写真だらけだ。

 この場に織斑 千冬がいたならば恐らく、今まで以上に悲惨な結果になるであろう。

 そんな愚行を犯しながら彼女は考えていた。

 

「はぁー、もう少ししたらかーくんとの約束を果たせるよ?待っててね?かーくん?ムチュー!」

 

 そう言いながらモニターに写る写真の男の子にキスをする。

 その瞬間。

 

『いやはや、篠ノ之博士?流石にそれは不味いのでは?』

 

 いきなり彼女の部屋にある無数のスピーカーから男性の声が聞こえる。

 ありえない、そんな事を考えながら彼女は停止した思考を一瞬ではっきりさせ、一瞬で逆探知機を起動させる。

 

《0%》

 

「だれだよおまえ」

 

 そんな感情を完全に失くした声で彼女はスピーカーの向こうにいるであろう男に質問する。

 

《30%》

 

『ははは、酷いですね。一度お会いしたはずですよ?あなたの発表の時に』

「発表?」

 

 そう言えば自分が前、初めてISを発表したのを思い出した。

 その時、周りの大人が冷めた目で見ている中、1人だけ興味深く僕の話を聞いていた誰かを思い出す。

 

『ええ、あの発表の際に篠ノ之博士の発明に思いに心奪われた者の1人です。博士の発明があれば宇宙(ソラ)に行き無限の可能性が手に入る!ああ、なんて素晴らしい!』

 

 その芝居掛かった話し方にイラつきを覚えいい加減ウンザリしてきたので自分がコレに最も興味あることを質問する。

 

《75%》

 

「おまえだれ?死にたいの?」

 

《100%》

 

 逆探知機の映した場所は――

 

《篠ノ之道場》

 

「――なっ!」

『「いやはや、死にたいの?とは物騒ですね、僕はただあなたとお話したいだけなんですよ?」』

 

 瞬間、彼女の部屋の唯一に出入り口から1人の男が襖を開けて現れた不敵な笑顔を浮かべながら。

 まるで彼女を見定めるかのように。

 

「こんにちは篠ノ之博士、僕はあなたの(みかた)になる者です」

 

 さあ、物語を進めよう。

 優秀な彼女を使って、歪んだ物語を作り出そう。

 その先にハッピーエンドがあると信じて。

 幸福だけで幸せになる事はありえないのだから。

 

――――――――――――――

 

 

 何時(いつ)か未来、何処(どこ)か機械に囲まれた無機質な部屋の中。

 

「アハハハハ!待っててね!ちーちゃん、いっくん、箒ちゃん!もうちょっとでわたしが全部終わらせるから!アハ、アハハハハ!」

 

 三人の名前を叫ぶ彼女、その笑顔に嘘は無かった。

 ただただ純粋な憎悪が込められたその笑顔には。




皆々様、これにて小学校編は閉幕でございます!

様々な出会い!別れ!そしてフラグ!箒とチャイナ娘好きの方々は申し訳ない!
次回から中学校編!物語が今まで以上に歪んでいくと思われますがどうか、どうか!皆々様お楽しみ下さい!

ちなみに織斑千冬と篠ノ之束はヒロインではないのであしからず。


では皆々様

待てしかして希望せよ
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