武装神姫Cross Force   作:浦尾 有

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大会-1
第9話


「とうとう明日かぁ」

 今日は月末の土曜日。アゲハに誘われた大会の日が目の前に迫り、自分の部屋でソワソワする宏彦とティアだった。

「ドキドキだけど、楽しみなの」

「そうだね。どんな神姫マスターと戦えるか今から楽しみだよ。勝ち負け気にせず楽しもうぜ!」

「うん! でも負けるのはヤ! やっぱり勝ちたいの!」

「そうだな。狙うは優勝だ! そうと決まれば作戦会議だ! 遼さんにも負けられないからな!」

 前回、遼とのバトルは、あと一歩の所で力及ばず敗北した。

 遼とでは実戦経験が圧倒的に違う。であれば作戦でカバーするしかない。

「そう言えば、今回の大会ってタッグ戦らしいんだよな。作戦会議するなら俊輔を呼んだ方が良いな」

 皆と相談した結果、俊輔がリベンジしたいと言い出し、宏彦と俊輔が再びペアを組む事になったのだ。

 宏彦は携帯電話を取り出し俊輔を作戦会議に参加するよう呼びかけた。

「俊輔のやつ、少ししたら来てくれるってさ。そしたら俊輔とニーナも合わせて四人で作戦会議だ! そうと決まれば必要なのはお菓子と飲み物だ! ちょっと買い出し行ってくるからティアは待っててくれ。すぐに戻るからさ」

 宏彦はそう言うとそそくさと部屋から出るのであった。

「いってらっしゃいなの」

 バタンと扉が閉まる音を最後に、部屋は静寂に包まれ一人残されるティアだった。

「……」

 静まり返ってからしばらくした時だった。

――コツン!

「ふにゃっ!」

 突然、窓ガラスに固いものが当たる音に驚くティア。

 窓の方を見ると、そこには見覚えのある神姫が立っていた。

「黒姫ちゃん!」

 

 

「黒姫ちゃんどうしたの? ますたーは一緒じゃないの?」

 窓を開き、部屋に黒姫を招きいれる。

「ええ。今日は一人で来たわ。……その、この前バトルに誘ってくれて嬉しかったから、お礼をしようと思って……」

 黒姫は背中に隠していたプレゼントボックスを、少しテレながら差し出した。

「ふぇ? いいの?」

「良いから受け取って頂戴」

「あ、ありがとなの……空けてもいい?」

「良いわよ。気に入ってもらえたら嬉しいのだけれども……」

 ティアはプレゼントを受け取ると、器用な手つきでリボンを解いていく。

 中から現れたのは神姫が身に付ける事のできるペンダントだった。

 ペンダントは銀色の蝶の形をしていた。

「すっごく可愛いの! ありがとなの!」

「そのペンダント、身に付けていると災いから守ってくれる効果があるらしいから、普段から持っていると、良いんじゃないのかしら?」

 黒姫は恥ずかしそうに顔を赤らめるのであった。

「ありがとなの。大切にするの!」

 そう言うとティアはペンダントを自分の首にかけて見せた。

「似合っているわ」

「えへへ」

 ティアも嬉しそうに顔を赤らめた。

「それじゃあ私はこれで帰るわね。お姉さまが心配するから」

 どうやら黒姫は無断で訪れていたらしい。

 クルリと回れ右をして去ろうとした時だった。

「待ってほしいの!」

 突然声を張るティアに驚いた黒姫はティアの方を振り向く。

「な、何かしら?」

「あのね……黒姫ちゃんの事、〝クーちゃん〟って、呼んで良い?」

 モジモジした様子でティアは問う。

「……」

「ダメ……かな?」

 上目遣いで黒姫に迫り寄る。

「っ! い、良いわよ。あなたの好きに呼んで頂戴」

 その言葉にパーっと表情が明るくなるティア。

「やったぁ! クーちゃん、よろしくなの!」

「それじゃ。明日、会場でね」

 そう言うと黒姫は窓から飛び降り姿をくらませた。

 黒姫が帰ったのと、ほぼ同じタイミングで宏彦が部屋に戻ってきた。

「いやーゴメンゴメン。俊輔のやつ中々電話に出てくれなくってさ。ってあれ? それどうしたの?」

 宏彦はティアの首に掛かった蝶のペンダントを指差し言った。

「これ、クーちゃんに貰ったの!」

「クーちゃん? うん?」

 クーとは一体誰なのか、頭の中でティアと合った人物を思い浮かべていく。

「……もしかして黒姫の事か? てか、今来てたの?」

「うん。でも、もう帰っちゃったの」

「そっか。仲良くなれた?」

「うん! また明日って言ってくれたの!」

「良かったね。それじゃ、黒姫にも負けられないな! 黒姫も実際に戦ってみて強かった。気を抜いたら足元すくわれそうだ」

「全力で戦うの!」

「そうだな。今出せる力の全てを出し切ろう!」

 この後しばらくして宏彦の家を訪れた俊輔と夕方近くまで作戦会議をするのであった。

 

 

 次の日の朝、宏彦と俊輔は駅へ向かう道を全力で走っていた。

「はぁっ……はぁっ! 急げよ俊輔! 電車に遅れちゃうってば!」

 元サッカー部だった俊輔の前を走る宏彦。二人とも息は相当切れている。

「待ってくれよ宏彦……寝起きで、オェッ……朝飯も食ってないんだから」

 軽く嘔吐きながら走る俊輔。サッカー部だった頃の貯金はもう無いようだ。

「良いから、根性……見せろよっ、元サッカー部!!」

 二人は根性で走りきり何とか時間の電車に乗ることができた。

「あ、あぶねー……おぅえっ」

 二人とも肩で息をしていた。俊輔にいたってはヘナヘナとその場に座り込んだ。

「はぁはぁ……おい……恥ずかしいから、ちゃんと椅子に座れ……よ」

「あ、あと五分だけ……」

 しまいには床に寝そべる俊輔。

「おいおい、勘弁してくれよ……」

 結局俊輔は乗り換えの駅に着くまで床に突っ伏したのだった。

 

 

 電車を乗り継いでやっとの事、大会が行われる、グランドアーツ本社の最寄り駅に着いた。

「二人ともおっそーい」

 改札口を出るとそこには博と遼が待っていた。

「何だよ博、その某駆逐艦娘みたいなセリフ。つか遅れそうになったのは宏彦のやつが寝坊しやがったからで!」

「おいちょっと待て俊輔。俺は寝坊してないし、遅れそうになった理由はお前がバテてたせいだろ?」

 罪をなすり付けられそうになった宏彦は反論する。

「あれー? そうだっけー?」

 と、とぼける俊輔に宏彦は軽く蹴りをお見舞いするのであった。

「そんな事より急いで! 遼さんと僕はもうエントリー済ませてあるから」

「博はわざわざこっちに戻ってきてくれたのか。ありがたいねぇ。そんじゃ、案内よろしく頼んでも良いかな?」

 俊輔は宏彦に蹴られた所を擦りながら言った。

「その為にこっちに来たんだよ。付いて来て」

 博はグランドアーツの建物がある方角へと走り出す。

「えぇ~また走るのかよぉ~」

「しょうがないだろ。時間厳守なんだから」

 泣き言を洩らしつつ、一行は会場へ向けて走り出す。

 

 

「……確認しました。御剣宏彦様と和田俊輔様ですね。お待ちしておりました」

 受付嬢に名前を伝えると、手際良くキーボードを叩き確認を取った。

「それでは、使用される神姫とその武装をこちらに御乗せください」

 そう言うと二つの巨大なクレイドルのような物を取り出した。

 二人はスリープモードだった神姫を起動させると、それぞれ神姫と武装を巨大クレイドルに乗せる。すると下側から青白い光に包まれていく。

「これは?」

「武装や神姫に不正が無いか調べているのです」

 不正と言う言葉に血の気が引いた。なぜならばティアはクロス・フォースが使えるからだ。どんな神姫でも使えるという訳ではなく、かつ公式ではないこの力。が、同じ力を持った神姫、ライラのマスターである遼は大丈夫と深く頷く。

 それならば、きっと大丈夫だろうと気持ちを落ち着かせる宏彦。

「はい。問題ありません。それでは御剣宏彦様と和田俊輔様はBブロックになります。向かって左手の待合室でお待ちください」

「宏彦君達はBブロックなのか」

 博が後ろで呟いた。

「と言うと二人は……」

「僕と博君はAブロックだね」

「なお、AブロックとBブロックで、それぞれ同じ勝利数同士のチームでバトルを行うスイスドロー方式となっております。そして最後に両ブロックの勝者同士で決勝戦を行ってもらいます」

 受付嬢が分かりやすく説明してくれた。

「なるほど。つまり合えるのは最後って事になるのか……」

「いいじゃねーか! 最後に宿敵、いやライバルと戦えるなんて燃える展開じゃねーか! 博と遼さんも最後まで負けんなよ!」

「そっちこそ、気を抜いて負けたりしないでよ?」

 そうして四人は二手に分かれ受付を離れるのであった。

 …………。

「……はい。間違いありません。〝例の神姫〟です。二体です。間違いありません。いかがいたしますか?」

 受付嬢は受話器を持ち上げ、内線で誰かに連絡をするのであった。

『やはり本物か。……良い。今日の目的は達成された。泳がせておけ』

「かしこまりました」

 短く受け答えすると受付嬢はそっと受話器を置いた。

 

 

 開会式の時間となり、一番広いと思われるホールに参加者全員が集められた。

 おのおのが好き勝手な会話をしていたが、マイクの電源が入りキーンというハウリング音と共に、皆が一斉に静まり返った。

「諸君。本日はグランドアーツの交友大会に参加してくれた事を感謝する」

 年齢は二十歳前半だろうか。背は高いが、まだ若さの残るスーツ姿で黒縁の眼鏡をかけた男性が演壇へ上がりマイクを握っていた。

「社長は現在、海外出張中な為、息子である副社長の私、黒羽 柳が進行役を務めさせて頂きます」

「あれ? 黒羽ってもしかしてアゲハちゃんの兄貴か」

「あんなに若いのに副社長かよ。凄いな。でもきっと親の七光りなんだろうな」

「俊輔君、失礼だから」

「三人とも静かに。他に喋ってる人いないよ?」

 遼が小声で三人を叱った。

「退屈な挨拶等は省略します。様々な所から集まっていただいた皆様は部署の開発成果をお披露目するも良し。神姫バトルを通して交遊するも良し。とにかく、参加者全員が楽しんでもらえる事を私は願っています」

 副社長の挨拶が終わると、ホールは参加者の拍手に包まれた。

 黒羽 柳が演壇から降りた。次に先ほどまで受付をしていた女性が演壇に上がる。

「それでは、本日のゲームルールを説明いたします。既にご存知の方が多いかと思われますが、今回は二人一組のチームを作り、タッグバトルを行なって頂きます。勝敗は通常の神姫バトルと同様で、どちらかのチームが二人とも戦闘不能になった時点で決まります。相方が倒れても、最後まで諦めずに戦って下さい。尚、AブロックとBブロックでそれぞれスイスドロー戦を行なってもらい、ブロック毎にの勝ち数の多かった二つのチームで決勝戦を行なってもらいます。ルール説明は以上です。わからない事があった場合、お近くのスタッフにお聞き下さい。それでは最初の試合は……」

「いよいよだな! 勝とうぜニーナ、宏彦、ティア!」

「ああ。優勝は頂きだ!」

「それじゃ二人とも、初戦、僕らはバトルだから行ってくるね」

 博と遼は初戦試合だと言うのに全く緊張していないようだった。

「おう! 負けんなよ!」

「そっちこそ」

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